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ブラックホールの縁に渦巻く磁場構造を発見

Posted by moonrainbow on 07.2024 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
天の川銀河中心のブラックホールの縁に渦巻く磁場構造を発見

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M87*といて座A*の偏光画像
超大質量ブラックホールM87*(左)といて座A*(右)の偏光画像の比較。渦巻き状の構造が共通して見られ、両ブラックホールの縁が類似した磁場構造を持つことが示された(提供:EHT Collaboration)

天の川銀河中心の超大質量ブラックホール「いて座A*」の縁に渦巻く強い磁場構造が見つかった。M87銀河の中心ブラックホールにも同様の構造が存在しており、全てのブラックホールに強い磁場が共通して見られる可能性を示唆する成果だ

国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は、2017年におとめ座の巨大楕円銀河M87の中心ブラックホール(M87*)を観測し、史上初めてブラックホールの影(ブラックホールシャドウ)とそれを取り巻くリング状の光の像をとらえた。

このときに記録された偏光の解析から、リング状の像に沿って偏光の向きが渦を描くように分布していることが2021年に明らかになり、ブラックホールのすぐそばに強く整列した磁場が存在することが示された。磁場が存在する場所で発生した光や磁場を通過した光には、振動面の向きが揃った電磁波である「偏光」が見られることが多く、偏光の向きを観測することによって磁場の情報が得られるのだ。

さらにEHTは2022年に、天の川銀河の中心の超大質量ブラックホール「いて座A(^*)(エースター)」のブラックホールシャドウもとらえることに成功した。この結果から、いて座A*とM87*は、1000倍以上も質量とサイズの差があるにもかかわらず、見た目が驚くほどよく似ていることがわかった。

そこで、2つのブラックホールに外見以外の共通点があるのではないかと考えたEHTチームは、いて座A*の偏光を調べた。「ブラックホール近傍の高温ガスからの偏光を画像化することで、ブラックホールに落ち込む、あるいは排出されるガスを取り巻く磁場の構造と強さを直接調べることができます。偏光は、ガスの特性やブラックホールに物質が供給された際に起こる現象など、天体物理学の重要な問題について、より多くのことを教えてくれます」(米・ハーバード大学 Angelo Ricarteさん)。

その結果、いて座A*の偏光画像から、M87*に見られるものと非常によく似た渦巻き状の磁場構造が発見された。「天の川銀河の中心にあるブラックホールの近くにも、渦巻くように整列した強力な磁場があるということです。いて座A*の偏光構造が、より大きく、強力なジェットを伴うM87*に見られるものと驚くほどよく似ていることに加え、秩序だった強い磁場がブラックホールが周囲のガスや物質とどのように相互作用するかに重要であることがわかりました」(米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センター Sara Issaounさん)


過去の研究から、M87*は周囲の磁場によって強力なジェットを放出できていることが明らかになっている。今回の研究成果は、いて座A*についても同じことが言える可能性を示唆するものだ。「質量や大きさ、周囲の環境の違いにもかかわらず、ブラックホールにガスが供給され、またその一部がジェットとして放出される物理過程が大質量ブラックホール間で普遍的である可能性を示唆する、重要な発見です」(伊・ナポリ・フェデリコ2世大学 Mariafelicia De Laurentisさん)。

この4月には再びEHTによるいて座A*の観測が予定されている。EHTでは観測のたびに新しい望遠鏡、より広い帯域幅、新しい観測周波数を取り入れるなどのアップデートを行っていることから、今回さらに向上した画像が得られると期待される。また、今後10年間の計画拡張により、いて座A*の動画作成が可能になれば、隠れたジェットが明らかになったり、他のブラックホールでも同様の偏光特性が観測されるようになったりするかもしれない


2024年4月3日
AstroArtsより

ファイナルパーセク問題

Posted by moonrainbow on 04.2024 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
総質量が太陽の280億倍もあるブラックホール連星 ある問題解決への糸口となるかも?

