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白色矮星「HD 190412 C」

Posted by moonrainbow on 27.2023 白色矮星   0 comments   0 trackback
白色矮星「HD 190412 C」はダイヤモンドになりつつある? 結晶化の観測的証拠を初めて発見!

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図: 内部が結晶化した白色矮星の想像図。白色矮星の保持した熱は宇宙空間へと逃げ、中心部から結晶化していくと考えられる。今回初めてHD 190412 Cにて結晶化の観測的証拠が見つかった

「白色矮星」は “宇宙最大のダイヤモンド” と例えられることがあります。現在の宇宙に存在する白色矮星は全体がダイヤモンドのように結晶化しているわけではないため、厳密に言えば誤りなのですが、サザンクイーンズランド大学のAlexander Venner氏らの研究チームは、地球から約104光年の距離にある白色矮星「HD 190412 C」で結晶化が始まっている証拠を観測しました。白色矮星の結晶化が直接の観測結果から確かめられたのは今回が初めてです (※1)

※1…2004年に「BPM 37093(ケンタウルス座V886星)」という白色矮星について、全体の約90%が結晶化していると推定した研究結果が発表されていますが、これは星震のデータをモデル化した研究であり、間接的な証拠に基づいています。これに対し、HD 190412 Cを対象とした今回の研究は、白色矮星から放出される光を直接観測して推定したものです。

白色矮星とは、超新星爆発しない太陽のような軽い恒星が赤色巨星の段階を経て進化した天体です。外層からガスや塵を放出し、硬い芯(コア、中心核)だけが残されたコンパクト星であり、中心部の核融合反応は停止しています。太陽程度の質量が地球程度の大きさに閉じ込められているため、白色矮星は強大な重力で圧縮されており、主な成分である炭素原子と酸素原子は極限まで縮められています (※2) 。

※2…白色矮星を構成する “元素” の組成は、元の恒星の質量によって変化します。最も一般的な白色矮星の組成は炭素と酸素ですが、軽い恒星由来の白色矮星はほとんどがヘリウムで構成され、逆に重い恒星由来の白色矮星はネオンやマグネシウムが多いと言われています。

白色矮星は、恒星の中心核だった頃の余熱のみを保持し、新たな熱が発生しない “死んだ星” であるため、宇宙空間に熱を放出して冷えていく一方の天体です。温度が下がるに従って、白色矮星を構成する原子の配置は中心部から外側へと順に、ランダムな状態から整列した状態へと変化……つまり結晶化が発生すると考えられます。白色矮星が “ダイヤモンド” と表現されるのは、高温高圧の環境下で炭素原子の結晶が現れると考えられるからです (※3) 。

※3…ただし、白色矮星の環境は超高温・超高圧であるため、内部が本当にダイヤモンドなのか、それとも別の結晶構造が現れるのかは分かっていません

白色矮星全体が冷え切るには1000兆年もかかると言われています。私たちの宇宙はその0.001%程度の時間しか経過していないため、全体が結晶化してダイヤモンドになった白色矮星は、まだ私たちの宇宙には存在しません。しかし、現在の宇宙にも冷却が始まる初期段階の白色矮星は存在するため、一部で結晶化が始まっていてもおかしくありません。

では、白色矮星で結晶化が始まっていることを示す証拠はどうすれば見つけられるのでしょうか。Venner氏らは、HD 190412 Cとその周りにある天体の関係性から証拠を発見しました。

HD 190412 Cは四重連星HD 190412星系を構成する天体の1つであり、残りの3つは全て恒星です。恒星と白色矮星にはそれぞれ独立した年齢の算出方法があり、またいくつかの手法によって年齢差を絞り込むことができます。白色矮星の年齢は表面温度をもとに、つまり “冷め具合” をもとに推定することができます。

ところが、白色矮星の内部で結晶化が起こると、結晶化による熱(潜熱)が放出されて、白色矮星は加熱されます。結晶化による熱は表面温度から推定される年齢を大幅にずらし、白色矮星を実際の年齢よりも “若く” 見せることになるのです。この推定年齢のズレは、結晶化が起きていることを示す具体的な証拠となりえます。

観測の結果、HD 190412星系全体の年齢は約73億年と推定された一方で、HD 190412 Cの年齢は白色矮星になる前の恒星だった頃も含めて約42億年であると推定されました。星系全体の年齢に対する31億年という大幅なズレは、HD 190412 Cが再加熱されたために実際よりも “若く見える” ことで生じたと考えられます (※4) 。これは、内部で結晶化が始まっていることを示す有力な証拠です。今回の観測結果に基づくと、HD 190412 Cは中心部の約65%が結晶化していると推定されます。

※4…HD 190412 Cを生み出した元の恒星はかなり重く、寿命は2億9000万年程度だったと推定されます。このため、白色矮星になる前の時間は31億年というズレの中ではほとんど無視できると考えられます。

ただし、星系全体の推定年齢には使用された算出方法によってばらつきがあり、31億年というズレの推定値にはプラスマイナス19億年という大きな幅が残っています。白色矮星の内部について細かく推測するには、HD 190412星系の年齢の不確かさを10億年以内にしないといけないため、今回のデータだけでは、白色矮星の内部の様子を具体的に構築することはできません。また、白色矮星の内部に含まれる微量成分(ネオン22)が結晶化に伴って分離する効果により、さらに10億年程度の冷却速度の低下が起こると言われていますが、これについてもはっきりしたことは分かっておらず、これの影響も注目されます。

しかし、地球から約104光年という近い距離にある白色矮星で結晶化の証拠が見つかったということは、他の白色矮星でも同様の現象が発生していると予測されます。多数の白色矮星を観測することで、白色矮星の内部で起こる現象についてさらに具体的なことが分かるようになるかもしれません


Source
Alexander Venner, et.al. “A Crystallizing White Dwarf in a Sirius-Like Quadruple System”. (arXiv)

2023年6月23日
sorae より

白色矮星「[HP99] 159」

Posted by moonrainbow on 27.2023 白色矮星   0 comments   0 trackback
白色矮星「[HP99] 159」のヘリウム燃焼を観測 Ia型超新星の謎の一部を説明する発見?

白色矮星「[HP99] 159」
[HP99] 159は、伴星である恒星から流入したガスがX線を放出している。今回のスペクトル分析では、そのほとんどがヘリウムで構成されていることが分かり、ほぼ純粋なヘリウム燃焼が起きていることが分かった

太陽くらいの軽い恒星は、核融合反応が停止した後、外層からガスや塵を放出して、硬い芯を残します。「白色矮星」と呼ばれるこの硬い芯(コア、中心核)は、通常は核融合反応をしないため、ゆっくりと冷えていきます

しかし、白色矮星が伴星として通常の恒星を引き連れている場合は話が異なります。白色矮星は強い重力で伴星の表面物質を剥ぎ取り、表面に堆積させることがあります。その量が限界を超えると、白色矮星で一瞬だけ核融合反応が発生し、膨大なエネルギーが放出されます。この爆発的なエネルギー放出は「Ia型超新星」と呼ばれます。

Ia型超新星にはエネルギーの放出量、つまり爆発の明るさが一定であるという特徴があります。これは、核融合反応が点火するきっかけとなる白色矮星の限界質量(太陽の約1.4倍)が一定であるためです。Ia型超新星の見た目の明るさは地球にいる観察者からIa型超新星までの距離によって決まるので、Ia型超新星が起きた銀河までの距離を決定する指標となります。

ただし、Ia型超新星の発生メカニズムは完全には理解されていません。白色矮星が爆発すると、爆風を受けた伴星からも表面の物質は剥がれるはずです。このため、爆発時に剥がれた水素の存在を示すスペクトル線が現れてもいいはずですが、未だにそのような観測結果は得られていません。

この矛盾を説明する仮説の1つに、爆発直前の伴星表面に存在するのは水素ではなくヘリウムであるとする説があります。実際に、高度に進化した恒星の一部では表面に水素がほとんどなく、ヘリウムが豊富に存在するタイプが見つかっています。このような伴星の表面から爆発時に剥ぎ取られるヘリウムの量は、伴星の質量の2%から5%というかなりの量であるため、観測するのに十分な量であるはずです。しかし、ヘリウムも水素と同様に、爆発時に伴星から剥ぎ取られたことを示す証拠は見つかっていません。

マックス・プランク地球外物理学研究所のJ. Greiner氏らの研究チームは、この疑問の部分的な答えを得る発見をしました。それは超軟X線源(※1)「[HP99] 159」の観測結果によるものです。天の川銀河の伴銀河(衛星銀河)である大マゼラン雲に存在する[HP99] 159は、X線の観測結果から白色矮星であることが分かっています。

※1…X線の中でもエネルギーが極めて低いものを超軟X線と呼びます。

今回、南アフリカ大型望遠鏡(Southern African Large Telescope)での観測により、[HP99] 159の周りにある降着円盤に由来するスペクトル線が見つかりました。
興味深いことに、[HP99] 159のスペクトル線にはヘリウムと窒素しか検出されず、水素など他の元素は見つかりませんでした。窒素の量はヘリウムよりもずっと少ないため、降着円盤は実質的に純粋なヘリウムでできていることが示唆されます。検出されているX線のエネルギーも、ヘリウムの継続的な燃焼で放出されるものと一致しています。

このため、今回観測されたスペクトル線は、白色矮星である[HP99] 159で起こっているヘリウムの燃焼 (核融合反応) がその源である可能性を示しています。なお、ヘリウム以外に見つかった唯一の元素である窒素は、ヘリウムの層が剥き出しになる段階まで進化した恒星で合成される元素と一致します (※2) 。このことから、[HP99] 159の降着円盤の源は、ヘリウムの層が剥き出しになった恒星であることが分かります。

※2…太陽より重い恒星では、CNOサイクルと呼ばれる炭素・窒素・酸素の合成が循環するサイクル反応が発生する。窒素はCNOサイクルで生成される主要な元素の1つである。

なお、[HP99] 159に対するヘリウムの降着速度はかなり遅いと推定されているため、Ia型超新星が起こるまで質量が蓄積されるのかどうかは分かっていません。しかし、Ia型超新星より少し弱い爆発現象である「Iax型超新星」ならば発生する可能性があります。

Ia型超新星全体の約30%を占めるIax型超新星は爆発の威力が低いため、伴星から剥ぎ取られる物質の量も少なくなります。このため、Ia型超新星でヘリウムのスペクトル線が見つからないのは、少なくともその一部では観測できないほどわずかなヘリウムしか放出されていないため、と説明することができます。

なお、モデル計算に基づき、[HP99] 159のようにガスの流入量が少ない場合、ヘリウムの燃焼は不安定であると推測されています。その一方で、[HP99] 159の過去50年分の観測データからは、不安定な燃焼に由来するX線強度の極端な変化は観測されていません。この矛盾については、[HP99] 159が高速で自転しているために、ヘリウムの降着が安定化しているからだと推定されています。

いずれにしても、[HP99] 159のようにヘリウムの存在と燃焼が詳しく観測された白色矮星はほとんどありません。Greiner氏らは、[HP99] 159のように安定したヘリウム燃焼をしている白色矮星は天の川銀河に30個ほど存在し、大マゼラン雲にも数個存在すると推測しています。追加の観測で[HP99] 159のような白色矮星が発見されれば、さらに多くのことが分かるようになるかもしれません


2023年4月20日
soraeより

単独の白色矮星の質量

Posted by moonrainbow on 16.2023 白色矮星   0 comments   0 trackback
単独の白色矮星の質量を初めて測定

LAWD 37
重力マイクロレンズ効果
LAWD 37が噴出重力マイクロレンズ効果の概念図。手前の白色矮星の重力によって時空が歪められ、背景にある遠方の星から届く光の進路が曲げられ、実際の位置からずれて見える(提供:NASA 、ESA、アン・フィールド (STScI))

白色矮星が遠くの星の手前を通過する際に「重力マイクロレンズ現象」を利用して、連星でない白色矮星の質量が初めて直接測定された

白色矮星は太陽のような比較的軽い星が一生を終えた姿だ。支えている。 というか極限状態の天体の内部については今も謎が多い。

白色矮星の性質を理解するにはその質量を知ることが重要だが、恒星の正確な質量は2つの星が連星になっている場合にしかわからない。数百~数千年と長いと、公転運動のごく一部しか観測できないため、精度よく大量を求めるのは難しい。

はえ座にある「LAWD 37」は地球から15光年と比較的近く、スペクトルなど多くの観測データが得られている白色矮星の一つだが、連星ではないためにその量はわかっていなかったた。

米・カリフォルニア大学サンタクルーズ校のPeter McGillさんたちの研究チームは、LAWD 37が星の手前を通過するときに、LAWD 37の重力によって背景の星の見かけの位置がわずかに変化する「重力マイクロ「レンズ効果」をハッブル宇宙望遠鏡(HST)で数年連続観測した。「レンズ」となる天体が重いほど背景の星の位置ずれも大きくなったので、このずれの様子を精密に測定することでLAWD 37の重量を計算できる。

観測の結果、LAWD 37の質量は太陽の0.56倍であることが分かった。これは理論的に予測されている白色矮星の質量ともよく一致している。

「このような現象はまれで、星の位置ずれの大きさも微々たるものです。例えば、私たちが測定したずれの大きさは、月面に置いた自動車の長さを地球から測るようなものです今回、LAWD 37の重量を正確に測定できたことで、白色矮星の重量と半径の関係を確認でき、死を迎えた星の内部という極限状態にある縮退物質の理論を検証できます」 (マギルさん)。

研究チームの境界である宇宙境界科学研究所(STScI)のKailash Sahuさんは、2017年には別の白色矮星「Stein 2051 B」による重力マイクロレンズ効果を検出しているが、この白色矮星は連星だった(参考:「重力レンズ現象で計測された白色矮星の質量」)。今回の観測は、単独の白色矮星の質量が重力マイクロレンズ効果で初めて直接測定された例となる。は完全に単独の星であり、この観測は白色矮星の質量測定にとって新たな基準となります」(Sahuさん)


ハッブル宇宙ステーションで撮影
背景の星の前を通過するLAWD 37
()ハッブル宇宙ステーションで撮影したLAWD 37。表面温度が約10万度と高温のため、青白い輝きを放っている。(右)2019年5月から2020年9月にかけて、左背景の星の手前をLAWD 37が通過する様子を連続撮影したもの。青い曲線は背景の星を基準としたLAWD 37の位置の変化を示す。年周視差によって波形の軌道を描いている。画像クリックで拡大表示(提供:NASA、ESA、Peter McGill (UC Santa Cruz、IoA)、Kailash Sahu (STScI); 画像処理:Joseph DePasquale (STScI))

今回、研究チームはヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」のデータによって、LAWD 37が2019年11月に星の手前を通過することを事前に知ることができました。になったのは、約20億個もの天体の正確な位置と運動が「ガイア」によって得られたおかげだ。

さらに研究チームはジェームズ・ウェッブ宇宙境界を使い、別の白色矮星「LAWD 66」によって星の位置が変化する現象を2022年に観測している。この現象による星の位置ずれは2024年に最大となる決まりで、今後数年かけて観測を続ける予定だ。

「『ガイア』はこの分野の研究を一変させました。ガイアのデータを使って白色矮星の通過現象がいつ起こるかを予測し、後から実際に現象を観測できるのは重力です。効果の観測を続けて、さらに多くの種類の星で質量測定を行いたいと考えています」(McGillさん)


2023年2月10日
AstroArtsより

白色矮星「HD 149499B」

Posted by moonrainbow on 05.2022 白色矮星   0 comments   0 trackback
白色矮星「HD 149499B」の大気中から「セシウム」を初めて検出

白色矮星に重い元素
【▲ 図: 白色矮星に重い元素が存在すること自体も謎ですが、これは白色矮星を周回していた岩石惑星が衝突することによって供給された、と考えられています。しかし、白色矮星の強い重力では短期間しか表面に存在しないはずであり、なぜ長期間存在するのかは謎に包まれています。 (Image Credit: CfA/Mark A. Garlick) 】

太陽のような軽い恒星は、寿命の最期に「白色矮星」というコンパクト天体を残します。白色矮星は直径が地球ほどしかないものの、質量は太陽と同じくらいという、非常に高密度で表面重力の強い天体です。この重力の強さによって、白色矮星の表層部では元素の分離が強く発生します

白色矮星の本体には恒星だった頃の核融合反応で生じた酸素や炭素が存在する一方で、表層部には水素とヘリウムでできた大気が存在すると見られています。軽い元素である水素やヘリウムは白色矮星の最表層部に存在できる一方で、それよりも重い元素は強い重力に引き寄せられ、白色矮星の内部へと入り込んでしまいます。このため、白色矮星の大気を観測すると、原則的には水素とヘリウムしか検出されないはずです。

ところが現実には、高温の白色矮星の大気からは水素とヘリウム以外の重い元素も見つかっています。特に、28番元素の鉄よりも重い元素は十数種類発見されており、2005年に3つの白色矮星からゲルマニウムが見つかって以降は、新しい元素の発見が連続して報告されています


宇宙望遠鏡科学研究所 (STScI) のPierre Chayer氏らの研究チームは、表面温度が約5万℃という高温の白色矮星「HD 149499B」の大気成分を観測しました。その結果、55番元素の「セシウム」を、白色矮星の大気から初めて検出することに成功しました。その存在量はヘリウムとの比率で「-5.45」であると測定されています。これは、「ヘリウムの数万分の1程度の割合でセシウムが存在する」ことを示しています

これまでの観測では、白色矮星の大気で検出された鉄よりも重い元素の量は、恒星の大気と比較して過剰に多いことが知られています。例えば大気からゲルマニウムが検出された白色矮星「Feige 86」では、金と白金が太陽と比較して3倍から1万倍も多く含まれています。今回、セシウムでも同様に過剰な存在量が観測されたことで、白色矮星の大気に重い元素が過剰に存在することは一般的であると考えざるを得ません。

一方で、白色矮星の強い重力は、重い元素を大気から本体へと短期間で沈み込ませてしまい、スペクトル解析では元素の存在が隠されてしまうはずです。重い元素の供給源そのものは、最近になって白色矮星に衝突した岩石惑星 (もしくはその残骸) の可能性があるものの、これらすべての白色矮星でつい最近衝突が起きたというのは、あり得そうもないほどの偶然です。したがって、白色矮星の大気中に重い元素が存在するためには、白色矮星の強い重力に逆らって重い元素を “浮揚” させる力が必要となるはずです


現在、白色矮星で重い元素が見つかる理由の有力な候補は「放射浮揚 (Radiative Levitation)」です。原子は白色矮星のように高温の環境ではイオン化して、イオン化していない (中性の) 時よりも光子 (電磁気力を媒介する素粒子) を吸収しやすくなります。吸収された光子のエネルギーの一部が原子の運動エネルギーに変換されることで、原子が “蹴り上げられ” 、大気中に存在できるようになります。この効果は、特に重い元素であるほど強くなる傾向にあります。また、放射浮揚による光子の吸収効果は波長が短いほど強く働くため、波長の短い光子を多く放出している高温の白色矮星で見られることとも一致します。

放射浮揚は長年に渡る有力候補ではあるものの、その裏付けとなる決定的な証拠や観測結果はまだありません。実際に放射浮揚が起きている場合は極紫外線やX線が吸収されるため、その波長で観測を行えば予測される放射量と比べて大幅に暗く見えるはずであり、今後の観測によって証明される可能性があります


Source

P. Chayer, et.al. “Detection of cesium in the atmosphere of the hot He-rich white dwarf HD 149499B”. (arXiv)

2022-11-28
Soraeより

白色矮星「G238-44」

Posted by moonrainbow on 26.2022 白色矮星   0 comments   0 trackback
恒星の死がもたらす惑星系規模の混乱を白色矮星の観測データから推定

白色矮星「G238-44」
【▲ 白色矮星「G238-44」の想像図(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))】

こちらは「こぐま座」の方向約86光年先にある白色矮星「G238-44」の想像図です。星系の中心で輝くG238-44に向かって、幾つもの小天体が落下していく様子を描いています

