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系外惑星WASP-107b

Posted by moonrainbow on 27.2023 太陽系外惑星   0 comments   0 trackback
200光年先に砂の雨降る惑星 「重大な節目となる」発見

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系外惑星WASP-107bとその主星の想像図(Klaas Verpoest, Johan Van Looveren, Leen Decin)

太陽系からわずか200光年の距離に、砂の雨が降り、擦ったばかりのマッチのにおいがする惑星が存在することが、米航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測データから明らかになった

おとめ座にある系外惑星「WASP-107b」は巨大ガス惑星で、質量は海王星と同じくらいだが、サイズははるかに大きい。科学者らから「ふわふわ」と呼ばれるほど低密度なため、大気の深部まで見通すことができる。今回の観測では、水蒸気、二酸化硫黄、ケイ砂(二酸化ケイ素の砂)の雲が発見されたが、メタンの痕跡は見つからなかった。メタンは、系外惑星の生命探査で極めて重要な生命存在指標と考えられている

■重大な節目

科学誌ネイチャーに掲載された、今回の研究をまとめた論文の主執筆者で、オランダ・ルーベンカトリック大学天文学研究所教授のリーン・デシンは「JWSTのMIRI(中赤外線観測装置)により、このふわふわな系外惑星で水と二酸化硫黄、砂の雲が見つかったことは、重大な節目となる」と話す。「この発見は、惑星の形成と進化に関する理解を塗り替え、太陽系に新たな光を投げかけている」

MIRIは、惑星を赤外線で観測し、光を構成色に分解する分光器を備えている。これにより、光を分析して、特定の気体や化学物質の明確な兆候を発見することができる。WASP-107bは、ふわふわな性質を持つため、より高密度の系外惑星に比べて、この観測がはるかに容易にできた。大気の密度が低いと、信号(スペクトル特性)がより目立つからだ


■大きな驚き

擦ったマッチのにおいがする有毒ガスである二酸化硫黄の発見は、研究チームにとって「大きな驚き」だった。だが、二酸化硫黄と水蒸気の痕跡が、予想よりも弱かったことから、WASP-107bには、これらを遮っている高層雲があることが明らかになった。高層雲の温度は500度だ。さらに研究チームは、系外惑星天文学史上初めて、高層雲の化学組成の同定に成功した。高層雲は、小さなケイ酸塩粒子、すなわち砂でできていることが分かった

地球の水循環に似たWASP-107bの「砂」循環
論文の主執筆者で、オランダ宇宙研究所(SRON)のシニアサイエンティスト、ミキール・ミンは「砂の雨滴は、より深部の非常に高温な層で蒸発し、その結果として生じるケイ酸塩の蒸気は効率的に上部へ戻り、そこで再凝結して再びケイ酸塩の雲を形成する」と説明する。「これは地球上の水蒸気と雲の循環に非常に似ているが、雨滴は砂でできている


■トランジット法

NASAによると、WASP-107bは主星の公転軌道を1周するのに5.7日かかり、主星からの距離は0.055AU(AU=天文単位)で、地球と太陽の距離の5%となっている。2017年にトランジット法を用いて発見された。惑星が恒星の前を横切る際の、星の光のわずかな減光を検出する手法だ。地球の観測者の視線が、恒星系内の系外惑星を側面から捉える場合にしか有効ではないが、これまでに発見されている系外惑星全体の約3分の2は、この方法で見つかった。

「JWSTは系外惑星の特性解析に大変革をもたらしており、これまでにない知見を驚くべきペースで提供している」と、デシンは指摘した


2923年11月23日
Forbes JAPANより

木星型巨大ガス惑星「WASP-17 b」

Posted by moonrainbow on 28.2023 太陽系外惑星   0 comments   0 trackback
「水晶の雲」を持つホットジュピター発見、ウェッブ宇宙望遠鏡による観測

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灼熱の巨大ガス惑星(ホットジュピター)「WASP-17 b」の観測データに基づく想像図(NASA, ESA, CSA, and R. Crawford (STScI))

