fc2ブログ

超新星1987A

Posted by moonrainbow on 10.2020 中性子星   1 comments   0 trackback
超新星1987Aの塵の輝き、幻の中性子星か

超新星1987A
塵の集まり
(左)アルマ望遠鏡による超高解像度観測から発見された、周囲より温度の高い塵の集まり。(右)(赤)アルマ望遠鏡が電波でとらえた冷たいガスと塵の分布、(緑)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した可視光線、(青)X線天文衛星「チャンドラ」がとらえたX線の広がり。リング状の構造は超新星爆発によって生じた衝撃波が宇宙空間を進み、周囲の物質と衝突しながら広がっている様子を示す(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), P. Cigan and R. Indebetouw; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton; NASA/ESA)

1987年に大マゼラン雲に出現した超新星爆発のあとには中性子星が残されたと考えられている。この中性子星はまだ見つかっていないが、塵の中に潜んでいる証拠をアルマ望遠鏡がとらえた

超新星1987Aは1987年2月23日に、天の川銀河から16万光年の距離にある矮小銀河「大マゼラン雲」の中で出現した。この超新星爆発は質量が大きな恒星が寿命を迎えて起こしたものだと考えられていて、そのあとには高密度天体である中性子星が残された可能性が高い。日本の実験装置「カミオカンデ」が超新星1987Aに伴うニュートリノを検出したことからも、ブラックホールではなく中性子星が作られたのは確かだと考えられている。そのため、超新星1987Aの出現以降、中性子星探しが行われてきたが、その確かな証拠はまだ見つかっていない。

2014年にアルマ望遠鏡による観測で、超新星残骸の中心部には大量の塵が存在することが判明した(参考:「超新星爆発で作られた大量の固体微粒子を直接観測」)。英・カーディフ大学のPhil Ciganさんと松浦美香子さんたちの研究チームは、この塵をアルマ望遠鏡を使ってより高い解像度で観測した。

その結果、超新星1987Aの中心近くに温度の高い塵の集まりが見つかり、その場所が中性子星の位置として想定されている場所と一致することがわかった。塵が温まって電波を出しているということは、熱源である中性子星がその中に隠れていると考えられる。ただし、塵の輝きが中性子星によるものとしては明るいという疑問点もあった。

この疑問に対して、メキシコ国立自治大学のDany Pageさんたちは理論研究で、誕生直後の中性子星であれば観測される明るさに達することが可能であることを示した。中性子星によって塵のかたまりが加熱されているという解釈を支持する結果である。

超新星爆発のシミュレーションでは、爆発によって中性子星が秒速数百kmもの速度ではじき出されることが予測されている。実際に、アルマ望遠鏡で観測された温かい塵の塊は、周囲のリングの中心よりわずかにずれた位置にあり、爆発から30年あまりのうちに中性子星が高速で移動したという予測と合致する。また、温度に関しては、超新星爆発から間もない時期の中性子星の温度は500万度と予測されており、観測で推測される塵の温度を説明するには十分だ。

超新星1987Aのあとに本当に中性子星が残されているのだとすれば、その年齢はわずか33歳で、これまでに発見された中で最も若い中性子星ということになる。中性子星を直接観測できるようになれば研究の正しさが確実に証明できるが、超新星残骸の塵やガスが晴れ上がるには、まだ数十年かかると考えられている


2020年8月4日
AstroArtsより

中性子星「Swift J1818.0-1607(以下、Swift J1818)」

Posted by moonrainbow on 28.2020 中性子星   0 comments   0 trackback
わずか240歳の中性子星

XMM-Newton1607.jpg
XMM-Newtonで撮影されたSwift J1818.0-1607。3つのエネルギー領域のX線画像を擬似カラー合成(提供:ESA/XMM-Newton; P. Esposito et al. (2020))

わずか240年ほど前の超新星爆発で形成されたと思われる中性子星が見つかった。きわめて強い磁場を持つ「マグネター」としては観測史上最も若い

2020年3月12日、NASAのガンマ線バースト観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」がいて座の方向で強いX線のバーストをとらえた。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のX線衛星「XMM-Newton」やNASAの「NuSTAR」などによる追観測から、この天体「Swift J1818.0-1607(以下、Swift J1818)」のX線放射に1.36秒周期の変動が見られることがわかった。さらに地上の電波望遠鏡による追観測で、電波でもX線と同じ周期のパルスを放射していることが明らかになり、この天体がパルサーであることが判明した。

