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銀河団MACS J1149.5+2223

Posted by moonrainbow on 25.2023 銀河団   0 comments   0 trackback
時間差で現れた超新星の重力レンズ像でハッブル定数を測定

しし座の銀河団MACS
銀河団MACS J1149.5+2223と、2015年12月に出現した5番目の像
しし座の銀河団MACS J1149.5+2223。左(2014年)と右上(2015年10月)では丸の中に5番目の像は写っておらず、右下(2015年12月)には写っている。左の矢印の位置は2014年に現れた4つの像(提供:NASA, ESA, and P. Kelly (University of California, Berkeley); Acknowledgment: NASA, ESA, and S. Rodney (University of South Carolina) and the FrontierSN team; T. Treu (UCLA), P. Kelly (UC Berkeley) and the GLASS team; J. Lotz (STScI) and the Frontier Fields team; M. Postman (STScI) and the CLASH team; and Z. Levay (STScI)、左図の矢印はアストロアーツによる)

約1年の時間差で複数現れた超新星の重力レンズ像が、ハッブル定数の測定に初めて適用された。従来の測定手法2つのうち、宇宙背景放射から推定されたものに近い値が得られている

現在の宇宙の膨張速度を表す「ハッブル定数」は、遠方の天体までの距離や宇宙の年齢を決める、最も重要な宇宙論パラメーターだ。ところが、異なる手法で測定すると、定数であるにもかかわらず値が異なっている。誕生直後の宇宙に存在した熱放射の名残である「宇宙背景放射」の測定からは、約67km/s/Mpcという値、近傍銀河までの直接的な距離測定からは、約74km/s/Mpcという値だ。宇宙の標準理論が正しければ値は一致するはずなので、この違いは理論の綻びを示唆している可能性があるという。

ハッブル定数の別の測定方法として、超新星爆発の像が重力レンズ効果によって時間差で複数出現することを利用するという手法が、1964年にSjur Refsdalさんによって提唱されていた。重力レンズ効果を受けると1つの超新星の光が複数の異なる経路を通ってくるため、像が時間差で見られることがある。到達時間差は宇宙の大きさ、すなわちハッブル定数に依存するので、時間差の観測からハッブル定数が測定できるのだ。

2014年、米・カリフォルニア大学バークレー校のPatrick Kellyさん(現ミネソタ大学)たちの研究チームが、55億光年先の銀河団「MACS J1149.5+2223」の方向に、95億光年彼方で発生した1つの超新星爆発が1か月ほどの間に4つの像として出現した例を観測した(参照:「初めて観測、重力レンズによる超新星の多重像」)。時間差で現れた複数像の初めての観測例だ。


当時より、この超新星「レフスダール」には5番目の像が出現するだろうと予測されていたが、その時期は半年後から数年後まで大きなばらつきがあった。実際には5番目の像が観測されたのは1年後の2015年12月だ。

Kellyさんたちは、この出現時間差や、出現後の明るさ変化を説明するようなモデルを構築し、そこからハッブル定数の値を約64.8km/s/Mpcと求めた。50年以上前にRefsdalさんが提唱した手法でハッブル定数が測定された初の事例だ。従来の2つの手法のうち、宇宙背景放射の測定から得られている小さいほうの値を支持する結果である。

今回の手法では、多くの超新星の重力レンズ像を時間差をおいて観測することが不可欠だ。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の銀河団観測や、観測準備中のベラ・ルービン天文台の広天域モニター観測などにより発見例が増えれば、ハッブル定数の値に関する理解が進むと期待される


2023年5月18日
AstroArtsより

最大級のモンスター超銀河団を発見

Posted by moonrainbow on 28.2023 銀河団   0 comments   0 trackback
55 億光年先の宇宙で最大級のモンスター超銀河団を発見

超銀河団領域の3色合成画像
55 億光年先の宇宙で最大級のモンスター超銀河団を発見 図
図1:すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラが捉えた超銀河団領域の3色合成画像。中央画像の等高線は銀河の密度分布を、淡赤色はダークマターが広範囲に渡ってとりわけ強く密集する領域を示しています。番号が付記された四角は超銀河団に付随する銀河団の位置を示しています。周囲のパネルは、これら 19 個の銀河団の拡大図で、銀河団でよく見られる、赤い銀河が群れ集まる様子が捉えられています。左上の満月は、超銀河団の領域と比較した場合の、満月の見かけの大きさを表しています。(クレジット:国立天文台)