地球から1300光年の距離にある太陽系外惑星で、ホットジュピターと呼ばれる木星型巨大ガス惑星「WASP-17 b」の高層にある雲に、石英(水晶、二酸化ケイ素[SiO2]結晶)が含まれている証拠が、米航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた観測で発見された。地球上では一般的なこの鉱物が系外惑星で見つかったのは、JWSTのMIRI(中赤外線観測装置)による今回の観測が初めてだ

ケイ素と酸素が豊富に含まれるケイ酸塩鉱物は、地球や月に加え、太陽系にある他の岩石天体の大部分を構成している。かんらん石や輝石などのマグネシウムに富むケイ酸塩は、隕石や小惑星に多く含まれており、銀河系全域にある塵(固体微粒子)の雲や、系外惑星や褐色矮星の大気中などで検出されているが、純粋な結晶形態のSiO2である石英はこれまで見つかっていなかった。

今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、英ブリストル大学の研究者デービッド・グラントは「私たちはワクワクした!」と話す。「ハッブル宇宙望遠鏡の観測から、WASP-17 bの大気中にエアロゾル(雲や靄を形成している微粒子)が存在するに違いないことはわかっていたが、それが石英でできているとは誰も予想していなかった」

体積が木星の7倍以上で、質量が木星の2分の1足らずのWASP-17 bは、現在知られている最大級かつ最も低密度な系外惑星の1つだ。さらに、公転周期がわずか3.7日と短いため、透過分光法による観測に適した惑星となっている。これは、惑星大気が星の光に及ぼすフィルター効果と散乱効果を測定する観測技術だ。

惑星大気中で主星の光を遮っているのは「石英」の雲
ウェッブ望遠鏡はWASP-17恒星系を10時間近く観測し、惑星が主星の前を横切る際に、波長5~12ミクロンの中赤外光の光度測定値を1275回以上収集した。惑星が主星の前にある間に望遠鏡に届いた個々の波長の光の光度を、主星が単独の時の光度から差し引くことで、惑星大気で遮られる各波長の光の量を算出できた。

その結果、波長8.6ミクロンに予想外の「こぶ」が現れた。この特徴は、雲がケイ酸マグネシウムや、その他の考えられる高温エアロゾル(酸化アルミニウムなど)でできているとして予想されるものではなく、石英でできているとすれば完全に理解できる。

この石英は、地球のジオード(晶洞)内や宝石店で見られる先端のとがった六角柱に形が似ているかもしれないが、1つ1つの直径はわずか約10ナノメートル(100万分の1cm)だ。

地球上の雲に含まれる鉱物粒子とは異なり、WASP-17 bの雲の中で検出された石英結晶は、岩石質の表面から吹き上げられたものではない。大気自体に由来するものだ。

「WASP-17 bは、約1500度と極めて高温で、大気上層部で石英結晶が形成される領域の圧力は、地球表面の圧力の約1000分の1しかない」と、グラントは説明する。「このような条件では、最初に液相を経ることなく、気体から直接、固体結晶が形成される可能性がある」

平均表面温度がより低い地球では、同じ物理過程に基づき、水蒸気が直接、氷晶(氷の結晶)に変化し、雪片や霜を形成する可能性がある


論文の共同執筆者で、同じくブリストル大のハンナ・ウェイクフォードは「この美しいシリカ結晶は、さまざまな物質の何がどれだけの量存在して、それらすべてがどのように集まってこの惑星の環境を形作っているかを、私たちに教えてくれる」と説明した


ダイヤの雨に鉄の雪も、さまざまな惑星の物質循環

雲が何でできているかを把握することは、惑星を全体として理解するために非常に重要だ。WASP-17 bは潮汐ロックの状態にあり、常に一方の半球面を主星の方向に向けている。それにより、非常に高温の昼の側と、より低温の夜の側ができることで、惑星の周囲に石英の雲の連続的な発生を促している可能性が高い。

WASP-17 bの夜の側では、気温がSiO2の融点より下がるため、水晶でできた雲が形成される。昼と夜の2つの半球の間の極端な温度差によって引き起こされる強風で、水晶が夜側からより高温の昼側に運ばれ、そこで再び蒸発する。

今回の発見は、惑星大気中に結晶体からなる雲が存在する可能性を高めている。

海王星や天王星の物理的状態と化学組成についてわかっていることに基づき、巨大氷惑星の下層ではダイヤモンド結晶の雨が激しく降り続いているとする説を、研究者らは提唱している。

コンピュータシミュレーションに基づくと、みずがめ座にある橙色矮星(K型主系列星)の主星に近い軌道を公転する地球サイズの系外惑星「K2-141 b」は、マグマの海に覆われ、鉄やナトリウム、マグネシウム、カリウムなどの結晶でできた「雪片」が空から降っている可能性が高い。

今回の研究をまとめた論文「JWST-TST DREAMS: Quartz Clouds in the Atmosphere of WASP-17b」は、学術誌The Astrophysical Journal Lettersに2023年10月16日付で掲載された。追加資料とインタビューは、Laura BetzとChristine PulliamがNASAのサイトnasa.govに掲載したものだ


2023年10月23日
Forbes JAPANより

恒星系「トラピスト1(Trappist-1)」

Posted by moonrainbow on 22.2023 太陽系外惑星   0 comments   0 trackback
「太陽系2.0」トラピスト1の岩石惑星 ウェッブ望遠鏡による観測結果

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みずがめ座にある恒星系トラピスト1にある惑星「トラピスト1f」の表面の様子を描いた想像図(NASA/JPL-Caltech)

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トラピスト1恒星系(中央)と太陽系(下)、木星とその大型衛星(上)との比較イラスト。太陽よりはるかに小さい赤色矮星トラピスト1を公転する7惑星の軌道は、水星の軌道内に容易に収まる(NASA/JPL-Caltech)

「太陽系2.0」とのニックネームがつけられている恒星系「トラピスト1(Trappist-1)」は、惑星科学者たちを魅了している。この恒星系では、地球からわずか39光年の距離にある1つの恒星を、7つの惑星が公転。太陽系とあらゆる点で同じというわけではなく、主星は太陽よりはるかに温度が低い赤色矮星(わいせい)だが、7つの惑星は全てが岩石質、地球サイズと、少なくともいくつかの点で地球に類似している

米航空宇宙局(NASA)は2017年、スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡でトラピスト1を観測した結果、単一の星のハビタブルゾーン(生命生存可能領域)内で最も多くの地球サイズの惑星が見つかったと発表した。

惑星のどれもが実際に地球に似ているかどうかは不明だが、系外惑星研究者らは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によって、これらの惑星を取り巻く大気が存在するかどうかが判明するのを待っていた。最も調査しやすい惑星は、主星に最も近く、最も高温で明るい「トラピスト1b」だ


今年5月には、JWSTに搭載のMIRI(中赤外線観測装置)を使ったトラピスト1bの調査が実施されていた。そしてこの度、JWSTのNIRISS(近赤外撮像分光器)を用いた調査結果が発表された。NIRISSは、恒星からの白色光を虹のような色成分に分解する装置だ

■大気は確認されず

学術誌The Astrophysical Journal Lettersに掲載された論文によると、トラピスト1bに大気が存在することを示すものは確認されなかった。米ミシガン大学の天文学者で、NASAセーガン・フェローのライアン・マクドナルドはプレスリリースで「これによりトラピスト1bは、大気のない岩石か、大気圏の高い位置に雲があるか、あるいは、大気が二酸化炭素のように非常に重い分子でできていて、希薄すぎて検出できないかの可能性があることがわかる」と述べている。「だが、実際に断定できるのは、間違いなく主星が今回の観測結果を左右する最大の影響を及ぼしており、この系の他の惑星にも全く同じ影響が及ぶことだ」

検出された「大気の信号」は「ゴースト」だった
これは良い知らせではないが、特に悪いというわけでもない。39光年先からの大気の信号を見つけるのは簡単ではないため、初期の研究では、トラピスト1系にある惑星の観測に主星がどのような影響を及ぼすかを知ることに重点を置いている。「今のうちに主星の取り扱い方法を考えておかなければ、ハビタブルゾーンにある惑星のトラピスト1d、e、fを調査する際に、大気の信号を確認するのが非常に難しくなる」と、マクドナルドは指摘する。恒星のハビタブルゾーンは理論上、惑星の表面に液体の水が存在できる範囲とされる


■「ゴースト信号

トラピスト1を公転する惑星の存在は、惑星が主星の前を横切る際にしか確認できない。今回の研究では、透過分光法と呼ばれる技術を使用し、トラピスト1bの大気を通過した主星の光をJWSTのNIRISSで分解した。この光には、惑星の大気中に含まれる分子や原子の痕跡があった。

だが、この痕跡は実際には、星の光に見られる多数の「ゴースト信号」だった。これは主星自体の黒点や白斑(はくはん)に由来するものと思われた。このデータは、今後の研究で、トラピスト1系の惑星の大気中に特定の分子を検出したと早合点するのを防ぐことに役立つかもしれない


■フレア現象

トラピスト1系と太陽系との大きな違いは、その主星だろう。トラピスト1は、太陽類似星よりもはるかに一般的な恒星である赤色矮星だ。トラピスト1bは、地球が太陽から受ける放射の4倍のエネルギーを受けており、表面温度が120~220度に達していることを、研究チームは明らかにした。なので、ハビタブルゾーン内には存在していない。赤色矮星は、太陽に比べて挙動が予測しにくく、このことが生命体に影響を与えることも考えられる。

研究を主導した、カナダ・モントリオール大学トロティエ太陽系外惑星研究所のオリビア・リムは「今回の観測では、恒星フレアが確認された。これは予測不可能な現象で、発生時には主星が数分から数時間の間、増光するように見える」と話す。「フレアは、惑星によって遮られる光の量の測定に影響を及ぼした。データの正しい解釈を確実にするには、フレアの影響を考慮する必要がある」


■希薄な大気が存在?

トラピスト1bでは大気が検出されなかったが、今回の研究では、おそらく水、二酸化炭素やメタンでできたと考えられる薄い大気が存在する可能性を排除できなかった。さらに、土星の巨大衛星タイタンに似た大気がある可能性も排除できなかった。タイタンは太陽系で唯一、分厚い大気を持つ衛星で、大気圧は地球の約1.5倍だ

■トラピスト1について

最初に発見されたのは1999年だが、2016年に3つの惑星を発見した科学者らが使用したチリのラ・シヤ天文台にある望遠鏡「TRAPPIST(TRAnsiting Planets and PlanetesImals Small Telescope)」にちなみ、トラピスト1系と命名された。翌17年には、スピッツァー宇宙望遠鏡による1000時間以上の観測が実施され、惑星7つとその質量、半径、密度が明らかになった。惑星は全て岩石質で、地球サイズの天体だった

2023年10月17日
Forbes JAPANより

太陽系外惑星「TOI-1420b」

Posted by moonrainbow on 20.2023 太陽系外惑星   0 comments   0 trackback
発泡スチロール並に低密度な惑星「TOI-1420b」を発

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パフィー・プラネットの1つであるWASP-107b(黒い影のように描かれている天体)の想像図

惑星の大きさと質量から求められる惑星の密度(平均密度)は、惑星に軽い物質が多く含まれるほど低く、中には「土星」のように水よりも低い値となる場合もあります。太陽系以外の惑星である「太陽系外惑星」の場合、恒星からの熱で膨張することで、さらに密度が低くなっているものもあります。では、惑星の密度はどこまで低くなることが可能なのでしょうか

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのStephanie Yoshida氏などの研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙望遠鏡「TESS(トランジット系外惑星探索衛星)」が観測した直径と質量の値をもとに、太陽系外惑星「TOI-1420b」の平均密度が1立方cmあたり0.082gという低密度なタイプの発泡スチロールとほぼ同じ値であると算出しました。TOI-1420bの年齢が古いことを考慮すると、これは興味深い結果でもあります

■とても低密度な惑星「パフィー・プラネット」

太陽系の惑星の密度は、最も高い地球の1立方cmあたり5.513gから、最も低い土星の1立方cmあたり0.687gまで様々です。土星の密度が水よりも低い値なのは、気体が主体の「巨大ガス惑星」であり、土星本体の大部分が水素とヘリウムでできているためです。