パルサーの正体は中性子星と呼ばれる天体で、太陽の8倍より重い恒星が一生の最期に超新星爆発を起こした後に残る、超高密度の天体である。パルサーは高速で自転しながら強い電磁波を放射するため、その自転周期に同期した電磁波のパルスが観測される。追観測のデータから、Swift J1818は太陽の約2倍の質量を持ち、直径は約25kmで、地球からの距離は約1万6000光年であることがわかった。

さらに、Swift J1818は通常の中性子星よりも磁場が数千倍も強い「マグネター」と呼ばれるタイプの天体であることも明らかになった。マグネターは宇宙に存在する天体の中で最も強い磁場を持ち、その強さは人類が作り出した最強の磁石をさらに1億倍も上回る


マグネターのイラスト
マグネターのイラスト。質量の重い恒星が超新星爆発を起こした後、ほぼ中性子だけからなる超高密度のコンパクトな天体が残される。これが中性子星で、特に磁場の強い中性子星をマグネターと呼ぶ。マグネターは強い磁場をエネルギー源としてX線などのバーストを引き起こす(提供:ESA)

しかも、Swift J1818はこれまでに見つかっているマグネターの中で最も年齢が若いことも明らかになった。パルサーは自転をエネルギー源にして強い電磁波を生み出し、宇宙空間に放射しているため、その自転周期はだんだん遅くなっていく。この性質を利用し、現在のパルス周期とその遅れの度合いを測定できれば、パルサーが誕生してからどのくらい経っているか(パルサーの特性年齢と呼ぶ)を大まかに見積もることができる。

この方法でSwift J1818の特性年齢を見積もったところ、約240年という結果になった。つまり、Swift J1818はアメリカ合衆国建国やフランス革命、日本では天明の大飢饉や寛政の改革などがあった時代に起こった、天文学的にはつい最近とも言える超新星爆発の名残だということになる。ただし、天の川銀河の中で起こった超新星のうち、歴史上記録が残っているのは1604年の「ケプラーの超新星」(SN 1604、距離約2万光年)が最後で、Swift J1818を作り出した超新星は記録されていない


中性子星はこれまでに約3000個見つかっているが、そのうちマグネターは31個しかない。Swift J1818はこの中で最も若いマグネターである。マグネターのような極限状態は地上の実験では再現できないため、こうした天体は超高密度・超強磁場といった極端な条件下の物理学を理解するための天然の実験室として、非常に重要なものとなる。

「この天体は私たちが観測したことのない、マグネターが生まれたばかりの初期段階を見せてくれています。こうした天体の形成過程を理解できれば、これまで見つかっているマグネターの個数と中性子星の個数がなぜこれほどかけ離れているのか、といった疑問も解けるようになるでしょう」(スペイン・宇宙科学研究所 Nanda Reaさん)


2020年6月23日
Soraeより

中性子星の直径は「20.8~23.8km」と算出

Posted by moonrainbow on 21.2020 中性子星   0 comments   0 trackback
太陽1.4個分の中性子星の直径が22キロと算出される

中性子星とハノーファーを比較したイメージ図
中性子星とハノーファーを比較したイメージ図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)

超新星爆発によって誕生するとされる高密度の天体「中性子星」。今回、2017年に観測された中性子星どうしの合体を観測したデータから、その直径をこれまでにない精度で割り出した研究成果が発表されました

■典型的な中性子星の直径は「20.8~23.8km」と算出

Collin Capano氏(アルベルト・アインシュタイン研究所、ドイツ)らの研究チームは今回、太陽1.4個分の質量がある典型的な中性子星の直径を「約22km」と算出しました。誤差を考慮すると20.8~23.8kmで、これは従来の研究によって求められた数値よりも正確なものとされています。

上の画像は、典型的な中性子星とアルベルト・アインシュタイン研究所があるドイツの都市ハノーファー(人口約53万8000人。2018年末時点、Wikipediaより)を比較したイメージ図。22kmというフルマラソンなら1往復できてしまうくらいの直径に、太陽より4割も大きな質量が押し込められているわけです。

