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ブラックホールの自転

Posted by moonrainbow on 06.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
超大質量ブラックホールの自転が史上初めて証明される

ブラックホールの自転

M87銀河の中心にある超大質量ブラックホールは自転していた
 
ブラックホールが、自転していることを示す、直接的な証拠が史上初めて発見されたそうだ。

 そのブラックホールは、おとめ座の方角にある楕円銀河「M87」の中心にある。20年分の観測データから、そこから噴き出すジェットがコマの軸のように歳差運動をしていることが確認されたのだ。

 これによって、アインシュタインの一般相対性理論の正しさが、またも裏付けられることになった。

 日本の国立天文台や総合研究大学院大学など、国際チームによるその成果は『Nature』(2023年9月27日付)で報告されている


ブラックホールは自転するのか?
 
ブラックホールが自転しているだろうことは、かねてから予測されていたことだ。

 光ですら逃げられないブラックホールの重力に捕まった物質は、まるで渦のような円盤を描くようにして引き寄せられる(排水口に流れる水を想像すればいい)。

 やがてそうした物質は事象の地平面を超えて飲み込まれているが、すべてが重力の彼方に消えていくわけではない。じつは一部は吐き出され、超強力なジェットとなって噴出する。

 その噴出スピードは光速の99.9%。このジェットがなぜこのような膨大なエネルギーで噴出するのか確かなことは不明だ。

 だが一般相対性理論によるならば、もしもブラックホールが高速で自転しているのであれば、その磁場からそれだけのエネルギーを得ることもできると推測されている。

 もし本当にブラックホールが自転しているとすれば、その回転は誕生するときに勢いづいたと考えられている。

 フィギュアスケートの選手が腕を縮めてスピンを加速させるように、星が自分の重力で内側に崩壊することで、回転が加速したのだ


 しかも、自転はだんだんと加速するだろうと考えられている。ブラックホールによって引き裂かれた星や、巨大な質量を持つ天体同士の衝突で生じた物質が落下してくることによる影響のせいだ。

 とは言っても、これまでブラックホールの自転を裏付ける直接の証拠は見つかっていなかった。それが今回ついに発見されたのだ


ブラックホールの自転1
photo by iStock

「M87」の中心にある太陽の65億倍という怪物ブラックホー
 
それはおとめ座の方角にある「M87銀河(メシエ87)」の中心にある超大質量ブラックホールで発見された。

 「M87*」と呼ばれるこの怪物のようなブラックホールは、太陽の65億倍もの巨大な質量で、銀河系全体をつなぎとめている。

 M87*はこれまででもっとも研究が進んでいるブラックホールでもあり、2019年には史上初めて撮影にも成功している


ブラックホールの自転2
イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT/Event Horizon Telescope)が撮影した銀河M87中心の巨大ブラックホールシャドウ / image credit:EHT

ブラックホールが自転することを証明
 
今回の研究チームは、世界にはり巡らされた電波望遠鏡ネットワークで、この超大質量ブラックホールを2000年から2022年にかけて観察。そのジェットがまるでメトロノームのように11年周期で揺れていることを突き止めた。

 この事実は、M87*の軸が、ちょうど回転するコマの軸のように、回転しながらゆっくりと揺れている(歳差運動)ことを物語っている


ブラックホールの自転3
(上)EAVN等で撮影したM87ジェットの電波画像の例。2013年から2018年にかけて7ミリメートル帯の波長で撮影された多数の画像を、2年分ずつ平均して3つの画像にしている。各画像の中心部から伸びる矢印はジェットの噴出方向を表す。(下)2000年から2022年の間に測定されたジェットの噴出方向の時間変化。赤色の曲線は、測定結果と最もよく一致する11年周期の歳差運動のモデルを表す。 / image credit:Cui et al. (2023)

 これはアインシュタインの理論の正しさを裏付けるまた新たな証拠だ。

 それと同時に、どのような破壊的現象ならこのような高速回転を作り出せるのかなど、新たな謎も浮かび上がってくるとのことだ


2023年10月01日
カラパイアより

地球に最も近いブラックホール

Posted by moonrainbow on 24.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
地球に最も近いブラックホール、150光年先のヒアデス星団に複数存在か

