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うみへび座銀河団で発見された謎の電波放射

Posted by moonrainbow on 13.2024 銀河団   0 comments   0 trackback
うみへび座銀河団で発見された謎の電波放射

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うみへび座銀河団
GMRTで観測された、うみへび座銀河団の電波強度。画像中央が発見された電波放射。等高線は天文衛星「XMMニュートン」で観測されたX線の表面輝度分布を示す(提供:Kurahara et al., Radio:uGMRT, X-ray:ESA/XMM-Newton

1.5億光年彼方のうみへび座銀河団に、これまで報告されていない広がった電波放射が発見された。放射の機構は未解明だが、銀河団の性質や進化の理解につながる重要な手がかりとなる可能性がある

銀河団は数百個から数千個もの銀河の集まりで、直径数億光年にも達する宇宙最大の天体だ。こうした銀河団は互いに衝突、合体を繰り返すことで大きくなっていくが、衝突の際に銀河団の重力エネルギーが変換されて数億度の高温プラズマや磁場、光速に近い速さの電子(宇宙線)が生じると考えられている。そこで、銀河団同士の衝突は、銀河団の進化や高エネルギー宇宙線の起源を解明する上で重要な研究対象となっている。

うみへび座の方向約1.5億光年の距離に位置するうみへび座銀河団(ACO 1060、Abell 1060)は、北天では私たちに最も近い銀河団である。これまでに多数の観測や研究が行われており、過去数十億年間に衝突や合体を経験したことを示唆する結果が得られている。一方で、衝突等に起因した高エネルギー宇宙線やX線を放つ高温ガスからなる特異な空間構造といった観測的な証拠は見つかっておらず、これらの点は大きな謎であった


国立天文台水沢VLBI観測所の藏原昂平さんたちの研究チームは、インドの巨大メートル波電波望遠鏡GMRT(Giant Metrewave Radio Telescope)が2010年12月に観測した銀河団のデータを解析し、うみへび座銀河団中にこれまでに報告されてされていなかった広がった電波放射を発見した。さらに、西オーストラリアのマーチソン広視野電波干渉計MWA(Murchison Widefield Array)の観測データアーカイブにも、より低い周波数で同じ領域に電波放射があることを確認した

藏原さんたちは可視光線やX線など多波長にわたる観測データを調べたが、この電波放射に対応する天体は見つかっていない。銀河団に見られる広がった電波放射領域「電波レリック」や「電波ローブ」の可能性も議論されたが、既知の電波源として明確に説明できないと結論づけられた。研究チームが「オオコウモリ(Flying Fox)」と名づけたこの放射領域の構造は細長いリング状で、中心に棒状の形も見られる。コウモリの翼に当たる部分は約22万光年にまで広がっている

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「オオコウモリ」の様子。頭に当たる部分が南西を向き、両翼の先は銀河団中心の銀河「NGC 3311」と銀河団南東の銀河「NGC 3312」に隣接しているように見える。画像右上のスケールバ-の50kpcは約16万光年(提供:Kurahara et al.)

ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星「XMMニュートン」の観測データからは、「オオコウモリ」を含む領域の重元素量がやや高いことが示されている。銀河団中心に位置する銀河付近から重元素の多い高温ガスが「オオコウモリ」とともに湧き上がってきた可能性を示唆するものだ。X線分光衛星「XRISM」による観測、検証が望まれる。

今後、同様の電波放射がより多くの銀河団でとらえられれば、銀河団の進化や宇宙線の加速メカニズムの理解につながり、銀河団の膨大な重力エネルギーの変換の仕組みも解明されるだろう


2024年4月10日
AstroArtsより

銀河団「Abell 2319」

Posted by moonrainbow on 11.2024 銀河団   0 comments   0 trackback
JAXAの天文衛星「XRISM」がファーストライト 銀河団と超新星残骸の観測データを公開

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X線分光撮像衛星「XRISM」の軟X線撮像装置「Xtend」で観測した銀河団「Abell 2319」。可視光線で取得された画像を背景に、Xtendの観測データ(紫色)が重ねられている。白色の四角はXtendの視野を示す