白色矮星とは、太陽のように比較的軽い恒星(太陽の8倍以下の質量)が赤色巨星へと進化した後に、ガスを失ってコア(核)だけが残った天体のこと。地球と同じくらいのサイズで太陽の半分~1個分の質量を持つとされる、高密度な天体です。白色矮星は中心部で核融合反応を起こさず余熱で輝くのみなので、「恒星としての死」を迎えた姿とも言えます。

赤色巨星に進化した恒星の外層は大きく膨張し、周囲にガスを放出しながら白色矮星に進化するとみられています。もしもその恒星の周囲に惑星などが存在していた場合、この過程で膨張した恒星に飲み込まれたり、軌道が変化して星に落下したりすると考えられています


■金属を含む岩石天体と氷天体の両方が落下したことを示す初の証拠

2022年6月にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を卒業したTed Johnsonさんを筆頭とする研究チームは、「ハッブル」宇宙望遠鏡などによる観測データをもとに、G238-44の大気における窒素・酸素・マグネシウム・ケイ素・鉄といった元素の存在量を測定しました。その結果、地球や小惑星のように金属を含む岩石天体と、彗星のような氷天体の両方が落下した証拠が得られたといいます。

研究チームによれば、G238-44の大気からは非常に高い存在量の鉄と、予想外に高い存在量の窒素が検出されました。豊富な鉄は地球のような岩石惑星の中心にある金属コアの証拠であり、窒素は氷天体の存在を意味すると研究チームは結論付けています。Johnsonさんは「データに最も適合するのは、水星のような天体由来の物質と、彗星のように氷と塵でできている天体由来の物質が、約2対1の比率で混合しているケースです」と語ります。

白色矮星に落下した天体に由来すると思われる物質が白色矮星の大気から検出されたのは今回が初めてではなく、過去には落下した岩石惑星の組成を推定した研究成果も発表されています。太陽系外惑星の組成を直接調べることはできませんが、白色矮星の大気中に存在する元素を分析することで、かつて存在していた系外惑星の組成を探ることができるのです。

しかし今回の研究では、G238-44には岩石天体だけでなく氷天体も落下したと結論付けられました。2種類の天体が白色矮星に落下した可能性が示されたのは、今回が初めてのことだといいます。研究論文の共著者であるUCLAのBenjamin Zuckerman教授は「この白色矮星(G238-44)で検出された様々な元素の存在量は、岩石質の天体と揮発性物質が豊富な天体の両方に由来しているように見えます。これは何百もの白色矮星に関する研究でも初の事例です」とコメントしています


予想されるG238-44星系の模式図
【▲ 予想されるG238-44星系の模式図(日本語表記は筆者が追加)。白色矮星の周囲には破壊された天体でできた降着円盤が形成されている。星から離れた領域では巨大ガス惑星が生き延びているかもしれない。※元バージョンはこちら(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))】

金属を含む岩石天体と氷天体の両方が落下したことを示す証拠は、恒星の死がもたらす混乱の規模を理解する助けになりました。

太陽に近付くにつれてガスを放出する彗星の活動からもわかるように、恒星に近い領域では氷は揮発して失われてしまいます。太陽系の場合、太陽に近い小惑星帯には岩石質の小惑星が分布し、太陽から遠いエッジワース・カイパーベルト以遠には氷を主成分とする小天体が分布しています。

岩石天体と氷天体の両方が落下したということは、惑星系の幅広い領域から白色矮星に向かって天体が落下したことを意味します。UCLAの発表によると、星は白色矮星としての新たな生涯を開始してから1億年以内に、恒星に近い領域と遠い領域(小惑星帯とエッジワース・カイパーベルトのような)の両方から天体を捕獲できる可能性が、今回の研究では確認されたといいます。

今から数十億年後には、太陽も赤色巨星を経て白色矮星に進化すると予想されています。太陽に近い地球などの岩石惑星は蒸発するいっぽうで、木星から海王星までの太陽から遠い惑星は生き延びる可能性があり、木星の重力によって軌道を乱された小惑星は白色矮星になった太陽へ落下していくだろうとJohnsonさんは語ります。未来の太陽系は、研究チームが調べたG238-44の惑星系にとても良く似た運命を辿ることになるようです


Image Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI)

2022-06-23
Soraeより
 

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