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地球に最も近い散開星団のヒアデス星団(NASA, ESA, and STScI Licensed under CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)

わずか150光年先のヒアデス散開星団に、これまで検出された中で最も地球に近いブラックホールがあるとみられることが分かった

散開星団とは、同時期に誕生した数百個の恒星がまばらに集まったもので、所属する恒星はすべて共通の化学的性質を持っている。

オリオン座の三つ星の近くのおうし座に位置するヒアデスは、太陽系に最も近い散開星団で、冬の間中肉眼で見ることができる。天文情報サイト「EarthSky」によれば、約500個の星から成り、「雄牛の顔」とも呼ばれている


■地球に最も近いブラックホールを検出

そのヒアデス星団に、小型のブラックホールが複数存在する可能性あることが、英国王立天文学会の学会誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(MNRAS)に掲載された論文で明らかになった。今まで検出された中で最も近くにあるブラックホールになる。

ブラックホールは、光を発しないので直接には観測できない。そこで研究チームは、ヒアデス星団内の恒星の運動と進化をシミュレーションし、結果を恒星の実際の位置と速度と比較した。

恒星の位置と速度については、欧州宇宙機関(ESA)の天文観測衛星ガイア(Gaia)の最新データを用いた。ガイアは、天の川銀河(銀河系)の3次元(3D)地図の作製を目指して、数十億個の恒星の運動を高精度で測定している


■ブラックホールは2~3個

今回の研究結果は、ヒアデス星団の中かその近くに、小型のブラックホールが2~3個存在することを示唆している。論文の筆頭執筆者で、イタリア・パドバ大学の博士課程修了研究者ステファノ・トルニアメンティは「今回のシミュレーションでは、いくつかのブラックホールが現在(あるいは最近まで)ヒアデス星団の中央部に存在すると仮定した場合でのみ、星団の質量と大きさの両方が一致する結果となった」と説明した。

太陽系に最も近いブラックホールとこれまで考えられていたのは、へびつかい座の方向に1560光年の距離にある「Gaia BH1」だった。へびつかい座は、北半球の夏(南半球の冬)の間中見えている。

今回の研究は、パドバ大とスペイン・バルセロナ大学宇宙科学研究所(ICCUB-IEEC)、英ケンブリッジ大学、欧州南天天文台(ESO)、中国・中山大学が共同で実施した


2023年9月18日
Forbes JAPANより

宇宙でもっとも明るい銀河は双子ブラックホールが合体

Posted by moonrainbow on 18.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
宇宙でもっとも明るい銀河は、双子のブラックホールが合体して作り上げている可能性

双子のブラックホール

宇宙で最も明るい銀河は双子ブラックホールが合体している可能性
 
宇宙で一番明るい銀河から放たれる光のゆらめきは、もしかしたら双子のブラックホールの共同作品かもしれないそうだ。

 その銀河は宇宙でもっとも激しい現象として知られる「ブレーザー」のことだ。

 そこには地球めがけてほぼ光速のジェットを噴出する超大質量ブラックホールが存在するとされているが、なぜだかその光には揺らぎがある

 『The Astrophysical Journal』(2023年7月6日付)に掲載された研究によれば、この揺らぎはそこにはあるもう1つのブラックホールが原因である可能性が高いという


 そのブラックホールのペアは、ダンスでもするかのようにお互いを周っており、そのせいでジェットをゆらゆらと揺らしている。この「歳差運動(自転している物体の回転軸が、円をえがくように振れる現象)」が光の揺らぎの原因なのだそうだ

宇宙でもっとも激しく活動する天体「ブレーザー」
 
宇宙でもっとも明るい天体の一つに「クエーサー」がある。

 非常に遠いところにあり、しかも明るすぎるために一見したところ星のような点に見える。だがその正体は、中心に超巨大なブラックホールがある銀河だと考えられている。

 こうした銀河では、中心にある超大質量ブラックホール(活動銀河核)が、その周囲に渦を巻いている物質をがぶ飲みしている。

 だが、そうした物質はすべてが飲み込まれるわけではなく、事象の地平面の外側にある磁力線に沿って極までまわり込み、光速近くまで加速されてプラズマのジェットとして放出される。

