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小惑星で鉱物資源を採掘

Posted by moonrainbow on 02.2023 宇宙への旅   0 comments   0 trackback
小惑星でのレアメタル発見を目指す「AstroForge」の挑戦

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Shutterstock.com

2024年初めに、NASAのアルテミス計画の一環として月に向かうスペースXのロケットが打ち上げられる。そのロケットに相乗りする小さな宇宙探査機は、月よりももっと遠い、到達するまでに約9カ月が必要な小惑星を目指そうとしている

Brokkr-2と呼ばれるこの探査機は、カリフォルニア州のハンティントンビーチを拠点とするスタートアップであるAstroforge(アストロフォージ)が、宇宙での貴重な鉱物資源の採掘を商業化する試みの一環として製作したものだ。同社は先月、探査機を小惑星に運ぶためのロケットの点火試験に成功した。

「このテストは、当社のロケットが宇宙を目指す前に達成しなければならない最後の大きなマイルストーンでした。我々は、世界初の商業的な深宇宙ミッションに挑戦する上での本当に良いポジションにいます」と、アストロフォージの共同創業者でCEOのマット・ジアリッチはフォーブスの取材に語った


小惑星で鉱物資源を採掘するという計画は、まるでSF映画のように聞こえるが、その背後には非常に現実的な理由がある。世界が化石燃料からの脱却を進め、電力への依存度をさらに高めると、より多くの金属が必要になる。しかし、地球の資源は限られており、レアメタルを採掘するのに最適な場所の多くは、すでに掘り尽くされている。

しかし、太陽系の小惑星の多くには、コバルトやニッケル、プラチナなどの未来の産業に必要なレアメタルがぎっしり詰まっており、地球上よりも高濃度で見つかるため、より少量の採掘で多くの金属を手に入れられる。これこそがアストロフォージが開拓を目指す分野なのだ。

宇宙での採掘に挑戦する企業は同社が初めてではない。2010年代初頭には、Deep Space IndustriesとPlanetary Resourcesの2社が合計6000万ドル(約90億円)以上の資金を調達し、大々的な発表を行った。しかし、両社ともその後の10年を待たずに事業を閉鎖した。

ジアリッチはこの2社を強く意識しており、これらの企業の元従業員たちにヒアリングを行ったという。しかし、当時と現在の大きな違いの1つは、スペースXをはじめとする企業が宇宙でのビジネスに関わるコストを劇的に引き下げたことだという。

ジアリッチとともに会社を立ち上げた共同創業者のホセ・アケインによると、10年前なら深宇宙ミッションの実施には数億ドルの費用をかけてロケットを予約する必要があったという。しかし、今では小型の探査機がロケットに相乗りすることが一般化しており、アストロフォージは、Brokkr-2ミッションの総コストを1000万ドル未満と試算している


一度は宇宙業界を離れた2人

2021年に設立されたばかりの同社は、これまで1300万ドルのシード資金を調達したのみで、コスト面の問題は確かに重要だ。しかし、現在の宇宙産業の利点は、10年前とは異なり、既製のシステムを使用可能なエコシステムが整備されていることだ。アストロフォージは今年初めに別の探査機を打ち上げ、軌道上で自社の鉱物精製技術をテストしている。
一度は宇宙業界を離れた2人
37歳のギアリッチと39歳のアケインは、2人とも宇宙工学のバックグラウンドを持っている。アケインはNASAのエイムズ研究センターでインターンをした後、スペースX社で4年間、ファルコン9ロケットと宇宙船であるドラゴンの開発に携わった。

ギアリッチは、ヴァージン・ギャラクティックとヴァージン・オービッで宇宙船のソフトウェア開発チームを管理していた。しかし、2人が出会ったのはともに宇宙業界を離れた後、Eスクーターのレンタル事業を手がけるBird(バード)でいっしょに働いていたときだった。在職中、2人はNASAのジェット推進研究所でのミッションに携わるようスカウトされていたとギアリッチはいう。

しかし、彼らにとって官僚主義的な問題に巻き込まれかねない長期にわたるプロジェクトは退屈に思えたという。その代わりに、2人は自分たちのスタートアップのアストロフォージを立ち上げることにした。

最初の深宇宙ミッションとして、同社はM型小惑星と呼ばれる地球よりも金属の濃度が高いと思われる小惑星をターゲットにしている。しかし、そのミッションは実際に何かを採掘するのではなく、探査機がその近くを飛び、カメラを使ってクレーターやその他の地質構造を探査し、それが事実であることを確認するためのものだ。

