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レンズ状銀河「NGC 4753」

Posted by moonrainbow on 07.2024 銀河   0 comments   0 trackback
過去の銀河合体を物語るダストレーン “おとめ座”のレンズ状銀河「NGC 4753」

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ジェミニ南望遠鏡で撮影したレンズ状銀河「NGC 4753」

こちらは「おとめ座(乙女座)」の方向約6000万光年先のレンズ状銀河「NGC 4753」です。レンズ状銀河は渦巻銀河と楕円銀河の中間にあたる形態の銀河で、中央部分の膨らみや円盤構造はあるものの、渦巻銀河の特徴である渦巻腕(渦状腕)は持たないとされています

そんなレンズ状銀河のなかでも、NGC 4753は少し特異な姿をしています。淡い輝きに埋め込まれた暗褐色の網のような構造は、塵が豊富なダストレーンです。NGC 4753のダストレーンは明るい中心核を取り囲みつつ、複雑にねじれながら二手に分かれて広がっているように見えます。

今から30年ほど前の1992年、Tom Steiman-Cameronさんを筆頭とする研究チームは、NGC 4753のねじれたダストレーンは現在観測されている姿から約13億年前に矮小銀河と合体したことで形成されたとする研究成果を発表しました。米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)は、そのプロセスを以下のように解説しています。

かつてのNGC 4753は標準的なレンズ状銀河だったものの、ガスが豊富な矮小銀河と合体したことで爆発的な星形成活動が誘発されたこともあり、大量の塵が注入されました。塵は重力によって円盤状に広がり中心核を周回するようになりましたが、その公転軸の向きは歳差運動によって円を描くように変化します。歳差運動の速度は中心に近いほど速くて中心から離れるほど遅い、言い換えれば中心からの距離が異なる場所では塵の公転軸の向きが変化する速度も異なるために、現在観測されているようなねじれたダストレーンが形成されたのではないかというわけです。歳差運動はNGC 4753と矮小銀河が衝突した時の角度に起因するとみられています


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様々な角度から見たNGC 4753のモデル

また、Steiman-Cameronさんたちの研究によれば、NGC 4753のダストレーンも真上から見た形は一般的な渦巻銀河とそう変わらないのではないかと考えられています。NGC 4573がたまたま真横を向けているおかげで私たちはダストレーンのねじれを見ることができていますが、真上からはねじれているようには見えないとすれば“実はねじれている”ダストレーンが他にもあるかもしれず、宇宙全体では珍しくない可能性があるようです。

冒頭の画像はチリのセロ・パチョンにあるジェミニ天文台の「ジェミニ南望遠鏡」を使って撮影されたもので、NOIRLabから2024年1月25日付で公開されました。現在インディアナ大学の上級研究員であるSteiman-Cameronさんは「この銀河をどう捉えるべきか長い間誰にもわかりませんでしたが、蓄積した物質が円盤状に広がるというアイディアからスタートし、三次元形状を分析したことで謎は解けました。30年後の今、ジェミニ南望遠鏡による高精細な画像を見ることができて信じられないほど興奮しています」とコメントを寄せています


Source
NOIRLab - Gemini South Captures Twisted Dusty Disk of NGC 4753, Showcasing the Aftermath of Past Merger

2024年2月7日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

最遠の渦巻銀河の円盤に伝わる震動

Posted by moonrainbow on 24.2024 銀河   0 comments   0 trackback
最遠の渦巻銀河の円盤に伝わる震動を検出

BRI 1335-0417のガス分布、ガスの運動、数値シミュレーションの結果

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(左)BRI 1335-0417のガス分布。(中)円盤に伝わる地震波による小さいスケールのガス運動。青い領域は私たちの方向に近づく運動、赤い領域は遠ざかる運動を示す。黒線は渦巻状のパターンを示す。(右)銀震を再現した数値シミュレーションの結果。似た分布と運動が見られる(提供:(左と中)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Tsukui et al.,(右)Bland-Hawthorn and Tepper-Garcia 2021)

初期宇宙に存在する渦巻銀河内のガスの動きをアルマ望遠鏡で観測したところ、円盤部に銀震が作られていることが明らかになった。外からのガス流入や他の銀河との衝突で生じたとみられ、宇宙初期の銀河成長を理解する手がかりとなる成果だ