 その凄まじいエネルギーがクエーサーの明るさの秘密だ。

 今回の「ブレーザー」は、クエーサーの一種なのだが特別なタイプだ。ブレーザーのジェットはちょうど地球を向いている。つまり真正面から見えるクエーサーなのだ


 だがブレーザーの光には不可思議なところがある。光の強さが変化するのだ。これまで、その原因は不規則なもの(物質の塊がジェットに注ぎ込まれてフレアが生じるなど)だと考えられてきた。

 ところが最新の研究によれば、実はそうではないのかもしれない


双子のブラックホール1
ブラックホールのジェットが歳差運動を起こしていることが、ブレーザーの光が変動する原因である可能性が高い / image credit:ilumbra - AstroPhysical MediaStudio

ジェットを揺らす歳差運動
 
ドイツ、マックス・プランク電波天文研究所のシルケ・ブリッツェン氏らは、「OJ287」というブレーザーを調べて、光の揺らぎがジェットの「歳差運動」によるものである可能性を突き止めた。

 回転するコマの軸を観察すれば、ゆっくりと円を描くように動いているのがわかるだろう。これが歳差運動だ。

 つまりブレーザーの光の変動は、ブラックホールがゆらゆらと揺れることで、ジェットもまた揺らいでいることが原因と考えられるという


双子のブラックホール2
双子のブラックホールの片方が周囲を周回することで、ジェットが歳差運動を起こすと考えられる / image credit:Michal Zajaček/UTFA MUNI

ブラックホールはなぜ揺らぐのか?
 
ではブラックホールはなぜ揺らぐのか?

 じつはOJ287には2つの超大質量ブラックホールがあり、お互いの周りを軌道している。

それが降着円盤にトルクをくわえ、歳差運動を引き起こす。これは地球の地軸が月や太陽から影響を受けるのにも似ているという。

 OJ287は少々極端な例で、その光の変動はかなりはっきりしている。だがそこまではっきりしていないほか11のブレーザーの光の揺らぎも、同じようにして説明できるという。

 確かに物質の塊や衝撃のような原因もあるかもしれないが、それでもその根底には歳差運動があるだろうと研究チームは考えている。

 今のところ、この連星ブラックホールの降着円盤をはっきり観察できるような望遠鏡は存在しない。

だが歳差運動やほかのブレイザーの根気よく観測することで、そこで何が起きているのかヒントを得られるとのことだ


2023年09月13日
カラパイアより

ブラックホールは光速の約10分の1で運動する

Posted by moonrainbow on 11.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
ブラックホールは最速2万9000km/sで運動する場合があると判明 光速の約10分の1

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【▲ 図1: お互いの周りを公転している2個のブラックホールの想像図(Credit: SXS)】

ブラックホール同士が合体すると激しい重力波が発生し、時に合体後のブラックホールを “蹴りだし” ます。ブラックホールの運動速度が早ければ早いほど、ブラックホール同士が衝突する可能性は高まり、宇宙に存在する重いブラックホールの起源になるとも考えられます

ロチェスター工科大学のJames Healy氏とCarlos O. Lousto氏は、2つのブラックホールが衝突した場合、合体後のブラックホールが最速で約2万9000km/sで運動することをシミュレーションによって明らかにしました。これは以前のシミュレーションで示された速度の5.7倍も速く、光の速度の約10分の1に相当します

■天体同士の接近によって発生する “制限速度違反”

複数の天体が極めて近くに接近した場合、お互いが重力で引かれ合うことで運動エネルギーのやり取りが行われます。重力を介した相互作用は天体の運動速度を極端に増加させる場合があります。

このような過程で極端な速度を得た星は「超高速度星(HVS; Hypervelocity star)」と呼ばれます。これまでに知られている最速のHVSは「S5-HVS1」であり、天の川銀河の中心部に対して約1755km/sで運動しています。太陽は天の川銀河の中心部に対して約240km/sで公転運動をしていると推定されていますので、それの7.3倍も高速です (※1) 。S5-HVS1はあまりにも速く運動しているため、重力を振り切って天の川銀河を脱出していると推定されています。このような超高速度星は、天の川銀河中心部の超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」に極めて接近した結果生じたと推定されています。

