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中性子星の「山」の高さはどれくらい?

Posted by moonrainbow on 06.2021 中性子星   0 comments   0 trackback
 最新の研究により推定

中性子星の想像図
【▲ 中性子星の想像図(Credit: ESO / L. Calçada)】

イギリスの王立天文学会は、全国天文学会議2021(National Astronomy Meeting 2021)において、サウサンプトン大学の博士課程の学生であるファビアン・ギティンスさん率いる研究チームが、新しいコンピューターモデルに基づいて、中性子星の地表面に存在する、いわゆる「山」の高さを新しく推定する研究成果を報告したと発表しました。

太陽質量の8倍以上の質量を持つ恒星はその最後に大爆発を起こします。いわゆる超新星爆発です。

そして、その後には、ブラックホールや中性子を主成分にする中性子星が残されます。

このようなでき方からも解るように中性子星は非常に高密度な天体です。直径20kmほどの大きさに太陽ほどの質量が詰め込まれています。

そのため、その地表面(原子核と電子からなる固体の地表面があると考えられています)における重力は、非常に強く、凹凸があればほとんどならされてしまいます。つまり中性子星はほぼ完全な球形をしています。

とはいえ、中性子星の地表面に凹凸が全くないというわけではありません。では、中性子星の地表面にある、いわゆる山の高さはどれくらいになりうるのでしょうか?

これまでの研究では中性子星の山の高さは数センチメートルほどになりうると考えられてきました。

しかし、研究チームがより現実の中性子星に近いコンピューターモデルをつくり計算したところ、中性子星の山の高さはせいぜい数分の1ミリメートルほどにしかなりえないことが解りました。これはこれまでの推定の1/100ほどの高さということになります。

実は、高速回転している中性子星に山のようなものがあると、重力波が発生します。そして、この重力波を観測すれば、謎の多い中性子星についてさまざまな情報を得ることができるわけですが、残念ながら、現在、まだこのような重力波の観測には成功していません。ちなみに、重力波とは、重い天体などが加速度運動したときに発生する時空の微小な揺れで、「時空のさざ波」とも呼ばれています。

ファビアンさんによれば、今回の研究成果から、高速回転する中性子星からの重力波の観測は、これまで考えられていたよりも、より難しいものと考えられるといいます。

日本が誇る重力波望遠鏡「KAGRA」などのこれからの進歩に期待が高まります


Image Credit: ESO / L. Calçada

2021-07-29
Soraeより

中性子星の大きさ

Posted by moonrainbow on 23.2021 中性子星   0 comments   0 trackback
中性子星の直径は従来の推定値よりも数km大きい可能性が示される

中性子星(右)とニューヨークのマンハッタン島
【▲ 中性子星(右)とニューヨークのマンハッタン島(中央)周辺のサイズ比較図。ここでは中性子星の直径が従来の推定値である約20kmと仮定されている(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)】

インディアナ大学ブルーミントン校のBrendan Reed氏らの研究グループは、高密度な天体である「中性子星」の直径について、従来の推定値よりも大きい可能性を示した研究成果を発表しました

中性子星とは、太陽と比べて8倍以上重い恒星が超新星爆発を起こした際に形成されると考えられている、中性子が主成分の高密度な天体です。その一部は「パルサー」(高速の自転にともない点滅するように周期的な電磁波が観測される中性子星の一種)や「マグネター」(典型的な中性子星と比べて最大1000倍も強力な磁場を持つ)としても知られています。

今回研究グループが推定値を算出した平均的な中性子星(質量は太陽の1.4倍)の直径は、26.5~28.5kmです。これは約20~24kmとされていた従来の推定と比べて数km大きく、体積はざっと2倍前後大きいことを意味します。発表では今回の成果について、中性子星のサイズに関する理論を再考する必要があるかもしれないと言及しています。

直径の算出には、アメリカのトーマス・ジェファーソン国立加速器施設で実施された、鉛(208Pb)の原子核における中性子スキンの精密な厚さの測定データが用いられました。中性子スキンとは、陽子よりも中性子のほうが多い原子核の表層にある、主に中性子だけでできた部分のこと。研究グループによると、鉛(208Pb)の中性子スキンの厚さは0.283±0.071フェムトメートル(1フェムトメートル=1兆分の1ミリメートル)とされています。

