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宇宙ジェットで掃き集められた分子雲

Posted by moonrainbow on 30.2023 宇宙   0 comments   0 trackback
宇宙ジェットで掃き集められた分子雲

宇宙ジェットが周辺
宇宙ジェットが小さな分子雲の粒を掃き集めるイメージイラスト
宇宙ジェットが周辺に散らばる小さな分子雲の粒を掃き集めるイメージイラスト(提供:国立天文台)

X線連星から噴出する宇宙ジェットの先端領域に分子雲が2つ発見された。宇宙ジェットにより掃き集められた小さな分子雲の粒で構成されているとみられ、分子雲の形成過程に新たな示唆が与えられた

ブラックホールや中性子星などの高密度な天体(コンパクト天体)と恒星がペアになっている連星系は、X線で明るく輝くためX線連星と呼ばれる。X線連星ではコンパクト天体の重力の影響で恒星表面からガスが剥ぎ取られ、そのガスがコンパクト天体に向かって落ちることがある。落ち込むガスの一部は細く絞られ、宇宙ジェットとして噴出する。

先行研究では、宇宙ジェットが星間物質を圧縮して高密度にし、星の素となる高密度で低温の分子雲ができやすい環境を作ることが示唆されている。一方で、宇宙ジェットは周辺の星間物質を熱して低温・高密度の分子雲の形成を妨げるという主張もあり、宇宙ジェットと分子雲形成の関連については、よくわかっていない。

鹿児島大学の酒見はる香さんたちの研究チームは、天の川銀河の中で最も活発なX線連星の一つで、光速の26%の速度の宇宙ジェットを噴出している「SS 433」に着目した。SS 433はわし座の方向にあり、電波星雲「W 50」という巻貝のような形をしたガス状の天体の内部に存在している。W 50の星雲の東西に引き伸ばされた「イヤー(ear)」と呼ばれる構造は、SS 433から噴出する宇宙ジェットの表面に対応する構造と考えられており、西側のイヤーの周辺には多数の分子雲が確認されている。

酒見さんたちは、分子雲の検出例のなかった東側イヤーを野辺山45m電波望遠鏡とチリのASTE望遠鏡(アタカマサブミリ波望遠鏡実験)を用いて観測し、東側イヤーの先端領域に大きな分子雲の塊を2つ発見した。これらの分子雲はイヤーとの衝突によると思われる特徴的な構造を持つ可能性が高いという


電波星雲「W 50」
電波星雲「W 50」(巻貝のような形の部分)の全体像。東西に「イヤー」と呼ばれる構造がある。(中央の水色の点)X線連星「SS 433」の位置、(黄色の楕円)過去に分子雲が発見されている領域、(ピンク色の破線内、黄色の等高線)今回発見された分子雲(提供:鹿児島大学)

分子雲から放射される光を詳しく調べると、一般的に高密度の分子雲から放射されるような光が含まれていることがわかった。しかし、いくつかの種類の光の情報を組み合わせて解析したところ、分子雲の密度は典型的なものに比べて低いようだ

東側イヤーの先端
東側イヤーの先端の分子雲
東側イヤーの先端に同定された2つの分子雲(黄色い楕円)から放射される電波強度の分布。マゼンタの等高線は東側イヤーの構造を示す(提供:鹿児島大学)

この結果について研究チームは、発見された分子雲が今回の観測の解像度では見ることのできないような、より小さな分子雲の粒が集まって塊のように見えているものと考えている。解像度よりも小さい分子雲からの放射は実際より弱く観測されてしまい、分子雲の密度がより低く評価される。今回発見した分子雲も、実は大きな塊ではなく、もっと小さな分子雲が集まっている可能性があるというのだ。

こうした分子雲の集まりを作り出す方法として、酒見さんたちは、周辺に元々存在していた小さな分子雲の粒が宇宙ジェットによって掃き集められるというメカニズムを提案している。こうした状況は、今回発見された分子雲の特徴である「より小さな分子雲の粒が集まっている」という解釈とも一致する。この説明が正しければ、SS 433の宇宙ジェットは太陽の約6000倍もの質量のガスを集めることが可能なほど強力ということになる。

今回の研究は、分子雲の形成過程における宇宙ジェットの持つ新たな役割を示唆するものだ。研究チームは今後、分子雲をさらに詳しく観測し、宇宙ジェットが分子雲の形成・進化に与える影響を明らかにしようとしている