今回の研究では、2017年8月に観測された「GW170817」のデータが用いられました。GW170817は中性子星どうしの合体にともなって発生する爆発現象「キロノバ」だったことが確認されており、重力波望遠鏡「LIGO」「Virgo」による重力波の検出をはじめ、可視光、赤外線、紫外線、X線といったさまざまな波長の電磁波でも観測されています。

GW170817では、私たちの生活に身近な元素でもある金や、エネルギー源としてだけでなく兵器にも用いられるウランといった「鉄より重い元素」が生成されるプロセス(r過程)が実際に引き起こされたことを支持する観測結果も得られており、同じ観測対象を電磁波や重力波のように複数の手段で観測する「マルチメッセンジャー天文学」が大きな成果をもたらした実例のひとつに数えられています


■ほとんどのブラックホールは中性子星を「丸呑み」することも判明

また、これまで重力波望遠鏡によって検出されてきた重力波のなかには、今回の研究成果に結びついた中性子星どうしの合体や、ブラックホールどうしの合体だけでなく、ブラックホールと中性子星の合体を示すものも検出されています。

今回の研究では、ブラックホールと中性子星が合体する過程についても分析が行われました。中性子星がブラックホールによって飲み込まれる前に破壊されることがあれば、キロノバのように電磁波で観測できる可能性があるからです。

しかし分析の結果、飲み込む前に中性子星を破壊するのは「とても小さいブラックホール」や「高速で自転しているブラックホール」に限られることが判明。ほとんどのブラックホールは中性子星を壊すことなく、いわば「丸呑み」してしまうとされており、重力波の検出後に電磁波で観測できる可能性は低いとみられています


Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center

2020-03-17
Soraeより

「PSR J0740+6620」(「MSP J0740+6620」)と呼ばれるパルサー

Posted by moonrainbow on 27.2019 中性子星   0 comments   0 trackback
ぎりぎりブラックホール未満?観測史上で一番重い中性子星を発見

中性子星の想像図
中性子星の想像図(Credit: Mark Garlick/University of Warwick)

アメリカのグリーンバンク天文台は2019年9月16日、観測史上最も重い中性子星を発見したとするThankful Cromartie氏らの研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、同日付でNature Astornomyに掲載されています

■太陽2個分の質量が直径30kmの球体に凝縮

研究対象となったのは「PSR J0740+6620」(または「MSP J0740+6620」)と呼ばれるパルサーで、白色矮星と連星を形成しています。パルサーとは、恒星の超新星爆発によって誕生した高密度の天体である中性子星のうち、電波、光(赤外線や紫外線も含む)、X線といった電磁波がパルス状に観測される天体を指す言葉です。

PSR J0740+6620の自転周期は、わずか2.89ミリ秒しかありません。1秒あたりの自転回数は約346回に達します。このように自転周期がミリ秒(1000分の1秒)台と極めて短いパルサーは、特にミリ秒パルサーとして区別されています。

今回Cromartie氏らの研究チームは、グリーンバンク天文台に設置されている直径100mの電波望遠鏡を使った観測データなどを用いて、PSR J0740+6620の質量を測定することに挑戦しました。その方法は、規則正しく地球に届くパルサーの電波に現れる、わずかな変化を検出するというものです。

連星のペアである白色矮星がパルサーの手前を横切ると、白色矮星の重力がもたらす相対論的効果によって、パルサーの電波が地球に届くまでの時間にわずかな遅れが生じます。これは「シャピロ遅延」と呼ばれる現象で、白色矮星に限らず太陽など他の天体でも生じます。

今回の観測では1000万分の1秒台という非常にわずかな遅れから、まずは白色矮星の質量が求められました。連星を構成するもう片方のペアであるパルサーの質量は、この白色矮星の質量をもとに導き出すことができます。

観測と分析の結果、白色矮星の質量は太陽の重さの約26パーセントと判明しました。そしてペアを成すパルサーは、直径わずか30kmほどのサイズで太陽およそ2.17個分の重さを持つことがわかったのです。

皇居を中心に直径30kmの円を描くと、東京都の23区がおおむねそのなかにおさまります。PSR J0740+6620は、それほどのサイズに太陽2個分以上の質量が凝縮されているのです


シャピロ遅延を利用した観測のイメージ図
シャピロ遅延を利用した観測のイメージ図。2.89ミリ秒ごとに繰り返し届くパルサーの電波に生じた遅れをもとに質量を算出する

■ブラックホールになってしまう限界はどこ?

