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彗星の酸素輝線の起源を解明

Posted by moonrainbow on 29.2022 彗星   0 comments   0 trackback
彗星の酸素輝線の起源を解明

今回の研究のイメージ図
今回の研究のイメージ図。彗星核から放出された水分子が太陽紫外線により光解離することで酸素原子が作られ、この酸素原子が赤または緑のオーロラ輝線を放つ(提供:京都産業大学)

彗星核に含まれる水の量を推定するために使われてきた「酸素原子オーロラ輝線」のメカニズムが再検討され、その起源が従来考えられたものと違うことが判明した

彗星は46億年前に太陽系が形成されたときの情報を保持していると考えられる天体だ。その本体である彗星核は氷と塵からなり、氷は水(H2O)を主成分として、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)などが含まれる。こうした成分の組成比が、太陽系誕生期を知る手がかりとなる。

彗星が太陽に近づくと氷が蒸発し、核を取り巻くコマや伸びる尾を形成する。このとき蒸発した氷の成分は太陽光を受けて、それぞれの分子に対応したエネルギーを吸収し、特定の波長で発光する。つまり、彗星の光を分析すれば核の成分比という重要な情報が得られるのだが、残念ながらH2OやCO2の発光は地球上からはほとんど観測できない。これらの分子は地球の大気にも大量に含まれているからだ。

そこで、彗星に含まれるH2Oの量を推定するために使われるのが、エネルギーの高い酸素原子(O)が発する「酸素原子オーロラ輝線」と呼ばれる光だ。その名のとおり地球の極圏に出現するオーロラにも見られる光であり、緑色と赤色の輝線がある。このO原子は、太陽からの紫外線(波長121.6nmのライマンα)を受けた彗星のH2Oが壊れ(光解離反応と呼ぶ)、余剰エネルギーをもらった水素分子(H2)とO原子に分かれることで生成されるというのが定説だった。そのため、O原子の発光をH2Oの量に結びつけることができたのだ


太陽紫外線
太陽紫外線による水分子の破壊と酸素原子のエネルギー状態
(左)太陽紫外線によるH2O分子に対する光解離反応の模式図、(下)飛び出した酸素原子のエネルギー状態とそれに応じた輝線の発光(提供:京都産業大学リリース)

ところが2000年代になって、酸素原子オーロラ輝線とH2Oの結びつけに疑問を投げかける観測結果が相次いだ。それは赤色輝線と緑色輝線の波長幅の違いである。

赤色輝線を発するO原子よりも、緑色輝線を発するO原子の方が高いエネルギー状態にある。最初にH2Oがライマンαから受けるエネルギー量は同じなので、壊れた後のO原子が緑色輝線を発する状態になれば、それだけ余剰エネルギーは小さい。そして余剰エネルギーはO原子の運動の激しさに転換される。O原子が私たちから見て近づいたり遠ざかったりしながら輝線を発すればドップラー効果が働くので、運動が激しいほど輝線の波長グラフは幅が広くなる。つまり、余剰エネルギーが小さい緑色輝線の幅は、赤色輝線より狭いはずだ。

ところが、実際に彗星を観測すると緑色輝線の方が幅広かったのである。このままではH2Oの推定に使ってきた理論が覆されてしまう


余剰エネルギー
余剰エネルギーの大きさと輝線の波長幅との関係(提供:京都産業大学リリース)

京都産業大学の河北秀世さんは、輝線幅問題の解決を図るべく、過去の観測データを検証した。ヒントになったのは、中国科学院の袁開軍さんたちが実験室でH2Oの光解離を行ったときの結果だ。そこからは、ライマンαによる光解離では緑色輝線を発するエネルギー状態のO原子はほとんど生成できないことが示唆された。

検討の結果、緑色の酸素原子オーロラ輝線の原因となるのは、ライマンαよりも波長の短い紫外線による光解離だということが突き止められた。河北さんの計算により、緑色輝線の波長幅が赤色輝線よりも広くなることが示されている。また、従来のように赤色輝線を用いて彗星のH2O量を推定するのは問題ないことが確かめられた。