2023年5月23日
AstroArtsより

天文学史上最大の宇宙爆発

Posted by moonrainbow on 28.2023 宇宙   0 comments   0 trackback
天文学史上最大の宇宙爆発が観測される。80億光年先から3年以上閃光が放たれ続ける謎

宇宙爆発

天文学史上最大の宇宙爆発を観測
 
80億光年の彼方で、天文学史上、最大の爆発と考えられるものが発見されたそうだ。

 その爆発は、星が最後に見せる壮大な超新星爆発より10倍以上明るい。それでいて、いつまでも終わらない。

 超新星の場合、目に見える明るさが続くのは数ヶ月程度だが、この爆発による閃光は3年以上続いているのだ。

 爆発の正体は今のところわかっていない。だが、研究者の見解によれば、巨大なガス雲がブラックホールに飲み込まれたことが原因かもしれないとのこと


 それは銀河の中心を形作る重要なファクターであるとも考えられるそうだ

80億光年離れた場所での宇宙爆発「AT2021lwx」

 その巨大な爆発は、2020年に米国カリフォルニア州パロマー天文台にある光学観測装置「ZTF(Zwicky Transient Facility)」によって検出された。だが天文学者がこれに気づいたのは、それから1年後のことだ。

 「AT2021lwx」と命名された爆発は当初、距離がわからず、明るさを計算できなかったため、特に目をひく現象だとは思われていなかった。

 ところが昨年、英国サウサンプトン大学のフィリップ・ワイズマン博士らのチームが、その光を分析したところ、地球から80億光年離れたものであることが判明


 ここから、それがとんでもない明るさであることがわかったのだ。

 ワイズマン博士は、この現象の明るさがわかった瞬間について、「なんてこった、こいつはトンデモない!」と思ったそうだ


宇宙爆発1
NASAの宇宙望遠鏡が捉えた実際の爆発 / image credit:NASA

数年たっても消えない巨大な閃光の謎
 
このすさまじい閃光の正体は一体何なのか? その輝きはただ明るいだけでなく、数年経っても消えなかった。

 科学文献にあたっても、そのような現象について説明するものはなく、ワイズマン博士らも首を傾げるばかりだったという。

 「ほとんどの超新星や潮汐破壊は、2、3ヶ月も続けば、やがて消えていきます。2年以上も輝くものは、きわめて珍しいのです」


宇宙爆発2

巨大なガス雲が、超大質量ブラックホールに飲み込まれた可能性
 
だが仮説ならある。それは太陽の何千倍もある巨大なガス雲が、超大質量ブラックホールに飲み込まれたことで生じたというものだ。

 その時、宇宙に超強力な衝撃波が広がり、ブラックホールのまわりにまるで巨大なドーナツのような超高温の雲の残骸が残るのだ。

 あらゆる銀河の中心には巨大なブラックホールがあると考えられている。ワイズマン博士によれば、今回のような爆発は、銀河の中心を”彫刻”するといった重要な役割を果たしている可能性があるという。

 「こうした現象は、非常にまれではありますが、とてつもないエネルギーを持っており、銀河の中心が時間とともにどう変化するのか左右する重要なプロセスかもしれません」



宇宙爆発3
超大質量ブラックホールに吸い込まれた巨大なガス雲のイメージ図 / image credit:John A. Paice

謎の爆発の研究は今後も続く
 
ワイズマン博士は、数年内に導入される新しい望遠鏡で、同じような爆発がほかにもないか探し出したいと考えている。

 そして彼らは今、この爆発のさらなる手がかりを集めるために準備を進めているところだ。たとえば、X線のようなさまざまな波長を調べれば、温度や表面で起きていることを明らかにできるかもしれない。

 また、より高度なシミュレーションで、爆発の原因に関する仮説を検証する予定もあるとのことだ。

 なお昨年、明るさだけならAT2021lwxを上回る爆発が発見されている。それは「GRB 221009A」と呼ばれるガンマ線バーストで、AT2021lwxの明るさをわずかに凌駕する。

 だがそれが続いたのはほんの10時間ほどで、長さはAT2021lwxの足元にも及ばない。つまり爆発のエネルギーという点では、AT2021lwxが圧倒的ということだ。

 この研究は、『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(2023年4月11日付)に掲載された


2023年05月14日
カラパイアより

超高輝度X線源(ULX)

Posted by moonrainbow on 27.2023 宇宙   0 comments   0 trackback
太陽の1000万倍明るい謎の天体…中性子星の超強力な磁場がその要因か(海外)