そのミッションが成功すれば、同社は小惑星の特徴を明らかにするための別のミッションを立ち上げ、採掘技術を開発し地球への帰還ミッションを計画する。そして最終的には、1~2トン相当の物質を採掘して地球に持ち帰り、販売するのが同社の目標だ。

アストロフォージの創業者たちは、その道のりの一歩一歩がギャンブルであることを認めている。

「当社は、すべてのリソースを投入して、事業を行っています。それは私たちにとって楽しくてエキサイティングなことであり、小惑星の採掘に成功するか、倒産するまで会社を運営し続けるつもりです」と、ギアリッチは語った


2023年10月29日
Forbes JAPANより

増え続ける宇宙旅行者

Posted by moonrainbow on 02.2023 宇宙への旅   0 comments   0 trackback
、6660万円のツアーに800人待ち

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Virgin Galactic

2021年は「宇宙旅行元年」と言われた。弾道飛行による宇宙旅行が2社によって開始され、史上はじめて宇宙旅行者の人数が、プロの宇宙飛行士を超えたからだ。ガガーリンが宇宙に到達した1961年以降、宇宙へ行ったプロの宇宙飛行士は約600人に達するが、2021年からの1年半で、宇宙旅行者はすでに68名にのぼる。これから宇宙旅行ビジネスはどう展開されるのか、もし宇宙へ旅するならどんなツアーがあるのか、各社の現状をレポートしたい

■定期運航がはじまった3分間の無重力体験

米国のヴァージン・ギャラクティック社の宇宙船「スペースシップ2」は、航空機に抱えられた状態で高度15kmまで上昇し、そこから切り離されると同時にロケットエンジンを点火、その推力でいっきに高度80kmまで上昇する。

この日帰り宇宙旅行プランは地球を周回する軌道には乗らず、放物線を描いて地表に戻るため(弾道飛行)、無重力が体験できるのは約4分間。一般的には高度100km以上が宇宙だと認識されているが、米連邦航空局(FAA)は高度80km以上を宇宙の目安としているため、このツアーの参加者は、米国においては宇宙を訪れた「宇宙旅行者」に認定される。

民間人の宇宙旅行を2021年7月にスタートしたスペースシップ2は、これまでに計5回22名の乗客を宇宙へ送り届け、2023年10月にも打ち上げが予定されている。料金は1人45万ドル(6660万円/1ドル148円換算)。過去数年に渡ってエントリー受付をしてきた結果、すでに800人の希望者が順番を待つ状態だ。エントリーは同社HPからエントリーできる。

2021年7月、このスペースシップ2の初フライトのわずか9日後には、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスが率いるブルーオリジン社も、民間人を乗せた初フライトに成功した。

弾道飛行によって打ち上げられる観光宇宙船「ニューシェパード」は、上昇中にカプセルがロケットから切り離されると、カプセルだけが高度100kmを超え、約5分間、無重力が体験できる。切り離されたロケットはフルオートで地上に戻り、再利用される。

はじめての打ち上げでは、座席の一部がオークションに出されたため2800万ドル(31億800万円/1ドル111円換算)の高値が付いたが、通常料金は当時1人20万ドル(2220万円)と報じられていた。しかし、現在は未公表。現在は物価高により値上げされている可能性が高い


■いつまで続く? 弾道飛行による宇宙旅行

宇宙旅行を一気に身近に感じさせてくれたこれら2社ではあるが、昨今においては両社とも少々懸念すべき点がある。

前述したヴァージン・ギャラクティック社は、リチャード・ブランソン氏が率いるヴァージン・グループの一企業。そのグループ会社の1つだった格安航空会社ヴァージン・アトランティック航空は、コロナ禍の影響で2020年に連邦倒産法の適用を申請している。

また、スペースシップ2と同様に、航空機から空中射出される無人ロケットによって、小型衛星を打ち上げるサービスを行っていたヴァージン・オービット社も、2023年4月に連邦倒産法のチャプター11の適用を申請した。

こうした状況のなか、ヴァージン・ギャラクティック社はスペースシップ2の打ち上げペースを速めており、2011年11月には新たな空中射出型の宇宙船「Delta」の製造計画を発表した。タフを標榜するブランソン氏ではあるが、同社の株価も低迷しており、その台所事情はかなり苦しそうだ。

