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宇宙論的構造形成シミュレーション

Posted by moonrainbow on 05.2023 科学   0 comments   0 trackback
バリオンとニュートリノも考慮した過去最大の宇宙論シミュレーション

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「FLAMINGO」のシミュレーション結果
宇宙の構造形成シミュレーション「FLAMINGO」で再現された、現在の宇宙の大規模構造。背景の画像は明るい部分ほどダークマターの密度が高く、黄色の部分ほどニュートリノの密度が高いことを示す。内部のパネルはそれぞれ、左上にできた最も質量の大きなダークマターハローを拡大した図で、(右上)バリオンガスの温度、(右下)ダークマターの密度、(左下)X線で観測した場合の明るさ、を表す。画像クリックで表示拡大(提供:Josh Borrow, the FLAMINGO team and the Virgo Consortium)

ダークマターの重力だけでなく、バリオンやニュートリノの流体計算も含めた過去最大の宇宙論的構造形成シミュレーションが行われた

現在の宇宙論では、宇宙の大規模構造が生まれた歴史は「Λ-CDMモデル」というモデルで説明されていて、宇宙の性質は現在の膨張率(ハッブル定数)や物質・ダークマター・ダークエネルギーの比率など、6個ほどのパラメーター(宇宙論パラメーター)で表されている。

この宇宙論パラメーターは観測で精密に求められているが、その観測値には未解決の問題がある。ハッブル定数など一部の宇宙論パラメーターで、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測から導いた値と、銀河の距離測定から導いた値、あるいは銀河団が遠くの銀河の形を歪める「弱い重力レンズ効果」の観測から導いた値とがなぜか一致しないという謎だ。これは宇宙論パラメーターをめぐる「テンション(tension; 緊張、対立)」と呼ばれ、素粒子物理学の「標準模型」を超える物理が関わっているとか、これまでの観測に未知の系統誤差が含まれているといった原因が考えられている。

この謎を解くには、ビッグバン以降の宇宙の構造形成をコンピューターでシミュレーションし、観測とシミュレーション結果を比べることも重要だ。しかし、これまでの構造形成シミュレーションは、主にダークマター同士の重力だけを計算するものが多かった。大規模構造などの大きなスケールで働く力は重力だけであり、しかも宇宙に存在する重力源の8割以上はダークマターだからだ。

一方、オランダ・ライデン大学のJoop Schayeさんたちの研究チームは、ダークマターだけでなくバリオン(=星やガスなどの普通の物質)やニュートリノも考慮した大規模な構造形成シミュレーションプロジェクト「FLAMINGO」を進めており、今回、その最初の結果が発表された。

「重力を支配しているのはダークマターですが、普通の物質の寄与も決して無視することはできません。普通の物質が、モデルと観測結果の『ずれ』に似た効果を生むかもしれないからです」(Schayeさん)。

しかし、構造形成の計算にバリオンを加えるのは非常に難しい。バリオンには重力だけでなく圧力も働き、活動銀河核や超新星爆発によって銀河の物質が「銀河風」となって銀河間空間に放出され、これが銀河の星形成を促進したり抑えたりする。だが、こうした現象のスケールは重力の計算に使われる粒子や格子1個のサイズよりずっと小さく、具体的にどんな効果を及ぼすかもよくわからないのだ。

さらに、宇宙に存在するニュートリノもわずかながら質量を持つため、精密な計算を行うにはニュートリノも考慮する方がよいが、ニュートリノ自体の質量や構造形成に与える影響もわかっていない。

そこでSchayeさんたちは、銀河風の強さやニュートリノの質量などのパラメーターを様々に変え、銀河に含まれる星の質量やガスの割合などの観測結果を最もよく再現できるパラメーターのセットを探した。この作業には機械学習の手法が使われた。

そして、この作業で得られたパラメーターを使ってダークマターの重力計算とバリオン・ニュートリノの流体計算を組み合わせ、宇宙の進化を再現した。最大のシミュレーションでは、ダークマターとバリオンをそれぞれ約1280億粒子、ニュートリノを約219億粒子で表現し、1辺が約91億光年の立方体の空間で計算を行った。これはバリオンを入れた大規模な宇宙論的流体シミュレーションとしては過去最大だ。