角砂糖1個分のサイズで数億トンもの質量があるという高密度な中性子星の内部を実験で再現することはできませんが、そのサイズや構造についてのヒントが得られる可能性があるとして、中性子スキンは研究者から注目されています。研究に参加したフロリダ州立大学のJorge Piekarewicz氏は「中性子星の性質についての知見が得られる実験室で可能なことは何でも役立ちます」とコメントしています。

なお、中性子星どうしの合体にともなう爆発現象「キロノバ」では、鉄よりも重い元素が生成される「r過程」と呼ばれるプロセスが引き起こされると考えられています。私たちが住む地球上の環境とはかけ離れた中性子星の世界ですが、文明活動と関わりの深い金などの元素を介して、人類と中性子星はつながっているとも言えるかもしれません


Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center

2021-05-17
Soraeより

中性子星「Swift J1818.0-1607」

Posted by moonrainbow on 14.2020 中性子星   0 comments   0 trackback
マグネターと電波パルサーをつなぐ中性子星

マグネターと磁力線の想像図
マグネターと磁力線の想像図(提供:Ryuunosuke Takeshige)

宇宙で最も強い磁場を持つ中性子星の一種「マグネター」であると同時に、中性子星の大半を占める「電波パルサー」の特徴も示す天体が見つかった

大質量の恒星がその一生を終えて超新星爆発を起こすと、ブラックホールや中性子星といったコンパクトな高密度天体が残る。標準的なサイズの中性子星の場合、太陽質量の1.4倍ほどの物質が半径約12kmに押し込められており、周辺は強い磁場を帯びている。

これまでに、天の川銀河を中心に2800天体ほどの中性子星が見つかっており、特徴によって区別できる複数の「種族」に分けられている。その種族の中で最も磁場が強い天体は「マグネター」と呼ばれ、その表面磁場は100億~1000億(1010-11)テスラにも達する。これは地球の地磁気(50マイクロテスラ=5×10-5テスラ程度)の1000兆倍という途方もない強さであり、マグネターは宇宙で最強の磁石星といえる


その強い磁場のため、マグネターでは光子が2つに分裂したり、真空にもかかわらず偏光に応じて屈折率が変化したりする(真空の複屈折)など、地上では観測できない現象が起こっていると考えられている。このように興味深く、天文学上の重要な研究対象でありながら、これまでに知られているマグネターの数は20天体ほどしかなかった。

2020年3月12日、NASAのガンマ線バースト観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」が、いて座の方向に継続時間10ミリ秒ほどのX線バースト現象を検出し、その位置に「Swift J1818.0-1607(以下、Swift J1818)」が発見された。

理化学研究所のHu Chin-Pingさんたちの研究グループは国際宇宙ステーションに搭載された中性子星観測装置「NICER」を用いて、X線バーストの検出から4時間後にSwift J1818の追跡観測を開始し、X線が1.36秒周期で変化していることを発見した。その後の継続観測で周期変化率も測定し、情報を組み合わせることで表面磁場の強さを270億(2.7×1010)テスラと見積もり、Swift J1818が1.36秒周期で自転するマグネターであることを突き止めた。1.36秒という自転周期は、これまでに知られている古典的なマグネターの中で最も速いものだ。

中性子星の大多数を占める「電波パルサー」は周期1秒前後の高速な自転に伴って周期的な電波パルスを放出するが、一般にマグネターが電波パルスを出すことは稀だ。今回のSwift J1818は電波の信号も検出される珍しい天体であり、電波でも同様の周期性が確認された。

その後もSwift J1818のX線のスペクトルやパルス周期をモニタリング観測したところ、X線で増光を始めてから8日後と14日後に、自転の周期が急激に変化する「グリッチ」と呼ばれる現象が検出された。グリッチは中性子星の内部状態が変化することで発生すると考えられており、マグネターの内部を理解する上で重要な観測データとなる。また、2回のグリッチの強さは、既知のマグネターのグリッチの中でも強く、発生間隔も短いことから、Swift J1818の活動性が高い時期に観測されたものと考えられている。50日間の観測で、Swift J1818のX線は50%ほど減少した


