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ブラックホールの自転

Posted by moonrainbow on 26.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
ブラックホール「いて座A*」は理論上の最高に近い速度で自転していることが判明

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図: いて座A*の画像

ブラックホールの自転速度は、ブラックホール周辺の環境に影響する重要なパラメーターであると考えられています。このため、ブラックホールの自転速度を正確に算出することは重要です

ペンシルベニア州立大学のRuth A. Daly氏などの研究チームは、天の川銀河中心部に存在する超大質量ブラックホール「いて座A*(いてざエースター)」のX線および電波の観測データを分析し、自転速度を表す回転パラメーターを0.90±0.06と算出しました。これはブラックホールの理論的な自転速度の上限にほぼ近い値です

■ブラックホールの自転を表す「回転パラメーター」

地球をはじめ、様々な天体が自転という回転運動をしています。その回転速度は様々ですが、どの天体にも物理的な限界が存在します。地球などの惑星や太陽のような恒星の場合、回転速度が高すぎて、遠心力によってバラバラに砕けてしまうのが自転の限界となります。

一方で「ブラックホール」の場合、他の天体とは事情が異なります。ブラックホールは何らかの物体で構成された天体ではなく、「事象の地平面」で定義される時空の性質であるため、物質と同じような定義で回転速度の限界を考えることはできません。事象の地平面とは、これより内側に入った物体やエネルギーは、例え光速であっても再び外側に逃げ出すことができない境界面のことであり、ブラックホールが光でも逃げ出せないという性質の根幹となります


一般相対性理論を自転するブラックホールについて解くと、ある速度より速く自転するブラックホールは、事象の地平面が消えてしまいます。ブラックホールは事象の地平面より内側に存在する時空であるため、事象の地平面が消えてしまう条件ではブラックホールは存在できなくなると考えられています (※) 。これはa_*という記号で表される「回転パラメーター」という数値で表され、全く自転しないブラックホールは回転パラメーター0である一方、事象の地平面が消えてしまう限界値では回転パラメーターは1となります。つまり存在可能なブラックホールは、回転パラメーターが0から1の間に収まります。

※…事象の地平面が消滅したブラックホール、つまり裸の特異点が存在しないという仮説は「宇宙検閲官仮説」と呼ばれています。ただし宇宙検閲官仮説は証明も反証もされていません。

見つかっている多くのブラックホールは回転パラメーターが1に近い高速で自転をしていますが、これは太陽の数倍程度の質量を持つ「恒星質量ブラックホール」での話です。多くの銀河の中心部に存在する「超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)」の回転パラメーターは多くの場合で未知です


■「いて座A*」の回転パラメーターが判明

Daly氏などの研究チームは、天の川銀河の中心部に存在する超大質量ブラックホールである「いて座A*」の回転パラメーターの算出を試みました。ブラックホールそのものの自転を直接観測することはできないため、ブラックホールの周りを取り巻く物質である降着円盤からの放射を観測することで、いて座A*の回転パラメーターを算出します。

Daly氏らは、いて座A*に関するX線と電波での観測結果から、それぞれの降着円盤の回転速度を推定し、その値からいて座A*の回転パラメーターを算出しました。その結果、回転パラメーターは0.90±0.06という値となりました。これは1に非常に近く、いて座A*は理論的な限界に近い速度で自転していることを示しています


■超大質量ブラックホールの回転パラメーターは銀河にとって重要

超大質量ブラックホールの回転パラメーターが分かると、どのようなことが分かるのでしょうか?例えば過去の研究では、いて座A*の回転パラメーターは0.44というかなり小さな値が推定されたことがありました。一方で、超大質量ブラックホールは周りの物質を吸い込んで自転速度を上げる傾向にある、つまり回転パラメーターが上昇する傾向にあると考えられているため、これは矛盾します。しかし今回の研究では、0.44と推定した研究とは研究手法が異なるものの、より矛盾の少ない結果が得られています。

また、ブラックホール周辺の環境は、自転している場合と自転していない場合とでは大きく異なります。ブラックホールの自転は降着円盤からの放射などに影響し、ひいては銀河の進化など、より大きな範囲に影響を与えます。いて座A*が大きな回転パラメーターを持つことは、超大質量ブラックホールを持つと考えられる多くの銀河の環境や進化を考える上でも影響するかもしれません


Source
Ruth A. Daly, et al. “New black hole spin values for Sagittarius A* obtained with the outflow method”. (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)
Brian Koberlein. “The Milky Way's Black Hole is Spinning as Fast as it Can”. (Universe Today)

2023年11月22日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

最も遠いブラックホールを発見

Posted by moonrainbow on 22.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
NASA、最も遠いブラックホールを発見…成長段階だがホスト銀河とほぼ同じサイズ

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これまで見つかった中で最も遠く離れたブラックホールのX線写真。
X-ray: NASA/CXC/SAO/Ákos Bogdán; Infrared: NASA/ESA/CSA/STScI; Image Processing: NASA/CXC/SAO/L. Frattare & K. Arcand

NASAはこれまでで最も遠く離れた場所にある成長中のブラックホールを発見した

心配は無用だ。この成長しているブラックホールは132億光年離れている。
この超大質量ブラックホールは、原始的な状態で発見された。
NASAはこれまで見つかった中で、最も遠くにあるブラックホールの原始的な段階で成長している姿を捉えた。

NASAは先日、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とチャンドラX線望遠鏡からのX線データを組み合わせ、遠い銀河の後ろに、原始的で巨大なブラックホールの存在を確認したことを発表した。

巨大な鏡と赤外線レンズのおかげで、JWSTは280億光年も離れた星や銀河を検出することが可能だ


超大質量ブラックホールとそれが発するプラズマジェットを同時に撮影
地球から132億光年離れた場所にあるこのブラックホールは、宇宙の年齢が現在のわずか3%だった、ビッグバンから約4億7000万年前にまでさかのぼるという。

光の速さは有限であり、遠く離れた物体は我々から数十億光年も離れているため、我々が見ているのはその物体の過去の状態だ


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なぜすべての銀河の中心に超大質量ブラックホールがあるのか。それは天文学者たちが解明しようとしている大きな謎だ。
Daniel Rocal / Getty Images

これによって、研究者は宇宙が形づくられる初期の段階を見ることができる。このブラックホールは、JWSTによって発見された記録的なリストのなかでも最も印象的なものだ。

JWSTは運用を始めた最初の週に、135億年前の銀河を発見した。また、別の初期段階のブラックホールを見つけ、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えることができなかった多くのものを発見した。

このブラックホールはこれまでに見つかったものより若く、まだ成長しており、総質量はホスト銀河と同じ程度に大きいとNASAは述べた


超大質量ブラックホールは通常、ホスト銀河に比べてはるかに小さく、サイズは0.1パーセントだという。

科学者はこの発見が、このようなブラックホールが初期の段階から大きくなるのか、知ることに役立つと期待している。

「ブラックホールが形成されてから成長する速度には物理的な限界があるが、巨大に誕生すれば有利なスタートとなる。苗木を植えるようなもので、種から育てるよりも成長させるまでの時間を短縮できるだろう」とプリンストン大学の研究者でこの研究の共著者であるアンディ・ゴールディング(Andy Goulding)は、NASAのプレスリリースで述べた


2023年11月16日
BUSINESS INSIDER JAPANより

観測史上「最遠」のブラックホール

Posted by moonrainbow on 14.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
観測史上「最遠」のブラックホール、宇宙の虫眼鏡で発見 NASA

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X線で検出された、観測史上最も遠方にあるブラックホールを捉えた合成画像。NASAチャンドラ衛星のX線画像(紫色)とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の赤外線画像を合成して作成(X-ray: NASA/CXC/SAO/Ákos Bogdán; Infrared: NASA/ESA/CSA/STScI; Image Processing: NASA/CXC/SAO/L. Frattare & K. Arcand)

太陽系から最も遠方にあるブラックホールの1つを、天文学者チームが米航空宇宙局(NASA)の宇宙望遠鏡2基を用いて発見した。銀河が視線上に並ぶことで虫眼鏡のように作用する、稀な現象を利用することで得られた観測成果だ

ビッグバン(138億年前に宇宙を誕生させたと考えられている現象)からわずか4億7000万年後には存在していたこの天体は、これまでにX線で検出された最も遠くにあるブラックホールだ。

発見に用いられた宇宙望遠鏡は、赤外線で宇宙を観測するジェイムズ・ウェッブ望遠鏡(JWST)と、X線で見るチャンドラ観測衛星。どちらの波長の電磁波も、人間の目には見えない


