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クエーサー3C 273から噴き出すジェット

Posted by moonrainbow on 04.2022 クエーサー   0 comments   0 trackback
クエーサーから絞り出されるジェットの根元

3C 273から噴き出すジェット
3C 273から噴き出すジェット。(左)電波観測網GMVA+ALMAがとらえた、根元から数光年の最深部。(中央)もう少し広範囲を電波観測網HSAでとらえた画像。(右側)ハッブル宇宙望遠鏡が可視光線でとらえた3C 273。10万光年以上離れたところに到達したジェットが右下に見えている(提供:Hiroki Okino and Kazunori Akiyama; GMVA+ALMA and HSA images: Okino et al.; HST Image: ESA/Hubble & NASA)

24億光年彼方のクエーサー3C 273から噴き出すジェットの最深部の構造が、国際ミリ波VLBI観測網とアルマ望遠鏡を組み合わせた電波観測網によってとらえられた

ほぼ全ての銀河の中心には、太陽の数百万倍から数十億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが存在するが、一部の銀河ではこのブラックホールに大量のガスが流れ込むことによって莫大なエネルギーが解放されている。そのような銀河では中心核が極めて明るく輝くため、遠方からは恒星のような点光源に見えてしまう。

おとめ座の方向にある電波源3C 273も可視光線では恒星のように見えるが、実は遠く離れた銀河であることが1963年に判明した(現在の推定距離は約24億光年)。それ以来、3C 273のような天体は「クエーサー」と呼ばれている。3C 273は発見が早かっただけでなく、私たちに最も近いクエーサーの一つでもあるため、盛んに観測されてきた。

超大質量ブラックホールへと落ち込んだガスの一部は、光速近くまで加速されて細く絞られたジェット構造を形成する。3C 273にもジェットがあり、長らく研究が続けられてきたが、ジェットの形成過程にはまだ謎が多い。そこで、東京大学の沖野大貴さんたちの研究チームは、高い感度と分解能の電波観測で3C 273のジェットの根元に迫った。「近傍に位置する3C 273は、クエーサーから噴出するジェットを研究する上で最も理想的な天体です。しかしこのような近傍のクエーサーであっても、強力なプラズマ流が形作られる中心部の構造を詳しく見ることはこれまでできませんでした」(沖野さん)。

極めて高い感度と空間分解能を必要とする今回の観測は、大陸をまたいでいくつもの電波望遠鏡が連動するグローバルミリ波VLBIアレイ(GMVA)に、チリのアルマ望遠鏡を組み合わせた「GMVA+ALMA」と呼ばれる観測網によって実現した。これと並行して、欧米の電波観測網である高感度アレイ(HSA)でも観測を行い、より広い撮影範囲でジェットをとらえた


VLBI観測網のイラスト
今回の観測で使用されたVLBI観測網のイラスト。(青)アルマ望遠鏡が初めて参加したグローバルミリ波VLBIアレイ(GMVA)。(黄色)高感度アレイ(HSA)。各ネットワークに参加した望遠鏡を点で、それらを結ぶネットワークを線で可視化している(提供:Kazunori Akiyama)

GMVA+ALMAによる画像では、ジェットの根元に最も近い最深部が初めてとらえられた。その結果、クエーサーから放出されたガスは一度に狭められるのではなく、広範囲にわたって徐々に絞り込まれていることがわかった。絞りこみが起こっている領域は、超大質量ブラックホールの重力が影響する領域を超えてはるか遠方まで続いていた

「非常に活動的なクエーサーにおいて、ジェットの強力なプラズマ流が広範囲にわたって徐々に絞り込まれていたことはとても興味深い発見です。このようなジェットの絞り込みの様子は、近傍のより暗く活動度の低い超大質量ブラックホールでこれまで発見されてきました。活動性の全く異なる超大質量ブラックホールで、なぜ同じようにジェットが絞り込まれるのか、これは今回の観測で新たに浮かび上がった謎です」(米・ヘイスタック天文台 秋山和徳さん)。

今回の成果は、様々な超大質量ブラックホールから噴出するジェットの絞り込み過程の解明に向けて新たな扉を開くものだ。「超大質量ブラックホールから噴き出すジェットの最初の発見から100年以上が経ちましたが、その形成メカニズムは未だに解明されていません。ALMAとGMVAによる今回の観測で形成メカニズムの理解が進展しましたが、将来さらに高い解像度で観測することで、これまで以上に深い理解を目指したいと考えています」(国立天文台 アルマプロジェクト 永井洋さん)