H2)だけでなく彗星核を構成するCO2なども、紫外線による光解離によって酸素原子オーロラ輝線を発しているはずだ。緑色輝線と赤色輝線にはH2OとCO2などが組成比に応じて寄与しているはずなので、今回の手法を通じてその組成比を求め、太陽系誕生時の物質成分や温度などを知る手がかりとすることが期待される


2022年5月25日
AstroArtsより

がか座β星系の系外彗星

Posted by moonrainbow on 15.2022 彗星   0 comments   0 trackback
がか座β星系の系外彗星、サイズ測定に成功

がか座β星の周りの彗星の想像図
がか座β星の周りの彗星の想像図(提供:ESO/L. Calçada)

太陽系外で初めて彗星が見つかっている恒星「がか座β星」で、新たに30個の彗星が見つかった。彗星核の大きさは太陽系と似た分布を示している

63光年の距離にある4等星、がか座β星は、約2000万歳と年齢が非常に若く、周囲にガスと塵の円盤(原始惑星系円盤)が見つかった最初の恒星の一つだ。円盤から誕生した惑星が少なくとも2つ見つかっているほか、1987年には太陽系外で初めて彗星が検出されている。これは彗星の巨大な尾が、がか座β星の光を遮ったときの減光をとらえたものだ。2014年には同じ手法で約500個の彗星の軌道が調べられた

仏・パリ天文物理学研究所のAlain Lecavelier des Etangsさんたちの国際研究チームは今回、彗星の本体、彗星核の大きさを測定することに成功した。研究チームはNASAの系外惑星探査衛星「TESS」を用いて、がか座β星系を156日間にわたって観測し、彗星本体が恒星の手前を通過することによる減光を検出した。この観測から新たに30個の彗星を発見し、さらに核の大きさが直径3~14kmであることを明らかにした。

今回の結果を元に、がか座β星の周りに存在する彗星の大きさの分布を推定したところ、太陽の周りを回る彗星の分布と驚くほど似ていることが明らかになった。がか座β星周囲の彗星も太陽系の彗星と同じように、衝突と分裂を繰り返して形成された可能性を示唆する結果だ


がか座β周囲の彗星
がか座β周囲の彗星(青い四角)と太陽系内の彗星や小惑星(破線)のサイズ分布の比較図。(赤い太線)フィッティング(最大の彗星を除く)、(LPC)長周期彗星、(JFC)木星族彗星、(ACO)彗星軌道上の小惑星、(NEO)地球近傍軌道上の小惑星、(non-NEO)彗星軌道上にない小惑星(提供:A. Lecavelier des Etangs et al.)

地球の水の一部は彗星によってもたらされたと考えられており、彗星が惑星の性質に与える影響の解明が求められている。今回の成果は、惑星系における彗星の起源と進化の解明に役立つものとなりそうだ

2022年5月11日
AstroArtsより

直径130キロ以上の巨大な核をもつ彗星が地球に接近

Posted by moonrainbow on 17.2022 彗星   0 comments   0 trackback
巨大な彗星、2031年に最接近 「オールトの雲」の謎解明に期待

巨大な彗星、2031年に最接近 「オールトの雲」の謎解明に期待
宇宙望遠鏡で観測した巨大彗星。左は核を取り巻く「コマ」の写る範囲を抑制している

直径130キロ以上の巨大な核をもつ彗星(すいせい)が地球に接近している。ただし地球を危険に陥れる恐れはないという

彗星は何百万キロにも及ぶ長い尾を引く姿で知られるが、中心部には氷やちりでできた汚れた雪玉のような核がある。

ほとんどの彗星の核は直径数キロ程度だが、ハッブル宇宙望遠鏡で観測された彗星「C/2014 UN271」の核は約137キロと、ほかの彗星の約50倍の大きさだった。質量は500兆トンと推定され、一般的な彗星の10万倍にあたる。

