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ガス雲同士が様々な星団の誕生

Posted by moonrainbow on 25.2021 星団   0 comments   0 trackback
ガス雲の衝突が星団を作る

2個の球状ガス雲が衝突する様子
数値シミュレーションによる球状ガス雲の衝突
数値シミュレーションで再現した2個の球状ガス雲が衝突する様子。(左)真横から見た様子の時間進化、(右)衝突の最後の段階を正面から見た場合の観測結果を示したもの(提供:北海道大学、京都大学)

ガス雲同士が衝突して圧縮されることで、様々な星団の誕生が説明できることがわかった。この仕組みは球状星団にも当てはまる可能性があり、普遍的なものかもしれない

恒星は材料となるガス雲が収縮することで生まれると考えられているが、何がきっかけでガス雲が収縮するのかはまだ解明し切れていない。多くの天文学者はただ1つのガス雲を思い浮かべ、それを圧縮させる方法について考えてきたが、このやり方だけでは大質量星を含むたくさんの星が集まった星団を効率的に作ることはできない。

これに対し、名古屋大学の立原研悟さんと福井康雄さん、大阪府立大学の西村淳さんと藤田真司さんたちの研究グループは、複数のガス雲の衝突が星形成の引き金になるという仮説に注目した。衝突によって大規模な星団が作れることには理論的な裏付けもある。

一方で、現在観測されている大質量星や星団の数を説明できるほどガス雲の衝突が頻繁に起こるかどうかというのは別の問題であり、これを観測で証明するのは難しい。ガス雲そのものは電波で観測できるが、ガス雲同士の衝突は激しい現象ではなく重なって混ざり合うような過程に近く、一旦混ざってしまえば、それが元々複数の塊だったことを示すのは容易ではないからだ。

そこで立原さんたちは、長野県の野辺山45m電波望遠鏡や南米アタカマ高原のNANTEN2、アルマ望遠鏡といった電波望遠鏡で天の川銀河内外の星団周辺を観測し、ガス雲の衝突シミュレーションの結果と比べる研究を10年以上にわたって続けてきた。

立原さんたちの研究成果は日本天文学会欧文研究報告(PASJ)の特集号として刊行された。この特集号には、同研究グループの呼びかけに応じた国内外の天文学者たちによる論文も寄せられている。これまでわずか数天体でしか知られていなかったガス雲衝突の痕跡が92個まで増えただけでなく、痕跡は様々な場所、規模の星団の周りで発見されており、ガス雲の衝突が普遍的な現象であることを示唆する結果となっている。

地球から約6000光年と比較的近い星形成領域であるわし星雲M16(へび座)や、天の川銀河で最も活発に星が生まれている領域の一つであるW51(わし座)でもガス雲が衝突している形跡が見つかった。また、方向約7000万光年の距離にある衝突銀河のアンテナ銀河(からす座、触角銀河とも)でも、大規模なガス雲同士の衝突が起こっていて、球状星団が誕生しつつあることがわかった


星団の位置
分子雲の衝突で誕生したと考えられる星団の位置と主なガス雲の電波観測結果
分子雲同士の衝突により誕生したと考えられる星団の位置と、代表的なガス雲の電波観測結果(提供:名古屋大学、国立天文台、NASA、JPL-Caltech、R. Hurt (SSC/Caltech)、Robert Gendler、Subaru Telescope、ESA、The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)、Hubble Collaboration、2MASS)

天の川銀河にも球状星団はあるが、それらは通常の星団(散開星団)と比べて規模が大きく、年齢も100億歳以上と極めて古いため、誕生のメカニズムも異なるとされることが多かった。しかしアンテナ銀河の事例は、天の川銀河が若かったときに起こった大規模なガス雲同士の衝突で球状星団が生まれた可能性を示唆している。

こうした結果から、研究グループはガス雲の衝突が古今、大小、あらゆる星団の形成に不可欠な要因だった可能性を指摘している。また、これまでの研究は大質量星に注目したものだったが、太陽のような軽い恒星の誕生にもガス雲衝突が関わっていた可能性についても研究を進めていくという


2021年3月17日
AstroArtsより

球状星団RBC EXT8

Posted by moonrainbow on 30.2020 星団   0 comments   0 trackback
記録的に重元素が少ない球状星団RBC EXT8

球状星団RBC EXT8
球状星団RBC EXT8
アンドロメダ座大銀河(右)の外縁部、画像の中央に球状星団RBC EXT8がある。左はその拡大画像(提供:ESASky/CFHT)

