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中性子星衝突

Posted by moonrainbow on 25.2023 中性子星    0 comments   0 trackback
中性子星衝突イベントの「早期警報システム」は構築可能 最大1分前に情報発信

中性子星の合体
【▲ 図1: 中性子星の合体では強力な重力波が生じるが、合体の前でも重力波は発生している。これを捉えれば合体を事前に予測できることになるが、その信号強度は弱すぎて、通常はノイズと区別がつかない(Credit: NASA / R. Hurt / Caltech-JPL)】

重い恒星が寿命の最期に残す「中性子星」は、全体が1つの原子核であると例えられるほどに超高密度な天体です。このような中性子星同士が衝突すると、その瞬間に1兆℃と推定される超高温・超高圧な状態が生じ、「キロノバ」と呼ばれるエネルギー放出現象が起きます

キロノバでは同時に核反応が高速で進行し、金やウランといった重い元素が生成されます。鉄よりも重い元素は恒星中心部の核融合反応では生成されないと考えられているため、キロノバは重い元素が宇宙に存在する理由の1つであると考えられます。地球や生物にとって鉄より重い元素は重要な構成物の一部であるため、その生成過程には関心が持たれています

中性子星同士が衝突すると、様々な波長の電磁波とともに「重力波」も放出されます。この重力波を捉えることができれば、多くの詳細な情報が明らかになるでしょう。重力波とは、質量を持つ物体が運動することで生じる、光速で移動する時空のさざ波です。恒星並みの質量がコンパクトに圧縮されている高密度な中性子星は重力が強く、衝突する直前には高速で運動しているため、放出される重力波も膨大です。実際、アメリカとヨーロッパの3つの重力波望遠鏡が連携した「LIGO-Virgo」ネットワークは、中性子星同士の合体で生じたとみられる重力波をいくつも捉えています。中性子星同士が合体する瞬間、その衝突点は電磁波が通過できないほど高密度な状態になるため、このような領域の情報を外部に伝えられるのは重力波のみとなります。重力波を捉えることができれば、電磁波では決して捉えることのできない多くの情報が得られるのです。

ただし、中性子星同士の合体において、これまでに電磁波による観測と重力波による観測が連携できた例は過去に1つしかありません。それは2017年8月17日に観測された「GW170817」(※)です。この天文イベントは重力波と電磁波で爆発の様子を捉えることができた貴重な例ですが、各地の天文台の連携が完璧であったとまでは言えません。LIGO-Virgoネットワークは重力波の観測から40分後に最初の通知を世界中の天文台に送信し、4時間半後には大まかな位置を送信しました。しかし、その頃の観測対象は北半球の多くの天文台から見て地平線の下に沈んでしまい、観測不可能となってしまいました。GW170817の発生源が光学的に観測され、うみへび座の銀河「NGC 4993」の中に発生源があるとわかったのは、発生源が再び地平線よりも上に昇った約11時間後のことでした。

※…GW170817は重力波のカタログ名であり、他にも超新星のカタログ名「AT 2017gfo」や、ガンマ線バーストのカタログ名「GRB 170817A」で呼ばれることもあります


今回の研究で考案
【▲ 図2: 今回の研究で考案されている天体同士の合体に関する早期警戒システム。合体前に生じる重力波は弱いため、範囲を狭めることは困難であるが、しかし合体前にある程度の方向を示すことができる(Credit: Ryan Magee, et.al.)】

このような観測期間の空白は、中性子星合体のように急速に進行する天文現象を理解する上で大きな妨げとなります。しかし、中性子星は合体直前にも重力波を放出しているため、これを観測することができれば、合体直前に予測情報を送信する “早期警報システム” を構築できる可能性があります。しかし、従来のシステムでは、そのような重力波信号はソフトウェアに切り捨てられていました。信号の強度があまりにも弱くて普段から存在するノイズと区別がつきにくく、誤報だらけになってしまう可能性があるためです。

カリフォルニア工科大学などの研究チームは、過去の重力波の観測データから、そのようなシステムが構築可能であることを示しました。検証の結果、例えばGW170817のケースでは、中性子星から発せられる合体前の重力波が最大で6分間に渡り検出可能なことが判明しました。

この結果を元に、研究チームは「GstLAL」および「SPIIR」というアルゴリズムが異なる2つのソフトウェアを構築し、早期警戒情報をデータベースに送信できるかどうかを調べるために多くの重力波データを読み込ませました。その結果、GstLALでは82回、SPIIRでは141回の早期警戒情報を送信することができました。最初の信号検出から情報の送信までに要する時間は最大15秒でした。これを元に考えると、平均でも衝突の10秒前、5回に1回程度は衝突の1分前に、天体同士の合体イベントを予測できることになります。これは、衝突前に世界中の天文台に予測を送信し、合体後のなるべく早い段階でその場所が突き止められる可能性を示しています。