太陽系の外に視野を広げると、土星よりもさらに密度が低いとみられる惑星も幾つか見つかっています。このような惑星は、木星や土星と同じような巨大ガス惑星であることに加えて、「ホット・ジュピター」であることが低密度の理由となっています。ホット・ジュピターは恒星から極めて近い距離を公転しているので、恒星からの放射で熱せられて大気が膨張し、直径が拡大します。その結果、同程度の質量を持つ低温の惑星と比べて密度は低くなります。こうした惑星のなかでも特に低密度な惑星は「パフィー・プラネット(Puffy planets)」とも呼ばれています (※)


※… “Puffy planets” は、直訳すれば「フワフワとした惑星」「膨らんでいる惑星」となります。どの程度の密度の天体をパフィー・プラネットと呼ぶのかは定義されておらず、学術的な分類名というわけでもありません。このため、パフィー・プラネットという分類は愛称に近いものです

■「TOI-1420b」の密度は発泡スチロール並と判明

Yoshida氏などの研究チームは、TESSの観測データで得られた惑星候補「TOI-1420b」についての研究を行いました。TOI-1420bは、地球から見て「ケフェウス座」の方向に約660光年離れた恒星「TOI-1420」の周りを公転する惑星です。今回の研究では「ロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台」(スペイン領カナリア諸島、ラ・パルマ島)にあるイタリア国立ガリレオ望遠鏡に設置された視線速度分光器「HARPS-N」の観測データを元にTOI-1420bの質量が推定され、TESSのトランジット法による直径の推定値と合わせてTOI-1420bの密度が推定されました。

その結果、地球と比較してTOI-1420bの直径は11.89±0.33倍もあるのに対して、質量は25.1±3.8倍しかないことが判明しました。言い換えれば、TOI-1420bの大きさは木星とほぼ同じであるにも関わらず、質量は木星の約8%しかないことになります。ここから算出されるTOI-1420bの密度は1立方cmあたり0.082±0.015gで、低密度なタイプの発泡スチロールとほぼ同じ値となっています。

TOI-1420bがこれほど低密度なのは、恒星TOI-1420のすぐ近くを公転しているからだと推定されます。実際、TOI-1420bはTOI-1420から約1100万km(約0.073天文単位)の距離を6.96日周期で公転しており、表面温度は680℃だと推定されています。この高温がTOI-1420bを膨張させて、パフィー・プラネットにしていると考えられます


■TOI-1420bはパフィー・プラネットの基準となる可能性

現在のところ、TOI-1420bは質量が地球の50倍未満の惑星の中では直径が最大の惑星としての記録を持ちます。しかし、単純な密度の比較ではTOI-1420bに匹敵するか、あるいはそれを下回る低密度のパフィー・プラネットも見つかっています。このためTOI-1420bは最も低密度な惑星というわけではありませんが、惑星科学の観点からは、他のパフィー・プラネットよりも興味深い観測対象の1つです。

まず、TOI-1420bは多くの観測データが得られており、他のパフィー・プラネットと比べて詳細な研究が可能です。例えば、今回の研究ではTOI-1420b全体に占めるガス成分の割合が約82%であると計算されており、TOI-1420bの中心部には質量が地球の4倍程度の岩石の核(コア)があると推定されます。このような基本的なデータは、パフィー・プラネットがどのようにして形成されたのかを研究するための重要なデータです。

また、恒星TOI-1420は太陽と同じG型主系列星であり、年齢は107億年未満と推定されています。恒星と同じ年齢だと推定されるTOI-1420bがパフィー・プラネットであることは、それだけでもとても興味深いものです。これほどまでに熱膨張している惑星の大気上層部では、重力を振り切って脱出する気体成分が多いと考えられます。すると、低密度の理由となる気体成分が徐々に失われてしまうため、惑星の密度は高くなるはずなのです。

TOI-1420bは100億年以上も大気を流出させ続けているパフィー・プラネットなのか、それとも公転軌道の変化などで最近になってパフィー・プラネットになったのかは現時点では判明していませんが、パフィー・プラネットがどうやって誕生するのかを調べる上で、TOI-1420bは標準的な観測対象となる可能性があります。また、研究の過程で観測される大気の流出状況は、他の惑星の大気科学にも応用される可能性があります


Source
Stephanie Yoshida, et al. “TESS Spots a Super-Puff: The Remarkably Low Density of TOI-1420b”. (arXiv)