一方、ジェフ・ベゾス氏率いるブルーオリジン社は、NASAからの協力金を受けながら、新型の民間宇宙ステーションや有人月着陸機の開発を進めるなど、そのキャッシュフローは潤沢に思える。しかし、観光宇宙船ニューシェパードは2022年9月に事故を起こし、それ以来、同機の打ち上げは停止中。運行の再開は目途が立っていない。

メインエンジンが制御不能となったこの事故は、ペイロード(積載物)がヒトではなく観測機器だったことから大事には至らず、また、自動帰還するはずのロケット部分は失われたが、上昇中にロケットから緊急離脱したカプセルは無事着陸した。ある意味においてこの事故は、未来の旅行者に安全性をアピールした結果となった。

■宇宙を感じる格安成層圏ツアー

スペースシップ2とニューシェパードは、弾道飛行とはいえロケットエンジンで打ち上げられる。そのため上昇時と下降時には搭乗者に最大3Gほどのストレスが掛かる。そのためどちらに搭乗する際も、事前に2~5日ほどのトレーニングが必要となる。

しかし、英国のスペース・パースペクティブ社の宇宙気球「ネプチューン」は、機内に入るとバーカウンターが並び、ドリンクと軽食のサービスが付き、機内には高速Wi-Fiが飛び、旅客機と同程度のトイレも完備されている。つまり、乗客にはいっさいの負担がかからないまま、高度30kmの成層圏からの眺めが楽しめるのだ。

高度30kmというと低高度に感じるかもしれないが、その領域から視線を上げれば星が瞬き、眼下にはISSから眺めるような丸い地球が感じられる。そこで体感できる景観は、宇宙からの眺めと大きく変わらないという。

このネプチューンの出発地はフロリダの海岸であり、地上基地から2時間かけて高度30kmまで上昇。その高度で2時間漂い、その後2時間かけてゆっくり降下する。この6時間の旅の値段は1人12万5000ドル(1850万円/1ドル148円換算)と超格安。無重力体験さえ諦めれば、もっとも優雅な宇宙体験が楽しめるに違いない。

ネプチューンのチケット販売は、すでに2022年9月から開始されており、2023年にテスト飛行を行い、2024年に運用を開始する予定。すでに日本人の予約も相当数入っていると報じられている。日本における代理店は、旅行大手エイチ・アイ・エスの子会社クオリタ(本社・東京都新宿区)。予約は専用サイトから。クレジットカード払いも利用可能だ。

ちなみにこの9月には、エイチ・アイ・エスの米国法人が、このネプチューンの機体を製造・運用するスペース・パースペクティブ社に出資し、同機チケットの3年におよぶ販売権を獲得した。

スペース・パースペクティブ社は、この成層圏旅行事業に取り組む以前から観測気球を製造してきた企業であり、その安全性はお墨付き。着水したカプセルは専用クルーザーで回収されるが、将来的にはクルーザーから上昇することも検討されている。そうなればフロリダ以外から出発することも可能になるだろう


2023年9月26日
Forbes JAPANより

探査機ボイジャーの旅はまだ続く

Posted by moonrainbow on 16.2023 宇宙への旅   0 comments   0 trackback
探査機ボイジャーの旅はまだ続く…オールトの雲まで300年、シリウスまで約30万年(海外)

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NASA の探査機、ボイジャーのイラスト。

オールトの雲
オールトの雲

ボイジャー1号と2号は、銀河の恒星と恒星の間に広がる「星間空間」を探索し続けている

NASAは1977年、太陽系を横断する5年間のミッションを実施するため、双子の探査機を打ち上げた。

打ち上げから46年近く経った現在も、ボイジャー1号と2号は地球から最も遠い人工物として活動を続けている。

地球から約148 億マイル(約238億km)離れ、探査機ボイジャー1号(Voyager 1)は、「星間物質」、つまり星と星の間の空間である未踏の闇の中を飛行している。ボイジャー1号は、地球から最も遠いところにある人工物体だ。

NASAによると、ボイジャー1号とボイジャー2号の設計寿命は5年だったという。木星、土星、天王星、海王星、およびそれらの衛星を間近で調査するために1977年に16日違いで打ち上げられた。

