宇宙にサルを送り子作りができるかどうかを確かめる実験が行われる
宇宙でサルの交尾実験 つい先日主要な構造が完成した中国の「天宮号宇宙ステーション」に、サルが乗り込むことになるかもしれない。その目的は、サルが宇宙で子供を作れるか確かめることだ。
『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』の報道によると、この生殖実験は天宮最大の実験モジュール「問天」で行われる予定だという。
サルに実験台になってもらうことで、宇宙のような微重力空間で人間が子作りするのが可能なのかを確認したいという。
人間は宇宙で子供を作れるのか? 人間が宇宙で子供を作れるかどうかは、何十年も前から議論されてきた疑問だ。
1992年、ジャン・デービスとマーク・リーは世界で初めて夫婦として国際宇宙ステーションに滞在した。だがNASAが知る限り、宇宙で性交した宇宙飛行士はいないという。
英ノッティンガム大学の生殖・発生生理学者アダム・ワトキンス准教授によると、そもそも宇宙での性行為は想像以上に難しいのだそうだ。2020年の『Physiology News Magazine』への寄稿で彼はこう説明している。
まず無重力下では、お互いに密着しているだけで大変です。さらに宇宙では血圧が低くなるため、勃起や興奮を維持することも地球より難しくなりますまだ不足だというなら、宇宙船ではプライバシーがまったくないと申し上げましょう。宇宙飛行士がこっそり2人だけの時間を過ごす部屋などありません
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冷戦時代、こうした難関を乗り越えて、旧ソ連の科学者たちが数匹のマウスを交尾させることに成功したことがある。
その結果、メス数匹に妊娠の兆候が見られたものの、地球に帰還してから子供は生まれなかった。
子供が生まれなかった理由について、軌道上では地上の何百倍もの宇宙線に長期間さらされるので、精子や卵子がダメになるのではと、その研究チームは推測している。
また、無重力が睾丸などの生殖器官を傷つけ、性ホルモンのレベルを大きく低下させるらしいことを示唆した地上の実験もある。
一方で、もっと楽観的になれるデータもある。国際宇宙ステーションでの長期的な健康診断の結果によると、打ち上げや地球への帰還からしばらくは男性ホルモン「テストステロン」が減少するものの、宇宙での滞在中ほとんどの期間は正常値のままであるそうだ。
また重力の変化や放射線が人間の精子にほとんど影響を与えないこともわかっている。

天宮号宇宙ステーションを再現したCG / image credit:Shujianyang / WIKI commons
まずは宇宙空間でサルのストレスを軽減させることが大切 中国の宇宙ステーション「天宮」の科学研究機器の開発を率いる中国科学院のチャン・ル氏はこう語る。
マウスやマカクザルが宇宙でどのように成長し、子供を作るのか調べる予定です。
こうした実験は、微重力のような宇宙の環境に生物がどう適応するのか、理解を深める手助けになるでしょう
だが、はたしてサルが中国の研究者に協力してくれるかどうかは神のみぞ知る。宇宙という困難な環境だけでなく、サルがその気になってくれない要因ならいくつも考えられるからだ。
たとえば、実験用のサルは檻の中で育てられる。匿名の研修者によると、長期間狭い空間に閉じ込められたサルは、元気がなくなり、毛を抜いたり、食事を拒否したりと、いろいろ問題が生じるのだという。
宇宙ステーションに向かうロケットも、サルにとっては嫌なものだしストレスもたまることだろう。
地上なら、おもちゃや音楽を使ったり、他のサルと遊ばせたりして、パニックになったサルを落ち着かせることもできます
サルをどう面倒見て、安心させておくかは、宇宙飛行士にとって新たな課題でしょう
中国は現在、自国のみで宇宙ステーションを運用する唯一の国だ。
11月1日、最後の主要モジュールである「夢天」がドッキングしたことで、天宮の主要構造は完成した。
3つのモジュールで構成される天宮は、総重量80トンで、最大6人の宇宙飛行士が個室で滞在できる。
国際宇宙ステーションは2030年に引退が予定されているが、その後天宮は地球軌道における人類最大の基地になることが期待されている。
2022年11月08日
カラパイアより