この彗星は時速約3万5400キロの速度で太陽系の果てから地球へ向かっている。最接近するのは2031年。太陽から16億キロの圏内に近づくことはない。

この彗星は、天文学者のペドロ・バーナーディネリ、ギャリー・バーンスタインの両氏が、南米チリにあるセロ・トロロ天文台で撮影された画像を調べて発見した。最初に観測されたのは2010年で、発見者にちなんでバーナーディネリ・バーンスタイン彗星とも呼ばれる。以来、地上の望遠鏡や宇宙望遠鏡を使って観測が続けられてきた。

今年1月にはハッブル宇宙望遠鏡を使ってこの彗星の写真5枚が撮影された。12日の天文学会誌に発表された論文に、その写真が掲載されている。

論文共著者で米カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授のデービッド・ジュウィット氏によると、地球から遠く離れた太陽系の彼方には、暗すぎて見えない彗星が何千もある。この彗星はその氷山の一角にすぎないとジュウィット氏は述べ、「この彗星は、これほど遠く離れていても非常に明るいことから、大きいに違いないと以前から思われていた。今回、それが確認された」と解説する。

彗星は太陽系初期、惑星が誕生した時に取り残された氷の断片で形成され、大型惑星の重力によって、太陽系の果てにあるとされる仮説上の「オールトの雲」に押しやられたと考えられている。オールトの雲にある彗星は、通過する恒星の重力の影響を受けて太陽の方向へ引き戻される。

バーナーディネリ・バーンスタイン彗星は、数百万年後にはオールトの雲に戻る。

この彗星は楕円(だえん)形の軌道を300万年かけて周回する。現在の太陽からの距離は約32億キロ以内。

今回の彗星の観測は、オールトの雲の謎を解く手がかりになると期待されている。オールトの雲はオランダの天文学者ヤン・オールトが1950年に発表した仮説で、地球から遠すぎて観測できないことから、今も仮説のままとなっている。

米航空宇宙局(NASA)の探査機「ボイジャー」がオールトの雲の内側に到達するまでにはあと300年かかり、通過するまでには3万年かかる可能性もある


2022年4月13日
CNNより

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星

Posted by moonrainbow on 07.2022 彗星   0 comments   0 trackback
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が古来の酸素を放出 核内部に2つの貯留層が存在

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
【▲チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)のクローズアップ画像(Credit:ESA/Rosetta/MPS)】

欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」が2015年に「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)」から大量の分子状酸素を検出し、科学者を驚かせました

このたび、コーネル大学のJonathan Lunine氏とジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のAdrienn Luspay-Kuti氏が率いる国際科学者グループが、彗星表面の氷に加えて、その核に古来の分子状酸素が貯蔵されていることを示唆する研究結果を発表しました。この発見はまた、初期の有機物や分子が、どのようにして太陽系の岩石惑星にたどり着いたかを明らかにする可能性もあります。

彗星の核の周りに広がるガス状のコマは、成分のほとんどが水や一酸化炭素、二酸化炭素であることが知られています。しかし、Lunine氏は「この彗星では、水や他の気体に比べて、分子状酸素が非常に多く測定されたことに科学者たちは驚きました」と語っています。

しかしそれは、表面からだけでなく、核の深部からの分子状酸素の放出を見ていたのです。

今回の論文では、Lunine氏は、自らの専門である化学が活かして、分子状酸素が氷の表面にどのように閉じ込められ、核からどのように出てくるのか、そのプロセスをモデル化しました。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は太陽を周回する際、近日点の約1年前から暖まり始めます。太陽によって暖められた影響と、近日点を過ぎた後の冷却によって、分子状酸素、一酸化炭素、二酸化炭素の放出の関係が変化していることがわかりました。その相関関係の結果、酸素は彗星の表層に閉じ込められ、より多くの古い物質が彗星の内部に留まることになります。