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月5日、2023年9月に打ち上げられたX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」のファーストライト(望遠鏡や観測装置の性能を確認するための最初の観測)で得られた観測データを公開しました

こちらはXRISMに搭載されている軟X線撮像装置「Xtend(エクステンド)」で観測された銀河団「Abell(エイベル)2319」です。Abell 2319は「はくちょう座(白鳥座)」の方向約7億7000万光年先にあり、2つの銀河団が衝突していると考えられています。画像は可視光線の観測データにXtendで取得された観測データ(紫色)を重ねたもので、X線を放射する高温プラズマの分布が捉えられています。

アメリカ航空宇宙局(NASA)の「Chandra(チャンドラ)」や日本の「すざく」といった従来のX線宇宙望遠鏡は1回で観測できる視野が限られていて、銀河団全体の様子を知るためには複数回の観測が必要でした。一方、XRISMのXtendは1回の観測で銀河団全体の様子を捉えています


JAXAによると、銀河団同士の衝突の全貌を探るには銀河団の中央から外側に渡る広範囲の観測が必要となります。銀河団の衝突を理解することは宇宙の大規模構造の進化を理解することにつながることから、Xtendの今後の観測に期待が寄せられています

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X線分光撮像衛星「XRISM」の軟X線分光装置「Resolve」で取得された超新星残骸「N132D」のスペクトル。白色のスペクトルがResolveで、灰色のスペクトルはX線天文衛星「すざく」で取得されたもの。背景はXtendで観測されたN132D

こちらはXRISMに搭載されている軟X線分光装置「Resolve(リゾルブ)」で取得された超新星残骸「N132D」のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さ)を示した図です。N132Dは天の川銀河の伴銀河(衛星銀河)の1つ「大マゼラン雲」(大マゼラン銀河とも)にあり、地球からは約16万光年離れています。

Resolveのような分光装置で取得される天体のスペクトルには、原子や分子が特定の波長の電磁波を吸収したことで生じる暗い線「吸収線」や、反対に特定の波長の電磁波を放つことで生じる明るい線「輝線」が現れます(吸収線と輝線は合わせて「スペクトル線」と呼ばれます)。分光観測を行うことで天体の組成を調べたり、スペクトル線のずれ具合をもとに視線方向の運動速度を割り出したりすることが可能です


図に示されているのは1800~1万eV(電子ボルト)の帯域に渡るN132Dのスペクトルで、白色はXRISMのResolveで取得されたもの、灰色は「すざく」で取得されたものです。どちらも様々なイオンから放射された輝線を捉えていますが、Resolveは「すざく」では見分けられなかった幾つもの輝線を分離することに成功しています。これらの元素は超新星を起こした恒星内部の核融合反応や超新星爆発で形成されたものとされています。

JAXAによると、Resolveは要求以上のエネルギー分光精度を発揮していることが軌道上で確認できたといい(要求7eVに対して5eV以下)、発表ではこの帯域における輝線感度が世界最高であることは明らかだとされています。高い性能が確認されたResolveの観測を通して、恒星や惑星だけでなく生命のもととなる元素の生成や流転に関する新たな知見が得られると期待されています


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X線分光撮像衛星「XRISM」。2023年7月21日撮影

XRISMは2016年に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」(運用終了)の後継機として、NASAや欧州宇宙機関(ESA)などとも協力して開発された科学衛星です。XRISMのXtendとResolveは星間空間や銀河間空間を吹き渡るプラズマに含まれる元素やプラズマの速度を画期的な精度で測定可能とされており、星や銀河だけでなく銀河の集団が形作る大規模構造の成り立ちに迫ることが期待されています。

JAXAによれば現在XRISMの状態は正常で、2024年2月からは定常運用の段階へ移行する予定です。なお、観測開始までの間にResolveを保護する役割を果たす保護膜が所定の手順では開放できていないものの、より適切な環境条件に変更した上で開放を再実施することが計画されています。保護膜はエネルギーが約2000eV以下のX線を遮蔽しており、開放すれば300eVからの観測が可能になるとのことですが、閉じた状態でも画期的な観測成果が期待できるということです