Swift J1818 のX線フラックスと自転周期
Swift J1818 のX線フラックスと自転周期、および周期変化率の変化のグラフ。上段はX線フラックス、中段は自転周期、下段は周期変化率の変化を示す。左から1つ目と2つ目の青破線は、8日後と14日後に観測された自転周期の急激な変化(グリッチ)に対応(提供:理化学研究所リリース、以下同)

HuさんたちはSwift J1818の年齢を420歳と推定している。これは中性子星の中でも極めて若い部類だ。また、回転エネルギーの減少率はマグネターとしては大きく、むしろ電波パルサーに似通っている。自転速度の速さと併せて考えれば、Swift J1818はマグネターとして振る舞いつつも、電波パルサーの特徴をも備えている天体といえる。今後中性子星の進化を理解する上で、異なる種族同士を結びつける鍵となりそうだ

回転エネルギー減少率とX線光度の比較
様々な中性子星の種族の、回転エネルギー減少率とX線光度の比較。(黄)既知のマグネター、(緑)古典的な回転駆動型パルサー、(青)回転駆動型パルサーの中でマグネターのようなX線バーストを示した2天体(PSR J1846-0258、PSR J1119-6127)、(赤)今回の研究対象であるSwift J1818

2020年10月9日
AstroArtsより

超新星1987A

Posted by moonrainbow on 10.2020 中性子星   1 comments   0 trackback
超新星1987Aの塵の輝き、幻の中性子星か

超新星1987A
塵の集まり
(左)アルマ望遠鏡による超高解像度観測から発見された、周囲より温度の高い塵の集まり。(右)(赤)アルマ望遠鏡が電波でとらえた冷たいガスと塵の分布、(緑)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した可視光線、(青)X線天文衛星「チャンドラ」がとらえたX線の広がり。リング状の構造は超新星爆発によって生じた衝撃波が宇宙空間を進み、周囲の物質と衝突しながら広がっている様子を示す(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), P. Cigan and R. Indebetouw; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton; NASA/ESA)

1987年に大マゼラン雲に出現した超新星爆発のあとには中性子星が残されたと考えられている。この中性子星はまだ見つかっていないが、塵の中に潜んでいる証拠をアルマ望遠鏡がとらえた

超新星1987Aは1987年2月23日に、天の川銀河から16万光年の距離にある矮小銀河「大マゼラン雲」の中で出現した。この超新星爆発は質量が大きな恒星が寿命を迎えて起こしたものだと考えられていて、そのあとには高密度天体である中性子星が残された可能性が高い。日本の実験装置「カミオカンデ」が超新星1987Aに伴うニュートリノを検出したことからも、ブラックホールではなく中性子星が作られたのは確かだと考えられている。そのため、超新星1987Aの出現以降、中性子星探しが行われてきたが、その確かな証拠はまだ見つかっていない。

2014年にアルマ望遠鏡による観測で、超新星残骸の中心部には大量の塵が存在することが判明した(参考:「超新星爆発で作られた大量の固体微粒子を直接観測」)。英・カーディフ大学のPhil Ciganさんと松浦美香子さんたちの研究チームは、この塵をアルマ望遠鏡を使ってより高い解像度で観測した。

その結果、超新星1987Aの中心近くに温度の高い塵の集まりが見つかり、その場所が中性子星の位置として想定されている場所と一致することがわかった。塵が温まって電波を出しているということは、熱源である中性子星がその中に隠れていると考えられる。ただし、塵の輝きが中性子星によるものとしては明るいという疑問点もあった。

この疑問に対して、メキシコ国立自治大学のDany Pageさんたちは理論研究で、誕生直後の中性子星であれば観測される明るさに達することが可能であることを示した。中性子星によって塵のかたまりが加熱されているという解釈を支持する結果である。

超新星爆発のシミュレーションでは、爆発によって中性子星が秒速数百kmもの速度ではじき出されることが予測されている。実際に、アルマ望遠鏡で観測された温かい塵の塊は、周囲のリングの中心よりわずかにずれた位置にあり、爆発から30年あまりのうちに中性子星が高速で移動したという予測と合致する。また、温度に関しては、超新星爆発から間もない時期の中性子星の温度は500万度と予測されており、観測で推測される塵の温度を説明するには十分だ。

