実際の宇宙と観測可能な宇宙 「宇宙」といえば「観測可能な宇宙」を指すことが多い。
宇宙は、直接的な実験法では宇宙のどの部分についても全く何も分からない。
もちろん、宇宙のインフレーションなどの信頼できる多くの理論では、観測可能な宇宙よりもいっそう大きな宇宙が必要になる。観測可能な宇宙の境界面が、実際の宇宙の物理的な境界面とぴったり一致することを示唆する証拠はない(そのような境界面があるとしての話だが)。
両境界面が一致するということはまずないと考えてよい。もし一致するなら、地球が実際の宇宙のちょうど中心にあることになり、宇宙原理に反する。確からしいのは、可視宇宙(≠観測可能な宇宙)内にある銀河が、実際の宇宙の全銀河のごくわずかしか表していないということである。
実際の宇宙が観測可能な宇宙よりも「小さい」ということも、もちろん可能である。
その場合、非常に遠くにあるように見える銀河が、実は近くにある銀河の光が宇宙を一周してくることによって生じた複製像だということもあり得る。
この仮説を実験によってテストするのは、銀河の異なる像がその一生の異なる時代を指すこともあり、結果として全く違うということにもなりかねないため、困難である。
2004年のある論文では、
全宇宙の直径は、24ギガパーセク(780億光年)が下限であると主張されており、その場合、観測可能な宇宙より少しだけ小さいということになる。
この値はWMAPの観測をマッチング・サークル分析したものに基づいている。
WMAP
WMAP で得られた宇宙マイクロ波背景放射の画像多くの二次資料が、これまでにさまざまな可視宇宙の大きさを「報告」している。いくつかを例示する。
137億光年 宇宙の年齢は約137億歳である。
光より速く進むものはないということが広く知られている一方で、観測可能な宇宙の半径はゆえに137億光年しかないはずだという誤解も根強い。
この論理は、宇宙が特殊相対論での平らな時空である場合に限って意味をなすものである。
しかし実際の宇宙では、時空連続体は宇宙スケール上でかなり歪んでおり、三次元空間(だいたい平ら)はハッブルの法則で実証されたように、膨張しているわけである。つまり、光速と宇宙時間の積で得られる距離は、いかなる物理的意義をも持たない。
158億光年 この数字も137億光年と同じように得られるが、こちらは有名な一般雑誌が2006年中ごろに、
宇宙の年齢を誤って公表したことによる数字です。
270億光年 これは
半径137億光年という誤解にもとづく、直径である。
780億光年 これは、
宇宙マイクロ波背景放射 (CMBR) の対蹠点間の現在の測定値を基にした、全宇宙の大きさの下限である。
そのため、
CMBRが形成する球体の「直径」を表している。
もし全宇宙がこの球体よりも小さいなら、光はビッグバン以降、球体内を周回するだけの時間があるわけで、CMBRには互いに異なる複数の像を生じ、何重もの円を描くことになる。
Cornish et alは24ギガパーセク(780億光年)までのスケール値でそのような効果を探したが、結局見つからず、もし自分たちの調査が可能な限り全方位に拡張できるのであれば、「われわれの住む宇宙が直径24ギガパーセクより小さいという可能性を排除できる」はずだと示唆している。さらに、「ノイズが少なく、解像度の高いCMB分布図(WMAPの延長ミッションやプランクからのデータ)」があれば、「より小さい円パターンを探し、下限を28ギガパーセクまで拡張できるであろう」とも推定している。
いずれ計画実験で見られるであろうCMBR球体の最大直径は、推定最小値が28ギガパーセクだということになり、半径14ギガパーセクに対応する。これは前節で挙げた数字と一致する。
1560億光年 これは780億光年を半径として、二倍すると得られる。
但し、
780億光年自体が直径なのだから、二倍するのは誤りである。
1800億光年 宇宙の年齢を158億年とした場合の推定値です。
1560億光年を誤って15%増ししても得られる。