水素とヘリウム以外の重元素が異常に少ない球状星団が、アンドロメダ座大銀河の周縁で見つかった。宇宙初期の恒星や銀河の形成に関する理論に疑問を投げかける結果だ

ビッグバン直後の宇宙に存在した元素のほとんどは水素とヘリウムで、それ以外の「重元素」は後に恒星の核融合反応などによって生成された。つまり、ある天体に重元素がほとんど含まれないのであれば、その天体は宇宙がまだ若かったときに誕生したのだと推測できる。だが、水素とヘリウムしかなかった時代の宇宙では、ガスはあまりまとまってなかったと考えられているため、質量の大きな天体を作るのは難しかったはずだ。

アンドロメダ座大銀河(M31)の外縁部に位置する球状星団「RBC EXT8」は、まさにそうした「宇宙初期で作られるはずのない」サイズの天体である。そのRBC EXT8にあるはずの重元素が、極めて欠乏していることが判明した。

「このような注目すべき星団が私たちの目と鼻の先でほったらかされていたことに驚きました。この星団はアンドロメダ座大銀河に属する星団の中でも最も明るい部類に入り、数十年前から知られていましたが、詳細に調べられたことがなかったのです」(米・サンノゼ州立大学 Aaron Romanowskyさん)。

2019年10月にオランダ・ラドバウド大学のSøren Larsenさんたちの研究チームは、ハワイ・マウナケア山頂のケック天文台に搭載されている高解像度エシェル分光器(HIRES)を使って、RBC EXT8のスペクトルから鉄とマグネシウムの痕跡を調べた。

その結果、RBC EXT8を構成する星々に含まれる鉄の量が、平均して太陽の約800分の1しかないことが判明した。これまで知られていた中で最も鉄が少なかった球状星団と比べても、3分の1しかない。また、マグネシウムも極端に欠乏していた。

さらに研究チームはカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)のアーカイブ画像から星団の大きさと質量も調べ、RBC EXT8が太陽およそ100万個分の質量をもつ、球状星団の中でも大きな部類の天体であることが確認された。

RBC EXT8のように重元素が極端に少ない大質量の球状星団は、宇宙初期には大きな天体を形成するほどのガスのまとまりがなかったという現行の考え方に疑問を投げかけるものだ。

「球状星団には必ず一定量以上の重元素が含まれているという理解が、これらの非常に古い星団が初期宇宙でどのように形成されたという私たちの考え方の多くを支えていました。今回の発見はその標準的なモデルと矛盾しますが、それはいつだって楽しいことなんです!」(豪・スウィンバーン工科大学 Jean Brodieさん)


2020年10月21日
AstroArtsより

球状星団「NGC 1805」

Posted by moonrainbow on 14.2020 星団   0 comments   0 trackback
2世代の星々が同居する大マゼラン雲のカラフルな球状星団

球状星団「NGC 1805」
球状星団「NGC 1805」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Kalirai)

散りばめられた星々が美しく輝くこちらの天体は、南天の「かじき座」の方向、およそ16万3000光年先にある大マゼラン雲の端近くに位置する球状星団「NGC 1805」です。近紫外線で強く輝く青い星々と、赤色と近赤外線で輝く赤い星々のコントラストが、星団の印象を深めています

数千個の星々が密集して互いに周回し合っているというNGC 1805では、太陽から最寄りの恒星までの距離と比べて100分の1から1000分の1まで星々が近づくために、その周囲に惑星は形成されていないだろうと考えられています。

通常、球状星団は同じ時期に誕生した星々から構成されるとみられていますが、NGC 1805には年齢が数百万年離れている2つの星々の集団が存在すると考えられています。このような星団を観測することは、恒星がどのように進化するのか、その最期を決定付ける要因は何かを天文学者が理解する上での助けになるといいます。

画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」によって撮影されたもので、「今週の一枚」として2020年9月7日付で公開されています


Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Kalirai

2020-09-08
Soraeより

球状星団「M15」

Posted by moonrainbow on 26.2018 星団   0 comments   0 trackback
終焉を迎える10万以上の光

球状星団のM15(NGC7078)

10万を超える恒星が集まったこの星々は、ペガスス座の方向約35000光年先にある球状星団のM15(NGC7078)です

M15は多くの赤色巨星を含む終焉に向かっている星で構成され、星団としての大きさは直径約200光年。星団中心部分に向かって恒星の密度が高くなっており、それは約10光年内に凝縮され、その輝きを生み出しています

また、M15の中心星域からは強いX線放射が確認されているため、銀河の中心と同じ様にブラックホールが存在しているかもしれません

球状星団のM15(NGC7078)1
Image Credit:Gregg Ruppel

球状星団のM15(NGC7078)2
Image Credit: ESA, Hubble, NASA

なお、M15は6等級と比較的明るく、秋の時期の暗い夜空であれば双眼鏡で観測することが可能です

Image Credit:Bernhard Hubl (CEDIC)