パルサーを含む中性子星の性質には、超流体が流れているともされる内部の様子をはじめ、未解明の部分が数多くあります。そのひとつが、ブラックホールとの境界です。

中性子星は自身の質量がもたらす強烈な重力と、構成する物質がもたらす斥力のバランスによって形を保っています。伴星から物質を奪ったり他の天体と合体したりするなどして中性子星の質量が増えると、どこかの時点で重力に逆らいきれずブラックホールになると考えられていますが、その限界となる質量がどれくらいなのか、正確な値はわかっていません。

発表では、重力波検出器「LIGO」などによる中性子星どうしの合体にともなう重力波の観測によって、限界の質量についての研究にも進展があったとしています。今回判明した太陽2.17個分という重さは、LIGOを用いた研究が示唆する限界の質量にきわめて近いとみられています。観測された質量の最高記録が更新されたことで、謎めいた中性子星の理解が深まることが期待されています


Credit: BSaxton, NRAO/AUI/NSF

2019/9/18
Soraeより

中性子星からジェットが噴き出している

Posted by moonrainbow on 14.2018 中性子星   0 comments   0 trackback
従来の理解に反する、強い磁場を持つ中性子星からのジェット

ジェットのイラスト
中性子星周囲の磁力線、降着円盤、外へ向かって放出されるジェットのイラスト(提供:ICRAR/Universiteit van Amsterdam)

電波望遠鏡VLAによる観測で、強い磁場を持つ中性子星からジェットが噴き出していることが確かめられました。従来はこのような天体からジェットは放出されないと考えられており、新たな種類のメカニズムが働いている可能性があります

2017年10月、NASAの天文衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」がX線で突然明るくなった天体「Swift J0243.6+6124」(以後Sw J0243)をカシオペヤ座の方向に発見しました。その正体は、大質量の星が一生の最期に起こした超新星爆発のあとに残った、高密度の天体である中性子星です。Sw J0243は太陽よりも質量が大きい星と連星系をなしており、その伴星から引き込んだ物質によって、Sw J0243の周囲には回転する降着円盤が形成されています

オランダ・アムステルダム大学のJakob van den Eijndenさんたちの研究チームは、米・国立科学財団のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群VLAを使ってSw J0243を2018年1月まで継続観測しました。そして、日数が経つにつれてX線と電波の放射が弱くなっていったことや電波放射の特徴から、この電波が高速のジェットによって放射されているものであると確信しました

降着円盤を持つ中性子星では、光速に近い速度まで加速されたジェットが円盤の垂直方向(中性子星の両極方向)に放射されます。ただし、Sw J0243のように非常に強力な磁場を持つ中性子星の場合は、その磁場の影響でジェットの形成が妨げられると考えられてきました。「Sw J0243におけるジェットの発見は、長年のアイディアとは相反するものです」(van den Eijndenさん)

このような現象が見られる理由として、研究チームでは、降着円盤内におけるジェットの発生領域が中性子星から離れており、磁場の影響が弱いという可能性を挙げています

別の可能性として、ジェットを加速するエネルギーが中性子星の自転によってもたらされているというアイディアも考えられています。「自転によってエネルギーを獲得するというアイディアでは、ゆっくり自転する中性子星からのジェットはかなり弱いものとなると予測されています。これはまさに、Sw J0243に見られるものと一致しています」(アムステルダム大学 Nathalie Degenaarさん)。今後もし同種の天体が見つかれば、中性子星の自転でジェットが形成されるという説を確かめられるかもしれません

また、Sw J0243からのジェットの発見は、同様に強い磁場を持つ「超高輝度X線パルサー」と呼ばれるカテゴリーの天体もジェットを放射する可能性も示唆しています。「今回の発見は、強い磁場を持つ天体におけるジェットの形成に関する考えを改める必要性を示しただけでなく、エキサイティングで新しい研究分野の幕を開くものでもあります」(Degenaarさん)

2018年10月3日
AstroArtsより
 

プロフィール

moonrainbow

Author:moonrainbow
昔、"地球の旅人"の頃




服と鞄と雑貨の販売をしています

カテゴリ

カレンダー

08 | 2023/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード