赤色巨星から中性子星がX線を放射

Posted by moonrainbow on 22.2018 赤色巨星   0 comments   0 trackback
赤色巨星からの風で生き返った中性子星

赤色巨星からの風によって中性子星に物質が降り注ぐ様子のイラスト
赤色巨星からの風によって中性子星に物質が降り注ぐ様子のイラスト(提供:ESA、以下同)

大質量星の「死骸」である中性子星が赤色巨星とペアになっている連星系で、赤色巨星から吹き付ける風によって中性子星がX線を放射し始めるという珍しい現象がとらえられました

2017年8月13日、ヨーロッパ宇宙機関の天文衛星「インテグラル」が、天の川銀河中心部の方向(へびつかい座の領域内)でX線の閃光を検出しました

このX線の発生源を突き止めるため、その後数週間にわたっていくつもの天体望遠鏡や人工衛星によって追観測が行われました。その結果、この現象は中性子星と赤色巨星からなる連星で起こったもので、強い磁場を持ちゆっくりと自転する中性子星に、隣の赤色巨星から物質が流れ込み始めたことによってX線が発生したらしいことが明らかになりました

質量が太陽の1〜8倍の星は、一生の終わりが近づくと赤色巨星へと進化します。すると、星の外層は半径数百万kmに膨張し、塵やガスが秒速数百kmという比較的低速で中心星から放出されます

一方、質量が太陽の25倍~30倍もある大質量星は、核融合の燃料を急速に使い果たして超新星爆発を起こし、その爆発後に強い磁場を持つ中性子星を残すことがあります。中性子星は直径10kmほどの大きさに太陽1.5個分ほどの質量が詰め込まれており、宇宙で最も密度の高い天体の一つです

質量に応じた星の進化を示すイラスト
質量に応じた星の進化を示すイラスト。

2つの恒星が互いに回り合う「連星」はごくありふれた存在ですが、近年になって、中性子星と赤色巨星が相互作用する新たなタイプの連星系が見つかっています。このような連星は「共生X線連星」と呼ばれ、これまでに10組ほどしか発見されていないのです

「インテグラルは、共生X線連星という珍しい連星系が活動を始める貴重な一瞬をとらえました。十分に濃くて低速の風が赤色巨星から放出されることで、『星の死骸』である中性子星に物質が供給され、高エネルギーのX線を放射するようになったのです」(スイス・ジュネーヴ大学 Enrico Bozzoさん)

ヨーロッパ宇宙機関の宇宙望遠鏡「XMMニュートン」とNASAのX線天文衛星「NuSTAR」による観測から、この中性子星は約2時間周期で自転していることが示されました。中性子星は毎秒数回もの自転速度に達することもあるが、それに比べて今回の中性子星の自転は非常に遅い。また、共生X線連星の中性子星としては初となる磁場の観測も行われ、驚くほど磁場が強いことも明らかになりました

中性子星の磁場は時間とともに衰えると考えられているため、磁場が強いということはその中性子星が若いことを示しています。一方の赤色巨星ははるかに年老いていて、この2つの天体は、ともに成長してきた連星としては奇妙なカップルといえます

「不可解な連星系です。この中性子星の磁場は時間が経ってもあまり衰えない性質を持っているのかもしれませんし、あるいは実際に、この中性子星が赤色巨星より後に生まれたのかもしれません。もしそうなら、この中性子星は大質量星の超新星爆発という典型的なプロセスで作られたものではなくて、もともと白色矮星だったものに隣の赤色巨星から長期間にわたって物質が降り積もることで重力崩壊して中性子星になった可能性も考えられます」(Bozzoさん)

若い中性子星と年老いた赤色巨星からなる連星系では、赤色巨星からの風が中性子星に降り積もるようになり、これによって中性子星の自転速度が遅くなってX線の放射が起こると考えられます

「インテグラルによる過去15年間の観測では、この天体からのX線は検出されていませんでした。つまり私たちは今回、この天体でX線の放射が初めて始まった瞬間を目撃したと考えています。このX線放射は、たまたま一時的に赤色巨星からの物質放出が長く続いて発生しただけかもしれません。これまでのところ目立った変化は起こっていませんが、赤色巨星からの風が止まった場合にどんな振る舞いが見られるか、今後も観測を続ける予定です」(ヨーロッパ宇宙機関インテグラル・プロジェクトサイエンティスト Erik Kuulkersさん)

2018年3月12日
AstroArtsより

赤色超巨星「アンタレス」

Posted by moonrainbow on 06.2017 赤色巨星   0 comments   0 trackback
表面と大気が詳細に観測された赤色超巨星「アンタレス」

VLTIがとらえたアンタレス
VLTIがとらえたアンタレス(提供:ESO/K. Ohnaka、以下同)

ヨーロッパ南天天文台のVLT干渉計で赤色超巨星「アンタレス」が詳細にとらえられました。太陽以外の恒星で大気中の物質の速度分布図が作成されたのは初めてのことです

夏の宵空に見えるさそり座の、心臓の位置に赤く輝く1等星「アンタレス」は、一生の終わりを迎えつつある低温の赤色超巨星です。質量は太陽の12倍、大きさは太陽直径の700倍ほどもあると考えられています