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4C+37.11のブラックホール連星の想像図とその性質

ほぼ全ての巨大な銀河の中心部には「超大質量ブラックホール」があると考えられていますが、その中には最大で太陽の数百億倍という途方もない質量を持つものがあります。こうしたブラックホールもより小さなブラックホールが合体して生じたと考えられていますが、そのメカニズムを考えると「合体しているはずのないブラックホールが合体している」という奇妙な矛盾に突き当たります。これは「ファイナルパーセク問題」と呼ばれています

スタンフォード大学のTirth Surti氏などの研究チームは、ジェミニ北望遠鏡による観測データから、活動的な銀河「4C+37.11(B2 0402+379)」にある超大質量ブラックホールの性質を分析しました。その結果、4C+37.11の中心部にある超大質量ブラックホールは、総質量が太陽の280億倍であることを突き止めました。4C+37.11の中心部にあるブラックホール同士はお互いにわずか24光年しか離れていないことが以前の研究で分かっています。これほど距離が近いブラックホール連星としては前例のない重さであり、その形成過程を探ることや、ファイナルパーセク問題を解決する糸口として、4C+37.11が重要な “銀河団の化石” であることを今回の研究は示しています

■合体しているはずがない、ブラックホールの「ファイナルパーセク問題」

天の川銀河のように巨大な銀河の中心部には「超大質量ブラックホール」が存在すると考えられています。その質量は小さくても太陽の数百万倍以上あり、中には数百億倍と推定されるものもあります。ブラックホールは重い恒星の中心部が潰れて生じますが、その過程ではどんなに重くても太陽の数十倍程度までのブラックホールしか生じません。したがって、超大質量ブラックホールが生じるにはブラックホールが合体を繰り返す必要があります。

宇宙は広いため、ブラックホール同士が近づいても正面衝突を起こすことはほぼなく、お互いにすれ違ってしまうことが大半です。ブラックホール同士が衝突するには、お互いの周りを公転する連星軌道に入り、なおかつ公転軌道が縮小して最終的にはゼロになる必要があります。

遭遇したブラックホールどうしが連星を成し、やがてその軌道が小さくなることの両方に関与するのが「動的摩擦」と呼ばれるプロセスです。2つのブラックホール以外の第三の天体が存在する場合、接近遭遇の過程で3つ全ての天体の軌道が変更されます。この時、第三の天体に運動エネルギーが受け渡されると、ブラックホールが減速する一方で、第三の天体は加速して外に吹き飛ばされます。減速したブラックホールはお互いが連星になったり、あるいは公転軌道が縮小したりします。重力がまるで摩擦力のように運動速度を減少させることから、これを動的摩擦と呼んでいます。

ただし、超大質量ブラックホールのような非常に重い天体で動的摩擦が起こるには、第三の天体として恒星や星間ガスのような物質が非常に大量に必要となります。動的摩擦のシミュレーションを行うと、減速するブラックホールから運動エネルギーを受け渡される物質である恒星や星間ガスが枯渇してしまい、ブラックホールどうしの距離が数光年から数十光年になると動的摩擦が停止して、それ以上公転軌道が縮小しないという壁に遭遇します。

この状態になると、超大質量ブラックホールの連星が公転軌道を縮小させるプロセスは「重力波」の放出によるエネルギーの減少しかありません。しかし、そのようなプロセスが顕著になるのはお互いの距離が数百分の1光年 (数百億km) まで接近してからであり、数光年以上離れたブラックホールの連星では無視できるほど小さな効果となります。

結果として、理論的には、宇宙の歴史に匹敵する長い時間を費やしても、超大質量ブラックホールは決して合体しないということになります。しかし、実際の宇宙には多数の超大質量ブラックホールが存在しており、「合体しているはずのないブラックホールが合体している」ことになるため、どうにかしてこの問題が解決されているようです。作用するプロセスが未解決な距離は数パーセク(1パーセクは約3.26光年)であることから、この未解決問題は「ファイナルパーセク問題」と呼ばれています


■「4C+37.11」のブラックホール連星は非常に大規模と判明

ファイナルパーセク問題を解決するには、合体直前の超大質量ブラックホールを発見して、その環境を詳しく観察する必要があります。

Surti氏らの研究チームは、ハワイのマウナ・ケア山頂に設置されたジェミニ北望遠鏡の観測データアーカイブを分析し、活動的な銀河「4C+37.11」にある超大質量ブラックホールについての分析を行いました。4C+37.11は今回の研究以前から注目されており、2006年には超大質量ブラックホールの距離がわずか約24光年 (7.3パーセク) と、非常に接近していることが明らかにされています。

Surti氏らは、ジェミニ北望遠鏡に設置された分光器「GMOS(ジェミニ多天体分光器)」の観測データを分析し、4C+37.11の中心部にある超大質量ブラックホールの質量の計算を行いました。銀河から地球に届いた光を波長ごとに詳しく分析すれば、中心部にある恒星の運動速度を測定して、そこから中心部にあるブラックホール連星の総質量を決定することができます。

その結果、4C+37.11の超大質量ブラックホールの連星は、合計質量が太陽の約280億倍であると計算されました。この値は、知られているものとしては最大規模のブラックホール連星の1つです。お互いの距離が24光年と非常に近いことも考慮すると、4C+37.11のブラックホール連星は極めて注目に値します


■4C+37.11はファイナルパーセク問題を解決する糸口

いくつかのブラックホール連星は、4C+37.11よりも近い距離で互いに公転していると推定されていますが、これらは観測によって証明されていないため、4C+37.11は事実上の最小距離かつ最大規模のブラックホール連星となります。また、連星の規模が大きいことから、4C+37.11は既に何回か合体を経験していると推定されます。即ち、4C+37.11はかつて複数の銀河が集合していた “銀河団の化石” であると見なすことができます。

4C+37.11のブラックホール連星は、少なくとも30億年間にわたって距離が縮まっていないと推定されています。この後もずっと停滞したままなのか、それとも数百万年後(天文学的には一瞬で)に合体するのかは分かっていません。4C+37.11が “銀河団の化石” であることを考慮すると、物質の追加による動的摩擦の再開は期待できそうにありません (※)。

Surti氏らは、4C+37.11の中心部の様子を追加で観測し、ガスなどの物質がどの程度存在しているのかを調査することを予定しています。4C+37.11のより詳細な環境が分かれば、ブラックホール連星が合体しうるかどうかを突き止めたり、ファイナルパーセク問題を克服したりする上で重要な手掛かりが得られるかもしれません。

※…ファイナルパーセク問題の解決案として、別の超大質量ブラックホールやガスなどの物質が追加されて動的摩擦が再開するというプロセスが提唱されています。しかし、このようなプロセスは銀河同士の合体で生じるものですが、4C+37.11は既に銀河同士の合体が完了して孤立しているため、そのような出来事は期待できません


Source
Tirth Surti, et al. “The Central Kinematics and Black Hole Mass of 4C+37.11”. (The Astrophysical Journal)

2024年3月30日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

初期宇宙の巨大ブラックホール

Posted by moonrainbow on 17.2024 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
初期宇宙の巨大ブラックホールは成長が止まりがち

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SMBHの成長
超大質量ブラックホール(SMBH)の成長を示したイラスト。SMBHは周囲の物質を飲み込む際に「降着円盤」を作り、ここからX線などが放射される。さかんに物質を取り込んで成長するSMBHはX線を強く出し、クエーサーなどの活動銀河核として観測される。SMBHの成長率が小さい普通の銀河では、X線はあまり放射されない。画像クリックで表示拡大(提供:東京大学プレスリリース、以下同)

約122億年以上前の銀河のX線画像から、この時代の銀河と中心ブラックホールの成長率が求められた。銀河に比べて中心ブラックホールはほぼ成長しない状態だったようだ

現在の宇宙では、銀河の中心に存在する「超大質量ブラックホール(SuperMasive Black Hole)」とその母銀河の間に、「銀河の質量が重いほどSMBHの質量も重い」という、ほぼ正比例の関係(マゴリアン関係)がある。これは、SMBHと母銀河が互いに影響しあって「共進化」した結果だと考えられているが、具体的にどんなしくみでこうした関係ができたのかは大きな謎だ

もし過去の宇宙でもこの正比例の関係が見られるなら、銀河とSMBHは長い時代にわたって同じペースで質量を増やしてきたことになる。一方、もし過去の宇宙で正比例の関係が崩れているなら、両者はかなり複雑な進化を経てきたのかもしれない。ここで過去の様子を調べるうえで問題となるのが、過去(=遠方)の宇宙の銀河にあるSMBHは、「クエーサー」のようにきわめて明るい例外を除くとまず地球からは見えないことだ。このため、過去のSMBHの質量を見積もる方法はほぼないのが実情である。

東京大学の松井思引さんを中心とする研究チームは、銀河とSMBHの質量を求める代わりに、両者の質量の「時間変化率」を観測から見積もることを考えた。

マゴリアン関係でSMBHの質量に正比例している「銀河の質量」とは、正確には「銀河を形づくる『楕円体成分』の質量」のことである。渦巻銀河の場合は円盤部分を除いた「バルジ」の質量、楕円銀河の場合には銀河全体の質量がこれに当たる。楕円体の部分にはガスはほとんどなく、恒星たちがその質量を担っている