国立天文台と広島大学を中心とした研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラを用いた大規模観測から、約 55 億光年先の宇宙において、巨大な超銀河団を発見しました。およそ満月 15 個分の天域にまたがって銀河とダークマターが強く密集しているだけでなく、少なくとも 19 個の銀河団が付随しており、50 億光年以遠の宇宙で確認された中では最大の超銀河団です

無数の星やガスの集合からなる銀河、さらにその集合体で成り立つ銀河団は宇宙最大の自己重力系として知られています。しかし宇宙にはこの銀河団がさらに集まってできた超銀河団という巨大構造が存在します。超銀河団は約 100 メガパーセク(天の川銀河の約 500 倍)に渡って広がっている一方、定義そのものもまだ曖昧で、その正体や内部で何が起こっているかなど、多くの謎に包まれています。実のところ、天の川銀河もおとめ座超銀河団と呼ばれる超銀河団の内部に位置しており、さらに周辺の複数の銀河団と超銀河団とともに、より大きなラニアケア超銀河団を構築しています(注1)。したがって、超銀河団は私たちの住む近傍宇宙の成り立ちを明らかにする上で非常に重要な研究対象といえるでしょう。

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム, HSC)を用いた大規模探査(すばる戦略枠プログラム)は満月の見かけの大きさの約 4400 倍に相当する広範囲を 100 億光年以遠のかなたまで観測することに成功しています。当プログラムから得られる高品質な画像データは、未知の超銀河団を探すのに現時点で最適のリソースです。

今回、研究チームは過去に同チームによって発見された 100 天体近くの超銀河団候補(注2)の中から、密度超過を示す範囲が最も広い天体に対して星の総質量とダークマターの分布を調べました(注3)。その結果、3つのダークマター密集領域を中心に、少なくとも 19 の銀河団で構成された超銀河団構造を検出しました(図1)。

宇宙論的シミュレーションとの比較から、この超銀河団は太陽質量の 10 の 16 乗倍のダークマター質量を持っていることが示唆されました。これはおとめ座超銀河団のおよそ 10 倍に匹敵します。さらに、その直ぐ外側にも超銀河団相当の巨大構造が2つ確認されており、近傍宇宙最大のラニアケア超銀河団のような超巨大構造の前身である可能性があります。

本研究の主著者である嶋川里澄特任助教(国立天文台ハワイ観測所)は「実のところ今回ターゲットにした約 55 億光年先の宇宙で、すばる望遠鏡の戦略枠プログラムによる探査データからこのような超銀河団が見つかる確率は五分五分でした。今後は近く稼働予定のすばる望遠鏡の超広視野多天体分光器 PFS や、ユークリッド宇宙望遠鏡を使って、3次元構造や内部の銀河形態などに迫っていきたいと思っています」と語ります。

本研究成果は英国の王立天文学会誌に 2022年11月26日付で掲載されました(Shimakawa et al. "King Ghidorah Supercluster: Mapping the light and dark matter in a new supercluster at z = 0.55 using the subaru hyper suprime-cam")。

注1:我々の住む天の川銀河はおとめ座超銀河団の内部、およびその中核を成すおとめ座銀河団の外れに位置していることが知られています。超銀河団の定義自体が曖昧である現状も相まって、超銀河団をさらに包み込む巨大構造も超銀河団と呼ばれるケースがあります(天文学辞典)。

注2:"Subaru Hyper Suprime-Cam excavates colossal over- and underdense structures over 360 deg2 out to z = 1", Shimakawa et al, 2021, MNRAS

注3:ダークマターの分布は、弱重力レンズ効果を利用して求めました。弱重力レンズ効果は、遠方の銀河から放たれた光が、手前にある銀河団など強い重力場をもつ領域を通過する際に光路が曲げられることで、遠方銀河がゆがんだり増光されて見える現象(重力レンズ効果)のうち、その程度が比較的小さい場合を指します(天文学辞典)。本研究で発見された超銀河団は、50 億光年以遠の宇宙で、これまでに弱重力レンズ解析によって確認された中では最大の構造です


2023年1月19日 (ハワイ現地時間)
すばる望遠鏡より

銀河団の中に散らばっている孤立した星々

Posted by moonrainbow on 21.2023 銀河団   0 comments   0 trackback
「迷子星」の光から銀河団の歴史をさぐる

