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クエーサー3C 273

Posted by moonrainbow on 09.2022 クエーサー   0 comments   0 trackback
灯台もと明るし、見過ごされてきたクエーサー周辺

3C 273
3C 273。(左)ハッブル宇宙望遠鏡の観測。望遠鏡内で散乱した光が放射状に漏れており、右下に中心核から放出されている高エネルギージェットが見えている。(右)アルマ望遠鏡の観測(擬似カラー)。中心の明るい部分は差し引かれている。今回発見された3C 273付近の淡く広がった電波放射は、右下のジェットと比べてもとても弱い(提供:Komugi et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope)

アルマ望遠鏡で観測可能なコントラストを大幅に引き上げる手法により、全天一明るいクエーサー3C 273の周囲に淡い電波放射が初めてとらえられた

おとめ座の方向にある3C 273は、一見恒星のような明るい天体だが、実際には24億光年離れた銀河の明るい中心核だ。その正体は大量の物質を吸い込みながらエネルギーを解放している超大質量ブラックホールである。このような天体はクエーサーと呼ばれるが、3C 273はその中でも特に明るく、電波では灯台のように空の位置の基準として観測されることもある。

一方でこの中心部の明るさに隠れてしまうため、3C 273を宿す銀河(母銀河)全体の姿や周辺部の構造はほとんど観測できていない。とくに、ダイナミックレンジ(明るい部分と暗い部分を同時に検出する能力)が小さくなりがちな電波望遠鏡では観測が困難だった。「灯台もと暗し」ならぬ「灯台もと明るし」だ。

アルマ望遠鏡の場合、精度良く観測できるダイナミックレンジは数百倍程度までとされ、一般的なデジタルカメラ(数千倍)よりもずっと小さい。そこで工学院大学教育推進機構の小麦真也さんたちの研究チームは、電波観測で極めて高いダイナミックレンジを得る手法を開発し、3C 273の母銀河の周囲に淡く広がる電波放射をとらえた


小麦さんたちはまず、3C 273自身の明るさを電波の強さの基準とする自己較正と呼ばれる方法を適用し、さらに電波の周波数や時間変動を細かく補正することによって、天体の電波が周囲に漏れ込んでノイズとなることを極力抑え込んだ。この結果、8万5000倍というダイナミックレンジが実現できた。

クエーサーの周囲で観測される電波放射は、超大質量ブラックホールから噴出するジェットなどで高速に加速された粒子が放つシンクロトロン放射であることが多い。しかし今回見つかった3C 273周辺の電波放射からは、シンクロトロン放射に特徴的な周波数による強度の違いが見られなかった。そこで研究チームでは、今回の電波放射は3C 273からの強烈な光が母銀河の星間ガスを直接照らすことで発生する「熱制動放射」だと結論づけている。活動銀河核に照らされたガスからの熱制動放射が数万光年という広い範囲にわたって見つかるのは初めてだ


巨大銀河の想像図
高エネルギージェットを持つ巨大銀河の想像図(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO))

クエーサーの強力な輝きは、星の材料となる水素ガスを電離させてしまい、銀河における星の形成を妨げるのではないかと指摘されてきた。これを検証するため、従来の研究では可視光線で電離した水素ガスを直接観測する手法が用いられてきた。しかし、電離したガスが可視光線を放出するメカニズムは複雑で、星間空間の塵による光の吸収もあり、電離したガスの量の見積もりは難しかった。

今回観測された熱制動放射は、電波の放出メカニズムがシンプルで、塵による減光もない。そのため、母銀河に存在する電離ガスの量を見積もることが容易となる。小麦さんたちの解析では、3C 273からの光の7%程度以上が母銀河の水素ガスに吸収されていることが明らかになった。それによって発生した電離ガスは、太陽質量の100億~1000億倍もあるが、一方で星形成直前の状態にある水素分子ガスも大量にあり、銀河全体として星の形成が阻害されているようには見えないこともわかった

「本研究はこれまで可視光線観測によって行われてきた研究テーマに対し、電波観測による新手法を提供するものです。今後同様の手法を他のクエーサーにも適用することで、銀河とその中心核がどう互いに影響しあって進化していくのか、理解が進むことが期待されます」(小麦さん)


2022年6月6日
AstroArtsより

クエーサー「PKS 2131-021」

Posted by moonrainbow on 20.2022 クエーサー   0 comments   0 trackback
電波強度が周期的に変化するクエーサー、超大質量ブラックホールの連星が存在する可能性