太陽の1000万倍明るい謎の天体
超高輝度X線源「M82 X-2」(円で囲まれた部分)は、銀河M82の中に存在する。この画像は、可視光で撮影されたデータを擬似カラーで着色している。

超高輝度X線源(ULX)とは、太陽の1000万倍もの明るさで輝く天体のことをいう

このような「エディントン限界」を超える明るさの天体の存在について、科学者は説明できずにいた。

しかし、エディントン限界を超える明るさのULXが存在することが確認され、新たな仮説が生まれた。

物理学上、爆発してもおかしくないほど明るい謎の天体が存在することに科学者たちは困惑していた。

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、太陽の1000万倍もの明るさを持つ「超高輝度X線源(ULX)」を追跡し、その仕組みを解明しようとしてきた。

このような天体は、「エディントン限界」という天体物理学のルールに従うとすれば、爆発の直前にしか、そのレベルの明るさに達しないことになり、理論上は存在することが不可能とされてきた。

だが、新しい研究によって、地球から1200万光年彼方の銀河「M82」にあるULX「M82 X-2」が、これまでの観測で示唆された通りの明るさであることが確認された。

しかし、「なぜ存在できるのか?」という疑問が残る。

限界を超える明るさは物質を外へ押し出す
エディントン限界の原理はシンプルだ。

崩壊した惑星の残骸などの物質がブラックホールや中性子星といった大質量天体の重力に引き寄せられてぶつかると、物質は熱を持ち、光を放射する。つまり、天体に降着する物質が多いほど、明るくなる。

しかし、光子の放射圧が天体の重力を超えてエディントン限界に達すると、物質が降着しなくなる。そのため明るさにも限界があるはずだということになる。

M82 X-2は不可能を可能にした
エディントン限界があることから、このULXの明るさは本当に膨大な量の降着物質によるものなのか、科学者は疑問視してきた。

ある仮説では、強い宇宙線によって、すべての物質が円錐状に集められたと唱えていた。この説では、円錐が地球の方向を向いて光のビームを放射するため、物質がULXの周囲に均一に散らばっている場合よりも、ずっと明るく見えることになる。

しかし、M82の中性子星(星がエネルギーを使い果たして死んだときに残る超高密度な天体)によって引き起こされたULXであるM82 X-2に関する新たな研究によって、この円錐説は否定された。

この研究は2022年10月付でAstrophysical Journalに掲載された。それによるとM82 X-2は近隣の星から1年間に約90垓トン、地球の質量の約1.5倍の物質を引き込んでいることが明らかになったと、NASAの声明で解説されている


2023年5月19日
BUSINESS INSIDER JAPANより

知的生命体の起源に関する新しい研究

Posted by moonrainbow on 16.2023 宇宙   0 comments   0 trackback
知的生命体の起源に関する新しい研究 海洋と陸上のどちらで出現しやすい?

知的生命体の起源に関する新しい研究 
地球外の工業文明とその存在を示すテクノシグネチャーのイメージ図

短期間で科学技術を発達させた人類は、地球の生態系や気候に大きな影響を与える存在となっています。この自らの経験をもとに、地球外生命探査では技術が存在する証拠として「テクノシグネチャー(technosignature)」が話題になります。宇宙から地球を観測したとき、人類はその存在を示すサインを生み出すことができる「技術的知性(technological intelligence:TI)」を持つ生物の典型といえるからです

近年「人新世」という言葉が造られましたが、その背景にはこのような事実が想定されていると考えられます。

生命にとって、液体の水が存在することは欠かせない条件であり、地球の生命も海の中で誕生したと考えられています。私たちの太陽系では、木星の第2衛星エウロパや土星の第2衛星エンケラドゥスなどで、液体の水が存在する可能性が指摘されています。これらの天体では、水は表面に海として存在するのではなく、氷の地殻の下に「地下の海(内部海)」として広がっていると考えられています。

現在の研究では、天の川銀河に存在する系外惑星の多くは表面に海や陸地が存在せず、地下に海が存在する可能性が高いと推測されています。このような「海の世界」で生命が存在する可能性に期待が高まっています。

では、生命の誕生や居住にとって海の世界が一般的だとすると、陸上で出現し技術的知性を持つまでに進化した人類は異例の存在なのでしょうか?