2022年11月28日
AstroArtsより

3つの銀河に囲まれた115億年前のクエーサー

Posted by moonrainbow on 26.2022 クエーサー   0 comments   0 trackback
3つの銀河に囲まれた115億年前のクエーサーをウェッブ宇宙望遠鏡が観測

観測されたクエーサー
【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器(NIRSpec)で観測されたクエーサー「SDSS J165202.64+172852.3」(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, D. Wylezalek, A. Vayner & the Q3D Team)】

こちらは「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡の「近赤外線分光器(NIRSpec)」を使って取得された「ヘルクレス座」のクエーサー「SDSS J165202.64+172852.3」(以下「SDSS J1652+1728」)の画像です。アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、このクエーサーは今から約115億年前の宇宙に存在していました

クエーサー(quasar)は、銀河中心の狭い領域から強い電磁波が放射されている活動銀河核(AGN:Active Galactic Nucleus)の一種で、活動銀河核のなかでも特に明るいタイプを指します。その活動の原動力は、質量が太陽の数十万~数十億倍にも達する超大質量ブラックホールだと考えられています。

一見するととてもカラフルな天体のように思えますが、ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線を主に利用して観測を行うため、公開されている画像の色は人の目で見た場合とは異なります。SDSS J1652+1728の場合、ウェッブ宇宙望遠鏡は2階電離した酸素原子からの光を捉えていて、画像の色は電離した酸素ガスの速度(※)に応じて着色されています。

※…クエーサーに対する視線方向の相対速度。クエーサーと比べて、青は地球へ近づく方向に動いているガス、オレンジや赤は地球から遠ざかる方向に動いているガスで、緑は視線方向の速度がクエーサーと同じガスを示している。地球から遠ざかる方向を正(プラス)とした場合の相対速度は、青:秒速マイナス350km、緑:秒速0km、オレンジ:秒速370km、赤:秒速700km



クエーサー周辺(左上)
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したクエーサー周辺(左上)と、ウェッブ宇宙望遠鏡が観測したクエーサーを取り囲む電離した酸素ガスの視線方向の相対速度ごとの分布(下段)を示した図。冒頭の画像は下段の画像を合成(右上)して作成されている(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; Science: Dominika Wylezalek (ZAH), Andrey Vayner (JHU), Nadia Zakamska (JHU), Q-3D Team; Image Processing: Leah Hustak (STScI) )】

NASAによれば、SDSS J1652+1728は既知のクエーサーのなかで最も強力なものの一つであり、その活動が銀河風(銀河の内部から外部へとガスが流れ出る現象)を引き起こすことで、将来の星形成活動に影響を及ぼす可能性があると考えられてきました。そこで、ハイデルベルク大学の天文学者Dominika Wylezalekさんが率いる研究チームは、天体の光のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さ)を得る分光観測をウェッブ宇宙望遠鏡の視野全体に対して行えるNIRSpecを使って、このクエーサーを取り巻くさまざまなガスの流れや風の動きを調べました。


その結果は驚くべきもので、SDSS J1652+1728は単一の銀河ではなく少なくとも3つの巨大な銀河に囲まれており、クエーサーの周囲で原始銀河団が形成されつつあることがわかったといいます。「これほど早い時代で知られている原始銀河団はほとんどありません。発見するのが難しいことと、ほとんどの場合はビッグバン以降、形成するための時間がなかったからです」(Wylezalekさん)

確認された3つの銀河の動きをもとに、研究チームはこのクエーサー周辺について、初期宇宙の銀河形成における最も高密度な領域のひとつだと確信しています。Wylezalekさんは、暗黒物質(ダークマター)の巨大なハロー(暗黒物質のかたまり)2つが合体しつつある領域を観測している可能性が高いとコメント。研究チームは予想外の発見となったこの原始銀河団を追跡調査する計画を立てており、このように密集し混沌とした銀河団がどのようにして形成されたのか、その中心にある活発な超大質量ブラックホールからどのような影響を受けているのかを理解したいと考えています


クエーサー「SDSS
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したクエーサー「SDSS J165202.64+172852.3」周辺の様子(Credit: ESA/Hubble, NASA, N. Zakamska)】