2つの超大質量ブラックホール
【▲ 2つの超大質量ブラックホールからなる連星の想像図。片方のブラックホールからはジェットが噴出している(Credit: Caltech/R. Hurt (IPAC) )】

測データを分析したカリフォルニア工科大学(Caltech)の学部生Sandra O'Neillさんを筆頭とする研究グループは、「みずがめ座」の方向約88億光年先にあるクエーサー「PKS 2131-021」の半世紀近くに渡る観結果、クエーサーの中心に2つの超大質量ブラックホールからなる連星ブラックホールが存在する可能性を示した研究成果を発表しました

■数億太陽質量のブラックホール2個からなる連星ブラックホールが存在する可能性

銀河のなかには中心部分の狭い領域から強い電磁波を放射する「活動銀河核」(AGN:Active Galactic Nucleus)を持つものがあり、そのなかでも特に明るいものは「クエーサー」(quasar)と呼ばれています。クエーサーを含む活動銀河核の原動力は、質量が数十万~数十億太陽質量(※1太陽質量は太陽1個分の質量)にも達する超大質量ブラックホールだと考えられています。

2008年以降に取得されたクエーサー「PKS 2131-021」の電波での観測データを分析した研究グループは、PKS 2131-021の電波強度が時間とともに正弦波のパターンに沿った周期的な変動を示していることに偶然気が付いたといいます。そこで、研究グループが1970年代後半~80年代初頭に取得されたPKS 2131-021の過去の電波観測データも分析してみたところ、同様の正弦波パターンに沿った電波強度の変動が確認されました。

「最近検出された光度曲線(※)の山と谷が1975年から1983年に観測された山と谷に一致することに気付いた時、私たちはとても特別な何かが起きていると確信しました」(O'Neillさん)

※…時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線、ライトカーブ


電波強度を示した図
【▲ 観測されたPKS 2131-021の電波強度を示した図。1970~80年代(緑)と2008年以降(青)の変動が同じ正弦波パターンに沿っている(Credit: Tony Readhead/Caltech )】

研究グループは電波強度の変動に正弦波パターンが生じる理由について、2つの超大質量ブラックホールが連星を成しているからではないかと考えています。2つのブラックホールが共通重心の周りを公転しているために、ドップラー効果によって電波強度が周期的に変化しているのではないかというわけです。電波は片方のブラックホールから光速にきわめて近い速度で噴出するジェットに由来するものとみられています。

研究グループが注目したのは、変動のパターンが休止期間をまたいでも安定している点でした。PKS 2131-021で検出された正弦波パターンに沿う電波強度の変動は1970年代からずっと継続していたわけではなく、途中で20年ほどの休止期間を挟んでいます。これは超大質量ブラックホールに落下する物質の量が変化したためではないかと考えられています。

研究に参加したカリフォルニア工科大学名誉教授のAnthony Readheadさんは「20年の隔たりを越えた安定性は、このクエーサーが1つの超大質量ブラックホールではなく、互いに周回する2つの超大質量ブラックホールを宿していることを強く示唆しています」と語ります


連星を描いたアニメーション
【▲ 公転する超大質量ブラックホールの連星を描いたアニメーション。片方のブラックホールからはジェットが噴出している(Credit: Caltech/R. Hurt (IPAC) )】

連星をなす2つの超大質量ブラックホールの質量はどちらも数億太陽質量で、約2000天文単位(太陽から冥王星までの距離の約50倍)離れていると推定されています。連星の公転周期は約2年だと考えられていますが、膨張する宇宙を伝わるうちに電磁波の波長が伸びるため、地球では約5年周期の変動として検出されているといいます。

また、2つの超大質量ブラックホールは少しずつ接近しつつあり、約1万年後に合体して重力波を放出すると考えられています(※人類は約88億年前にPKS 2131-021を発した光を捉えていますが、ここでは合体を進行中の事象として表現しています)。これほど重いブラックホールどうしの合体で放出される重力波は周波数が低く、現在稼働しているアメリカの「LIGO」のような重力波望遠鏡では捉えられないものの、低周波の重力波検出を目指す観測手法「パルサータイミングアレイ」を用いて検出できるようになることを研究グループは期待しています。

※記事中の距離は天体が発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています


Image Credit: Caltech/R. Hurt (IPAC)

2022-03-14
Soraeより

重力レンズ効果によって5つに分かれたクエーサーの像

Posted by moonrainbow on 14.2021 クエーサー   0 comments   0 trackback
重力レンズ効果によって5つに分かれたクエーサーの像、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影