「現実には、彗星は少なくともその形成過程においては、これほど高い酸素量を有していないのです」とLuspay-Kuti氏は語っています。しかし、彗星は上層に閉じ込められた酸素を蓄積しており、彗星が太陽に近づき十分に暖められたとき、酸素が一気に放出されるのです。

さらにLuspay-Kuti氏は「言い換えれば、彗星のコマで測定された酸素の存在量は、必ずしも彗星の核での存在量を反映しているわけではありません」と語っています。

ロゼッタの発見は科学者が最初に想像したほど奇妙ではないのかもしれません。代わりに、この彗星の内部には2つの貯留層があり、実際に存在するよりも多くの酸素があるように見えることを示唆しているというのです。Luspay-Kuti氏によれば「一種の錯覚」なのです


彗星内部の2つの貯留層
【▲チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星内部の2つの貯留層から、分子状酸素などの揮発性分子が放出されている様子を描いた図。彗星の軌道は反時計回りで示され、深い貯留層から「二酸化炭素、一酸化炭素、分子状酸素」(クリーム色の点)が絶えず放出されています。青い点は、深い貯留層から表面に向かって移動する間に水の氷に捕らえられた分子状酸素(青でH2O-O2と表示)で、浅い貯留層を形成し、表面が暖められ、彗星が十分に太陽に近づいたときにのみ中身を放出します(Credit:Johns Hopkins APL / Jon Emmerich)】

「貯留層は両方とも重要で、表層に酸素が過剰にあるように見えるという謎を解決し、実際には彗星の深部に酸素の供給源があることを明らかにしています」とLunine氏は語っています。

Lunine氏によれば、彗星が地球上の有機物や水の起源に貢献したという証拠があるとのこと。そして「わたしたちの住む岩石質の惑星が、どのようにして有機物を豊富に含む気体を得たのかがわかれば、わたしたちの惑星がどのようにして居住可能になったのか、また、他の星の惑星系でどのようなことが起こっているのかがわかるのです」と結んでいます


Image Credit: ESA/Rosetta/MPS、Johns Hopkins APL / Jon Emmerich

2022-03-25
Soraeより

レナード彗星がやってくる

Posted by moonrainbow on 05.2021 彗星   0 comments   0 trackback
レナード彗星がやってくる どこまで明るくなるか、年末の彗星に注目!

レナード彗星
【▲2021年11月中旬に米国で撮影されたレナード彗星(Credit: Dan Bartlett)】

まもなくレナード彗星「C/2021 A1 (Leonard)」がやってきます。

2021年1月に火星付近を通過した際に、かすかな染みのような天体として発見されましたが、その巨大な氷の玉は軌道に乗って太陽系内を進み、12月には地球と金星の近くを通過、その後2022年1月初めには太陽に最接近します。

彗星の予測は難しいとされていますが、レナード彗星はしだいに明るさを増し、12月には肉眼で見えるようになるとのこと。

冒頭の画像は2021年11月21日付けのAPOD(Astronomy Picture of the Day)に掲載されたレナード彗星の写真で、その1週間前に撮影されました。すでにグリーンのコマとダストテイルを持っています。

今回の画像は、中程度の望遠鏡で撮影した62枚の画像から構成されており、彗星を追跡するセットと背景の星を追跡するセットから成っています。

撮影場所は米国カリフォルニア州のジューンレイク(June Lake)付近、イースタンシエラ(Eastern Sierras)山脈上空の暗い空です。

彗星は12月中旬に地球の近くを通過した後、北天から南天に移動します。

昨年(2020年)夏はネオワイズ彗星「C/2020 F3 (NEOWISE)」に注目が集まりましたが、この年末はレナード彗星がどのような姿を見せてくれるか、期待したいものです


Image Credit: Dan Bartlett

2021-11-30
Soraeより
 

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