今回発表された最初の結果によると、バリオンとニュートリノを考慮することが重要であることはわかったものの、銀河風など、バリオンが関わる効果は宇宙論パラメーターのテンションを解消できるほど大きくはないことが判明したという


FLAMINGO simulatie - cluster zoom



研究結果の動画(提供:Yannick Bahé, het FLAMINGO-team en het Virgo Consortium)

2023年10月31日
AstroArtsより

「修正ニュートン力学」

Posted by moonrainbow on 23.2023 科学   0 comments   0 trackback
「修正ニュートン力学」は「プラネット・ナイン」を否定する? 短距離での修正ニュートン力学の影響が初めて明らかに

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プラネット・ナインの想像図

正体不明の「暗黒物質(ダークマター)」を仮定せずに宇宙の重力の謎を説明できるとされる「修正ニュートン力学」は興味深い仮説ですが、あまり多くの支持を受けてはいません。特に、恒星や銀河程度のスケールと比べて距離が短い太陽系程度のスケールにおける修正ニュートン力学の効果は、これまでに説明されたことがありませんでした

ハミルトン大学のKatherine Brown氏とケース・ウェスタン・リザーブ大学のHarsh Mathur氏の研究チームは、修正ニュートン力学の下で太陽系外縁天体の公転軌道のシミュレーションを行った結果、軌道に偏りが生じたことを明らかにしました。これは、短い距離における修正ニュートン力学の効果を示した初めての事例であるとともに、太陽系外縁部に未知の惑星があるとする「プラネット・ナイン」仮説を否定するものです。

ただし、結果の前提となるデータ量の限界から、この結果が偶然生じたものである可能性は排除できず、容易に覆るかもしれないこともBrown氏とMathur氏は自ら警告しています


■「暗黒物質」を否定する「修正ニュートン力学」

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さんかく座銀河における理論的な回転速度 (下側の曲線) と実際に観測された回転速度 (上側の曲線) 。主流な説ではこのズレを暗黒物質の存在を仮定して説明しますが、修正ニュートン力学で説明する試みもあります

私たちの宇宙に存在する物質の量は、銀河の回転速度などの物質によって発生する重力の影響を測定することで推定できます。しかし、重力に関する観測結果から推定される物質の総量は、可視光線などの電磁波で観測可能な “普通の” 物質だけの量と比べて約5倍もあります。この大幅なズレは、電磁波で観測可能な物質とは別に、重力では観測できるものの電磁波では観測できない正体不明の物質が存在すると考えなければ説明できません。「暗黒物質」はこの正体不明の物質を指す言葉であり、その正体を探ることは天文学における最大の課題の1つです。

しかし、長年に渡って研究や観測実験が行われてきたにも関わらず、暗黒物質の正体は判明しておらず、検出はおろか候補の絞り込みにも苦労しているのが実情です。

大多数の科学者は、暗黒物質の正体が何であれ現在広く認められている物理学の理論を大幅に修正しなければならないと考えています。そのため、少数の科学者は「そもそも暗黒物質は存在しないのではないか?」と考えています。この場合、修正すべきなのは重力理論ということになります。

提案されている修正重力理論の1つに「修正ニュートン力学」があります。修正ニュートン力学では、物体の運動を記述するニュートンの運動方程式に修正を加えることで、「重力は距離の2乗に反比例して弱くなる」という逆2乗則は厳密には正しくなく、遠距離では1乗の反比例に遷移していくと仮定しています。修正ニュートン力学が正しい場合、暗黒物質の存在を考慮する必要はなくなります


しかし、修正ニュートン力学は厳しい検証に耐えてきた一般相対性理論を否定するものであり、あまり多くの支持を集めているとは言えません。また、修正ニュートン力学は数百億km程度の距離……つまり太陽系の内部程度の範囲では逆2乗則が成り立っているように見えるため、検証は困難を極めます

■修正ニュートン力学は「プラネット・ナイン」も否定する?