そこで松井さんたちは、銀河質量の時間変化率とほぼ同じ意味を持つ値として、銀河の「星形成率」(1年間に生まれる新たな星の総質量)を使うことにした。銀河の星形成率は、紫外線や赤外線で銀河を観測すれば容易に求められる。

一方、SMBH質量の時間変化率は、その銀河をX線で見たときの明るさから推定できる。SMBHに引き寄せられた物質は高温の降着円盤を作り、X線を放射するため、急速に物質を取り込んで急成長するSMBHほど強いX線を出すのだ


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銀河とSMBHの質量
(左)現在の宇宙での様々な銀河の質量(赤:渦巻銀河のバルジの質量、黒:楕円銀河の質量)と、その中心にあるSMBHの質量を描いたグラフ。重い銀河ほどSMBHも重いという比例関係(マゴリアン関係)が見られる。(右)銀河とSMBHの質量の時間変化率を描いた概念図。過去の銀河とSMBHの質量増加率をプロットしたとき、中央の右上がりの直線上に集まれば過去の宇宙でも双方は比例関係にあったことになる。左上に集まる場合はSMBHの成長の方が銀河より早く、右下に集まる場合は銀河の成長の方がSMBHより早い。画像クリックで表示拡大

ただし、100億光年を超えるような遠方になると、クエーサーなどでない「普通の銀河」のSMBHが出すX線は非常に弱く、観測できない。そのため、松井さんたちは「X線スタッキング」という手法を使った。これは、ほぼ同じ距離にあるたくさんの銀河のX線画像を重ね合わせて、銀河たちの「平均的な」X線像を作り出すものだ。こうすることで画像のノイズが減り、淡いX線の像が浮かび上がってくる。

松井さんたちは「チャンドラX線天文台」のサーベイ観測データを使い、赤方偏移zがおよそ4から7(122億~130億年前)の時代にある約1万2000個の銀河について、zや見かけの明るさごとに銀河をグループ分けしてX線画像を重ね合わせ、平均的なX線像を求めた。

解析の結果、いずれのグループでも予想以上にX線は弱く、合成後の画像からX線成分を検出することはできなかった。この結果から、SMBHの質量増加率の「上限値」を求めて銀河の星形成率と比べたところ、どの時代・明るさについても、SMBHの質量増加率は「正比例の関係」が成り立つのに必要な値の1割以下しかないことがわかった


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銀河とSMBHの質量増加率
今回の解析方法の説明図。(左)122億年前の一般的な銀河を撮影したX線画像の例。各画像の中央に銀河がいるはずだが、一般の銀河はX線ではほとんど写らない。(右上)これらの画像を見かけの明るさごとにグループ化し、多数の銀河のX線画像を重ねる「X線スタッキング」でS/N比を向上させる。(右下)右上の合成後の画像から求めたSMBHの質量増加率の上限値をグラフにプロットしたもの。いずれのグループもX線は検出されず、SMBHの質量増加率の上限値は、比例関係を示す直線の1割以下にとどまった。

つまり、122億~130億年前の宇宙では、銀河とSMBHは同じペースでは全く成長しておらず、銀河の方はさかんに星を生み出して成長しているのに、SMBHの方はほとんど成長が止まっていたようなのだ。

言い換えれば、現在の銀河とSMBHにマゴリアン関係が存在するためには、過去のあるタイミングで銀河がSMBHを急成長させる時期がなければならない。この結果は、銀河とSMBHの単純な共進化モデルに修正を迫るものだ


2024年3月15日
AstroArtsより

最も重い巨大ブラックホール連星を発見

Posted by moonrainbow on 13.2024 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
最も重い巨大ブラックホール連星を発見

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SMBH連星
2個の超大質量ブラックホールからなる連星を描いたイラスト。SMBH連星の合体は長年予言されているが、観測例はない(提供:NOIRLab/NSF/AURA/J. daSilva/M. Zamani)