超新星1987Aのあとに本当に中性子星が残されているのだとすれば、その年齢はわずか33歳で、これまでに発見された中で最も若い中性子星ということになる。中性子星を直接観測できるようになれば研究の正しさが確実に証明できるが、超新星残骸の塵やガスが晴れ上がるには、まだ数十年かかると考えられている


2020年8月4日
AstroArtsより

中性子星「Swift J1818.0-1607(以下、Swift J1818)」

Posted by moonrainbow on 28.2020 中性子星   0 comments   0 trackback
わずか240歳の中性子星

XMM-Newton1607.jpg
XMM-Newtonで撮影されたSwift J1818.0-1607。3つのエネルギー領域のX線画像を擬似カラー合成(提供:ESA/XMM-Newton; P. Esposito et al. (2020))

わずか240年ほど前の超新星爆発で形成されたと思われる中性子星が見つかった。きわめて強い磁場を持つ「マグネター」としては観測史上最も若い

2020年3月12日、NASAのガンマ線バースト観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」がいて座の方向で強いX線のバーストをとらえた。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のX線衛星「XMM-Newton」やNASAの「NuSTAR」などによる追観測から、この天体「Swift J1818.0-1607(以下、Swift J1818)」のX線放射に1.36秒周期の変動が見られることがわかった。さらに地上の電波望遠鏡による追観測で、電波でもX線と同じ周期のパルスを放射していることが明らかになり、この天体がパルサーであることが判明した。

パルサーの正体は中性子星と呼ばれる天体で、太陽の8倍より重い恒星が一生の最期に超新星爆発を起こした後に残る、超高密度の天体である。パルサーは高速で自転しながら強い電磁波を放射するため、その自転周期に同期した電磁波のパルスが観測される。追観測のデータから、Swift J1818は太陽の約2倍の質量を持ち、直径は約25kmで、地球からの距離は約1万6000光年であることがわかった。

さらに、Swift J1818は通常の中性子星よりも磁場が数千倍も強い「マグネター」と呼ばれるタイプの天体であることも明らかになった。マグネターは宇宙に存在する天体の中で最も強い磁場を持ち、その強さは人類が作り出した最強の磁石をさらに1億倍も上回る


マグネターのイラスト
マグネターのイラスト。質量の重い恒星が超新星爆発を起こした後、ほぼ中性子だけからなる超高密度のコンパクトな天体が残される。これが中性子星で、特に磁場の強い中性子星をマグネターと呼ぶ。マグネターは強い磁場をエネルギー源としてX線などのバーストを引き起こす(提供:ESA)

しかも、Swift J1818はこれまでに見つかっているマグネターの中で最も年齢が若いことも明らかになった。パルサーは自転をエネルギー源にして強い電磁波を生み出し、宇宙空間に放射しているため、その自転周期はだんだん遅くなっていく。この性質を利用し、現在のパルス周期とその遅れの度合いを測定できれば、パルサーが誕生してからどのくらい経っているか(パルサーの特性年齢と呼ぶ)を大まかに見積もることができる。

この方法でSwift J1818の特性年齢を見積もったところ、約240年という結果になった。つまり、Swift J1818はアメリカ合衆国建国やフランス革命、日本では天明の大飢饉や寛政の改革などがあった時代に起こった、天文学的にはつい最近とも言える超新星爆発の名残だということになる。ただし、天の川銀河の中で起こった超新星のうち、歴史上記録が残っているのは1604年の「ケプラーの超新星」(SN 1604、距離約2万光年)が最後で、Swift J1818を作り出した超新星は記録されていない


中性子星はこれまでに約3000個見つかっているが、そのうちマグネターは31個しかない。Swift J1818はこの中で最も若いマグネターである。マグネターのような極限状態は地上の実験では再現できないため、こうした天体は超高密度・超強磁場といった極端な条件下の物理学を理解するための天然の実験室として、非常に重要なものとなる。

「この天体は私たちが観測したことのない、マグネターが生まれたばかりの初期段階を見せてくれています。こうした天体の形成過程を理解できれば、これまで見つかっているマグネターの個数と中性子星の個数がなぜこれほどかけ離れているのか、といった疑問も解けるようになるでしょう」(スペイン・宇宙科学研究所 Nanda Reaさん)


2020年6月23日
Soraeより
 

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