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銀河団内の重力レンズ

Posted by moonrainbow on 21.2020 重力レンズ   0 comments   0 trackback
理論予測より桁違いに多かった銀河団内の重力レンズ

今回の研究で解析された銀河団の一つ
MACS J1206
今回の研究で解析された銀河団の一つ、「MACS J1206.2-0847」をハッブル宇宙望遠鏡で撮影した画像。おとめ座の方向約45億光年の距離にある。銀河団の重力によって、背景にあるいくつもの遠方の銀河の像が円弧状に歪められ、銀河団に重なって見えている。画像クリックで表示拡大(提供:NASA, ESA, P. Natarajan (Yale University), G. Caminha (University of Groningen), M. Meneghetti (INAF—Observatory of Astrophysics and Space Science of Bologna), and the CLASH-VLT/Zooming teams. Acknowledgement: NASA, ESA, M. Postman (STScI), and the CLASH team)


銀河団内の個々の銀河で生じる小さな重力レンズ現象が予測よりずっと多いことがわかった。標準的なダークマターの理論にはまだ足りない要素があるのかもしれない

ダークマター(暗黒物質)は、質量を持っているものの、光(電磁波)を放射・吸収・反射することがない正体不明の物質だ。宇宙全体に存在する全エネルギーの約1/4を占めると考えられている。宇宙にダークマターが存在することは、光で見える通常の物質や天体がダークマターの重力を受けて運動する様子から間接的に知ることしかできない。

ダークマターを検出する方法の一つとして、ダークマターの重力で空間が曲げられ、その空間を通る光の進路が変化する「重力レンズ」という現象を使うものがある。大きな質量を持つ天体などがあると、その背景にある遠くの天体から来た光が増光されたり、遠方天体の像が円弧状やリング状に歪んだり、複数の像ができたりする。「レンズ」となる質量が強く集まっているほど、光の曲がり具合は大きい。

重力レンズ現象が最も多く見られる天体は銀河団だ。銀河団には数百から数千個もの銀河と高温ガスが含まれており、宇宙で最も質量の大きな構造である。さらに、これらの「見える質量」だけでなく、その10倍以上の質量がダークマターとして貯め込まれている。

そのうえ、銀河団に属する一つ一つのメンバー銀河自体にもダークマターが付随している。つまり、銀河団のダークマターは、銀河団全体という大きな塊と、個々の銀河という小さな塊の2つのスケールで集まり、分布しているのだ


伊・国立天体物理学研究所ボローニャ天文台のMassimo Meneghettiさんを中心とする研究チームは、銀河団のメンバー銀河が引き起こす「小さな強い重力レンズ」に着目した。ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された銀河団の画像を調べると、銀河団の中心部に集まるダークマターで生じた大スケールの重力レンズ像だけでなく、個々のメンバー銀河によって生じた小さなレンズ像も写っている。Meneghettiさんたちは11個の銀河団について、こうした小さなレンズ像を抽出し、さらにチリにあるヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡VLTを使った分光観測で、小さなレンズ像の原因となったメンバー銀河の中の星の運動を測定した。これによって、個々の銀河の「ダークマター込み」の質量を求めた。

宇宙の初期にはまずダークマターが互いに集まって塊を作り、続いて通常の物質(バリオン)がその重力に引かれて集まって、恒星や銀河、銀河団を形作ったと考えられている。こうした構造形成がどう進んたかについては標準的な理論(CDMモデル)があり、この理論に基づいたコンピューターシミュレーションがさかんに行われている。Meneghettiさんたちは、今回解析した銀河団と同じ質量・同じ時代の銀河団をシミュレーションで作り出し、「小さなレンズ像」がどのくらいできるかを調べて観測結果と比較した。

「ダークマターの存在や見える物質との相互作用について考えるための観測結果をシミュレーションがきちんと再現できているかどうか、という点を理解する上で、銀河団は理想的な実験室だといえます」(Meneghettiさん)