クエーサー「2M1310-1714」
【▲ 重力レンズ効果を受けたクエーサー「2M1310-1714」(Credit: ESA/Hubble &; NASA, T. Treu, Acknowledgment: J. Schmidt)】

こちらは「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影した「おとめ座」の一角。縦に並んでぼんやりと光る2つの光点と、それを取り囲むように輝く4つの光点が、画像の中央に見えています。欧州宇宙機関(ESA)によると、4つの光点はもともと「2M1310-1714」と呼ばれる1つのクエーサー(※)で、中央に並んで見える2つの銀河がもたらした「重力レンズ」効果によって像が分裂して見えているのだそうです

重力レンズ効果とは、遠くにある天体の像が手前にある天体の重力によって歪んで見える現象のこと。この場合、約100億光年先にあるクエーサーから発せられた光の進む向きが、地球との間(約30億光年先)に位置する2つの銀河の重力によって曲げられることで、地球からは分裂した像に見えるというわけです。

ESAによると、ハッブルの観測データはクエーサー「2M1310-1714」の像が4つではなく5つに分裂していることを示しているといいます。5つ目の暗い像はちょうど真ん中に位置しているといい、2つの銀河がレンズの役目を果たしたことで生じた珍しい現象だとされています


「アインシュタインの十字架」が生じる仕組み
【▲ 重力レンズ効果によって「アインシュタインの十字架」が生じる仕組み。クエーサー(Quasar)から発せられた光の進む向きが銀河(Galaxy)の重力によって曲げられることで、地球からは分裂した像が観測される(Credit: R. Hurt (IPAC/Caltech)/The GraL Collaboration)】

重力レンズ効果はアルベルト・アインシュタインの一般相対性理論によってその存在が予言されていた現象で、像がリング状に見えるものは「アインシュタインリング」、像が十字を描くように分裂して見えるものは「アインシュタインの十字架」と呼ばれることもあります。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による光学および赤外線の観測データをもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「Seeing Quintuple」としてESAから2021年8月9日付で公開されています


冒頭画像の中央付近を拡大したもの
【▲ 冒頭画像の中央付近を拡大したもの(Credit: ESA/Hubble & NASA, T. Treu, Acknowledgment: J. Schmidt)】

Image Credit: ESA/Hubble & NASA, T. Treu
Acknowledgment: J. Schmidt

2021-08-10
Soraeより

「アインシュタインの十字架(Einstein Cross)」

Posted by moonrainbow on 26.2021 クエーサー   0 comments   0 trackback
重力レンズ効果が生む「アインシュタインの十字架」が一度に12個みつかる

重力レンズ効果によって4つに分裂してみえるクエーサー
【▲ 今回新しくみつかった重力レンズ効果によって4つに分裂してみえるクエーサーの画像。「アインシュタインの十字架」と呼ばれる。(Image Credit:The GraL Collaboration)】

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)は2021年4月7日、ESAの位置天文衛星ガイアのデータを使って、ガイア重力レンズワーキンググループが、重力レンズ効果によって4つに分裂してみえるクエーサー、いわゆる「アインシュタインの十字架(Einstein Cross)」を一度に12個も発見したと発表しました

ほとんどの銀河の中心には超大質量のブラックホールがひそんでいますが、この超大質量ブラックホールが、周りのガスや塵を渦を巻いて吸い込むと、ガスや塵同士の摩擦によって、莫大な熱が発生し、ガスや塵がプラズマ化して、X線から可視光線、電波にいたるまで、さまざまな光(電磁波)で強烈に光り輝きます。これがクエーサー(活動銀河核)です。

クエーサーは宇宙でもっとも明るい天体の1つといわれています。

ところで、このようなクエーサーと私達の地球の間に銀河や銀河団などの重い天体があると、1つのクエーサーがいくつにも分裂してみえることがあります。アインシュタインの一般相対性理論によれば、重い天体の周りでは、時空が曲がるために、あたかも凸レンズがあるかのような効果が生じて、背後にあるクエーサーからの光(電磁波)が複数の経路に別れて、地球に届くためです。これを重力レンズ効果といいます


アインシュタインの十字架
【▲ 重力レンズ効果によってアインシュタインの十字架が生じる仕組みを解りやすく解説したイラスト。(Image Credit:R. Hurt (IPAC/Caltech)/The GraL Collaboration)】

