「無限」とはいったい何なのか?単なる抽象的概念なのか?現実に存在するものなのか?
「無限」ってなんだろう?深く考えなければそれは単純に「限界のない」ことです。しかし、その意味を深く考えれば考えるほど良くわからなくなってきます。
無限とは単なる抽象的概念だろうか? それとも現実に存在するものなのであろうか? かの天才物理学者、アインシュタインはこんな名言を残しました。
・・・無限なものが2つある。宇宙と人間の愚かさだ。・・・・・・宇宙については断言できないがね・・・ アリストテレスからドイツの数学者ゲオルク・カントールまで、古今東西の偉大な頭脳たちが「無限」について思索してきました。では結局無限とは何なのか?無限は一種類だけではない 無限は数学の世界にはきっちり根付いています。しかし、米コーネル大学の数学者ジャスティン・ムーアによれば、この分野のそれは世の中のそれとは少々異なっています。
「多くの場合、実数直線の終わりにある一種の仮想数を意味しています。あるいは整数で数えるには大きすぎるものを指す場合もあります」
また無限は一種類だけではない。
例えば、数を数えるという行為は、終わりのないある種の無限を象徴しています。いわゆる可能無限というのです。
理論的には、最大の数に到達することはなく、永遠に数え続けることができます。しかし例えば無限の記号のように、無限に境界を設けることもできます。そしてその境界内にある限りは、際限なく繰り返すことができます。
あらゆる無限が等しく等価であるわけでもないのです。19世紀末、カントールは、実数の集合が、自然数の集合よりも大きいことを証明したと主張して議論を巻き起こしました。整数はすでにして無限であるために、一部の無限は他の無限よりも大きいということになります。またその整数のような集合と対照的に、ある種の無限が不可算である可能性も示しました。
「当時、それは衝撃的なことでした」とノルウェー、オスロ大学で論理学と数学を哲学するオイスタイン・リネボは説明しています。「しかし数十年をかけて数学の中に取り込まれていきました」 無限がなければ、多くの数学的概念は破綻してしまう。
例えば、円、球、楕円が関係する幾何学の公式に必須である円周率πは、本質的に無限と繋がりがあります。それが無理数(分数として表すことができない数)であり、無限に続く小数で構成されているからです。
また無限が存在しなければ、最大の数というものもあることになります。それは完全なナンセンスであります。あらゆる数にさらに大きな数がなければ、きちんと機能しないのです。
測定不能なものを測定できるか? しかしながら実世界ではまだ無限は見つかっていません。
もしかしたら、向かい合わせた鏡の表面で無限に反射する様子は見たことがあるかもしれませんが、それは光の効果に過ぎ、物体自体はもちろん無限ではないのです。
「現実に無限が存在するのかどうか、それは大いに疑義のあることです。それに無限は測ることもできません」とリネボ。
その存在を証明するために無限を計測しようと試みても無駄です。計測できるとは、それはつまり有限であることを意味しているのです。そう試みても具体的な量を掴めないという結果になります。
「メーターが振り切れます。分かるのはそれだけです」とリネボは説明しています。
実世界で無限を探し求めようという試みでは、大抵は宇宙に目が向けられます。我々が知る中では最大の実体です。それでも、それが無限なのか、それともただやたらと大きいだけなのか証明するものはないのです。
アインシュタインは、宇宙は有限であるが、境界がないと提唱しました。無限と有限の中間のようなものです。彼は、それを想像できない一種の球であると説明しました。
無限というと大きいものが連想されがちですが、数学者の中には無限に小さいものを見つけようとする者もいます。
理論上、線に2つの点の間の区間をとれば、それを二分し続けることができるはずです(これは二分法として知られるゼノンのパラドックスの一種である)。
同じ理屈を物質に当てはめようとすれば、たちまち壁に突き当たります。現実世界の物体を原子やそれを構成する素粒子にまで小さく分解することは可能です。しかし現在の科学では、亜原子粒子をそれ以上分解できないことになっています。
特異点の無限 現実世界で無限が見つかるとすれば、その最有力候補はブラックホールかもしれません。ブラックホールの中心には、特異点と呼ばれる膨大な質量を内包すると考えられている1次元の点があります。物理学者によれば、この奇妙な1点の密度や曲率といった特性は無限であるというのです。
特異点において、そうした無限によって多くの等式が破綻するために、ほとんどの物理法則は通用しなくなります。例えば、時空はもはや別個の存在ではなく、融合すると考えられます。
しかしリネボに言わせれば、ブラックホールは実体としての無限の実例には程遠いものです。「私の印象ですが、物理学者の大半はそこで彼らの理論が破綻すると言っているように思います。無限の曲率や密度になってしまえば、理論が適用できる範囲を超えているというわけです」 ゆえに特異点を説明する新しい理論が必要になります。それは物理世界での可能性を超越するように思えます。
現時点において、無限は抽象的概念に留まっています。人間の頭脳によって作り出された概念ですが、果たしてあなたにはそれを思い描くことができるだろうか? そのためには我々の頭脳もまた無限でなければならないに違いないのです。
2018年02月01日
カラパイアより