重力波の観測体制は、将来的なアップデートが検討されています。例えば、日本に設置された重力波望遠鏡「KAGRA」はLIGO-Virgoネットワークに加わる予定ですし、2027年には全体のアップグレードが検討されています。これらが実現すれば、年間100回もの中性子星合体イベントを観測できる可能性があります。

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また、オーエンズバレー電波天文台の長波長アレイ「OVRO-LWA」や、カリフォルニア工科大学で将来的に設置が予定されている「DSA-2000 (2,000-antenna Deep Synoptic Array)」などの電波望遠鏡は、中性子星合体イベントでの放出が予測されている瞬間的な電波放出を捉えることを計画しています。そのような電波放出は、理論的には衝突の瞬間、あるいは衝突の直前に発生すると推定されています。この現象を捉えるには、あらかじめ電波望遠鏡を合体イベントが起こる方向に向けておく必要がありますが、合体前の重力波をもとに送信された早期警戒情報を利用すれば、それも可能となるでしょう。謎の多い中性子星同士の合体に関する観測体制を更に強化する上で、重力波望遠鏡による合体イベントの早期警報システム実現が期待されます


Ryan Magee, et.al. “First Demonstration of Early Warning Gravitational-wave Alerts”. (The Astrophysical Journal Letters)

2023-03-21
Soraeより

中性子星の合体でレアアースが作られていた

Posted by moonrainbow on 06.2022 中性子星    0 comments   0 trackback
中性子星の合体でレアアースが作られていた

中性子星合体とキロノバ
中性子星合体とキロノバの想像図(提供:東北大学)

中性子星の合体により、レアアースのランタンとセリウムが生成されていることが、観測とシミュレーションを比較することで確認された

地球や生物を構成する元素の多くは、太陽のような恒星の中で核融合反応によって合成されたことがわかっている。だが、通常の核融合では鉄よりも重い金属を作ることができない。そのような重い元素がどこで生成されたかについては議論が続いているが、有力な候補として挙げられているのが中性子星の合体だ。

中性子星は質量の大きな恒星が寿命を迎えた後に残る超高密度な天体だが、2つの中性子星が互いの周りを回る連星を形成し、少しずつ近づいて最後は重力波を出しながら衝突合体することがある。このとき中性子星の一部が放出され、鉄より重い元素を合成すると予想されてきた。また、この現象に伴ってキロノバと呼ばれる爆発的な発光現象が観測されると考えられていた。

2017年8月、中性子星の合体に伴う重力波が初めて検出された。「GW170817」と名付けられたこの重力波の発生源は直後の観測で突き止められ、可視光線と赤外線でキロノバも確認されている。この中性子星合体で理論予想どおりに重元素が合成されているかを調べるため、観測されたキロノバのスペクトルが分析されてきた。

個々の元素は決まった波長の光を吸収する性質があるため、スペクトルの中で暗くなっている波長(吸収線)を調べることによって中性子星合体の際に放出された元素が特定できる。ただし、物質が高速で吹き飛んでいるためドップラー効果で波長がずれてしまい、吸収線を同定するのは難しい。そもそも、鉄より重い元素がどのような吸収線を示すかについてはデータが少ないという問題もある。

これまでに可視光線のスペクトルからストロンチウムが検出されているが、赤外線域にも吸収線らしき特徴が未解明のまま残されていた。そこで、東北大学の土本菜々恵さんたちの研究チームは重元素の吸収線を網羅的に調べた上で、国立天文台の天文学専用スーパーコンピューター「アテルイII」でキロノバの環境を模した数値シミュレーションを行い、そのスペクトルを調べた


キロノバのスペクトル
キロノバのスペクトルと本研究で得られたスペクトル
GW170817に伴うキロノバのスペクトル(灰色)と本研究で計算されたスペクトル(青色)。左の数字は中性子星合体後の日数。破線で吸収線の特徴を、同じ色でそれらの特徴を作る元素名を記載。スペクトルは見やすいように縦軸方向にずらしてある。観測スペクトルの1400nm付近、1800~1900nm付近は地球大気の影響を受けている(提供:Domoto et al.)