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6つの太陽系外縁天体の公転軌道(紫色の楕円)の長軸は、天の川銀河の中心方向(青色矢印)に向いています。今回の研究結果は、この偏りの原因がプラネット・ナインの重力場の影響ではなく、修正ニュートン力学における天の川銀河の重力場の影響であると結論付けています

Brown氏とMathur氏の研究チームは、修正ニュートン力学が太陽系外縁部にまつわる別の謎である「プラネット・ナイン」仮説と矛盾しているのではないかと考え、シミュレーション研究を行いました。

太陽系の8つの惑星のうち最も外側を公転している海王星の公転軌道のさらに外側には「太陽系外縁天体」と呼ばれる天体が無数にあります。これらの公転軌道を調べてみると、本来であれば全方向に等しく天体が分布しているはずなのに、実際には特定の方向に分布しているという偏りが生じていることが指摘されています


このことは、太陽系外縁部にまだ見つかっていない大きな質量を持つ天体が存在していて、太陽系外縁天体の公転軌道を重力を介して乱しているからではないか、と考えれば説明できます。推定される質量および周囲の天体を一掃しているという性質は、2006年に決議された太陽系の惑星の定義を満たすため、この惑星は未知の9番目の惑星「プラネット・ナイン」と呼ばれています。しかし、今のところプラネット・ナインは発見されておらず、実際には存在しないと考える研究者もいます。

Brown氏とMathur氏は、このプラネット・ナイン仮説が修正ニュートン力学と矛盾しているのではないかと考え、太陽系外縁天体の公転軌道の変化を修正ニュートン力学による重力場の仮定の下でシミュレーションし、その結果を実際の観測結果と比較しました


シミュレーションの結果、太陽系外縁天体は天の川銀河の重力場の影響を受けて、楕円軌道の長軸 (長い方の軸) が天の川銀河の中心方向に向くことが示されました。そしてこの結果は、90377番小惑星「セドナ」のように、楕円形をしていることが高い精度で判明している6つの太陽系外縁天体の実際の公転軌道とよく一致しました。これは、太陽系の内部という短距離でも修正ニュートン力学が働いていることを示した初めての結果であり、修正ニュートン力学にもとづけばプラネット・ナインは存在しない可能性があることを示しています

■容易に覆るかもしれない予備的な研究結果

ただし、この研究結果を以て修正ニュートン力学が正しいとは言えません。今回の研究で用いられた公転軌道のデータは検証に使えるほどには精度が高くなく、単にシミュレーション結果が現実と偶然一致しただけの可能性を排除できません。そして修正ニュートン力学自体も、他の方法での検証でも厳しい立場にさらされているため、修正ニュートン力学そのものが否定される可能性も大いにあります。従って、今回の結果は容易に覆るかもしれません。

また、プラネット・ナインの存在は修正ニュートン力学を仮定せずとも否定することができるかもしれません。太陽系外縁天体は文字通り外縁部という遠方にあるため、観測が極めて困難です。プラネット・ナインの存在の根拠となっている公転軌道の偏りは、太陽系外縁天体の観測数が少ないことに起因する観測バイアスで生じていることも十分に考えられます。暗黒物質、修正ニュートン力学、プラネット・ナインといった各問題に答えを出すには、さらなる天体観測が必須と言えます


Source
Katherine Brown & Harsh Mathur. “Modified Newtonian Dynamics as an Alternative to the Planet Nine Hypothesis”. (Astronomical Journal)

2023年10月18日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

原子核の性質

Posted by moonrainbow on 13.2023 科学   0 comments   0 trackback
120億℃以上の環境では存在可能な原子核の総数が増える 超高温環境での新たな原子核の性質が判明

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中性子星同士の衝突時の想像図。衝突点は最高で1兆℃、その周辺も数百億℃以上の超高温環境となり、非常に重い元素を大量に生み出すと考えられています

金やウランなどの重元素は、超新星爆発や中性子星同士の衝突 (※1) といった超高エネルギーな天文現象によって生成されると考えられています。重元素の詳細な生成プロセスを理解することは、原子核全般の性質や、中性子星内部のような極端な環境を知ることに繋がる重要な研究です

※1…中性子星とは、太陽の8倍以上の質量を持つ恒星の中心部で核融合反応が停止して超新星爆発が起こった後に残される、かつて恒星の中心核だった天体です。大雑把に言えば、中性子星は非常に多くの中性子で構成された巨大な “原子核” だと言えるため、中性子星の性質は極端な環境における原子核の性質によって決まると見積もられています。