ウェッブ宇宙望遠鏡が観測したSDSS J1652+1728の画像は、NASA、欧州宇宙機関(ESA)、そしてウェッブ宇宙望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)から2022年10月20日付で公開されています

Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, D. Wylezalek, A. Vayner & the Q3D Team, STScI; Science: Dominika Wylezalek (ZAH), Andrey Vayner (JHU), Nadia Zakamska (JHU), Q-3D Team; Image Processing: Leah Hustak (STScI)

2022-10-22
Soraeより

131億光年の彼方に位置するクエーサー

Posted by moonrainbow on 10.2022 クエーサー   0 comments   0 trackback
宇宙の第一世代の恒星が残した痕跡、発見か

元素がまき散らされる様子
超新星爆発で合成された元素がまき散らされる様子の想像図
第一世代星の超新星爆発で合成された元素がまき散らされる様子の想像図(提供:NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva/Spaceengine、以下同)

131億光年の彼方に位置するクエーサーの元素を調べたところ、太陽の300倍近い質量を持つ宇宙第一世代の星が超新星爆発で作り出したと推定されるような特徴が見られた

ビッグバンから1億年後、宇宙の年齢が現在の1%にも満たないころに、最初の恒星が誕生したと考えられる。これら「第一世代星(種族IIIの星)」はほぼ水素とヘリウムだけでできているはずだが、その特徴を示す天体はいまだ見つかっていない。一方、第一世代星の質量は極めて大きく、すぐに超新星爆発を起こして重元素をまき散らしたと予想されている。

東京大学の吉井譲さんたちの研究チームは、遠方に位置する(初期宇宙の)天体のスペクトルを分析して元素の割合を調べる手法を開発し、第一世代星が残した元素を探した。この手法を、現在知られているクエーサーの中で2番目に遠い131億光年(赤方偏移7.54)の距離に位置するうしかい座の「ULAS J1342+0928」(以降ULAS J1342)に適用したところ、大質量の第一世代星の超新星爆発に由来すると考えられる比率の元素が見つかった


クエーサーとその周囲の想像図
クエーサーとその周囲の想像図

クエーサーは銀河中心の超大質量ブラックホールが大量の物質を飲み込む過程で発生したエネルギーによって輝く天体だ。その光はクエーサーを取り巻く物質など様々な要因によって決まるが、吉井さんたちは他の要因を除外して元素の量を調べる手法を確立している。今回の観測では米・ハワイにある口径8.1mのジェミニ北望遠鏡でULAS J1342のスペクトルを調べ、鉄に対するマグネシウムの割合が極めて小さく太陽の10分の1しかないことを突き止めた。

このような組成は、太陽の150~300倍の質量を持つ第一世代星の超新星爆発でなければ説明できないと研究チームは考えている。これほど重い恒星は対不安定型超新星爆発を起こすと考えられているが、実際に観測されたことはない


天の川銀河のハローの中に第一世代星が残した元素をたどる試みは以前から行われていて、少なくとも1つの星で不確定ながら同定された例はある。それに対して吉井さんたちは、今回の発見は対不安定型超新星の最も明確なサインと考えている。「太陽の約300倍の質量を持つ恒星の対不安定型超新星爆発で供給されるマグネシウムと鉄の割合が、私たちがこのクエーサーで得た低い値と一致することに、喜ぶと同時にいくらか驚いています」(吉井さん)。

本当に第一世代星の痕跡を見つけたのであれば、宇宙における物質がどのようにして、私たちを含む現在の形へ進化したのかを理解する上で役立つ成果だ。ただし、今回の解釈を厳密に検証するために、他の天体が同様の特徴を持つかどうかを確認するために観測を重ねる必要がある。

大質量の第一世代星は絶えて久しいが、それらが残した化学的痕跡は長く残るし、私たちにとって比較的身近なところに今も残されている可能性がある。「私たちが何を探せばいいのか、道筋は示されました。宇宙の極初期の時代に、今私たちがいる付近でも(第一世代星の超新星爆発が)起こったはずなのですが、そうであれば証拠が見つかるはずです」(米・ノートルダム大学 Timothy Beersさん)


2022年10月6日
AstroARTSより

クエーサーの内部構造

Posted by moonrainbow on 01.2022 クエーサー   0 comments   0 trackback
クエーサーの構造を反映する銀河周囲のガスの非等方性

