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規則正しく電磁パルスを放出する中性子星

Posted by moonrainbow on 19.2024 中性子星   0 comments   0 trackback
規則正しく電磁パルスを放出する中性子星の観測、超流動体研究への新たな扉を開くか

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パルサーから放出される2本のジェットを描いた想像図(NASA's Goddard Space Flight Center)

アルゼンチンの首都ブエノスアイレスから南へ、交通量のほとんどない裏道をクルマで1時間ほどのところに、半世紀前に建造された2台の口径30mの単一パラボラアンテナ電波望遠鏡が上方を向いている。わずか120m間隔(サッカー場ほどの広さ)で立ち並ぶこの電波望遠鏡は現在、高速で自転する中性子星を対象とする南天の観測を活発に行っている

中性子星からは、電波スペクトルでの観測に最適なパルスが、時計のように規則正しく、放出される。「パルサー」と呼ばれるこれらの天体から放出されるパルスは、中性子星の磁場と光速に近い速度で移動する荷電粒子によって生成される放射の特徴を示している。

アルゼンチン電波天文学研究所(IAR)の付属施設であるこの老朽化した望遠鏡は最近、ハードウェアとソフトウェアの両面をアップグレードする改修が実施された。そして2019年以来、2台の電波望遠鏡は現在進行中の「パルサー・モニタリング・イン・アルゼンチン(PuMA)」と呼ばれる取り組みの最前線にある。PuMA(ピューマ)は、現地に生息する大型のヤマネコにちなんだ名前だ


IARと米ロチェスター工科大学の計算相対論重力研究センターとの協力体制の下で運用されているこの望遠鏡は、北半球にある同様の電波望遠鏡に比べて明らかに有利な点がある。それは、ベラ(Vela、ほ座)パルサーを含む観測対象のパルサーの多くが、南半球から最もよく見えることだ。

1月に同施設で取材に応じた、IAR天文台の台長を務めるギレルモ・ガンチョと、アルゼンチン・ラプラタ大学の博士課程学生で、現在はIARで研究を行っているエセキエル・スビエタによると、研究チームは現時点で10個のパルサーを観察しており、うち4個は両アンテナで毎日観測することが可能という。光学望遠鏡とは異なり、この天文台は24時間年中無休で運用されており、観測が中断されるのは悪天候が続いた場合だけだ。もしくは、局地的な電波干渉が特にひどい場合は通常、最新のソフトウェアフィルターを用いて、観測データセットから容易に除去できる。

ガンチョとスビエタが最も大きな関心を寄せているのは、少なくとも1回のグリッチを起こしたことが観測されている200個近くのパルサーだ


■グリッチとは何か

グリッチは、自転周波数の突発的な増大として現れる。つまり、パルサーの自転速度が上昇し始めてから、また元の状態に戻るわけだと、スビエタは説明する。

ベラパルサー(PSR J0835-4510またはPSR B0833-45)は、約1万2000年前にII型のコア崩壊型超新星として爆発したと考えられており、南天の星座のほ座の方向約800光年の距離にある。ベラパルサーは、PuMAサーベイの主要な観測対象の1つだ。2~3年ごとにグリッチを起こすと見られ、過去50年以上の間に二十数回のグリッチが観測されている。

スビエタによると、グリッチが起こるタイミングにパルサーを観測していれば、パルサーの内部で何が起きているかに関する情報をより多く入手できるという。ベラはもうグリッチがいつ起きてもおかしくない頃だと、スビエタは指摘する。

スビエタによれば、自転周波数の増大は、中性子星内部の物質の挙動に関連している可能性が高い。中性子星内部の物質は、極めて高密度で、非常に圧縮されているため、超流動体と呼ばれる物質の状態にあるという。

パルサーの内部は、形容し難いような物質の混合状態であり、いまだ人類の理解が及ばないような方法ですべてがひしめき合っている。だが、中性子星内部の物質の運動により、渦が形成されると考えられている。これが、パルサーのグリッチに対する説明の1つとなる可能性がある


ベラパルサーとその周囲にある超新星残骸がかつて、水素を燃焼する普通の恒星の一部だったとはとても信じ難い

■ベラが超新星になるまでの星の一生は、どのように始まったか?

