暗黒エネルギーの存在が、色分けされた画像という目に見える形で初めて表された。
暗黒エネルギーとは:
宇宙の膨張を加速させるとみられている謎めいた力のことです。研究チームのリーダーであるハワイ大学のイシュトバン・スツァプディ氏は、「今回、初めて暗黒エネルギーの影響を実際に画像でとらえることができた。これは暗黒エネルギーの存在を示す最も直接的な証拠だ」と述べている。
新しく得られた画像には、暗黒エネルギーによって
スーパーボイドとスーパークラスターという
約5億光年にも及ぶ巨大な宇宙構造が引き伸ばされるときのスペクトル軌跡が描かれている。
スーパークラスターは星雲の密な集まりで満たされた構造であり、一方のスーパーボイドはそのほとんどが何もない空間で構成されている。
同研究チームによると、検出された暗黒エネルギーの軌跡がランダムに起こる確率はたったの20万分の1だという。
今回の研究では、スローン・デジタルスカイサーベイというプロジェクトで収集されたマッピングデータが使用された。研究の結果、
太古に発生したマイクロ波放射がスーパークラスターやスーパーボイドを通り抜ける際、暗黒エネルギーによって変化していることが確認されたという。このマイクロ波は宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれる拡散放射で、ビッグバンの名残である弱いさざめきのような電波だ。
これまでの理論によると、宇宙は一定の速度で膨張しており、マイクロ波はスーパークラスターに入るときにエネルギーを得るが、離れるときには同量のエネルギーを失うと予測されていた。そして、マイクロ波がスーパーボイドを通り抜ける際には逆の現象が起こると考えられてきた。しかし、
もし暗黒エネルギーが宇宙の膨張を加速させているとすれば、スーパークラスターとスーパーボイドは、放射に比例して時間の経過とともに拡散していくはずです。
したがって、
マイクロ波はスーパークラスターを通り過ぎる際、入るときに得たエネルギーの一部を離れるときも保持している可能性が考えられる。一方、スーパーボイドを通り過ぎる際にはエネルギーを失っている可能性があります。そのため、宇宙マイクロ波背景放射の分布には温度の高い部分と低い部分ができると想定されます。今
回の画像では、この温度差が赤やオレンジ、あるいは青の領域として映し出されている。
これまでにも宇宙マイクロ波背景放射に対するこうした暗黒エネルギーの影響は観測されてきたが、従来の研究では、その影響が実在し、ランダムな温度の揺らぎの結果ではないことが示されるのは、20分の1の確率でしかなかった。
しかし今回、スツァプディ氏のチームが50のスーパークラスターと50のスーパーボイドを調査したところ
マイクロ波の温度の高低差と宇宙の膨張の加速度が一致していることが高精度で突き止められた。「この現象は暗黒エネルギーが存在するという説の下で最もよく説明がつく」と同氏は語っている。
アメリカ、メリーランド州ボルティモアにある宇宙望遠鏡科学研究所の天体物理学者であるアダム・リース氏の研究チームは、10年以上前に暗黒エネルギーに関する初の論文を発表した。同氏は「今回の研究で暗黒エネルギーが存在する確率はさらに高まり、この謎の力の性質を解明する道のりにも光が差した」と話す。
同氏によれば、「ここ数十年の研究で暗黒エネルギーの存在自体は十分に確認されてきたが、その多くは暗黒エネルギーの性質を高精度で見極めるものではなかった」という。「今回の研究はその領域に踏み込んだものだ」と同氏は評価している。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天体物理学者であるロバート・カーシュナー氏もこの意見に同意する。「今回の測定結果は発表されて間もないので、これが暗黒エネルギーの性質の特定に役立つかどうかはまだ分からない。とはいえ、暗黒エネルギーの存在を裏付ける別のルートが見つかるということ自体、常に歓迎すべきニュースだ」と同氏は話している。