チリ・カトリカ・デル・ノルテ大学の大仲圭一さんたちの研究チームは、チリ・パラナル天文台に設置されているヨーロッパ南天天文台のVLT干渉計(VLTI)を使ってアンタレスを観測し、表面の物質の動きを計測しました。VLTIは最大4基の望遠鏡を組み合わせて差し渡し最大200mに相当する仮想望遠鏡として機能し、単独の望遠鏡をはるかに超える高解像度を実現することができます

観測から、太陽以外の恒星の表面と大気をとらえたものとしては過去最高レベルの詳細な画像が得られました

さらに観測データを利用して、大気を構成しているガスの速度の違いや平均速度が領域ごとに計算され、アンタレス表面のガスの相対速度分布図が作られました。太陽以外の恒星でこの種の図が作成されたのは初めてのことです

アンタレス表面の物質の動きを示した図
アンタレス表面の物質の動きを示した図。赤は地球から遠ざかる方向の動き、青は近づく方向の動き(黒は観測ができなかった部分)

データから、予想以上に星から遠く離れた低密度ガスの乱流が発見された。この動きは対流によるものとは考えられず、拡がった大気中のガスの動きを説明するには未知の物理過程が必要ではないかと考えられています

「アンタレスのような星が進化の最後の段階で、どのように質量を急速に失っていくのかは、半世紀以上続いてきた長年の謎です。VLTIはアンタレスの拡がった大気中のガスの動きを直接計測できる唯一の観測装置で、今回の観測は問題を明らかにするための重要なステップです。次なる挑戦は、荒れ狂う大気の駆動源を解き明かすことです」(大仲さん)

「将来この観測技術が様々な種類の星に適用されれば、前例がないほどの詳細な星の表面と大気の研究が可能になるでしょう。私たちの研究は、恒星を対象とした天体物理学に新たな側面をもたらし、恒星観測のための新しい窓を開きました」(大仲さん)

アンタレスの想像図
アンタレスの想像図(提供:ESO/M. Kornmesser)

2017年8月29日
AstroArtsより

赤色巨星「ケプラー56」

Posted by moonrainbow on 30.2013 赤色巨星   0 comments   0 trackback
赤色巨星「ケプラー56」でホットジュピターでなくても、傾いた軌道を持つ系外惑星

約3000光年彼方の赤色巨星「ケプラー56」の周囲にある惑星が、中心星の赤道面に対して45度も傾いた軌道を回っていることがわかりました。ホットジュピター(中心星のそばの巨大ガス惑星)のない惑星系では貴重な発見です

中心星ケプラー56と周囲の惑星軌道
中心星ケプラー56と周囲の惑星軌道。(提供:NASA GSFC/Ames/D Huber)

NASAが、はくちょう座の方向約3000光年彼方の赤色巨星「ケプラー56」の赤道面に対して周囲の2つの惑星の公転面が45度も傾いていることを発見しました

研究チームでは、NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」のデータから、中心星表面の複数箇所における明るさの変動を分析し、地球からの観測方向に対してその自転軸が45度も傾いていることをつきとめました。2つの惑星は、地球から見て手前を通過(トランジット)しながら公転しています。つまり、これらの惑星の公転面は中心星の自転軸に対して45度傾いているということになります

惑星は中心星をとりまく塵やガスの円盤の中から生まれるので、中心星の赤道面と惑星の公転面は揃っているのが自然です。この太陽系でも、惑星は太陽の赤道から7度以内の範囲を公転しています

ではなぜ、ケプラー56の惑星の軌道は傾いているのか。コンピュータシミュレーションから、中心星からはるか遠くを周回する、木星の3倍以上の重さを持つ巨大惑星の重力の影響と考えられます。この第3の惑星はケック天文台の観測で実際に見つかっています

こうした傾いた軌道が、ホットジュピター(つぶれた楕円軌道を持ち、極端に中心星の近くを回る巨大ガス惑星)以外の系外惑星で見られるのは初めてのことです

ホットジュピターはしばしば中心星の赤道面から傾いた軌道を持っています。ほかの天体との“重力の押し合いへし合い”で形成されたなどの説がありますが、確かなことは不明のままです。傾いた軌道がホットジュピターだけではないことを示した今回の成果は、これらの謎を精査する重要な一歩となるかもしれません

2013年10月24日
Astro Artsより

赤色巨星からの噴出現象

Posted by moonrainbow on 16.2012 赤色巨星   0 comments   0 trackback
赤色巨星からの謎の赤外線現象を発見

JAXA宇宙科学研究所の研究者が、通常では説明できない不思議な性質を持つ赤外線源を発見しました。赤色巨星からの突発的なガスや塵の噴出現象と見られています。およそ50億年後には太陽にも同様のことが起きるかもしれません

発見された赤外線源
画像左上のオレンジ色の光が今回見つかった赤外線源です。1983年の赤外線データを表す青色が天体の箇所にないことから、1983年以降に明るくなったものであることがうかがえられます。(提供:NASA/JPL-Caltech)

JAXAは、NASAの赤外線天文衛星「WISE」が2010年に観測したデータから、一つの奇妙な赤外線源を見つけました。

「WISE J180956.27-330500.2」と名付けられたこの天体を、異なる時期に異なる波長で観測を行った複数の赤外線データで追うと、1997年~2001年の観測(赤外線天体リスト「2MASS」)では短い波長の赤外線を強く放ち、2010年の「WISE」の観測では短い波長で暗く長い波長で明るくなっていることがわかったのです。その他「IRAS」(1983年観測)や「あかり」(2006年~2007年観測)のデータと合わせると、どうやらこの天体は、1983年から2000年前後までの間に赤外線で急激に明るくなり、その後ゆっくりと暗くなっていること、しかも単に暗くなるだけでなく、温度が下がっているらしいことがうかがえます(注)

この現象に関して、研究グループの立てた仮説は次のようなものです。今からおよそ15年前の1990年代終盤に、この星から大量の塵とガスが宇宙空間に放出されました。放出された直後の塵はまだ暖かく、2MASSでも観測された短い波長の赤外線で輝いていました。やがて塵が星から遠ざかるにつれ温度が下がり、WISEなどで観測された長い波長の赤外線を放つように変わってきたのです

放出された塵の量はおよそ地球1つ分で、さらにその100倍以上のガスも同時に放出されたと考えられます

太陽と同じぐらいの質量の星は、その一生の最終段階で膨張して「赤色巨星」となります。このとき星の内部では、炭素と酸素からなる核の周りをヘリウムと水素の層が取り巻いています。水素の核融合で作られ徐々にたまったヘリウムが、数万年に一回、瞬間的に燃えることがあるという理論的な予測があります。この激しいヘリウムの燃焼のエネルギーによって、大量のガスや塵が短期間に星から宇宙空間に放出されるというのです

過去にこのような「突発的質量放出」が起きた証拠がいくつか知られており、「あかり」による詳細な研究が進められています。しかし、実際の噴出直後の様子を十0数年の間にわたってリアルタイムでとらえることができた例は今回が初めてとなります。

年老いた星からのガスや塵の放出は、次世代の星や惑星、ひいては生命を作る材料を供給する、宇宙の営みの重要な一過程です。この天体の素性についてさらに研究が行われ、われわれの太陽の行く末についてもより詳しい予測が出来るようになるかもしれません。


:「赤外線の波長と物質の温度」 低温の物体ほど波長の長い電磁波を放射します。

2012年4月27日
Astro Artsより

赤色巨星の塵

Posted by moonrainbow on 20.2011 赤色巨星   2 comments   0 trackback
「あかり」が赤色巨星の塵の詳細観測に成功

日本の赤外線天文衛星「あかり」が、赤色巨星が塵を放出する過程を詳細に観測することに成功しました
宇宙空間にどのように元素が放出されているかを知る重要な手がかりとなります。

うみへび座U星1
「あかり」の遠赤外線サーベイヤーによるうみへび座U星のダストシェルの様子。(提供:ISAS/JAXA)

ポンプ座U星1
「あかり」の近・中間赤外線カメラによるポンプ座U星の暖かいダストシェルの様子。中央の黒い丸は中心星に近い部分の明るい光を隠しています。(提供:ISAS/JAXA)

国立天文台、東京大学などの研究者からなる研究グループは、JAXAが2006年に打ち上げた赤外線天文衛星「あかり」を用いて「うみへび座U星」と「ポンプ座U星」と呼ばれる赤色巨星の観測を行いました

赤色巨星は太陽のような星が年老いた時に徐々に膨張してできる巨星であり、ガスや塵を放出して惑星状星雲が形成されます。このガスや塵を放出する質量放出は恒星進化の最後の段階だと言われています。しかし、質量放出の過程がどのようになっているのかはよくわかっていなかったのです

「あかり」は広い波長領域と高い空間分解能、高い検出能力を生かして、赤色巨星が質量を放出しているところを詳細に観測しました。

うみへび座U星の観測から、放出された塵はきれいな球状に広がり、非常に薄い球殻を成していることがわかりました。これは質量放出が等方的に短期間に集中して行われたことを示しており、わずか1000年ほどの間に地球約30個分の質量の塵とその100倍ほどのガスが放出されたと考えられています。この質量放出の原因は熱核融合反応の暴走の可能性が高いと考えられます。また、塵の広がり(ダストシェル)が中心星に対して偏っていることから、質量放出の初期段階から物質が周囲の星間物質に吹き流されていることもわかりました

ポンプ座U星では、ダストシェルの観測としては世界で初めて中間赤外線で画像を取得することに成功しました。ここでも丸いダストシェルが確認できましたが、遠赤外線の観測結果とあわせて解析したところ、このダストシェルはおよそ50度ほど温度の異なる2層に分かれることがわかったのです。ガスに富んでいる層とダストに富んでいる層で層構造を成し、そこに含まれる固体粒子のサイズも異なっていると考えられます

2011年3月25日
Astro Artsより
 

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