アルゼンチンのブエノスアイレス大学と国立科学技術研究評議会(CONICET)に所属していた天体物理学者のグロリア・ダブナーは、ブエノスアイレスでコーヒーを飲みながらの取材に応じ、超新星になる前の恒星(前駆星)の性質を推測するのは非常に難しいと語った。ダブナーによると、ベラの場合、太陽の8~10倍の質量を持つ星だった可能性が高い。大質量星の恒星風によって星間物質中に形成された空洞の内部で爆発した可能性が高いという。

進化が進んだ星の中心核で、ケイ素の核融合反応が始まり、鉄ができる段階に至ると、エネルギーを放出するのではなく、星からエネルギーを吸収するようになるため、重力を支えられるものが何もなくなってしまう。

すると、中心核は自己収縮し始め、わずか1秒ほどで崩壊すると、ダブナーは説明する。中心核が臨界密度に達すると、核力が重力を圧倒し、反発を起こすことで、物質が外向きに激しく放出される。膨大な量のニュートリノによって、星のエネルギーの99%が星の外に放出されるという


■残されるのはコンパクトな中性子星

太陽1.4個分の質量を持つ星の磁場がすべて、直径わずか15kmという、大都市の端から端までの距離にも満たないほどの大きさの中性子星に圧縮される。

磁場と相対論的粒子が、中性子星の両極から流出し、放射のビームが形成されると、ダブナーは説明する。このビームが地球の方を向いた場合に、まるで灯台のように、パルスが観測されるという。

この研究はすべて、連日のパルサー観測が極限環境における天体物理学の理解の向上につながることを目指している。さらには、地球上での超流動体の実際の応用への道を開く可能性もある。

IARのスビエタによると、地球上では実験室内で超流動体が作り出されているが、これは電子の超流動体だ。中性子星との違いは、超流動体が中性子でできていると考えられる点だ。現在のところ、実験室で中性子の超流動体を作り出すことは不可能で、将来的に可能になるかどうかもわからないという。だが、グリッチが、中性子の超流動体の存在を検証するための手段の1つとなるかもしれないと、スビエタは指摘している。

純粋な天体物理学に関しては、どうだろうか。

スビエタによれば、この種の物質を理解することは、電磁放射の放出、中性子星の安定性と進化、超新星過程などの理解の向上に役立つと考えられる


2024年2月16日
Forbes JAPANより

中性子星とブラックホール

Posted by moonrainbow on 30.2024 中性子星   0 comments   0 trackback
中性子星とブラックホールの中間に位置する “天の川の謎の天体” を発見

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ミリ秒パルサーPSR J0514-4002E (奥側) の伴星の正体がブラックホール (手前側) であった場合の想像図。お互いの距離は約800万km離れています

重い恒星の寿命の最期に、その中心核が「中性子星」となるのか、それとも「ブラックホール」となるのかは、中心核の質量によって決まると考えられています。ですが、その境界線がどこにあるのか、理論的にも観測的にも正確な位置はよくわかっていません

マックスプランク電波天文学研究所のEwan D. Barr氏らの研究チームは、ミリ秒パルサー「PSR J0514-4002E」の詳細な観測を行い、PSR J0514-4002Eに伴星があることを発見しました。興味深いことに、伴星の質量は太陽の2.09~2.71倍であり、ちょうど中性子星とブラックホールの境界線に位置しています。発見者が “天の川の謎の天体(a mysterious object in Milky Way)” と表現している正体不明の伴星は、天文学や物理学において注目されるでしょう

■中性子星とブラックホールの質量ギャップ問題

太陽のような恒星は、自らの重力で潰れてしまう力と、中心核での核融合反応によるエネルギーの圧力が釣り合うことで形状を保っています。ただし、核融合反応の燃料はいずれ尽きてしまうため、この均衡もいつかは崩れ去ります。核融合反応の圧力が無くなり、星が重力で潰れてしまう現象は「重力崩壊」と呼ばれています。

重力崩壊に対抗できる力が存在せず、無限に潰れてしまった天体は「ブラックホール」と呼ばれます。一方で、ブラックホールになる手前で重力崩壊が停止した天体は「中性子星」と呼ばれます(※1)。中性子星はブラックホールの1歩手前で踏みとどまった “普通の物質” の極限状態であり、その組成から直径25kmの “原子核” と例えられることもあります。このため、中性子星自体の性質と共に、どこまでが中性子星の限界であるのかも注目されています。

※1…中性子星が重力に対抗する力は「中性子のフェルミ縮退圧(中性子縮退圧)」と呼ばれています。また、中性子星より手前でも重力に対抗する力は発生しており、例えば太陽くらいに軽い恒星は電子縮退圧によって生成する「白色矮星」になると言われています。

重力崩壊する恒星の中心核が中性子星となるかブラックホールとなるかは、質量によって決定されると考えられています。しかし、中性子星のような物質の極限状態は、理論的にも実験的にもほとんど理解されていません。このため、中性子星が重力崩壊してブラックホールになる質量の境界線(※2)は、天文学や物理学の大きな未解決問題となっています。

※2…中性子星の理論上の質量限界は「トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界(TOV限界)」と呼ばれています。

理論的な中性子星の限界質量は太陽の2.2倍であるとされていますが、この数値は研究によって大きな幅があり、2倍以下であるとする推定もあれば、3倍近くとする推定もあります。不完全な理論をもとに数値の幅をこれ以上縮めるのは難しいため、観測によって質量限界を直接見つける努力も続けられています。しかし、観測で見つかった最も軽いブラックホールは太陽の約5倍の質量があり、理論上の境界線を大幅に上回っています。この質量ギャップ問題も、中性子星の限界と同様に天文学上の未解決問題となっています


■「PSR J0514-4002E」が従える “天の川の謎の物体” を発見

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今回の研究で使用された観測データを取得した電波望遠鏡群「MeerKAT」は、全部で64基の電波望遠鏡で構成されています

ところで、中性子星は高速で自転しており、狭い領域から強力な電波を放出しています。遠く離れた地球から中性子星を見ると、電波の放射領域が地球の方向を向いた瞬間だけ周期的に電波が観測されるため、電波の観測データはパルスと呼ばれます。この性質を持つ中性子星は「パルサー」と呼ばれていて、中性子星とほぼ同義語のように扱われます。その中でも、パルスの周期が1秒未満であるようなものは「ミリ秒パルサー」と呼ばれます


Barr氏らの研究チームは、南アフリカ電波天文台の電波望遠鏡群「MeerKAT」を使用し、ミリ秒パルサー「PSR J0514-4002E」の詳細な観測を行いました。PSR J0514-4002Eは地球からみて「はと座」の方向に約4万光年離れた天の川銀河内の球状星団「NGC 1851」に存在し、同星団に存在する13個のパルサーの1つとして2022年に発見されたばかりです。PSR J0514-4002Eは1秒間に約170回自転していると考えられています。

ミリ秒パルサーの電波放射の周期は、原子時計に匹敵するほど正確です。もしこの周期に乱れがある場合、乱れを引き起こす重力源である伴星の存在が示唆されます。もし伴星がある場合、電波の波長が変化する度合いから伴星の質量を決定することもできます。Barr氏らはPSR J0514-4002Eの観測データを分析し、未知の伴星があるかどうかを調査しました


その結果、PSR J0514-4002Eには未知の伴星があり、PSR J0514-4002Eと伴星を足し合わせた合計の質量が太陽の3.887±0.004倍であると計算されました。そして複数の波長を詳細に分析することで、より詳細な伴星の特性が明らかにされました。それによれば、伴星はPSR J0514-4002Eから約800万km離れた距離を7日かけて公転しており、中性子星やブラックホールのようなコンパクト星であるようです。最も興味深いのは、質量が太陽の2.09~2.71倍であるという点です

■伴星の正体がどれであっても興味深い

PSR J0514-4002Eの伴星の重さは、まさに中性子星とブラックホールの質量ギャップに位置します。中性子星としては天文学史上最も重い値である一方、ブラックホールとしては天文学史上最も軽い値です。発見者が “天の川の謎の天体” と表現するのは無理もないことです。

現段階では、伴星の正体が中性子星なのかブラックホールなのか、あるいはその間に存在すると予測されている未知の異種星 (※3) なのかは分かっていません。もし中性子星や未知の異種星であった場合、天体物理学や核物理学に与える影響は大きなものとなります。一方でブラックホールであった場合、天文学史上初のミリ秒パルサーとブラックホールの連星の発見となるため、重力理論をテストする場として非常に重要な観測対象となります。

※3…エキゾチック星とも。例えば中性子を構成する素粒子であるクォークが縮退して生成される「クォーク星」が提唱されていますが、異種星が実在するかどうかは今のところ確定しておらず、理論的な背景もほとんど明らかにされていません。

Barr氏らは、PSR J0514-4002Eの伴星はより軽い中性子星同士の合体で生じたと推定しています。正体を解明するのはこれからとなりますが、それがどのような天体であっても、確定するために行われる研究は中性子星とブラックホールに関連する天文学や物理学の謎の解明を大きく前進させることでしょう


Source
Ewan D. Barr, et al. “A pulsar in a binary with a compact object in the mass gap between neutron stars and black holes”. (Science)

2024年1月26日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

中性子星で地震を確認

Posted by moonrainbow on 21.2023 中性子星   0 comments   0 trackback
中性子星で地震を確認、「高速電波バースト」の原因か–東大研究グループ

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中性子星で地震を確認、「高速電波バースト」の原因か--東大研究グループ

東京大学 大学院 理学系研究科の戸谷友則教授らによる研究グループは、中性子星で地球の地震とよく似た現象が起きていることを確認した。このことから「高速電波バースト(Fast Radio Burst:FRB)」と呼ばれる天体現象の発生原因が中性子星表面の地震に関係すると考えられるという

 FRBとは、突如として強力な電波を数ミリ秒(1000分の1秒)ほどの極めて短い時間だけ放射する現象。この現象を何度も繰り返えす「リピーターFRB」も確認されており、中性子星が放射源と考えられているという。特に、中性子星のうち強力な磁気を帯びた天体である「マグネター」がFRBと深く関連しているとみられるものの、発生メカニズムはほとんど分かっていないという。

 マグネターでは、強い磁気エネルギーが内部から徐々に浮上して表面の固体地殻を歪め、その歪みに蓄積されたエネルギーが最終的に地震(星震)で解放される。これがマグネターで発生する爆発現象の原因であり、FRBにつながる、という説が有力視されている。そのため、地球の地震との類似性が議論されてきた。

 研究グループは、活動的な3つのFRB源から検出された7000回近いバーストの発生時刻とエネルギーとの関係を調査。その結果、1つのバーストが発生すると関連した「余震」バーストが起きやすくなっており、余震の頻度が経過時間のべき乗で下がることが分かった。

 この性質は、地球の地震とよく似ている。このことから、FRBが中性子星表面の固体地殻で発生する地震と強く関連すると考えられる。

 研究グループはこの研究成果を、FRB発生メカニズムを解明する大きな手がかりになる、とした。さらに、中性子星の表面地殻や内部物質、原子核物理学などの領域で新たな知見を得る可能性もあるという。

 太陽より8倍以上重い恒星は、最期に中心部にある鉄で構成されるコアが重力で潰れ、中性子星かブラックホールになる。この最期に放出される巨大な重力エネルギーの一部が恒星の外層を吹き飛ばして、「超新星爆発」と呼ばれる現象を起こす。

 この超新星爆発のあとで、重力で潰れた元の恒星の中心部にある鉄で構成されるコアが超高密度の天体として残ったのが中性子星。質量は太陽の1~2倍、半径は10kmほど。中性子星の内部密度は原子核の内部密度に匹敵すると考えられている。そうした高密度の場合、電子は陽子と反応して中性子になるという性質があり、陽子がほとんどなく、中性子が主成分であることから中性子星と呼ばれる


2023年10月16日
UchuBizより

中性子星合体

Posted by moonrainbow on 18.2023 中性子星   0 comments   0 trackback
中性子星合体から1秒間の変化を高精度シミュレーション

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中性子星合体後約1秒の様子
シミュレーションで示された中性子星合体後約1秒の様子。(左)物質中の電子の割合。中性子だけでできていた天体から物質が放出され、新しい元素が生成される様子を表す。(中)物質の密度。ブラックホールの周りにトーラスが形成されていく。(右)磁場強度。画像クリックで拡大表示(提供:K. Hayashi, K. Kiuchi (Max Planck Institute for Gravitational Physics & Kyoto University)、以下同)

中性子星同士の合体を、合体後1秒間という過去最長にわたって計算するシミュレーションが行われた。重力波と電磁波の同時観測に加え、理論モデルを確立することで、合体の過程についての理解が深まりそうだ

2017年8月に、中性子星同士の合体で放出されたものとしては初めてとなる重力波GW170817が検出された。このとき、ガンマ線、可視光線、電波といった様々な電磁波でも合体に伴う輝きが検出されていて、重力波と電磁波の観測を組み合わせる画期的な「マルチメッセンジャー天文学」が実現した。

一方で、中性子星の合体で何が起こったのかは詳しくわかっていない。合体により鉄より重い元素が合成されると推測され、その過程に関する詳細な理解が望まれている。しかし、中性子星は直径約20kmで質量が太陽の40%を超えるような超高密度天体で、合体を再現するには高精度の理論計算が必要となる。

京都大学・基礎物理学研究所の木内建太さんたちの研究チームは数値相対論と呼ばれる技法を用いて、太陽質量の1.2倍と1.5倍(GW170817のデータから推測されるに値)の中性子星が合体するシミュレーションを行った。スーパーコンピュータ「富岳」で7200万CPU時間をかけた結果、既存のシミュレーションよりも10倍長い、合体後1秒間の変化を調べることに成功した。

中性子星合体による鉄より重い元素の合成は、衝突で物質が放出される際に起こると考えられているが、今回のシミュレーションでその放出過程が詳しくわかった。計算によれば、合体の約0.01秒後から、潮汐力と衝撃加熱によって物質の放出が始まり、0.04秒後にピークに達する。一方、合体によってドーナツ状の構造(トーラス)が形成されるが、合体から約0.3秒経つと磁気乱流によってトーラスから物質が放出されるようになる。

重力波と電磁波によって多面的に観測された現象については、精緻な理論モデルと比べることで、さらに理解を深めることができる。今回の結果は、宇宙分野に限らず、原子核物理や素粒子物理学にも大きな波及効果があると予想される。

「宇宙で起こる現象は日常生活から遠く離れたものですが、それを基礎物理学で解き明かすことは人類の知の地平線を広げることにつながると信じています。今回の研究を通して、知の地平線を広げることに少しでも寄与できたであろうことは研究者として至上の喜びを感じます」(木内さん)


Numerical-relativistic simulation of a binary neutron star merger


「富岳」によるシミュレーションの動画「Numerical-relativistic simulation of a binary neutron star merger」

2023年7月14日
AstroArtsより

中性子星

Posted by moonrainbow on 14.2023 中性子星   0 comments   0 trackback
重い中性子星は “柔らかい” 核を持つ?

重い中性子星は “柔らかい” 核を持つ?
中性子星の想像図

太陽よりもずっと重い恒星がその生涯を終える時、その中心核は収縮して「中性子星」と呼ばれるコンパクト星を残します。中性子星は全体が1つの原子核であるとも表現されるほどの、最も高密度な天体の1つです

言ってみれば、中性子星は私たちがよく知る物体の極限状態の1つであり、具体的な物性を調べられるという点でも興味深い研究対象です。ただし、中性子星の内部は極めて高密度・高エネルギーな環境であるため、正確な性質はほとんど分かっていません。

中国科学院のMing-Zhe Han氏らの研究チームは、いくつかの中性子星の観測データと理論計算を駆使し、中性子星の内部の様子を探りました。研究には中性子星同士の合体を捉えた重力波「GW170817」、正確な大きさが判明している中性子星「PSR J0030+0451」、最大級の重さを持つ中性子星「PSR J0740+6620」のデータが用いられました。これらの観測データと、原子核に関連する研究データや理論を組み合わせることで、研究チームは中性子星の内部の状態をシミュレーションしたのです。

その結果、特に重い中性子星について、これまでの予測とは異なる結果が得られました。天体サイズの物体の場合、中心部に向かえば向かうほど物質は強く圧縮されるため、中心部が一番硬くなる傾向にあります。中性子星を構成する物質の大部分は中性子でできた原子核だと考えられていますので、中心部に至るまでそのような構成だとすれば、中性子星の中心部は最も硬くなるはずです。

しかし、極端に重い中性子星のシミュレーションでは、最も硬くなる部分は中心部ではなく、その周辺部であるという結果になりました。つまり、重い中性子星は奇妙なほどに “柔らかい” 核 (コア) を持つことになります。この結果は、重い中性子星の中心部では物質構成が変化していると仮定することで説明できる可能性があります。

Han氏らは、重い中性子星の中心部は原子核ではできておらず、原子核を構成する中性子や陽子が分解し、素粒子であるクォークが剥き出しで存在する「クォーク物質」の状態にあると考えていて、太陽の2.14倍以上の質量を持つ中性子星がクォーク物質でできた核を持つ可能性が高いと推定しています。物質構成が異なるとすれば、中心部が硬くないことを示したシミュレーション結果の説明になります。

太陽の2.14倍という質量は、それ以上重ければ中性子星が潰れてブラックホールになってしまうとされる「トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界」の98%に相当します。また、低い確度で見積もっても、太陽の2.01倍以下の質量の中性子星にクオーク物質の核はありそうにないとも推定されています。この研究に基づけば、奇妙な核を持つのはほんの一握りの中性子星であることになります。

中性子星の中心部は物質の極限状態が保たれている興味深い場所であり、誕生直後の宇宙にも近い環境です。極限状態の研究は、私たちが身近に観察している物質の性質を決める様々な物理的パラメーターを知るために必要な研究でもあります。

意外かもしれませんが、中性子星に奇妙な核が存在するのか否かという疑問を解き明かすための研究は、物質でできている私たち自身とも縁遠い話ではありません


Source
Ming-Zhe Han, et.al. “Plausible presence of new state in neutron stars with masses above 0.98MTOV”. (Science Bulletin)

2023年6月8日
sorae より
 

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