Source
JAXA - X線分光撮像衛星(XRISM)のファーストライトと運用状況について

2024年1月6日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

銀河団「Abell 3192」と「MCS J0358.8-2955」

Posted by moonrainbow on 10.2023 銀河団   0 comments   0 trackback
実は2つ? ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された“エリダヌス座”の銀河団

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ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された銀河団「Abell 3192」と「MCS J0358.8-2955」

こちらに写っているのは「エリダヌス座」の一角。画像の幅は満月の視直径の約10分の1に相当します(視野は3.07×2.80分角)。中央付近でぼんやりと輝く2つの楕円銀河をはじめ、たくさんの銀河が視野全体に写っています。

これらの銀河は数百~数千の銀河で構成される巨大な天体「銀河団」を構成しています。銀河団には目に見える物質でできた星やガスだけでなく、電磁波では直接観測できない暗黒物質(ダークマター)も集まっています。その膨大な質量は時空間を歪ませて、向こう側の天体から発せられた光の進行方向を変える「重力レンズ」効果をもたらすことがあります。画像の中央から左上や右下には重力レンズ効果を受けたことで像が曲線状に歪んだ銀河が幾つか写っているといいます。

欧州宇宙機関(ESA)によると、この画像に写っている数々の銀河は当初「Abell(エイベル)3192」という1つの銀河団に属していると考えられていました。名前に含まれている「Abell」は、天文学者のジョージ・エイベル(George Abell)が発表した銀河団のカタログ「Abell(エイベル)カタログ」に収録されていることを示しています(※1)。

ところがAbell 3192の研究が進むにつれて、実際には遠く離れた2つの銀河団が存在することが明らかになりました。地球からの距離は手前側が約23億光年、奥側が約45億光年で、遠いほうの銀河団は「MCS J0358.8-2955」と呼ばれています(※2)。ESAによれば、Abell 3192の質量は太陽約30兆個分、MCS J0358.8-2955の質量は太陽約120兆個分だと考えられているということです。

冒頭の画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」と「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータ(可視光線と近赤外線のフィルターを使用)をもとに作成されたもので、ESAから“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”として2023年11月27日付で公開されています。

■脚注
※1…Abell 3192は1989年のカタログ更新時に追加。更新されたカタログはエイベルとともに研究に携わったハロルド・コーウィン(Harold Corwin)とロナルド・オロウィン(Ronald Olowin)の名前も含めて「ACOカタログ」 とも呼ばれており、Abell 3192は「ACO 3192」とも呼ばれる。
※2…「MCS」はX線で明るい銀河団を調査した観測プロジェクト「Massive Cluster Survey」の略称(MACSと略す場合も)。

《記事中の距離は天体から発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています》


Source
ESA/Hubble - One cluster or two?
Hamilton-Morris et al. - A WEAK-LENSING AND NEAR-INFRARED STUDY OF A3192: DISASSEMBLING A RICHNESS CLASS 3 ABELL CLUSTER (The Astrophysical Journal Letters)

2023年12月5日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

原始銀河団A2744-z7p9OD

Posted by moonrainbow on 03.2023 銀河団   0 comments   0 trackback
JWSTとアルマ望遠鏡のタッグで、最遠方の原始銀河団をキャッチ

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コア領域の想像図と将来の姿
(左)原始銀河団A2744-z7p9ODのコア領域の想像図。(右)数千万年後のコア領域の想像図。複数の銀河が合体してできた大きな銀河が見られる(提供:国立天文台)

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とアルマ望遠鏡が131億光年彼方の原始銀河団を観測し、銀河が密集したコア領域で急速に銀河が成長する兆候がとらえられた。シミュレーションでは数千万年以内に銀河が合体し大きな銀河となることも示された

地球に比較的近い銀河の観測から、銀河同士が密集した環境のほうが、個々の星の誕生と死のサイクルが急速に進むことが知られている。この「環境効果」が宇宙の歴史のいつごろから存在したのかは、よくわかっていない。それを知るには、宇宙が誕生して間もないころに存在した銀河の集団「原始銀河団」を観測する必要がある。