大質量銀河団「MOO J1014_0038」
銀河団の銀河間光
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた大質量銀河団「MOO J1014+0038」(左)と「SPT-CL J2106-5844」(右)。3つの波長の近赤外線画像から擬似カラー合成した画像に、銀河間光の成分を青色で重ねている。画像クリックで拡大表示(提供:NASA、ESA、STScI、James Jee(延世大学); 画像処理: Joseph DePasquale (STScI))

ハッブル宇宙望遠鏡の観測から、銀河団の中に散らばっている孤立した星々が数十億年前からすでに存在していたことが示された

数百から数千個の銀河が集まった「銀河団」の内部には、どの銀河とも重力的に結び付いていない迷子のような星がたくさん存在する。銀河団全体を眺めると、これらの星々が「銀河間光(intracluster light; ICL)」という淡く広がった光を放っている。

これらの孤立した星々がいつ、どのようにして銀河団の中に散らばったのかについては、「銀河団の中を銀河が運動することで星々がはぎ取られる」「銀河の衝突合体で星々が放出される」「銀河団が形成された数十億年前にはすでに存在していた」など、いくつかの説があって決着がついていない。

韓国・延世大学校のHyungjin Jooさんたちの研究チームはハッブル宇宙望遠鏡を使って、赤方偏移zがおよそ1から2(80億~100億光年)までの距離にある10個の銀河団を近赤外線で観測した。

その結果、銀河間光が銀河団全体の明るさに占める割合は、過去数十億年にわたってほぼ一定であることが明らかになった。これはつまり、銀河間光の光源である迷子の星々が数十億年前からすでに銀河団の中に存在していることを示している


一般に、銀河団のメンバー銀河が銀河団の内部を運動すると、銀河団ガスの抗力を受けて銀河内のガスや塵が銀河から失われ、銀河の星々も銀河外に散乱すると考えられる。しかし、今回のJooさんたちの観測結果から、このような比較的新しい時代に起こる力学的な作用は、迷子星ができる主な原因ではないらしいことがわかった。もしこうしたメカニズムが原因なら、銀河間光の明るさ(=迷子星の数)は時代とともに増していくはずだからだ。

銀河間光を作り出している星々が迷子になった原因はまだ正確にはわからないが、今回の観測結果から、宇宙の初期段階にはすでに、何らかの原因で大量の迷子星が銀河団の中に存在したことになる。「銀河団が形成された初期の時代には、銀河はまだかなり小さくて重力が弱かったために、簡単に星が銀河外へ流出できたのかもしれません」(延世大学校 James Jeeさん)。

もし迷子星が宇宙の初期に生まれたのであれば、こうした星々は長い時間をかけてすでに銀河団のすみずみまで広く散らばっていることになる。だとすると、銀河や銀河団を重力でまとめている「暗黒物質」の分布を探るために、迷子星を利用できるかもしれない。銀河団内の暗黒物質の分布は、現在は背景銀河の像が銀河団の重力レンズ効果で歪む様子をたくさん調べることで推定しているが、銀河間光を使うことで従来の手法を補える可能性がある。近赤外線で高い感度を持つジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡で迷子星を観測して銀河団全体の暗黒物質の分布を調べられるようになれば、銀河団の歴史を理解するのに大いに役立つだろう


2023年1月13日
AstroArtsより

宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」が観測した銀河団「SMACS 0723-73」

Posted by moonrainbow on 18.2022 銀河団   0 comments   0 trackback
宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」科学観測で取得された画像の1つが公開された!

銀河団「SMACS 0723-73」
【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した銀河団「SMACS 0723-73」(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI)】

こちらは南天の「とびうお座」の方向約42億4000万光年先にある銀河団「SMACS 0723-73」です。6種類のフィルターを介して取得された赤外線画像に、赤・オレンジ・緑・青の4色を擬似的に割り当てることで作成されています

無数の星々やガスなどの集合体である銀河が数百~数千も集まっている銀河団は、その途方もない質量によって時空間を歪め、地球から見て銀河団の奥にある天体から発せられた光の進行方向を変化させる「重力レンズ」効果をもたらします。この画像にも、重力レンズ効果によって細長く引き伸ばされたり歪められたりした銀河の像が数多く捉えられています。

この画像は、アメリカ航空宇宙局(NASA)・欧州宇宙機関(ESA)・カナダ宇宙庁(CSA)の新型宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」の科学観測で初めて取得された高解像度画像の1つです。日本時間2022年7月12日朝に開催された公開イベントの席上で、アメリカのジョー・バイデン大統領によって発表されました。