ザグレブ大学のAnte Ravlić氏などの研究チームは、詳細がほとんど理解されていない超高温での「ドリップライン」の変化に関する研究を行いました。約230億℃(2.0MeV)までのシミュレーションの結果、120億℃(1.0MeV)以上の超高温の環境下ではドリップラインが大幅に変化することで、存在可能な原子核の総数が増えることを明らかにしました


■「ドリップライン」は原子核が存在できる境界線

身近な全ての物質は「原子」でできており、その原子は中心部に存在する「原子核」と、その外側を周回する「電子」という構造に分かれています。

原子核は、「陽子」と「中性子」という2種類の粒子がいくつか結合している高密度な塊です。陽子と中性子はまとめて「核子」と呼ばれていて、原子核の性質は陽子と中性子の数で定まります。研究では陽子と中性子の数が近い原子核同士で性質を比較することがよくあるため、陽子と中性子の数を縦軸と横軸に取って原子核を2次元的に並べた「核図表」がよく使われます。

原子核は「強い相互作用」と呼ばれる力で塊の状態が維持されていますが、核子を繋ぎ止める数には限界があります。核子の片方がもう片方に対して多すぎる場合、余剰な核子はつなぎ止められずにこぼれ落ちてしまいます。核子がこぼれ落ちる限界となる数を核図表に記すと線で結ぶことができ、この線を「ドリップライン」と呼びます。簡単に言えば、ドリップラインとは原子核が存在できる範囲を示した境界線 (※2) であると言えます。

※2…より厳密に言えば、ドリップラインを超えた原子核も存在しますが、今回の説明では後述する理由により省いています。ドリップラインを超えた範囲の原子核は、こぼれた核子が原子核の周りに存在する特殊な形で存在します。このような状態の原子核は「ハロー核」と呼ばれます。このためより正確に言えば、ドリップラインは「原子核がハローを形成せずに一塊の状態で存在できる限界」です。今回の研究のように、原子核同士の反応を前提とする場合には一塊の状態ではない原子核の存在は原則として考慮されないため、ドリップラインが事実上の原子核の存在限界として扱われます


ドリップラインは陽子と中性子のそれぞれに設定されていますが、特に注目されるのは中性子の側に引かれる中性子ドリップラインです。超新星爆発や中性子星同士の衝突といった超高エネルギーな天文現象においては、大量の中性子が放出されることで、原子核に何個も中性子が結合することがあります。そのような原子核は不安定であり、中性子が崩壊して陽子となり、より重い元素に変化します。このため、超高エネルギーな天文現象は、恒星内部の核融合反応では大量に生成されないような非常に重い元素を生み出す源となります。

2つのドリップラインのうち、中性子ドリップラインは中性子が結合できる限界を表しています。生み出される重元素の種類や量といった重元素生成プロセスに大きく関わることから、中性子ドリップラインがどこにあるのかを知るのは非常に重要です。

ただし、原子核は非常に高エネルギーな環境であり、詳細な性質はあまり多くわかっていません。中性子ドリップラインが正確に知られているのは既知の元素の1割にも満たない、陽子の数が10個までの元素 (水素からネオンまで) に限られています。しかもこれは、超高温な環境である超高エネルギーな天文現象と比べても著しく低い温度環境での話であり、これまで超高温環境におけるドリップラインはほとんど理解されていませんでした


■超高温環境でのドリップラインの変化が判明

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今回の研究で計算された、通常環境 (青色) 、約60億℃ (緑色) 、約120億℃ (黄色) 、約230億℃ (赤色) でのドリップライン。温度が高くなるほど、魔法数 (黒色点線) 付近で大きく折れ曲がっていたラインがまっすぐになっているのが分かる

Ravlić氏などの研究チームは、超高温環境でドリップラインがどのように変化するのかを調べるための理論計算的なシミュレーション研究を行いました。その詳細は注釈に譲りますが (※3) 、今回の研究では最大で約230億℃までの超高温環境を想定して計算を行いました。

※3…研究には「相対論的エネルギー密度汎関数理論 (REDF; Relativistic energy density functional theory)」と呼ばれる、原子核の研究でよく使われる「密度汎関数理論」に「一般相対性理論」の効果を加えた理論が使用されています。今回は超高温を想定し、さらに核子同士の結合が非常にゆるいドリップライン付近の計算を行うため、「ボンチェ=レヴィット=ヴォーテラン連続体減算手順 (Bonche-Levit-Vautherin (BLV) continuum subtraction procedure)」という手法が採用されました。