フロリダ工科大学の宇宙生物学者マナスヴィ・リンガム(Manasvi Lingam)氏ら3名の研究者による新しい研究では、技術的知性を持つ種が海洋と陸上どちらの生息地に存在する確率が高いかを「ベイズ統計学」を用いて分析しました。

他の要因がすべて同じであると仮定すれば、海の世界のほうがはるかに一般的だと考えられるので、そのような種は海洋に存在する可能性のほうが高いという結果が得られます。ところがリンガム氏は、この結果にはパラドックスが潜んでいるといいます。

ベイズ統計学で用いられる確率論では、事前の主観的な予想に基づいて確率を計算します。本研究は、技術的知性を持つ知的生命体が海洋では出現しにくいことを示し、パラドックスの解消を探りました。

研究チームは、視覚などの感覚器官のしくみと認知能力について、人間を含む霊長類をはじめタコなどの頭足類からイルカなどの鯨類までを比較しました。視覚は進化戦略で重要な役割を果たし、高い知的能力の獲得には欠かせません。しかし、水中での視覚の進化には様々な制約があり、結果的に水中から陸上への進化を促したと考えられます。

さらに、水中では「火」を使うことができません。火は、技術の獲得と進歩に欠かせないエネルギー源であるにとどまらず、知的生命体が技術文明を築くうえで計り知れないほど大きな役割を果たします。結局、陸のない海だけの世界は技術的知性への進化を妨げてしまうことになります。

結果は確率論に基づくものですが、この研究モデルにはメリットがあるとリンガム氏は語っています。それは、将来の望遠鏡による観測で天体に関するデータが更新されたり、実験やフィールドワークにより動物の行動や認知機能に関する理解が深まったりすることで、研究モデルの検証や改良が可能な点です。

また、リンガム氏は本研究に関連して、様々な惑星に酸素が存在する可能性や、知的生命体の進化に酸素が果たす役割についても研究を進めるということです。

本研究結果は2023年3月2日付けで発行された「The Astrophysical Journal」に掲載されています


Source
Image Credit: NASA/Jay Freidlander

2023年5月10日
sorae より

年老いた恒星に飲み込まれる惑星の最期

Posted by moonrainbow on 10.2023 宇宙   0 comments   0 trackback
年老いた恒星に飲み込まれる惑星の最期 その様子を初めて捉えたか

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恒星の表面をかすめながら公転する惑星の想像図

マサチューセッツ工科大学(MIT)の天文学者Kishalay Deさんを筆頭とする研究チームは、年老いた恒星が赤色巨星へと進化する過程で惑星を飲み込む様子を観測したとする研究成果を発表しました

寿命が近付くにつれて膨張した恒星が惑星を飲み込む可能性は何十年も前から予想されていましたが、その様子が実際に観測されたのはこれが初めてだということです

■多波長の観測データで迫った謎の増光の正体

研究チームが調べたのは「わし座」の方向約1万2000光年先で起きた出来事です。パロマー天文台(米国)の掃天観測システム「Zwicky Transient Facility(ZTF、ツビッキー・トランジェント天体探査装置)」で検出されたこの出来事および発生源の星は「ZTF SLRN-2020」と呼ばれています。

ZTFは同天文台のサミュエル・オスキン望遠鏡に取り付けられたカメラを使用して、超新星や彗星のような突発天体を検出するための観測を行っています。最近はZTFの観測で発見された「ZTF彗星」(C/2022 E3 (ZTF)、ズィーティーエフ彗星)が話題になりました。

ZTF SLRN-2020は2020年5月に、1週間ほどの間で100倍も明るくなり、再び暗くなっていった突発天体としてZTFに検出されました。当時はカリフォルニア工科大学(Caltech)の大学院生だったDeさんは、観測データからこの増光を見つけた時のことを「それまでに私が見てきたどの星の爆発とも違っていました」と振り返ります。

Deさんはもともと新星(Nova)を探していました。新星は白色矮星と恒星の連星系で起きるとされる現象で、恒星から白色矮星へとガスが降り積もり続けた結果、白色矮星の表面で水素の暴走的な核融合反応が起きると考えられています。星全体が吹き飛んでしまう「超新星(Supernova)」とは違って新星は繰り返されることがあり、短い場合は数十年間隔で出現することもあります。

ZTF SLRN-2020と名付けられたこの増光を詳しく調べるために、Deさんはハワイのマウナケア山頂にあるW.M.ケック天文台で取得された観測データを参照しました。ケック天文台では天体の化学組成を知るためにスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を得る分光観測が行われています。

ケック天文台の観測データはDeさんを困惑させました。通常の新星は高温のガスに囲まれていて、恒星から流出した水素やヘリウムが検出されるはずです。ところが、ZTF SLRN-2020では水素とヘリウムは検出されず、データは星が低温のガスと塵に囲まれていることを示していたのです。「それが何を意味しているのか理解できませんでした」