近傍の銀河団には100個程度以上の銀河が含まれるが、100億光年以上彼方に存在する原始銀河団では10個程度の銀河が集まっている。遠方にある天体はそれだけ昔の宇宙を観測していることになるので、遠い原始銀河団を観測すれば宇宙が若いころの様子を知る手がかりが得られる。ただし、遠い天体からの光や電波の観測には、高い感度と空間分解能が求められる。

筑波大学の橋本拓也さんとスペイン宇宙生物学センターのJavier Álvarez-Márquezさんたちの研究チームは、高い感度と空間分解能を持つジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とアルマ望遠鏡を用いて、ちょうこくしつ座の方向に存在する原始銀河団「A2744-z7p9OD」を観測した。注目したのは、原始銀河団の中で銀河がとくに密集している「コア領域」だ。

橋本さんたちはまずJWSTの赤外線分光器「NIRSpec」でスペクトル観測を行い、その結果からコア領域に存在する銀河の赤方偏移を7.88と測定した。最新の宇宙論パラメーターで計算すると、距離は131.4億光年となる。

次にアルマ望遠鏡で観測したデータを解析したところ、複数の銀河から塵の出す電波が検出された。これほど遠方に位置する原始銀河団としては、塵が検出された初の例である。塵は銀河を構成する重い星々が終末期に起こす超新星爆発で供給され、新しい星の材料になると考えられている。この領域で多量の塵が検出されたことは、銀河内の第1世代の星の多くがすでに一生を終えており、銀河の成長が進んでいることを示唆するものだ


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電離酸素が放つ光の分布と塵が放つ電波の分布
(背景)JWSTの観測による、原始銀河団A2744-z7p9OD中のコア領域に存在する光の強度。(左)NIRSpecによる、電離酸素が放つ光の分布を等高線で表示。4つの銀河の存在が見える。(右)アルマ望遠鏡による、塵の放つ電波の分布を等高線で表示。4つ中3つの銀河に塵の放射が認められる(提供:JWST (NASA, ESA, CSA), ALMA (ESO/NOAJ/NRAO), T. Hashimoto et al.)

「同じ原始銀河団のうち、コア領域以外の密集していない銀河では、塵は検出されませんでした。これは、多くの銀河が狭い領域に集まることで銀河の成長が急速に進んでいることを示しており、138億年前の宇宙誕生からわずか7億年余りの時代に環境効果が存在していたと考えられます」(スペイン宇宙生物学センター Luis Colinaさん)。

研究チームはさらに、コア領域に密集した4つ銀河の形成と進化について、銀河形成のシミュレーションを行って理論的に検証した。すると、A2744-z7p9ODと同様に、宇宙誕生から約6.8億年後にガスの粒子が密集した領域が現れ、狭い領域に密集した4つの銀河が形成された。また、数千万年程度と比較的短い時間で銀河が合体し、より大きな銀河に進化することも示された


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シミュレーションによるA2744-z7p9ODの成長予想。(a)宇宙年齢6.89億年における、A2744-z7p9ODに似た領域のガスの密度の様子。(b)は(a)のコア領域の拡大図。JWSTで観測された領域に相当する。濃淡は酸素イオンの光の分布を示す。(b)から(d)では、時間経過に伴って銀河が合体を繰り返し、より大きな天体へと進化する様子を表す(提供:T. Hashimoto et al.)