宇宙初期の銀河は現在の銀河と比べて星形成が非常に活発だ。おとめ座の方向に位置する観測史上最古の渦巻銀河「BRI 1335-0417」の場合、質量は天の川銀河と同程度だが、星形成速度は数百倍にも達する。こうした高い星形成率は、星の材料であるガスが盛んに銀河に供給されることにより実現されているとみられ、これを調べるためには銀河内のガスの動きや分布を観測研究することが重要となる。

オーストラリア国立大学の津久井崇史さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いてBRI 1335-0417を観測し、近傍の銀河と同程度の詳細さで、銀河内のおよそ70の異なる場所におけるガスの運動を調べた。

津久井さんたちはガス運動の速度データから銀河円盤の大局的な回転運動を差し引くことにより、細かいスケールの微弱な運動を分析した。その結果、細かいスケールでのガスの速度が渦巻状のパターンを示し、ガスの分布が示す渦巻状のパターンと一致した。この特徴は、数値シミュレーションで調べられた銀河円盤内を地震のように垂直に運動する振動波である「銀震」と一致するもので、ガスや他の小さな銀河が円盤に激しく衝突していることを示唆している。銀震のように速度差が小さく空間スケールが小さい運動の測定は難しく、遠方銀河で測定されたのはこれが初めてのことだ


また、ガス分布を調べたところ、円盤に棒状の構造が存在することも明らかになった。棒状構造は天の川銀河など一部の銀河に見られるもので、銀河内のガスを撹乱し中心へと運ぶ役割を果たしている。今回の発見は、これまでに知られている中で最も遠い棒状構造となる。

宇宙初期における渦巻構造は珍しく、その正確な形成シナリオは未だにわかっていない。今回の観測で明らかにされた、最遠方の渦巻銀河における渦巻構造と円盤内の銀震との一致は、外部からのガスの流入や他の小さな銀河との衝突によって振動運動が生じていることや、流入するガスや他の銀河のガスの降着によって銀河の渦巻構造が作り出されたことを強く示唆するものだ。

「天の川銀河でも10億年程度昔に、いて座矮小銀河との相互作用で銀震が引き起こされたことが、近年盛んに議論されています。今回の成果は、120億光年彼方にある大昔の銀河でも同様の現象が引き起こされていたことを発見したものです。おそらく天の川銀河もこのような銀震を何度も繰り返し経験してきたのでしょう」(鹿児島大学天の川銀河研究センター 馬場淳一さん)


2024年1月16日
AstroARTSより

銀河団「MACS J0138.0-2155」と銀河「MRG-M0138」

Posted by moonrainbow on 10.2024 銀河   0 comments   0 trackback
重力レンズで歪んだ銀河の像に超新星が出現 ウェッブ宇宙望遠鏡で観測

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左:ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で観測した銀河団「MACS J0138.0-2155」。右:重力レンズ効果を受けた銀河「MRG-M0138」の像の1つを拡大したもの、2つの丸印は超新星の像が見えている位置を示している

こちら画像、左は「くじら座」の方向約40億光年先の銀河団「MACS J0138.0-2155」、右はその銀河団による重力レンズ効果を受けて像が歪み分裂して見えている約100億光年先の銀河「MRG-M0138」の像の一つを拡大したものです

この画像は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」で2023年12月5日に取得した観測データをもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています。

重力レンズとは、手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間が歪むことで、その向こう側にある天体(光源)から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像が歪んだり拡大して見えたりする現象です。何百億~何千億もの星々の集まりである銀河が何百~何千と集まった銀河団の質量は途方もなく大きいため、地球から見てたまたま銀河団の向こう側に位置する遠方銀河の像はこのように強く歪むことがあります。ウェッブ宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、MRG-M0138の場合は像が5つに分裂もしています


注目は拡大像の丸印で示されたところにある2つの小さな光点です。STScIによれば、これはMRG-M0138で発生した超新星爆発の像であり、重力レンズによって2つに分裂して見えているのだといいます。STScIのJustin Pierelさんを筆頭とする研究チームによると、この超新星は白色矮星が関わる「Ia型超新星」であることが確認されています。研究チームは2023年11月17日にウェッブ宇宙望遠鏡で取得されたMRG-M0138の観測データからこの超新星を偶然発見し、「アンコール(Encore)」と名付けました。

実は、MRG-M0138で超新星が見つかったのは今回が初めてではありません。2019年には別の研究チームが、2016年に「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」で取得されたMRG-M0138の観測データから像が3つに分裂した超新星を発見しています。ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた超新星もまたIa型超新星だったとみられており、「レクイエム(Requiem)」と名付けられました。今回ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で見つかったのは同じ銀河でわずか7年後に観測された超新星だったことから「アンコール」というわけです