※1…S5-HVS1はHVSとしては最高速ですが、さらに高速の天体として「S4716」の8000km/sが知られています。ただし、S4716はHVSとは異なり天の川銀河中心部のブラックホールの重力に捕らわれており、4.02年周期で公転しています。その軌道は真円からかなり離れた楕円形であり、ブラックホールに最も接近するときの公転速度が8000km/sに達すると推定されています。

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では、ブラックホール同士が接近した時にはどのような結果が生じるのでしょうか?ブラックホール同士の場合、単なる接近遭遇だけでなく、衝突でも膨大な速度が生じることが分かっています。ブラックホール同士が接近すると膨大なエネルギーの重力波が放出されますが、この重力波の発生には偏りが生じることもあるため、衝突後に誕生した合体ブラックホールは特定の角度に集中した重力波によって “蹴り飛ばされる” 可能性があります。

そのようなブラックホールの実例としては活動銀河「CID-42」に存在するとされる超大質量ブラックホールがあり、2つのブラックホールが衝突した結果、銀河に対して約2000km/sの速度で飛び出していると推定されています。このように、ブラックホール同士の衝突は極めて大きな運動速度を生じる可能性があり、その限界速度はこれまで5000km/sだと推定されていました。これは光の速度の約60分の1に相当します


■最速のブラックホールは光速の10%で運動すると判

ロチェスター工科大学のHealy氏とLousto氏は、ブラックホール同士の合体で生じる限界速度についての数値計算を行いました。

ブラックホール同士の接近で生じる激しい重力波の変化を正確に計算するには、計算強度の高いスーパーコンピューターを必要とします。また、限界速度を知るには様々な角度からの衝突を仮定する必要があるため、パターンが増えるに従って計算量も膨大になります


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【▲ 図2: 2つのブラックホールが接近する角度によって、合体して生じるブラックホールの運動速度が変わると推定される。今回の研究では全部で1381パターンを想定して計算を行った(Credit: James Healy and Carlos O. Lousto)】

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【▲ 図3: ブラックホールの衝突後の速度の計算結果。最も理想的な角度での衝突では、最大で28562km/sの速度が生じると計算された (図の数値が本文と異なるものの、本文の記載を優先)(Credit: James Healy and Carlos O. Lousto)】

Healy氏とLousto氏は、ブラックホール同士の衝突パターンを1381通り想定して計算を実行しました。これは5000km/sという上限値を推定した研究で計算された42通りを大きく上回ります。その結果、かすめるような角度で衝突する時に最大の速度が生じ、最高で2万8562 (±342) km/sに達することが分かりました。これは以前の数値計算で示された値の5.7倍であり、光の速度の約10分の1に相当します。この速度では地球を1周するのに1.4秒、地球から月まで移動するのに13.5秒しかかかりません。

もちろん、この最大速度が得られるのは極めて限られた条件を満たした時のみであり、大半のブラックホールはここまで高速に運動することはありません。しかし、平均的に速度の速いブラックホールが生じることは、ブラックホールの進化を考える上で重要です。ブラックホールは主に重い恒星の中心部で中心核 (コア が崩壊した結果生じると推定されていますが、宇宙にはこの方法で生じるよりも重いブラックホールが無数に存在します。

重いブラックホールは軽いブラックホール同士の衝突・合体で生じると推定されていますが、ブラックホールの運動速度が速いほど衝突頻度も増加する傾向にあります。ブラックホール同士の接近がどのような結果をもたらすのかを知ることは、ブラックホールの性質や成長を知る上でとても重要です


Source

James Healy & Carlos O. Lousto. “Ultimate Black Hole Recoil: What is the Maximum High-Energy Collision Kick?”. (Physical Review Letters) (arXiv)

2023-09-02
Soraeより

電波銀河NGC 4261

Posted by moonrainbow on 12.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
電波銀河の巨大ブラックホールに落ち込む水分子