「今回、非常に強力であることが証明されたJWSTとアルマ望遠鏡のタッグによる観測を、今後より多くの原始銀河団に適用して、銀河の成長メカニズムを明らかにして、宇宙におけるわたしたちのルーツに迫ります」(Álvarez-Márquezさん)

2023年9月27日
AstroArtsより

銀河団「ACT-CL J0102-4915」

Posted by moonrainbow on 14.2023 銀河団   0 comments   0 trackback
重力レンズ効果で像がゆがんだ銀河の数々 ウェッブ宇宙望遠鏡が観測

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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で観測された銀河団「エル・ゴロド」

こちらは「ほうおう座」(鳳凰座)の方向約76億光年先の銀河団「ACT-CL J0102-4915」を捉えた画像です。銀河団全体の質量は実に太陽の約2100兆倍と推定されています。宇宙誕生から60億年ほどが経った当時の宇宙で存在が知られている銀河団のなかでは最も大規模であることから、ACT-CL J0102-4915は「El Gordo」(エル・ゴロド、スペイン語で「太った人」を意味する)と命名されています

この画像は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」で2022年7月29日に取得したデータをもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています(※)。

※…この画像では1.15μmと1.5μmを青、2.0μmと2.77μmを緑、3.56μmと4.44μmを赤で着色しています。

エル・ゴロド銀河団はかつて「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」でも観測されたことがありますが、アメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、ハッブル宇宙望遠鏡の観測ではうっすらとしか見えていなかった歪んだ像の銀河をウェッブ宇宙望遠鏡は幾つも捉えることに成功しました。

次に掲載する画像では、そのなかでも特徴的な2つの銀河がピックアップされています。STScIによると、Aの四角で示されている細長く伸びた像の銀河はスペイン語で「La Flaca」(ラ・フラカ、やせた人)と呼ばれており、光が地球に届くまでに約110億年を要しました。Bの四角で示されているフック状の像をした銀河はスペイン語で「El Anzuelo」(エル・アンスエロ、釣り針)と呼ばれていて、光が地球に届くまでに約106億年を要したとい

銀河の像を歪ませているのは「重力レンズ」効果です。重力レンズとは、手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間が歪むことで、その向こう側にある天体(光源)から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像が歪んだり拡大して見えたりする現象のこと。重力レンズは遠方の天体を観測するための“天然の望遠鏡”として利用できますし、その強さを分析することで、未知の暗黒物質(ダークマター)の銀河団における分布を知ることも可能です。

エル・ゴロド銀河団の膨大な質量による重力レンズ効果とウェッブ宇宙望遠鏡の組み合わせは新たな科学的成果をもたらしました。たとえば、エル・アンスエロの像が受けている重力レンズ効果をアリゾナ州立大学のPatrick Kamieneskiさんを筆頭とする研究チームが補正したところ、この銀河は直径2万6000光年の円盤状の銀河であり、その中心部では星形成が急速に弱まる「クエンチング(quenching)」と呼ばれるプロセスが確認されたといいます。Kamieneskiさんたちの研究成果をまとめた論文はthe Astrophysical Journalに受理されており、現在arXivでプレプリントが公開されています。

また、カンタブリア物理学研究所のJose Diegoさんを筆頭とする研究チームがラ・フラカとは別の細長く伸びた像の銀河(冒頭の画像で左下隅付近に見えている)を分析したところ、単一の赤色超巨星とみられる天体が検出されました。この天体は宇宙論的距離で初めて検出された単一の赤色超巨星の可能性があるということです。Diegoさんたちの研究成果をまとめた論文はAstronomy & Astrophysicsに掲載されています。

冒頭の画像はウェッブ宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡を運用するSTScIをはじめ、アメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)から2023年8月2日付で公開されています


※記事中の距離は天体から発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています

Source
Image Credit: NASA, ESA, CSA, J. Diego (Instituto de Física de Cantabria), B. Frye (University of Arizona), P. Kamieneski (Arizona State University), T. Carleton (Arizona State University), R. Windhorst (Arizona State University), A. Pagan (STScI), J. Summers (Arizona State University), J. D’Silva (University of Western Australia), A. Koekemoer (STScI), A. Robotham (University of Western Australia)
STScI - Webb Spotlights Gravitational Arcs in 'El Gordo' Galaxy Cluster
NASA - Webb Spotlights Gravitational Arcs in ‘El Gordo’ Galaxy Cluster
ESA/Webb - Webb spotlights gravitational arcs in ‘El Gordo’ galaxy cluster (NIRCam image)

2023年8月10日

sorae 宇宙へのポータルサイトより
 

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