■著しく遠い

科学誌Nature Astronomyに11月6日付で掲載された、今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のアーコシュ・ボグダンは「この著しく遠い銀河を見つけるためにウェッブが、その銀河にある超大質量ブラックホールを見つけるためにチャンドラが、それぞれ必要だった」と説明する。「さらには、地球で検出される光の量を増やす宇宙の拡大鏡も利用した」

銀河「UHZ1」の中で発見されたこのブラックホールは、これまでに見つかっているどのブラックホールよりも発達の早い段階にある。UHZ1は、太陽系から約35億光年の距離にある銀河団Abell 2744、別名「パンドラ銀河団」の中にある。Abell 2744は3つの銀河団からなる巨大な銀河団で、5万個という驚くべき数の天体が存在する。

だが、ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡の観測で、UHZ1がこの銀河団の背後の、太陽系から132億光年という途方もなく遠方にあることが明らかになった。これは、現在の宇宙年齢のわずか3%しか経っていない時期に相当する


宇宙の最初期の「超大質量ブラックホール」か?

■アインシュタインリング

ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡が今回の発見を成し遂げられたのは、重力レンズのおかげだ。重力レンズは、前方にある天体の重力場が非常に強いために、その周囲の空間がゆがみ、背後にある天体からの光が曲げられ、リング状の像ができる現象。背後の天体の存在を知ることができるとともに、その拡大された像が得られる。著名な物理学者アルバート・アインシュタインがこの現象を予言したことから「アインシュタインリング」としても知られている。

重力レンズは、途方もなく遠くにある天体の存在を推察し、その質量を測定するための最善の手段だ。今回の場合、ブラックホールの質量は、それを含む銀河(母銀河)の質量とほぼ同じで、太陽質量の1000万倍~1億倍となっている。これは予想をはるかに上回る質量だ


■確かな兆

ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡がUHZ1の位置を特定するとすぐに、チャンドラが数週間かけて、銀河から発せられるX線を観測した。銀河団Abell 2744は重力レンズとして作用し、背景の銀河を4倍に拡大した。

今回の観測結果は、宇宙初期のブラックホールがどのようにして、これほど急速に成長したように思われるのかを科学者らが解明する助けになるかもしれない。このブラックホールが特に生まれながらに大きかったことを、論文は示唆している。

論文の共同執筆者で、米プリンストン大学のアンディー・ゴールディングは「ブラックホールが形成後に、どれだけ短時間で成長できるかには物理的な限界がある。だが生まれながらに、より質量が大きいブラックホールは、他より一歩先んじることができる」と指摘している。「これは苗木を植えるのに似ている。普通の大きさの木にまで成長するのにかかる時間は、種から育て始めた場合よりも短くなる


2023年11月9日
Forbes JAPANより

ブラックホール成長の現場観察

Posted by moonrainbow on 09.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
ブラックホール成長の現場観察 アルマ望遠鏡で詳細解明 国立天文台

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国立天文台などの研究チームがアルマ電波望遠鏡を用いた観測で明らかにした、銀河中心の巨大ブラックホール(中央の黒い丸)とその周囲のガスの流れの想像図(国立天文台・泉拓磨助教ら提供)

 国立天文台などの国際研究チームは3日、銀河の中心部にある超巨大ブラックホールが、周囲のガスを取り込んで成長する仕組みを、南米・チリにあるアルマ電波望遠鏡を使った詳細な観測で明らかにしたと発表した。論文は同日付の米科学誌サイエンスに掲載される

 大きな銀河の中心には、質量が太陽の100万倍以上に達する超巨大ブラックホールが存在する。銀河内のガスを強い重力で取り込むことで質量を増大させているが、ブラックホールごく近傍の観測は難しく、詳しい仕組みはよく分かっていなかった。 

 国立天文台の泉拓磨助教らは、地球から約1400万光年先にある「コンパス座銀河」の中心部をアルマ望遠鏡で観測。超巨大ブラックホールの周囲数光年の範囲で、円盤状に取り巻くガス(ガス円盤)の一部がブラックホールに向けて落下していく「降着流」を捉えることに成功した。

 こうしたガスの質量のうち、ごく一部しかブラックホールの質量増大に寄与していないことも判明。ガスが落ち込む際の摩擦で高温になり、光を発する「活動銀河核」が生じ、そのエネルギーがガスのほとんどを外側に噴出させているためで、これらのガスは円盤に戻り、再び降着流になる循環が生まれていることも分かった


2023年11月3日
時事通信より

ブラックホールが自転している証拠を発見?