ミッション開始から約46年、ボイジャー1号と2号はともにヘリオポーズ(Heliopause)として知られる太陽圏の境界を果敢に越え、歴史にその名を刻んでいる。

ボイジャーたちは、今も太陽系の彼方からデータを送り続けている。一時的な通信の中断は何度かあったものの、2機の宇宙の旅はまだ終わっていない。

ボイジャー1号は300年後にオールトの雲、ボイジャー2号は29万6000年後にシリウスに到達する
ボイジャーが2030年まで稼働し続けることを目標にした継続的な電力管理の取り組みの一環として、NASAのエンジニアは、飛行の維持に不可欠ではないヒーターなどの一部システムの電源を落としている。

それでも、ボイジャーはいずれ、地球との通信能力を失ってしまう可能性が高い。しかし、NASAが観測機器を停止してボイジャーのミッションを終了させた後も、双子の探査機は星間空間を漂い続けるだろう


2023年8月12日
BUSINESS INSIDER JAPANより

惑星探査機ボイジャー2号と通信再開

Posted by moonrainbow on 10.2023 宇宙への旅   0 comments   0 trackback
NASA、中断していた惑星探査機ボイジャー2号との通信再開に成功

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深宇宙を飛行する惑星探査機ボイジャーの想像図

アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は現地時間8月4日付で、中断していたNASAの惑星探査機「ボイジャー2号(Voyager 2)」との通信が回復したことを明らかにしました。ボイジャー2号は正常に動作しており、観測機器で得られた科学データや探査機自身の状態を示すデータの送信が再開され始めたということです。【2023年8月5日10時】

JPLの7月28日付の発表によると、2023年7月21日にボイジャー2号へ一連のコマンドが送信された際、不注意によりボイジャー2号のアンテナが地球から2度ずれた方向に向けられた結果、NASAの深宇宙通信網(ディープスペースネットワーク、DSN)のアンテナとボイジャー2号の間で行われていた通信が送信・受信ともに中断してしまいました。

8月1日付の情報更新ではボイジャー2号からの搬送波(情報の伝送に用いられる基本的な波のこと。キャリア波、キャリアとも)を検出したことが明らかにされたものの、信号が微弱すぎるためにデータを読み取ることはできていませんでした。ボイジャー2号はアンテナを地球に正しく向け続けるため毎年何度か姿勢をリセットするようにプログラムされており、次のリセットが実行される2023年10月15日まで通信を再開できない可能性もありました。

8月4日付の情報更新によると、ディープスペースネットワークのキャンベラ深宇宙通信施設(オーストラリア)にあるアンテナ「DSS 43(Deep Space Station 43)」からボイジャー2号に向けて、アンテナの向きを地球の方向へ戻すためのコマンドが送信されました。現在ボイジャー2号は地球から約199億km離れたところを飛行しており、通信には片道だけでも約18時間30分かかります。うまく行かない可能性もある試みでしたが、送信から約37時間後の日本時間2023年8月4日13時29分、DSS 43がボイジャー2号から送られてきたデータを受信したことで、通信の再確立が確認されました。

1977年8月に打ち上げられたボイジャー2号は、木星・土星・天王星・海王星の接近探査を行った後、同型機のボイジャー1号に続いて太陽圏を脱出して星間空間に到達し、貴重な観測データを取得し続けています。動力源として搭載されている放射性同位体熱電気転換器(Radioisotope Thermoelectric Generator:RTG、原子力電池の一種)の発電量が低下し続けているので、いつかは終了することになりますが、2023年8月で46周年を迎えるボイジャー2号のミッションはまだまだ続くことになりそうです


Source
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
NASA/JPL - NASA Mission Update: Voyager 2 Communications Pause

23023年8月5日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

深宇宙探査

Posted by moonrainbow on 10.2023 宇宙への旅   0 comments   0 trackback
深宇宙探査の鍵を握る技術? “人工光合成”の実現可能性を探る研究

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1970年代にスタンフォード大学が設計したトーラス型スペースコロニーの内部の様子をアーティストが描いた想像図

酸素が人間の生存に必要不可欠であることは言うまでもありません。地球の大気中に酸素が存在することを私たちは当然のように捉えがちですが、二十数億年以上前に出現したシアノバクテリアが「光合成」で生成するまで、大気中の酸素はほとんど存在しなかったと考えられています

光合成とは、光エネルギーを使って水と二酸化炭素から炭水化物を合成する光化学反応のことで、酸素はその副産物として生成されます。しかしながら、光合成のプロセスが完全に解明されているわけではありません。

長期間にわたる深宇宙探査や宇宙旅行、さらにはスペースコロニーの建設といった今後の宇宙開発の進展にあわせるように、酸素の重要性はさらに増していくものと考えられます。例えば、地球から火星へ旅行するには往復2~3年ほどかかりますが、宇宙船に積み込めるペイロード(搭載物)の制約から、持ち運べる酸素の量は制限されます。