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左:ハッブル宇宙望遠鏡で2016年に観測したMRG-M0138。右:ウェッブ宇宙望遠鏡で2023年に観測したMRG-M0138。丸印は超新星の像が見えている位置を示している

次の画像はハッブル宇宙望遠鏡で2016年に観測したMRG-M0138(左)と、ウェッブ宇宙望遠鏡で2023年12月に観測したMRG-M0138(右)を比較したものです。超新星の像の位置は丸印で示されています。

真の明るさが判明している天体や現象は、実際に観測された見かけの明るさと比較することで地球からの距離を求めることができます。このような天体や現象は「標準光源」と呼ばれています。Ia型超新星も真の明るさが一定だと考えられているため、標準光源の一つとして重要視されています。

超新星はもともと明るい現象ですが、MRG-M0138で発生した「レクイエム」や「アンコール」のように重力レンズ効果を受けている場合、より遠方で起きた場合でも観測することが可能になります。宇宙の加速膨張の原因と考えられている暗黒エネルギー(ダークエネルギー)や、銀河の質量の大半を占めているとされる暗黒物質(ダークマター)の性質に迫る機会も得られることから、特に遠方の宇宙で起きたIa型超新星は研究者から注目されています。

Pierelさんによると、「レクイエム」は観測から発見までに時間が経っていたので宇宙の膨張に関する十分なデータを得ることができなかったものの、2030年代半ばに4つ目の像が出現すると予測されています。同じタイミングで放射された超新星の光が重力レンズ効果を受けて進行方向を変化させられると、地球へ届くまでの間に伝わる距離も変化し、長い距離を伝わるようになった光ほど地球に遅れて届くようになるからです。

超新星は通常であればどこで発生するのかわからない現象ですが、「レクイエム」と「アンコール」は遅れて出現する像の発生場所と時期を予測できるという幸運に恵まれました。2035年頃に出現するであろう最後の像を観測することで、宇宙の現在の膨張率を示すハッブル定数の正確な値が新たに算出されるだろうとPierelさんは期待を寄せています。

ウェッブ宇宙望遠鏡で観測したMRG-M0138の画像はSTScIから2023年12月21日付で公開されています。なお、本記事の執筆時に参照したのはSTScIが紹介した進行中の研究内容であり、まだ査読プロセスを経ていない点をご留意下さい


Source
STScI - NASA’s Webb Spots a Second Lensed Supernova in a Distant Galaxy

2024年1月5日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

かみのけ座ストリーム(Giant Coma Stream)

Posted by moonrainbow on 28.2023 銀河   0 comments   0 trackback
長さ約170万光年の恒星の集団「巨大かみのけ座ストリーム」を発見 銀河団内で孤立した恒星ストリームの発見は初

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左上から右下にかけて濃い灰色でハイライトされた細長い恒星の分布が、今回発見された巨大かみのけ座ストリーム

恒星の細長い集団である「恒星ストリーム(Stellar Stream)」は、銀河同士の重力相互作用によって壊れやすいものであると考えられており、これまで近くの銀河以外で発見されたことはありませんでした

フローニンゲン大学のJavier Román氏などの研究チームは、「かみのけ座銀河団」の恒星の分布を探索中、偶然にも恒星ストリームを発見しました。この新たな恒星ストリームは銀河団内で孤立したものとしては初の発見であるだけでなく、長さも約170万光年と観測史上最大であるため、「巨大かみのけ座ストリーム(Giant Coma Stream)」と名付けられました

■恒星の細長い構造「恒星ストリーム」

恒星が多数集合した構造というと真っ先に上がるのは銀河であると思いますが、銀河ではない形態を持つ恒星の集団もあります。その1つが「恒星ストリーム」です。stream(流れ)の名の通り、恒星や水素ガスなどが細長く集合し、まるで一筋の流れであるかのように見えることからその名がつけられています。

恒星ストリームは銀河同士の重力相互作用によって崩壊した矮小銀河や星団を起源にしていると考えられています。このため、恒星ストリームの分布や構造は、銀河の中に含まれる見えない重力源である「暗黒物質(ダークマター)」の量や分布を制約する存在であり、注目されています


一方で、恒星ストリームは重力相互作用によって短期間で壊れてしまうことや、銀河と比べるとはるかに暗いため観測が困難なこともあり、これまでは天の川銀河と近くにあるいくつかの銀河でしか発見されていませんでした

■かみのけ座銀河団を横切る長さ約170万光年の「巨大かみのけ座ストリーム」を発見!