その結果、約60億℃ (0.5MeV) の時点で中性子ドリップラインの変形が始まり、約230億℃にかけて中性子ドリップラインの大きな変化が起こることが判明しました。通常の環境での中性子ドリップラインは、特に魔法数 (※4) の付近で大きく折れ曲がることが予測されています。しかしその急激なカーブは温度の上昇と共に均され、約230億℃ではほぼ直線的になります


※4…原子核を構成する核子が特定の数である場合、その原子核は他と比べて非常に安定になることが知られています。この特定の数を魔法数と呼びます。魔法数は閉殻構造や原子核の変形など、原子核の安定性に関わります。

このようなドリップラインの変形は、核の安定性に関わるいくつかの性質 (閉殻構造や原子核の変形) が消滅してしまうためです。同じような変化は陽子側にある陽子ドリップラインでも発生します。今回の研究では、通常の環境と比較して120億℃以上の環境では存在可能な原子核の総数が増えることが判明しました


■原子核の性質を調べる研究に影響も

ドリップラインの変形により存在可能な原子核の総数が増えることは、超高エネルギーな天文現象における重元素合成プロセスにも一定の影響があります。また、今回計算された温度範囲は中性子星の内部のような環境でも適用されるため、極端な環境における核反応の様子をある程度明らかにしたという点でも今回の研究は重要です。さらに、今回の計算手法は通常の環境におけるドリップラインの検討など、原子核全般の性質を調べる研究にも応用される可能性があります。

ただし、その具体的なシミュレーション結果を得るには非常に多くの計算をこなす必要があり、現状の技術では困難です。そのため、重力波と電磁波を組み合わせたマルチメッセンジャー天文学など、宇宙で実際に発生する天文現象のデータを分析することで、シミュレーションの計算条件を絞り込むことが当面の課題となりそうです


Source
Ante Ravlić, et al. “Expanding the limits of nuclear stability at finite temperature”. (Nature Communications)

2023年10月6日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

反物質も重力で「落下」する

Posted by moonrainbow on 05.2023 科学   2 comments   0 trackback
反物質も重力で「落下」する 国際研究チームが発見

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反物質も重力で「落下」する 国際研究チームが発見

宇宙が始まったときに豊富に存在した謎の物質「反物質」が、物質と同じように重力に反応することが、国際研究チームによる最新研究で明らかになった

反物質は、惑星などを形成する物質とは反対の性質を持つ。

宇宙の始まりであるビッグバンでは、物質と反物質は同じ量が生成された。物質はあるゆるところに存在する一方、反物質は現在では見つけるのが難しい。

物理学者らは長年、宇宙がどのように発生したかを説明するため、物質と反物質の相違点と類似点を発見しようと躍起になってきた


もし反物質が重力への反応として、落下ではなく上昇するとなれば、我々が物理学について知っていることは吹き飛んでしまっていただろう。

しかし、科学誌「ネイチャー」に掲載された今回の研究で初めて、反物質の原子が沈むことが明らかになった。これは科学的な行き詰まりどころか、新たな実験や理論への扉を開くことになる。たとえば、反物質は同じ速度で落下するのだろうか? 

ビッグバンの際、物質と反物質は結合して相殺され、光だけが残るはずだった。なぜそうならなかったのかは物理学の大きな謎の一つであり、両者の違いを明らかにすることが解決の鍵だ。

物質はどういうわけか、この宇宙創造の初期段階に反物質を抑えた。今回の研究のメンバーの一人、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)所属のダニエル・ホッジキンソン博士は、反物質の重力への反応が鍵を握っているかもしれないと指摘した。

「我々は、どのように宇宙が物質にあふれる形になったかを知らない。これが実験の動機となった」と、ホッジキンソン博士は述べた。

ほとんどの反物質は宇宙ではほんの一瞬、数秒しか存在しない。そのため、実験では反物質を安定して長持ちする形にする必要があった。

ジェフリー・ハングスト教授は30年をかけ、亜原子粒子から何千もの反物質の原子を丹念に作り、それを閉じ込めてから投下する施設を築いた。

「反物質は考えうる限り最もクールで謎に満ちた物質だ」と、ハングスト教授は語った。

「現在分かっている限りでは、私たちの宇宙と同じような、反物質だけでできた宇宙を作ることができる」

「まさに感動的なことだ。この物質が何であり、どのように振る舞うかについて、最も基本的な未解決の疑問の一つだ」


■反物質とは? 