そのうち、1つのクエーサーが4つに分裂してみえるものが、アインシュタインの十字架です。アインシュタインの十字架は、非常に珍しく、1985年に初めて発見されて以来、これまでに50個ほどしかみつかっていません。

研究チームは、まず、ESAの優れた空間解像力を誇る位置天文衛星ガイアの2回目に公開されたデータを特化したAIを使って解析し、アインシュタインの十字架の候補を絞り込みました。そして、その後、NASAの広視野赤外線探査衛星(WISE)のデータを使ってさらに有力な候補を絞り込み、最終的に、アメリカ、ハワイ州にあるケックI望遠鏡などの地上の望遠鏡を使ってフォローアップ観測をおこない、新たに12個ものアインシュタインの十字架を発見しました。

研究チームでは、アインシュタインの十字架のように分裂してみえるクエーサーは、宇宙の誇張率に関するハッブル定数の決定やダークマターの研究などにユニークな研究手段を提供できますが、位置天文衛星ガイアのデータが最終的に公開されれば、このように分裂してみえるクエーサーが数百単位でみつかるのではないかと期待しています


Image Credit:R. Hurt (IPAC/Caltech)/The GraL Collaboration/The GraL Collaboration

2021-04-14
Soraeより

100億年前の二重クエーサー

Posted by moonrainbow on 15.2021 クエーサー   1 comments   0 trackback
最も古い「100億年前の二重クエーサー」一度に2つも発見

合体の途上にある2つのクエーサー
【▲ 合体の途上にある2つのクエーサーの想像図。銀河の合体によりガスを供給され活動を停止していた銀河の中心にある超巨大ブラックホールが活動を再開しクエーサーとなる。(Credit: NASA, ESA, and J. Olmsted (STScI))】

NASAは2021年4月6日、イリノイ大学のユエ・シェンさん率いる研究チームが、NASAのハッブル宇宙望遠鏡を使って、一度に2つの二重クエーサーを発見したと発表しました。これらの二重クエーサーは、100億年前のもので、これまで発見された二重クエーサーのなかで最も古いものになります

ほとんどの銀河の中心には太陽の質量の100万~数十億倍にもなる大質量ブラックホールが存在しています。その周りにあるガスや塵は渦を巻きながらこの超大質量ブラックホーに呑み込まれていくわけですが、このとき、ガスや塵同士の摩擦によって莫大な熱が発生し、ガスや塵がプラズマ化することで、X線、紫外線、可視光線などの強烈な光(電磁波)が発生します。これがクエーサー(活動銀河核)です。

二重クエーサーは、このようなクエーサーがペアになったもので、銀河同士の衝突の際などにあらわれます。銀河同士の衝突によって、それぞれの銀河のガスが、掻き回され、活動を停止していたそれぞれの超巨大ブラックに落ち込むことで、それらが点火(ignite)され、二重クエーサーとして観測されるというわけです。

しかし、このような二重クエーサーをみつけるのはとても難しいです。二重クエーサーは1000個のクエーサーにつき1個ほどしか存在しないと考えられるからです


どのように二重クエーサーを発見した?

では、研究チームはどのようにして一度に2つもの二重クエーサーを発見したのでしょうか?

まず、研究チームは、ヨーロッパ宇宙機関(UAE)の位置天文衛星ガイア などの観測データを使って、全天に散らばる100億年前のたくさんのクエーサーのなかから二重クエーサーの候補を絞り込みました。

このとき研究チームが着目したのはクエーサーの微妙な揺れでした。二重クエーサーは2つのクエーサーからできているために、それぞれの明るさが変化すると、あたかも1つのクエーサーが揺れているように観測されるのです。

研究チームは、鮮明な視野を誇るハッブル宇宙望遠鏡を使った最初の観測で、このようにして絞り込んだ4つの候補のなかから、2つもの二重クエーサーを発見したというわけです


2つの二重クエーサーの画像
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡の鮮明な視野によって撮影された今回発見された2つの二重クエーサーの画像(Credit: NASA, ESA, H. Hwang and N. Zakamska (Johns Hopkins University), and Y. Shen (University of Illinois, Urbana-Champaign))】

研究チームによれば、これらの二重クエーサーは数千万年後には合体を完了し、さらに巨大な超大質量ブラックホールを形成するそうです

Image Credit:NASA, ESA, H. Hwang and N. Zakamska (Johns Hopkins University), and Y. Shen (University of Illinois, Urbana-Champaign)/NASA, ESA, and J. Olmsted (STScI)

2021-04-11
Soraeより
 

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