2023年10月13日
sorae 宇宙へのポータルサイトより

惑星ができる前の円盤で塵の様子

Posted by moonrainbow on 14.2023 太陽系外惑星   0 comments   0 trackback
アルマ望遠鏡が惑星形成の「最初の一歩」をとらえた

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おうし座DG星の原始惑星系円盤。波長1.3mmの電波強度分布を描いている。より年を経た原始星の円盤とは異なり、リング模様のような構造形成が進んでおらず、惑星形成の直前段階とみられる(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Ohashi et al.、以下同)

若い原始星を取り巻く原始惑星系円盤がアルマ望遠鏡で観測され、円盤に含まれる塵の性質が調べられた。惑星ができる前の円盤で塵の様子がわかったのは世界初だ

地球のような惑星がどうやってできるのかを知ることは、私たち生命の起源を知る上でも重要だ。惑星は、誕生して間もない原始星を取り巻く「原始惑星系円盤」の中で、塵やガスが集まって形成されると考えられている。

近年のアルマ望遠鏡による観測で、いくつもの原始惑星系円盤に同心円状の「すき間」(リング構造)が見つかっている。こうしたすき間は、惑星が自身の重力で円盤物質を掃き集めて成長する証拠だとされている。

だが、円盤内のどこで、いつ、どのように惑星の形成が始まるのかについては謎が多い。惑星形成の始まりを理解するには、まだ惑星ができていない円盤を詳しく調べる必要があるが、惑星の痕跡がない円盤をたまたま発見して詳しく観測できるチャンスはあまりないからだ。

今回、国立天文台の大橋聡史さんたちの研究チームは、おうし座の方向約410光年の距離にある原始星「おうし座DG星」の原始惑星系円盤をアルマ望遠鏡で詳細に調べた。おうし座DG星は原始星の中でも比較的若いことが知られている。

大橋さんたちは円盤内の塵から放射される波長1.3mmの電波を観測し、その強さの分布を高い空間分解能(約0.04秒角)でとらえた。観測の結果、おうし座DG星の円盤はのっぺりとしていてリング構造は見られなかった。これは、おうし座DG星の円盤にまだ惑星が存在せず、いわば「惑星形成前夜」の段階にあることを示している


研究チームではさらに、波長0.87mm, 3.1mmの電波でも円盤を観測し、電波強度の分布や偏光(電波の振動方向の偏り)の分布も調べた。波長ごとに電波の強度や偏光を調べると、円盤に含まれる塵のサイズや量についての情報を得ることができる。研究チームはこれらの観測結果をシミュレーションと比較して、惑星の材料となる塵がどのくらい成長しているか、またその大きさや量の分布を推定した。

解析の結果、おうし座DG星では、円盤の内側よりも外側(中心星から約40天文単位、海王星軌道の約1.3倍)付近の方が塵のサイズが大きいことがわかった。円盤内では塵どうしが衝突・合体して惑星へと成長するので、大きな塵が存在する円盤の外側の方が、惑星形成の段階がより進んでいることになる。従来の惑星形成論では、惑星形成は円盤の内側から始まるとされてきたが、大橋さんたちの結果から、むしろ外側から始まる可能性も出てきた


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おうし座DG星円盤の電波強度と偏光強度
(上)おうし座DG星円盤の波長0.87mm, 1.3mm, 3.1mmの電波強度マップと、波長0.87mm, 3.1mmの電波の偏光強度マップ。(下)上の観測結果と最もよく一致するシミュレーションの結果

一方、円盤の内側では塵のサイズは小さいものの、ガスに対する塵の比率が通常の星間空間の約10倍にも高くなっていることがわかった。さらに、塵は円盤の中心面あたりによく沈殿していて、惑星の材料が溜め込まれている段階にあることも明らかになった。将来、この塵が集まって惑星形成が始まると考えられる。

今回の研究で、惑星の痕跡がない円盤での塵の大きさや量が初めて明らかになり、惑星形成の始まりについて予想外の新たな側面が見えてきた。「これまでアルマ望遠鏡は、多様な円盤構造をとらえることに成功し、惑星の存在を明らかにしてきました。今回は惑星形成の初期条件を明らかにしたという点で非常に重要な成果だと考えています」(大橋さん)


2023年10月11日
AstroArtsより
 

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