Posted by moonrainbow on 25.2023 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
巨大なブラックホールが自転している証拠を発見か M87から噴き出すジェットの観測データを分析

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自転する超大質量ブラックホールの周囲で歳差運動する降着円盤とジェットの想像図

中国の之江実験室(Zhejiang laboratory)の研究員・崔玉竹(ツェイ・ユズ)さんを筆頭に、日本の国立天文台(NAOJ)の研究者らも参加した国際研究チームは、楕円銀河「M87」の中心から噴出しているジェット(細く絞られた高速なガスの流れ)の方向が約11年周期で変化していることを発見したとする研究成果を発表しました

「おとめ座」(乙女座)の方向約5500万光年先にあるM87(Messier 87)は、中心からジェットを噴出する活動銀河のひとつであることが知られています。こうしたジェットの噴出には銀河の中心に存在するとみられる超大質量ブラックホールが関わっていて、ブラックホールを高速で周回しながら落下していくガスの一部がブラックホールの両極方向に高速で放出されていると考えられています

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参考:2019年4月にEHTが公開した楕円銀河「M87」中心にある超大質量ブラックホールのシャドウ

2019年4月には国際研究グループ「イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope:EHT)」がM87中心の超大質量ブラックホール周辺を電波で観測することに成功したと発表し、その画像を公開しました。4年後の2023年4月には、同じブラックホールを取り囲む降着円盤(周回しながら落下していく物質で形成されたリング状構造)とジェットの根元を同時に観測できたとする成果も発表されています。M87の超大質量ブラックホールの質量は太陽約65億個分と推定されています。

今回、崔さんたちはジェットの形状が変化する様子を詳しく調べるために、20年以上に渡るM87の電波観測で得られた170枚のジェットの画像を分析。その結果、ジェットの噴出方向が約11年周期で変化していることがわかったといいます。

EHTの日本グループ「EHT-Japan」によると、M87のジェットが噴出方向に対して横方向に振れていることは過去の研究でも示唆されていたものの、原因や周期があるかどうかはわかっていなかったといいます。崔さんは「この発見をした時は身震いしました」と振り返るとともに、20年以上の観測で得られた膨大な量のデータを丁寧に分析したことが今回の発見につながったとコメントしています。

この周期的な変化の原因を探るために研究チームが国立天文台の天文学専用スーパーコンピューター「アテルイII」を用いてシミュレーションを行ったところ、自転するブラックホールが周囲の時空間を引きずることで生じる降着円盤の歳差運動(※1)として説明できることがわかりました。歳差運動とは回転する物体の回転軸が傾きながら円を描くような運動のことで、首振り運動とも呼ばれます。この運動は軸が傾いたまま回転し続けるコマ(独楽)の動きに似ています。

今回の成果は、M87の中心にある超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)が自転していることや、ジェットの発生にブラックホールの自転が関わっている(※2)ことを裏付けるものだとされています。研究チームは引き続きM87のジェットの観測に取り組んでおり、研究に参加した国立天文台水沢VLBI観測所所長の本間希樹教授は「今後は得られたジェットの形状変化をEHTで得られるブラックホールの動画とも比較することで、ブラックホールとジェットのつながりや自転の速度までより正確に導き出したい」とコメントしています


■脚注

※1…自転する天体に引きずられて周囲の時空間が回転する相対論的効果を「レンズ-シリング(Lense-Thirring)効果」と呼び、この効果によって生じる歳差運動であることから「レンズ-シリング歳差」と呼ばれています。
※2…EHT-Japanによると、光速の99パーセント以上にまで加速されるジェットがどのような機構で放出されているのかはまだわかっておらず、磁場を介してブラックホールの自転のエネルギーが引き抜かれているとする機構(ブランドフォード・ズナエック機構)が最有力候補とされています。今回の研究はブラックホールが自転していることを示唆するレンズ-シリング歳差の証拠をつかむことで、この機構が起きている可能性が高いことを裏付けた形となりました


Source
NAOJ - 歳差運動するM87ジェットの噴出口―巨大ブラックホールの「自転」を示す新たな証拠―

2023年20月20日
sorae 宇宙へのポータルサイトより
 

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