楕円銀河の中心にある巨大ブラックホール連星の質量が、周囲の恒星の運動から求められた。質量がわかった巨大ブラックホール連星としては最も重いものだ

「超大質量ブラックホール(Supermassive Black Hole; SMBH)」を持つ2つの銀河が衝突・合体すると、中心のSMBH同士も連星となり、最終的には合体するはずだ。銀河が衝突合体するとき、SMBH同士は正面衝突するのではなく、互いに接近してはすれ違う「二体散乱」を繰り返す。この二体散乱が起こる際に別の恒星も同時に接近する「三体相互作用」が起こると、恒星はSMBH連星から運動エネルギーをもらってはじき飛ばされ、2個のSMBHは位置エネルギーを失って間隔が近づく。これを「スリングショット(パチンコ効果)」という。

SMBH連星がスリングショットを繰り返して間隔が数光年まで近づくと重力波を放出し、最後には合体する。恒星質量ブラックホールの連星では、2015年以来、重力波望遠鏡によってこうした合体が観測されているが、SMBH連星ではまだ観測例はない。そのため、SMBH連星が本当に合体するのかについては長年議論が続いている。

米・スタンフォード大学のTirth Surtiさんたちのグループは、米・ハワイの「ジェミニ北望遠鏡」の多天体分光計(GMOS)で過去に観測されたデータから、ペルセウス座の方向約8億光年の距離にある楕円銀河「B2 0402+379」(4C +37.11)のSMBH連星に注目した。このペアは2個のSMBHがわずか24光年しか離れておらず、ブラックホール同士の間隔が直接測定されたSMBH連星としては最も接近した天体だ。


これまでの研究で、B2 0402+379のSMBH連星はなぜか過去30億年間にもわたってこの間隔を保ったまま、合体していないことが知られている。そこで、研究チームはGMOSのデータからSMBH連星の周囲にある恒星の速度を見積もった。「GMOSの素晴らしい感度のおかげで、恒星が銀河中心へ近づくにつれて速度が上がる様子をとらえることができ、2個のブラックホールの合計質量を求めることができました」(スタンフォード大学 Roger Romaniさん)。

解析の結果、このSMBH連星の合計質量は太陽質量の約280億倍と見積もられた。この値は過去に測定されたSMBH連星の質量としては最大だ。

これまでの研究から、B2 0402+379のSMBH連星は数回の銀河合体を経ているとみられている。その理由は、この母銀河が「銀河団の化石」らしいという点だ。つまり、1個の銀河団が持つ星とガスの大半が合体して1個の巨大楕円銀河になったという天体なのだ。しかも、SMBHが2個存在し、合計質量がこれほど大きいことから、複数の銀河にあった複数個のSMBHが何段階も合体してここまで成長したことがうかがえる。

今回求められた質量の大きさからみて、このSMBH連星の軌道をここまで接近させるには莫大な数の恒星が必要だったと研究チームは考えている。2個のSMBHがこの距離になるまでの間に、SMBHは周囲の物質をスリングショットでほぼ全てはじき飛ばし、銀河中心部から星やガスを一掃してしまう。その結果、SMBH連星をこれ以上近づけるのに必要な物質がもう周りに存在せず、現在の軌道にとどまっているというのだ。

「もっと軽いブラックホール連星を持つ銀河であれば、すばやく合体できるほどの十分な星や質量が周囲にあると思われます。今回のペアは非常に重いので、合体させるには大量の星とガスが周りに必要ですが、銀河中心部から物質をなくしてしまったために現在の軌道を保っていて、私たちの研究対象になったというわけです」(Romaniさん)。

もしこのSMBH連星が合体すれば、放射される重力波は恒星質量ブラックホール連星の重力波より数億倍も強いものになるだろう。だが、このペアが停滞を乗り越えて数百万年後に合体するのか、あるいは永遠に今の軌道にとらわれ続けるのかについてはまだわからない。

もし母銀河が別の銀河とさらに衝突合体すれば、追加の物質と3個目のブラックホールが供給されてSMBH連星の軌道がさらに近づき、「最後の距離」を征服できるだろう。だが、この母銀河が“銀河団の化石”状態であることを考えると、他の銀河と合体することはありそうにない。

「B2 0402+379の中心核をさらに追跡調査して、どれくらいのガスが存在するのかを調べるのを楽しみにしています。それによって、このSMBHたちが合体するのか、連星でい続けるのかを知る、さらなる手がかりが得られるでしょう」(Surtiさん


2024年3月8日
AstroArtsより

超大質量ブラックホール周辺のプラズマガス

Posted by moonrainbow on 09.2024 ブラック・ホール   0 comments   0 trackback
超大質量ブラックホールの周りに隠れていたプラズマガスの2つのリング

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活動銀河核の想像図。中心領域に超大質量ブラックホールが存在し、その周囲を明るく輝く降着円盤が取り巻いている(提供:S. Nagoshi et al.)