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かみのけ座銀河団における巨大かみのけ座ストリームの位置

Román氏らの研究チームは、地球から約3億光年離れた位置にある「かみのけ座銀河団」の研究を行っていました。かみのけ座銀河団は大規模な銀河団としては比較的近くに存在し、小型の望遠鏡でも十分観察可能なほど明るいため、長年の研究実績があります。Román氏らは、ロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台(スペイン、ラ・パルマ島)に設置された「ウィリアム・ハーシェル望遠鏡」を使用し、銀河の周りにある恒星の量を推定する研究を行うため、恒星の分布を調べていました。

すると思いがけないことに、恒星ストリームのような恒星の細長い集団を銀河の間に発見しました。かみのけ座銀河団ではこれまでに恒星ストリームが2つ発見されていますが、今回発見された恒星ストリームはそれよりも数倍も長く、しかも特定の銀河に関連づいていないように見えるという意外な点が見つかりました。

詳細な分析の結果、この恒星ストリームは長さ約170万光年と、典型的な銀河の10倍以上にもなる観測史上最大の長さであることが分かり、研究チームはその巨大さから「巨大かみのけ座ストリーム」と名付けました。巨大かみのけ座ストリームの推定質量は太陽の約6800万倍であり、これは矮小銀河の分解によって巨大かみのけ座ストリームが生成された可能性を示唆しています


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シミュレーションによる恒星の分布の一例。巨大かみのけ座ストリームに匹敵する長さの恒星ストリームが生じています

銀河が密集している銀河団内では、恒星ストリームは重力相互作用によって短期間で分解してしまうと考えられていたため、これほど長い恒星ストリームが銀河団内に存在するとは意外な発見です。また、巨大かみのけ座ストリームは銀河団内を横切る形で発見された初の恒星ストリームであり、恒星の分布で存在が明らかにされた、面積当たりの明るさが最も暗い恒星ストリームでもあります。

Román氏らはシミュレーションを通じて、巨大かみのけ座ストリームのような恒星ストリームが生成される可能性を、宇宙のモデルとして多用されるΛ-CDM(ラムダ-CDM)を使用して調査しました。その結果、このように巨大な恒星ストリームが生成される可能性は低いものの、あり得なくはないことを示しました。これは、他にも未発見の巨大な恒星ストリームが存在する可能性を示しています


■巨大な恒星ストリームの探索は始まったばかり

Román氏らは、今後観測が開始される「E-ELT(欧州超大型望遠鏡)」や、2023年7月に打ち上げられたばかりのESA (欧州宇宙機関) の宇宙望遠鏡「ユークリッド」の観測データを使用して、巨大かみのけ座ストリームのような恒星ストリームを探索する予定です。

特に注目されるのは、恒星ストリームの長さや分布によって暗黒物質の正体に迫ることです。暗黒物質の分布に関する説の1つとして、銀河の外側に薄く球状に分布しているというものがあります。暗黒物質がこのような分布をしている場合、銀河団を横切る恒星ストリームには穴が空くと考えられるため、長さや分布に影響を及ぼすと考えられます


Source
Javier Román, et al. “A giant thin stellar stream in the Coma Galaxy Cluster”. (Astronomy & Astrophysics)

2023年12月23日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

棒渦巻銀河「ceers-2112」

Posted by moonrainbow on 04.2023 銀河   0 comments   0 trackback
最も遠い “天の川銀河と似た” 棒渦巻銀河「ceers-2112」を発見

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天の川銀河との類似性を連想させるceers-2112の芸術的表現

天の川銀河の中心部は、恒星が棒状にまとまった構造をしています。このような構造を持つ銀河は「棒渦巻銀河」と呼ばれます。棒渦巻銀河の形成には、シミュレーションによると数十億年かかると考えられています

しかしCAB(スペイン宇宙生物学センター)のLuca Costantin氏などの研究チームは、誕生から約21億年しか経っていない宇宙に、棒渦巻銀河「ceers-2112」を「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の観測データから発見しました。分析により、ceers-2112は10億年以内に棒渦巻銀河になった可能性があることから、これは棒渦巻銀河に留まらず、様々な銀河の構造形成過程の理論を書き換える可能性のある発見です

■天の川銀河などの「棒渦巻銀河」はどのように作られたか?