クエーサー自身の光
クエーサー周辺の電離レベルを調べる方法
クエーサー自身の光(A)を観測すると、クエーサーから私たちに向かう方向にある水素ガスの電離レベルがわかる。一方、さらに遠くにある別のクエーサーの光(B)を観測すれば、離れた方向の電離レベルがわかる(提供:信州大学)

クエーサーを取り巻く銀河間ガスは紫外線によって電離しているが、方向によって電離の度合いが異なる。その違いがクエーサーの内部構造を反映していることが示唆された

クエーサーは遠方の宇宙で多く観測される点状の天体であり、その正体は銀河中心核に潜む超大質量ブラックホールの活動だと考えられている。ブラックホールに大量のガスが流れ込むと、降着円盤と呼ばれる構造を形成するが、その中でガスが超高温になり、ときに銀河本体の100倍以上もの明るさになる輝きを生むのだ。

クエーサーが発する紫外線は周囲の水素ガス(中性水素)を電離して陽子と電子に分解してしまうが、その影響は銀河周囲に広がる銀河間ガスにまで及ぶ。中性水素は特定の波長の光を吸収するので、その吸収の強さを観測すれば、特定方向の銀河間ガスがどれだけ電離しているか(あるいは中性水素が残っているか)を判断できる。たとえば、クエーサーの光を調べれば、クエーサーと私たちの間にある視線方向の銀河間ガスの電離度合い(電離レベル)がわかる。

一方、それ以外の方向については、考察対象のクエーサーとほぼ同じ方向でさらに遠くに位置するクエーサーの光を観測すれば良い。クエーサーが全方向に同じだけ紫外線を放射していれば、どちらの場合でも水素は同程度に電離しているはずだ。ところがこれまでの観測によれば、クエーサーと私たちの間にある水素の方が、それ以外の方向の水素ガスより多く電離されていた


信州大学の三澤透さんたちの研究チームは、この違いがクエーサーの構造によるものだと予想した。光り輝く降着円盤の外側には、光を遮る塵がドーナツ状に分布したダストトーラスが存在すると考えられる。これまで調査の対象になったクエーサーが、全て降着円盤の面をこちらに向けていたのであれば、その方向でのみ紫外線が強く、電離レベルが高かったのだと理解できる。

実際、先行研究では「BALクエーサー」と呼ばれる特定のグループが、解析が困難だという理由から調査対象から外されていた。BALクエーサーはスペクトル上に幅の広い吸収線(Broad Absorption Line)を持つのが特徴で、これは降着円盤とほぼ平行に噴き出すガスの流れである「アウトフロー」によると考えられている。つまり、BALクエーサーの降着円盤は私たちから見て横向きであるはずだ


クエーサー中心部の想像図
クエーサー中心部の想像図。(左)クエーサーの発光領域はドーナツ状の遮蔽構造(ダストトーラス)で覆われているため、中心部からの紫外線放射は指向性を持つと考えられている。(右)銀河中心ブラックホールの周囲に明るく輝く円盤(降着円盤)が存在し、そこからメッシュ構造に沿う向きにアウトフローとよばれるガスが放出される。アウトフローは降着円盤に近い角度で放出されると考えられている(提供:信州大学、国立天文台)

三澤さんたちはスローン・デジタル・スカイ・サーベイのクエーサーカタログから12個のBALクエーサーを選び出し、すばる望遠鏡による観測データも加えて、周囲の中性水素ガスの量を調べた。それぞれのBALクエーサーのさらに奥にあるクエーサーを観測したところ、中性水素ガスによる吸収はこれまで観測されたクエーサーの4分の1程度かそれ以下だった。

このことは、BALクエーサーでは私たちの視線とは垂直な方向へ、ダストトーラスに遮られることなく紫外線が発せられていて、中性水素が電離されていることを示している。クエーサー周辺の水素の電離がダストトーラスによって影響を受けているという仮説を裏付けるものだ


BALクエーサーの場合
BALクエーサーの場合、視線方向にダストトーラスがあり、それとは垂直な方向に紫外線が出て水素を電離しているため、奥のクエーサーからの光は中性水素による吸収を受けにくい(提供:信州大学)