国際宇宙ステーション(ISS)では、ソーラーパネルから供給された電気を使って水を「電気分解」することで一部の酸素を得ています。また、宇宙飛行士が吐きだした二酸化炭素を水とメタンに変換する装置も稼働しています。

しかし、これらの技術は信頼性がまだ低く、効率が非常に悪い上にメンテナンスにも手間がかかると言います。酸素を生成するプロセスでは、ISSの「環境制御・生命維持システム(ECLSS)」で使用される全エネルギーの3分の1が必要だとされています。

そこで考え出されたのが「人工光合成」という発想です。自然界で行われている光合成のプロセスを、人工的な装置で代替しようというのです。

この度、ウォーリック大学(University of Warwick)のカタリーナ・ブリンカート(Katharina Brinkert)氏ら3名の研究者は、人工光合成の技術的な実現可能性を検討し、装置の性能を評価する論文を発表しました。

研究チームによれば、人工光合成装置を用いることで、酸素を運搬する際の重量やスペースの制限を回避できる可能性があります。また、自然の光合成と同じプロセスになる人工光合成では、太陽エネルギーを使って水と二酸化炭素から酸素を生成すると同時に、二酸化炭素をリサイクルすることになります。ISSで例えれば異なる役割を担う2つの装置が1つに統合されることになりますし、触媒の使用により化学反応がスピードアップするので効率的です。さらに、メンテナンスにかける労力も軽減されるといいます。

自然界の光合成ではクロロフィルと呼ばれる物質が光の吸収を担っていますが、この人工光合成装置では金属触媒をコーティングできる半導体材料の使用が想定されています。太陽光を集める大きな鏡を使用して反応を促進すれば、ISSで稼働しているような生命維持システムの補完(エネルギーの節約)にも役立つ可能性があります。

近年、月の土壌であるレゴリスから直接酸素を取り出す研究も進められていますが、そのためにはレゴリスを高温で加熱する必要があります(※)。一方、人工光合成装置は火星や月の居住施設内で室温・常圧の環境で作動できます。つまり、人工光合成装置であれば、水を主な資源として地球外の居住施設で直接使用できることになります。将来の月面探査で想定されている月の南極付近のクレーターには水の氷が埋蔵されていると推定されており、この装置を使用する上で興味深いことです。

※…マイクロ波を使えば加熱する場合よりも効率的に取り出せるとする研究成果も最近発表されています。

火星の大気は主に二酸化炭素で構成されているため、人工光合成装置を利用するのに理想的な場所のように思われます。ただし、火星は地球と比べて太陽から遠いため、太陽光が弱くなります。ところが、実際に太陽光の強度を計算してみると、鏡で太陽光を集光すれば、火星でも使用できる可能性が示されたということです。

2020年に打ち上げられて2021年に火星に着陸したアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」には、二酸化炭素から酸素を生成する「MOXIE(Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment:火星酸素現場資源活用実験、モクシー)」と呼ばれる装置が搭載されています。しかし、この装置は高温(800℃)で作動させる必要があるため、酸素の生成時にはそれなりのエネルギーを消費します。人間が生活するのと同じ環境で、太陽光さえ集めれば酸素を生成できるとなれば、人工光合成装置への期待は高まります


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火星探査車「Perseverance」に搭載されている酸素生成実験装置「MOXIE」

宇宙船内や地球外の居住施設における、効率的で信頼性の高い酸素の生成と二酸化炭素のリサイクルは、今後の深宇宙探査にとって解決すべき大きな課題です。

既存の電気化学的なプロセスに基づいた装置に代わる人工光合成装置を実現するには、さらに集中的な研究が必要だといいます。将来の実現に向けた可能性は、自然の光合成プロセスの重要な部分をいかにして技術的に模倣するかに掛かっています。将来的には、人工光合成の実現が地球外での生命維持の鍵を握ることになるかもしれません。

本記事は、2023年6月6日付けで「The Conversation」に掲載された「Space colonies: how artificial photosynthesis may be key to sustained life beyond Earth(スペースコロニー:人工光合成が地球外での生命維持の鍵になる可能性)」を元にして再構成したものです。

研究成果の論文は2023年6月6日付けの「Nature Communications」に掲載されています。

Source
Image Credit: Don Davis/NASA

22023年7月4日
sorae より
 

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