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恒星ZTF SLRN-2020が惑星を飲み込む様子を示した図。恒星からガスを引き剥がしながらも公転し続けていた惑星(左)は、やがて恒星に飲み込まれて中心核へと落下し(中央)、恒星は外層が吹き飛んで4倍に膨張するとともに100倍明るくなった可能性(右)(K. Miller/R. Hurt (Caltech/IPAC))

Caltechで博士論文を完成させたDeさんは、MITに移ってから再びZTF SLRN-2020の研究に取り組みます。発見から約1年後、Deさんは共同研究者たちとともに、パロマー天文台やアメリカ航空宇宙局(NASA)の赤外線天文衛星「NEOWISE」で取得された赤外線の観測データを分析しました。ZTFは人にも見える可視光線で突発天体を観測しますが、人には見えない赤外線を利用することで、より低温の物質の様子を探ることができます。

分析の結果、ZTF SLRN-2020は可視光線だけでなく赤外線でも明るくなっていたことが判明しました。赤外線の増光はZTFが可視光線での増光を捉える約9か月前から始まっており、ZTFでの発見から1年後も続いていたというのです。

赤外線はZTF SLRN-2020の周囲に存在する塵から放出されているとみられており、この出来事が天体どうしの合体だった可能性を示していました。ただし、可視光線での増光(ZTFで検出)の後に放出されたエネルギーの総量を研究チームが見積もったところ、過去に観測された恒星どうしの合体と比べて約1000分の1も低いことがわかりました。

「つまりこの星と合体した天体は、これまでに合体が観測されたどの星より1000分の1も小さくなければならないのです。そして偶然にも、木星の質量は太陽の質量の約1000分の1です。その時、私たちは惑星が恒星に衝突したのだと気が付きました」(Deさん)


■太陽系の未来を示唆する“惑星の最期”を伝える閃光

これらの観測データをもとに、研究チームはZTF SLRN-2020を以下のような出来事だったと結論付けました。

もともと太陽に似た恒星だったZTF SLRN-2020の周囲では、水星よりも近いところを木星サイズと推定される惑星が公転していました。誕生から約100億年が経ち、中心部の水素を核融合で消費し尽くした恒星は膨張し始め、赤色巨星へと進化する段階に入ります。恒星の表面が惑星の公転軌道に迫ると、惑星の重力によって恒星表面からガスの一部が引き剥がされるようになります。

宇宙空間に放出されたガスはやがて温度が下がり、塵が生成されます。ZTFでの検出に先立つ赤外線の増光は、この過程で生成された塵によるものとみられています。塵の中には崩壊していく惑星から放出された物質も含まれていたことでしょう。

やがて惑星は膨張する恒星に飲み込まれ、恒星の中心核(コア)へと飛び込みます。惑星衝突時のエネルギーが放出さたことで恒星の外層は吹き飛び、直径は衝突前の4倍に膨らんだとみられています。ZTFで検出された可視光線の増光は、この時に放出された閃光だったと考えられています。膨らんだ恒星の外層からは一部のガスが脱出して離れていき、衝突前のように塵が生成されたことで、ZTFでの検出後も赤外線の増光が観測されることになったとみられています。

ZTFなどで観測された“惑星の最期”は、およそ50億年後の太陽系で起こる出来事を示唆しています。太陽もまた赤色巨星へと進化する過程で膨張し、水星、金星、地球を飲み込むと予想されているからです。「私たちは地球の未来を見ています」(Deさん)

ただ、仮に50億年後の太陽系を誰かが観測したとしても、地球最後の瞬間はZTF SLRN-2020ほどの出来事としては記録されないだろうともDeさんは語ります。質量は地球のほうがずっと小さいからです。

「地球が飲み込まれる様子を他の文明が1万光年離れた場所から観測したら、太陽が何らかの物質を放出する時に突然明るくなり、元の状態へ戻る前にその周囲で塵が生成される様子を見ることでしょう」(Deさん)

NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、太陽のような恒星の多くは赤色巨星に進化するものの、惑星を飲み込むのはそのうちの一握りだと推定されています。今回の成果は惑星が飲み込まれる時にどのように観測されるのかを示し、同様の出来事をより多く発見する可能性を開くものだと受け止められています


Source
Image Credit: K. Miller/R. Hurt (Caltech/IPAC)

2023年5月7日
sorae より
 

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