ウェッブ宇宙望遠鏡初のディープ・フィールド(Webb’s First Deep Field)とも呼ばれているSMACS 0723-73の画像取得には、ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」が使われました。

NASAによると、写っているのは地球上で伸ばした腕の指先にある砂粒と同じくらいの大きさに見える範囲(幅約2.4分角)ですが、これまで赤外線で捉えられたことがないほど暗いものを含む、何千もの銀河が視野に捉えられているといいます。NASAのビル・ネルソン長官によれば、画像には130億光年以上先にある天体も含まれているようです。

ウェッブ宇宙望遠鏡は画像の取得に合計12.5時間を費やすことで、赤外線において「ハッブル」宇宙望遠鏡よりも“深い”(暗い天体も写っている)画像を取得することができたといいます。なお、ハッブル宇宙望遠鏡が同様の深い画像を取得した際に費やされた期間は、数週間とされています。

重力レンズ効果を受けた天体の像は歪むだけでなく拡大されることもあるため、重力レンズは遠方の天体を観測するための「天然の望遠鏡」として利用されています。ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた銀河についても、その質量・年齢・歴史・組成といった詳細な性質を探る研究が進められることでしょう。

なお、日本時間2022年7月12日23時30分からは、ウェッブ宇宙望遠鏡が取得した以下の4つの天体に関する画像やデータも公開される予定です。こちらも発表が楽しみです!

・イータカリーナ星雲…りゅうこつ座の方向約7600光年先にある散光星雲(星形成領域)
・WASP-96 b(スペクトルのみ)…ほうおう座の方向約1150光年先にある太陽系外惑星
・NGC 3132…ほ座の方向約2000光年先にある惑星状星雲、別名「南のリング星雲(Southern Ring Nebula)」「8の字星雲(Eight-Burst Nebula)」
・ステファンの五つ子…ペガスス座の方向にある5つの銀河(うち4つはコンパクト銀河群を構成)

〈記事中の距離は、天体を発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています〉


Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI

2022-07-12
Soraeより

銀河団「RBS 797」に謎の空洞

Posted by moonrainbow on 21.2022 銀河団   0 comments   0 trackback
銀河団の中心に「謎の4つの巨大な空洞」 超大質量ブラックホールの連星が関与か

銀河団「RBS 797」の画像
【▲銀河団「RBS 797」の画像。左は可視光、右はX線で撮影されています(Credit: NASA/CXC/Univ. of Bologna/F. Ubertosi; Optical: NASA/STScl/M.Calzadilla)】

NASAは12月17日、イタリアのボローニャ大学のフランチェスコ・ウベルトシさん率いる研究チームが、NASAが運用するチャンドラX線観測衛星の観測データを使って、銀河団の中心に謎の4つの巨大な空洞を発見したと発表しました

謎の4つの巨大な空洞
【▲丸で囲われた部分が今回発見された謎の4つの巨大な空洞になります。X線で撮影されています(Credit: NASA/CXC/Univ. of Bologna/F. Ubertosi; Optical: NASA/STScl/M.Calzadilla)】

銀河団は、重力的な集まりとしては、宇宙でも最大の構造になります。数百、ときに数千の銀河、銀河団ガス、ダークマターなどからできています。

謎の4つの巨大な空洞は、地球から39億光年ほどのところにある、銀河団「RBS 797」中心の銀河団ガスの中で発見されました。

では、なぜ銀河団ガスの中に4つの巨大な空洞ができたのでしょうか?

研究チームは、超大質量ブラックホールの連星が噴き出すジェットが原因である可能性が最も高いと述べています。巨大な空洞自体は、超大質量ブラックホールが噴き出すジェットによって、周囲の銀河団ガスが吹き飛ばされてできたと考えられますが、今回の様なケースは、連星をなす超大質量ブラックホールの上下に噴き出すジェットが、直交していたために、4つの巨大な空洞ができた可能性が指摘されます。

超大質量ブラックホールが連星をなすこと自体は十分に考えられますが、このように両方の超大質量ブラックホールが共に活動的な時期に観測されることはとても珍しいようです。

そして、今後、この2つの超大質量ブラックホールは合体し、1つの超大質量ブラックホールになると考えられています


Image Credit: NASA/CXC/Univ. of Bologna/F. Ubertosi; Optical: NASA/STScl/M.Calzadilla

2022-01-16
Soraeより
 

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