私たちの地球が属する天の川銀河は、全体は渦巻型の円盤構造をしている一方、周りより恒星密度の高い中心部は棒状の構造をしていると考えられています。このような銀河は「棒渦巻銀河」と呼ばれます。全銀河に占める棒渦巻銀河の割合は、近い宇宙では約65%と多数派である一方で、遠い宇宙では約20%まで低下します。宇宙は遠くを観測するほど古い時代を観測するのに等しいため、棒渦巻銀河は時間をかけて複雑な構造が形成されたことを示唆しています。

棒渦巻銀河がどのように形成されるのかについては、長年のシミュレーション研究で少しずつ明らかにされています。過去のシミュレーション研究によれば、中心部の棒状構造はどんなに早くても40億年かかると推定されていました。棒状構造は恒星を生み出す星形成を促進すると考えられているため、棒状構造がどのくらいのスピードで構築されたのかは重要な情報です


■最も遠い棒渦巻銀河「ceers-2112」を発見

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ceers-2112の観測データを様々な方法で分析し画像化したもの。図bの黒線で囲まれた赤い部分が中心部の棒状構造の直接観測した構造であると思われたため、これを確かめるための計算や分析を行った結果、図cの赤い楕円で囲まれた棒状構造が現れました

Costantin氏らの研究チームは、ウェッブ宇宙望遠鏡の深宇宙探査プログラムの1つ「CEERS(Cosmic Evolution Early Release Science)」のデータから、「ceers-2112」とカタログ名がつけられた銀河の分析を行いました。当初ceers-2112は目立った特徴を示すデータが無かったことから、特に注目されていませんでした。

しかしCostantin氏らが、7つの別々の観測データを元に多角的に分析したところ、ceers-2112の中心部には棒状構造がある可能性が高いことを突き止めました。驚くべきはその時代です。ウェッブ宇宙望遠鏡と「ハッブル宇宙望遠鏡」のそれぞれの観測データに基づくと、ceers-2112の赤方偏移の値はz=3.03であり、これは地球から約213億光年離れた位置にあり、今から約117億年前の宇宙に存在していた棒渦巻銀河であることになります。この時代は、宇宙誕生から約21億年しか経っていません。この研究により、ceers-2112は発見された最も遠い棒渦巻銀河となりました (※)。

※…この記事における天体の距離は、光が進んだ宇宙空間が、宇宙の膨張によって引き延ばされたことを考慮した「共動距離」での値です。これに対し、光が進んだ時間を単純に掛け算したものは「光行距離(または光路距離)」と呼ばれます。また、2つの距離の表し方が存在することによる混乱や、距離計算に必要な数値にも様々な解釈が存在するため、論文内で遠方の天体の距離や存在した時代を表すには一般的に「赤方偏移(記号z)」が使用されます。

さらなる観測データの分析により、ceers-2112は宇宙誕生から約12億年後に円盤の形成が始まり、そこから4億年後には中心部の棒状構造が完成したことが示唆されました。これは、棒渦巻銀河が10億年以内のスピードで形成されるという、従来のシミュレーションより数倍も早い形成過程があることになります


■様々な銀河の形成過程に影響を与える発見かもしれない

ceers-2112が存在した時代までに棒渦巻銀河を形成するプロセスは不明のままです。棒渦巻銀河に限らず、様々な銀河の構造の形成や維持には重力が重要であることが分かっており、そして重力源としてはその正体が不明な「暗黒物質(ダークマター)」が大量に存在することも分かっています。今回の研究結果は、初期の宇宙における暗黒物質の量や分布を制限し、棒渦巻銀河に限らず様々な銀河の構造形成過程に影響を与える可能性もあります。

いずれにしても、棒渦巻銀河の棒状構造は、時代をさかのぼるごとにサイズが小さくなり、また見た目の大きさも小さくなります。これまでと比べて異例の感度を持つ宇宙望遠鏡であるウェッブ宇宙望遠鏡の性能が無ければ、このような発見はなかったでしょう。今回の研究結果はceers-2112に留まらず、他の棒渦巻銀河も観測データに隠れている可能性も示しています


Source
Luca Costantin, et al. “A Milky Way-like barred spiral galaxy at a redshift of 3”. (Nature)

2023年11月30日
sorae 宇宙へのポータルサイトより
 

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