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NGC 4261
(左)地上望遠鏡で撮影されたNGC 4261。中央の白い楕円銀河(可視光線画像)と、その中心から上下に噴き出すジェット(電波画像)を合成したもの。(右)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したNGC 4261中心部のガス円盤。低温のガスと塵からなる円盤が暗く写っていて、中心の明るい部分には超大質量ブラックホールがあると考えられる。画像クリックで表示拡大(提供:National Radio Astronomy Observatory, California Institute of Technology; Walter Jaffe/Leiden Observatory, Holland Ford/JHU/STScI, and NASA)

日韓の電波望遠鏡によって、電波銀河NGC 4261の中心部にあるガス円盤から中心ブラックホールに水分子ガスが落ち込む様子が初めてとらえられた

活動銀河の一種である電波銀河では、中心から数万光年という遠くまで達する明るい電波ジェットがしばしば見られる。こうしたジェットの噴出には莫大なエネルギーが必要で、そのエネルギー源は銀河中心の超大質量ブラックホールに落下する星間ガスの重力エネルギーだと考えられている。

おとめ座の方向約1億光年の距離にある「NGC 4261」も2本の双極ジェットを持つ電波銀河で、中心には超大質量ブラックホールが存在すると推定されている。1992年にはハッブル宇宙望遠鏡が、この銀河の中心部に存在するガス円盤を高い分解能で撮影したことでも有名だ。

しかし、NGC 4261の中心ブラックホールから数光年というごく狭い範囲で、実際に円盤のガスがブラックホールに落下している様子は、これまで観測されていなかった。

大阪公立大学の澤田-佐藤聡子さんたちの研究チームは、日中韓の電波望遠鏡を連携させる「東アジアVLBI観測網(EAVN)」のネットワークを使って、NGC 4261のVLBI観測を行った。この観測には、国立天文台の「VERA」4局と茨城県の高萩32m電波望遠鏡、韓国の「韓国VLBIネットワーク(KVN)」の3局が参加した。

観測の結果、NGC 4261の中心から1光年未満というごく狭い範囲に、「水メーザー」という強い電波輝線を放射する水分子ガスが密集しているのが見つかった。水分子ガスの分布は銀河中心の電離ガス円盤と同じ位置にあり、水分子ガスは円盤の内部にあるとみられる。

また、水メーザー輝線のドップラー効果から、この水分子ガスが銀河中心に向かって運動していることも突き止められた。この結果は、円盤のガスがブラックホールに落下してジェットのエネルギー源となっていることを示す初めての証拠だ


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NGC 4261中心部の水分子ガス
NGC 4261の中心部で検出されたメーザー源となる水分子ガス。(a) 水分子からのメーザー放射の強度分布。(b) 水分子ガスの視線速度。赤は地球から遠ざかり、青は近づいていることを示す。ガスの大部分は地球から遠ざかる方向に運動している。(c), (d) 水分子ガスと電波ジェット(白い等高線)の位置関係。黄色の枠が (a) ,(b) の範囲(提供:Sawada-Satoh et al. (2023) PASJ, Vol.75, Issue 4, p.722、以下同)

研究チームは、今回の観測結果と、これまでに得られている電離ガスや中性水素ガス、分子ガスの観測データから、NGC 4261中心部の構造も推定している。銀河中心のブラックホールを取り巻くガス円盤に垂直な方向に2本の電波ジェットが噴出していて、水分子ガスはガス円盤のごく内側にあり、円盤の中で乱流を起こしながらブラックホールへと落下しつつあるようだ

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中心部のガスの分布
NGC 4261中心部のガス分布の想像図。視線方向に対して斜めにガス円盤があり、手前側の円盤のごく中心近くで水メーザーが検出された。この配置のように、電波望遠鏡から見て水分子ガスの背景にジェットが存在すると、水分子からのメーザー放射が明るく観測される性質がある。

現在、EAVNに参加する各国では観測網の性能向上が進められていて、日韓合同VLBI観測網「KaVA」では4局目のアンテナを韓国の平昌に建設中だ。「VERA」でも新たな高感度受信機を開発している。今後さらに感度や分解能などが向上すれば、NGC 4261のブラックホールにガスが降着する仕組みがさらに詳しく明らかになると研究チームは期待している。

2023年8月9日
AstroArtsより
 

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