観測史上最大規模の明るさ変動を示した活動銀河核の研究から、超大質量ブラックホール周辺のプラズマガスが2つのリング状に分布し、それぞれの性質が異なることが明らかになった

多くの銀河の中心には、太陽の数百万倍から数十億倍にも達する質量を持つ超大質量ブラックホールが存在する。その周囲にはブラックホールの重力に引かれたガスが集まり、降着円盤と呼ばれる構造を形成している。一部の降着円盤は非常に明るく輝いていて「活動銀河核」として観測されるが、その構造については大まかに推定されるにとどまっていて、ガスの詳細な構造や速度はよくわかっていない

活動銀河核の内部を詳細に観測するには、観測の角度分解能(解像度、視力)を上げるか、複数回観測を行って時間分解能を上げる必要がある。このうち角度分解能を上げる手法としては、史上初のブラックホールシャドウの撮像に成功した「イベント・ホライズン・テレスコープ」のように世界中の電波望遠鏡の連携が活発に利用されている。しかし、当然ながら電波望遠鏡による観測では、電波を発しない構造の大部分を見ることはできない。

京都大学の名越俊平さんたちの研究チームは、プラズマガスが強く観測される可視光線の波長で時間分解能を上げた観測を行い、活動銀河核の空間的な構造を復元するという手法を用いた研究を行った。

活動銀河核の中には、急激に質量を獲得している状態と緩やかに質量を獲得している状態とを遷移するような現象(状態遷移現象)を示す天体がある。こうした天体は、質量獲得の効率が変動すると同時に周囲に放射する光の強度も変動し、その変動が周辺の構造へ影響を及ぼすことがある。名越さんたちはそのような活動銀河核の一つである、りょうけん座の「SDSS J125809.31+351943.0」を観測対象に選んだ。この天体は過去約30年間に約4等級も明るさが変動した、観測史上最大規模の状態遷移現象を起こした活動銀河核だ。

研究チームは構造を詳細に推定するために、「反響マッピング」と呼ばれる手法を用いた。プラズマガスは降着円盤からの光によってエネルギーを獲得してプラズマ状態となっているため、降着円盤からの光の強度変化に対して時間差で追従するように強度が変化する。この時間差を光の伝搬時間として、降着円盤からプラズマガスまでの距離を推定できる。名越さんたちは降着円盤からの光とプラズマガスからの光の波長が異なることを利用し、京都大学岡山天文台「せいめい望遠鏡」でのモニター分光観測などによる多波長の時系列データから研究を行った


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反響マッピングの概念図。ガスが降着円盤の放つ光エネルギーを受けてプラズマ状態となり特定の波長の光を放射する。降着円盤とプラズマガス、それぞれの明るさの変化を記録すると同じ上昇下降パターンとタイムラグが見られ、そのタイムラグを光路差と解釈することで、元の構造を推定できる(提供:京都大学リリース)

その結果、従来の考えとは異なるプラズマガスの分布が明らかになった。これまで、ブラックホール中心付近のプラズマガスは降着円盤の放射を受けやすい領域にひとかたまりで分布していると考えられていた。しかし今回、降着円盤からの高エネルギー照射の影響を受けやすい比較的低速なプラズマ領域が内側に、影響を受けにくい比較的高速なプラズマ領域が外側に、それぞれリング状となって分布していることが初めて明らかになった

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推定される中心構造。(左)超大質量ブラックホールからのおおよその距離を横軸に示し、ブラックホールを中心に軸対象な分布を表したもの。(右)各領域と活動銀河核の想像図との対応を示したもの。中心部分に超大質量ブラックホールがあり、内側から降着円盤、プラズマガス、分子ガスや塵が分布している。今回、降着円盤からの高エネルギー照射の影響を受けやすく比較的低速なプラズマ領域(1)と、影響を受けにくく比較的高速なプラズマ領域(2)の2か所にプラズマガスがリング状に分布していることが明らかになった(提供:S. Nagoshi et al.)

今回明らかになった現象が活動銀河核で一般的なのか、それとも特定の天体に限られるものなのかは、今回の研究範囲からは判断できない。今後の研究で事例が増え理解が進むことが期待される

2024年3月5日
AstroArtsより
 

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