その結果、ランタンとセリウムという金属元素がキロノバの赤外線スペクトルに吸収線を作ることがわかった。計算されたスペクトルの特徴は、GW170817に伴うキロノバで観測されたスペクトルとも一致していて、両元素が確かに生成されていたことを示唆する。ランタンとセリウムはともに、レアアース(希土類元素)と呼ばれる工業的に重要な金属元素のグループに属する元素だ。中性子星の合体でレアアースの生成が確認されたのは、初めてのことである。

今後は重力波の観測によってさらに多くの中性子星の合体が見つかることが期待され、今回確立した手法と合わせて元素合成に関する理解が大きく進むだろう


2022年11月2日
AstroArtsより

中性子星の合体が宇宙の「金鉱」だった 

Posted by moonrainbow on 06.2021 中性子星    0 comments   0 trackback
中性子星とブラックホールの合体と比較

連星中性子星
【▲ 新しい研究では、連星中性子星が、現在私たちが目にしている金やプラチナなどの重金属の宇宙的な供給源である可能性が高いことを示唆しています。(Credit: National Science Foundation/LIGO/Sonoma State University/A. Simonnet)】

わたしたちの身体や身の回りの物体、地球を構成している物質はすべて元素からできています。そして、その元素の起源は宇宙にあります

鉄までの軽い元素のほとんどは、星の中心部で作られます。恒星内部の高温により、核融合が促進され、徐々に重い元素が作られていきます。しかし、金やプラチナなどの貴金属を含む重金属(重元素)が、宇宙のどこでどのように作られたのか、まだまだ謎に満ちています。

星が核融合を起こす際には、陽子を融合させて重い元素を作るためのエネルギーが必要になります。星は、水素から鉄までの軽い元素を効率よく生産しています。しかし、陽子の数が26個を超えると(鉄を超えると)、エネルギー的に効率が悪くなります。つまり、金やプラチナのような重い元素を作ろうとすると、陽子を結合させる別の方法が必要になります。

これまで科学者たちは、超新星爆発がその答えになるのではないかと考えてきました。巨大な星が超新星爆発で崩壊するとき、その中心部にある鉄は軽い元素と結合して、より重い元素を生成すると考えられています。

しかし、2017年、アメリカとイタリアにある重力波観測所「LIGO」と「Virgo」が初めて検出した、連星中性子星の合体という有望な候補が確認されました。その合体は閃光を放ち、その閃光には重金属のサインが含まれていました。

合体によってできた金の量は、地球の質量の数倍に相当します。超新星爆発に比べて、重元素の生成には連星中性子星の方が効率的であることが示されたのです。

しかし、中性子星の合体は、中性子星とブラックホールの衝突と比べてみるとどうなるでしょうか? 中性子星とブラックホールの衝突は、LIGOやVirgoで検出されている別のタイプの合体で、重金属の「工場」になる可能性があります。ブラックホールが中性子星を完全に飲み込んでしまう前に、ブラックホールが中性子星を崩壊させて重金属を噴出させることができるのではないかと考えられています。

マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)とニューハンプシャー大学(University of New Hampshire)の研究者が行った新しい研究によると、過去25億年の間に、中性子星とブラックホールの合体よりも、2つの中性子星の衝突である連星中性子星の合体で、より多くの重金属が生成されたと報告しています。

研究チームは、それぞれのタイプの合体が生み出す金やその他の重金属の量を調べることにしました。分析の対象となったのは、LIGOとVirgoがこれまでに検出した2つの連星中性子星の合体と、2つの中性子星とブラックホールの合体です。

研究者たちはまず、それぞれの合体に含まれる各天体の質量と、ブラックホールの回転速度を推定しました。ブラックホールの質量が大きすぎたり、回転速度が遅すぎたりすると、重元素を生成する前に中性子星が飲み込まれてしまうからです。また、中性子星の破壊に対する抵抗力を調べました。抵抗力が強いほど、重元素を生み出す可能性は低くなります。さらに、LIGOやVirgoなどの観測結果から、一方の合体が他方の合体に比べてどのくらいの頻度で起こるかを推定しました。

最後に、研究チームは数値シミュレーションを用いて、天体の質量、回転、破壊の度合い、発生率などの組み合わせを変えた場合に、それぞれの合体が生み出す金やその他の重金属の平均量を計算しました。

連星中性子星の合体では、中性子星とブラックホールの合体に比べて、平均して2~100倍の重金属が生成されることがわかったのです。今回の分析の対象となった4つの合体は、過去25億年以内に起きたものと推定されています。つまり、少なくともこの期間では、中性子星とブラックホールの衝突よりも、連星中性子星の合体によって重元素が多く生成されていたと結論づけることができます。

今後、LIGOとVirgoによる観測が再開されれば、さらに多くの検出が行われ、各合体が重元素を生成する割合の推定値が向上すると期待されています。これにより、遠方にある銀河の年齢を、その銀河に含まれるさまざまな元素の量から推定できるようになるかもしれません。

宇宙の「金鉱」は、新たな天文学的知見の「採掘場」としても期待されているようです。

この研究結果は、2021年10月25日付けで「Astrophysical Journal Letters」誌に掲載されました


Image Credit: National Science Foundation/LIGO/Sonoma State University/A. Simonnet

2021-11-02
Soraeより
 

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