まずは物質の説明から始めよう。この世界のあらゆるものは、原子と呼ばれる小さな粒子でできている。

最も簡単な形の原子は水素だ。太陽の大部分は水素でできている。水素原子では、プラスの電気を帯びた陽子が真ん中にあり、その周りをマイナスの電気を帯びた電子が回っている。

反物質では、これが逆になる。

CERNでの実験では、水素の反物質である「反水素」が使われた。マイナスの電気を帯びた反陽子が真ん中にあり、その周りをプラスの電気を帯びた陽電子が回っているものだ。

反陽子は、CERNの加速器で物質を衝突させて作られた。その後、光に近い速さでパイプを通り、反物質の研究室に送られる。だがこの時点では、速すぎて研究者には扱えない。

研究の第一段階は、反陽子を遅くすることだ。反陽子を円環に送ってエネルギーを消費させると、制御しやすい速さになる。

その後、反陽子と陽電子は巨大な磁石の中に入れられ、何千もの反水素を形成するように混ぜられる。

この磁石は磁場を作って反水素を閉じ込める。反物質は我々の世界と接触できないため、容器の壁に当たると壊れてしまうからだ。

この磁場を弱めると、反水素が解放される。その際、反水素が落下するのか上昇するのかをセンサーで検知した。

一部の理論家は、反物質が上方に落下する可能性を予測していた。しかしほとんどの理論家、特に100年以上前のアルバート・アインシュタイン氏の『一般相対性理論』では、反物質は物質と同じように振る舞い、下方に落下するはずだと述べていた。

CERNの研究者たちは今回、アインシュタイン氏が正しかったことを、前例がないほどの確かさで確認した。

しかし、反物質が上に落ちないからといって、物質とまったく同じ速度で下に落ちるわけではない。

研究の次の段階では、実験の精度を上げることで反物質の落下速度にわずかな違いがあるかどうかを見極めるという。

もし落下速度が変わるなら、宇宙がどのようにして誕生したのかという最大の疑問の一つに答えられるかもしれない


2023年9月28日
BBC Newsより

暗黒エネルギー解明への「ユークリッド宇宙望遠鏡」

Posted by moonrainbow on 09.2023 科学   0 comments   0 trackback
暗黒エネルギー解明へ出発 ユークリッド宇宙望遠鏡

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1日、ユークリッド宇宙望遠鏡を搭載し米フロリダ州から打ち上げられるスペースXのファルコン9ロケット(ESAの中継から・共同)

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ユークリッド宇宙望遠鏡のイメージ(ESA提供・共同)

 欧州宇宙機関(ESA)は1日、新開発の宇宙望遠鏡「ユークリッド」を米フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げた。100億光年先まで広がる最大20億個の銀河の地図を作り、物理学の最大の謎といわれる「暗黒エネルギー」の性質に迫るのが目的だ

 宇宙は138億年前の誕生から膨張を続けてきた。その勢いは物が引き合う重力の影響で次第に緩やかになるはずだが、なぜか数十億年前から加速している。その原因は、重力とは逆に物を反発させ合う暗黒エネルギー。このエネルギーは宇宙の70%を構成する。他の25%は光を吸収も反射もしない正体不明の暗黒物質、星々を構成する原子など通常の物質は5%だけだ。

 ユークリッドは高さ4.7メートル、幅3.7メートルで重さ2トン。銀河の位置や形を見る可視光カメラと、距離を知るための赤外線観測装置を搭載する。暗黒物質があると重力によって背後の銀河がゆがんで見える現象を観測し、銀河だけでなく暗黒物質の分布も調べる。こうして精密な立体地図ができれば、宇宙の構造ができる過程に暗黒エネルギーがどう関与したかが分かってくる可能性がある


2023年7月2日
共同通信より
 

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