クエーサーの標準的なモデルではダストトーラスは不可欠な構造であるとされているが、その存在を観測的に支持する今回の成果は、クエーサーの内部構造を探る上で重要となる

2022年7月27日
AstroArtsより

クエーサー3C 273

Posted by moonrainbow on 09.2022 クエーサー   0 comments   0 trackback
灯台もと明るし、見過ごされてきたクエーサー周辺

3C 273
3C 273。(左)ハッブル宇宙望遠鏡の観測。望遠鏡内で散乱した光が放射状に漏れており、右下に中心核から放出されている高エネルギージェットが見えている。(右)アルマ望遠鏡の観測(擬似カラー)。中心の明るい部分は差し引かれている。今回発見された3C 273付近の淡く広がった電波放射は、右下のジェットと比べてもとても弱い(提供:Komugi et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope)

アルマ望遠鏡で観測可能なコントラストを大幅に引き上げる手法により、全天一明るいクエーサー3C 273の周囲に淡い電波放射が初めてとらえられた

おとめ座の方向にある3C 273は、一見恒星のような明るい天体だが、実際には24億光年離れた銀河の明るい中心核だ。その正体は大量の物質を吸い込みながらエネルギーを解放している超大質量ブラックホールである。このような天体はクエーサーと呼ばれるが、3C 273はその中でも特に明るく、電波では灯台のように空の位置の基準として観測されることもある。

一方でこの中心部の明るさに隠れてしまうため、3C 273を宿す銀河(母銀河)全体の姿や周辺部の構造はほとんど観測できていない。とくに、ダイナミックレンジ(明るい部分と暗い部分を同時に検出する能力)が小さくなりがちな電波望遠鏡では観測が困難だった。「灯台もと暗し」ならぬ「灯台もと明るし」だ。

アルマ望遠鏡の場合、精度良く観測できるダイナミックレンジは数百倍程度までとされ、一般的なデジタルカメラ(数千倍)よりもずっと小さい。そこで工学院大学教育推進機構の小麦真也さんたちの研究チームは、電波観測で極めて高いダイナミックレンジを得る手法を開発し、3C 273の母銀河の周囲に淡く広がる電波放射をとらえた


小麦さんたちはまず、3C 273自身の明るさを電波の強さの基準とする自己較正と呼ばれる方法を適用し、さらに電波の周波数や時間変動を細かく補正することによって、天体の電波が周囲に漏れ込んでノイズとなることを極力抑え込んだ。この結果、8万5000倍というダイナミックレンジが実現できた。

クエーサーの周囲で観測される電波放射は、超大質量ブラックホールから噴出するジェットなどで高速に加速された粒子が放つシンクロトロン放射であることが多い。しかし今回見つかった3C 273周辺の電波放射からは、シンクロトロン放射に特徴的な周波数による強度の違いが見られなかった。そこで研究チームでは、今回の電波放射は3C 273からの強烈な光が母銀河の星間ガスを直接照らすことで発生する「熱制動放射」だと結論づけている。活動銀河核に照らされたガスからの熱制動放射が数万光年という広い範囲にわたって見つかるのは初めてだ


巨大銀河の想像図
高エネルギージェットを持つ巨大銀河の想像図(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO))

クエーサーの強力な輝きは、星の材料となる水素ガスを電離させてしまい、銀河における星の形成を妨げるのではないかと指摘されてきた。これを検証するため、従来の研究では可視光線で電離した水素ガスを直接観測する手法が用いられてきた。しかし、電離したガスが可視光線を放出するメカニズムは複雑で、星間空間の塵による光の吸収もあり、電離したガスの量の見積もりは難しかった。

今回観測された熱制動放射は、電波の放出メカニズムがシンプルで、塵による減光もない。そのため、母銀河に存在する電離ガスの量を見積もることが容易となる。小麦さんたちの解析では、3C 273からの光の7%程度以上が母銀河の水素ガスに吸収されていることが明らかになった。それによって発生した電離ガスは、太陽質量の100億~1000億倍もあるが、一方で星形成直前の状態にある水素分子ガスも大量にあり、銀河全体として星の形成が阻害されているようには見えないこともわかった

「本研究はこれまで可視光線観測によって行われてきた研究テーマに対し、電波観測による新手法を提供するものです。今後同様の手法を他のクエーサーにも適用することで、銀河とその中心核がどう互いに影響しあって進化していくのか、理解が進むことが期待されます」(小麦さん)


2022年6月6日
AstroArtsより
 

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