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重力レンズ天体「ホルスの目」

Posted by moonrainbow on 01.2016 重力レンズ   0 comments   0 trackback
古代エジプトの神の目に似た、珍しい重力レンズ天体

ホルスの目
ホルスの目。明るいオレンジの天体がレンズ源となった手前の銀河で、赤っぽいリングと青っぽいリングがそれぞれ背景にある重力レンズ効果を受けた銀河(提供:国立天文台) .

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSCが撮影したデータの中から、2つの遠方銀河が手前にある別の銀河によって同時に重力レンズ効果を受けているという、極めて珍しい重力レンズ天体が発見されました。見た目もユニークな天体で、古代エジプトの神聖なる神の目にちなみ「ホルスの目」と名付けられました

遠くの銀河から来る光が、その手前にある別の銀河によって大きく曲げられる現象は「重力レンズ効果」と呼ばれており、背景の銀河は形がゆがんだり増光して見えたりします。重力レンズ効果が起こるのは稀なことで、通常は手前の銀河によって背景にある銀河1つだけに効果が見られるものであり、複数の背景銀河がレンズ効果を受けることは極めて珍しいです

国立天文台の田中賢幸さんたちの研究グループが、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ「HSC(Hyper Suprime-Cam、ハイパー・シュプリーム・カム)」のデータを調べていたところ、この珍しい「複数の背景銀河が重力レンズ効果を受けているもの」と思われる天体が見つかりました

画像には複数の点に加え、完全なアインシュタインリングや円弧状の天体(いずれも重力レンズ効果に特徴的な像)が見られます。さらに中心には重力レンズを引き起こしている銀河もあって、これらがうまく並んで切れ長の「目」のような形をなしています。古代エジプトの神聖なる神の目に似ていることから、研究チームではこの天体を「ホルスの目」と名付けました

「ホルスの目」の画像を詳しく調べると、異なる色をした2つのリング状・円弧状の天体であることがわかりました。これは重力レンズ効果を受けた背景銀河が、1つではなく2つあることを強く示唆しています

過去の観測から、重力レンズ効果を引き起こしている手前の銀河までの距離は70億光年(赤方偏移z=0.795)であることが知られています。チリのマゼラン望遠鏡を用いて背景天体の距離を測定したところ、それぞれ90億光年(z=1.30)、105億光年(z=1.99)であることがわかりました。さらに興味深いことに、遠いほうの銀河ではわずかに異なる2つの赤方偏移が得られています。「もしかしたらこの銀河は、衝突合体の過程にある銀河のペアなのかもしれません」(国立天文台 Kenneth Wonさん)。

今後HSCの観測で、「ホルスの目」のような複数天体の重力レンズ天体がさらに10個ぐらい見つかることが期待されています。こうした天体は、銀河の基本物理や過去数十億年にわたりどのように宇宙が膨張してきたのを探る手掛かりとなる。夜空に浮かぶ「太古の目」は、宇宙の歴史を紐解くのに一役買っています

2016年7月28日
Astro Artsより

アルマ+重力レンズ=視力13000 

Posted by moonrainbow on 15.2015 重力レンズ   0 comments   0 trackback
117億光年先の銀河「SDP.81」もはっきりと

本研究成果の模式図
本研究成果の模式図(提供:アルマ望遠鏡の画像:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/C. Collao (ALMA)、地球の画像:気象庁) .

アルマ望遠鏡の観測結果とそれをもとに作られた重力レンズ効果モデルから、117億光年彼方にあるモンスター銀河の内部構造や、その手前にある銀河の超大質量ブラックホールの存在などが明らかになりました

うみへび座の方向117億光年彼方の「SDP.81」は爆発的に恒星を生み出している銀河で、その手前に位置する距離34億光年の銀河が生み出す重力レンズ効果により、リング状に引き伸ばされた姿を見せています。2015年2月には、アルマ望遠鏡による高解像度での観測画像が公開されました。(参照:アストロアーツニュース:「117億光年彼方の銀河が見せるアインシュタインリング」)

田村陽一さんら東京大学と国立天文台の研究グループは、SDP.81のリング状の姿をもっとも精緻に再現できる重力レンズ効果モデルを世界に先がけて作り上げました。SDP.81周辺の重力場の歪みを高精度で補正した、いわば重力レンズの乱視矯正を独自にとりいれることで、銀河の内部構造の詳細が明らかになり、さらに重力レンズ効果を引き起こしている手前の銀河に超大質量ブラックホールが存在することが世界で初めて示されたのです

モンスター銀河SDP.81
モンスター銀河SDP.81。(左から)ハッブル宇宙望遠鏡撮影、ALMA撮影、ALMA撮影データと重力レンズ効果モデルを元にして再現した銀河の像。(提供:ALMA (NRAO/ESO/NAOJ)/Y. Tamura (The University of Tokyo)/Mark Swinbank (Durham University))

まず、重力によって引き伸ばされて見える「アインシュタインリング」の複雑な微細構造から、銀河内部のおよそ5000光年の楕円状の領域に、幅200~500光年の塵の雲が複数分布していることがわかりました。塵の雲は巨大分子雲とみられ、天の川銀河や近傍の銀河に見られるものと同じようなサイズですが、これほど遠方の銀河の内部がここまで詳しくわかったのは初めてのことです

また、銀河の中心像がきわめて暗いことから、手前の銀河の中心に太陽質量の3億倍以上におよぶ超大質量ブラックホールが存在するらしいこともわかっています

世界最高水準の解像度と感度を誇るアルマ望遠鏡と重力レンズを組み合わせることで、人間の視力に換算して13,000というきわめて高い解像度が達成されました。今後これを活かして、モンスター銀河の形成や超大質量ブラックホールの成長過程がさらに明らかになるでしょう

2015年6月11日
Astro Artsより
 

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