2018/10/18
Soraeより

星団「Gaia 1」

Posted by moonrainbow on 28.2017 星団   0 comments   0 trackback
位置天文衛星「ガイア」のデータから発見されたシリウスの隣の新星団

シリウス(画像中央やや右の輝星)と、新発見された散開星団「Gaia 1」
シリウスと散開星団「Gaia 1」
シリウス(画像中央やや右の輝星)と、新発見された散開星団「Gaia 1」(画像中央)(提供:Sergey Koposov; NASA/JPL; D. Lang, 2014; A.M. Meisner et al. 2017)

位置天文衛星「ガイア」の観測データから、これまで検出されていなかった大質量星団が発見されました。そのうち1つはシリウスのすぐそばにあります

18世紀後半、天文学者ウィリアム・ハーシェルと妹カロラインは、全天を600以上の領域に分けてそれぞれの範囲内の星を数え、天の川銀河の形を人類で初めて推定しました。それから200年以上の時が過ぎた現在、同じように「領域内の星を数える」手法によって、新しい星団が発見されました

米・カーネギーメロン大学のSergey E. Koposovさんたちの研究チームはこれまで様々な観測のデータを用いて、星団や天の川銀河の伴銀河を探してきました。星が予想以上に密集している領域を見つければ、そこに星団や伴銀河があると考えられます

2016年公開された、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」の観測データから作られた10億個以上の星を含むカタログのデータを分析していたKoposovさんは、おおいぬ座の1等星シリウスの近くにこれまで知られていなかった星の集団を見つけました。ずっと昔に見つかっていてもおかしくない天体だが、シリウスの輝きに隠されていたのです

夜空に見える星の中で最も明るいシリウスのような輝星は、実在しない像を作り出す可能性があるため、データに現れているものが本当の星かどうか慎重に判断しなければならないのです。「シリウスの影響による人工的なものに違いない」と考えたKoposovさんは別の領域を調べ始めたものの、この領域が頭から離れなかったのです。「シリウスによってたくさんの虚像が発生するはずがない、これは変だと思いました。そこでもう一度この領域を見て、本物の天体であることに気づいたのです」(Koposovさん)

新発見された星団「Gaia 1」は1万5000光年の距離に位置し、30光年ほどの範囲内に太陽数千個分に相当する星々が集まっている大質量の散開星団です

オーストラリア天文台のJeffrey Simpsonさんが地上の望遠鏡を使って星団に属する41個の星を追加観測したところ、星団の年齢が30億歳であることがわかりました。一般に散開星団の星々の年齢は数億歳以下であり、別種の星団である球状星団の場合は100億歳以上のことが多く、その中間である30億歳という年齢の星団は天の川銀河内にはそう多くないのです。Gaia 1は、2種類の星団間を理解する上で重要な橋渡しの役割を果たすかもしれないのです

また、この星団は軌道も変わっているようです。ほとんどの散開星団は銀河面近くに位置し、約9割の星団は銀河面から1000光年も離れることがないのに対し、Gaia 1は銀河面から上下に3000光年以上も離れたところまで動くようです7。シミュレーションによれば、こうした軌道を持つ星団はバラバラに散らばると予測され、30億年も生き残れないと考えられます。「モデルの予測との一致を目指ざした、さらなる研究が必要です」(Simpsonさん)

Gaia1 が天の川銀河の外で作られ、その後に銀河内に落ち込んできたという可能性も挙げられたが、星の化学組成を調べたところ、星団が天の川銀河内で形成された場合の予測と同じだったため、謎は未解決のままです

ガイアの観測データは新しい星団の発見と同時に、これまでに報告されている共通の起源をもつ星の群「アソシエーション」の存在の確認にも利用されます。「ガイアのデータでは星の動きもわかるので、どの星が本当に散開星団を形成しているのか確認できます」(アルゼンチン国立科学技術調査委員会 Andrés E. Piattiさん)。Piattiさんの研究によると、あるカタログに収録されている散開星団15個のうち10個は実際には星団ではなかったというのです

2018年4月に予定されている2回目のデータリリースでは、正確な星の固有運動や過去にない数の星までの距離などが明らかになります。これまでは遠過ぎたり光が拡散し過ぎて見えなかったり、星の間で埋もれたりした星団が、より効率的に見つかるでしょう。「次回のデータリリースで、新しい種類に属する天体も発見できることを願っています」(Simpsonさん)

Gaia: How to find a star cluster


星団の見つけ方の説明動画(提供:ESA)

2017年11月22日
AstroArtsより
 

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