銀河団MACS
MACS J1206の銀河
上の画像の銀河団MACS J1206.2-0847のメンバー銀河を拡大した画像(枠内)。メンバー銀河自身に付随するダークマターによって小さな重力レンズ効果が起こり、遠くの銀河の像が歪められている。右上の枠内の銀河にはリング状のレンズ像が、左上と下の枠内の銀河には複数の像に分かれたレンズ像が見えている。画像クリックで表示拡大(提供:NASA, ESA, P. Natarajan (Yale University), G. Caminha (University of Groningen), M. Meneghetti (INAF-Observatory of Astrophysics and Space Science of Bologna), and the CLASH-VLT/Zooming teams. Acknowledgement: NASA, ESA, M. Postman (STScI), and the CLASH team)

解析の結果、実際の銀河団でメンバー銀河が「小さなレンズ像」を作り出している確率は、シミュレーションの予測より10倍も大きいことが明らかになった。言い換えれば、シミュレーションで作り出した銀河団では、個々の銀河に付随しているダークマターの「集中度」が現実のメンバー銀河のダークマターよりずっと低い、ということになる。

「シミュレーションと観測データを比べるたくさんのテストを注意深く行いましたが、食い違いは解消されませんでした。原因として考えられるものの一つは、私たちが鍵となる物理過程をシミュレーションの中に入れ忘れているということです」(Meneghettiさん)。

「現在の理論ではまだとらえきれていない性質が現実の宇宙にはあるのです。今回の結果は、ダークマターの性質や特性についての今の理解に『ギャップ』があることを示しているのかもしれません。これらの観測データのおかげでダークマターの分布を非常に小さなスケールまで詳細にとらえることができるからです」(米・イエール大学 Priyamvada Natarajanさん)。

研究チームでは、今後もこのような解析を行って、標準的なダークマターモデルに対する「負荷試験」を行い、謎の多いダークマターの性質を解き明かすことを期待しているという。また、NASAが現在計画しているナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(WFIRST)を使えば、銀河団のレンズ像をもっと多く見つけることができ、ダークマターモデルを検証できるようなサンプルが増えるだろう


Hubble Makes Unexpected Dark Matter Discovery


解説動画(提供:NASA's Goddard Space Flight Center)

2020年9月16日
AstroArtsより

円盤銀河「SGAS J111020.0+645950.8」の中に若い星の群れ

Posted by moonrainbow on 28.2017 重力レンズ   0 comments   0 trackback
星の群れに彩られた、はるか遠くの銀河

重力レンズ像
(画像左)円盤銀河「SGAS J111020.0+645950.8」の重力レンズ像、(中央)重力レンズ効果を生み出した銀河団「SDSS J1110+6459」、(右)復元された円盤銀河の姿(提供:NASA, ESA, and T. Johnson (University of Michigan))

重力レンズ効果を受け大きく引き伸ばされた、はるか遠方に存在する銀河の姿をハッブル宇宙望遠鏡がとらえました。復元された銀河の像には若い星の群れがあちこちに見られます

遠方宇宙の観測ともなると、NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)の持つ鋭い観測の目にも限度が出てきます。そのため、遠方天体の詳細な像を得るには、巧みなアイデアと重力レンズ効果によるちょっとした手助けが必要となります

おおぐま座の方向に位置する円盤銀河「SGAS J111020.0+645950.8」は、強い重力レンズ効果を受けた銀河を見つけ出す「スローン・ジャイアント・アークス・サーベイ(SGAS)」で見つかりHSTで追観測された天体の一つです。銀河と私たちの間に存在する巨大な銀河団「SDSS J1110+6459」の重力によって、銀河の像は大きく歪められ、30倍に拡大されています

さらに円盤銀河の像をコンピューターで分析することで、HSTが単独で得る像の10倍も鮮明な銀河の姿が再構成されました。真横から見た円盤銀河には生まれたばかりの星々の群れが20個ほど見られます。「復元された画像を見て『至るところで花火が上がっているようだ』と話していました」(NASAゴダード宇宙飛行センター Jane Rigbyさん)

この円盤銀河は約110億年前の宇宙、つまり宇宙誕生から30億年未満という初期宇宙に存在してる。銀河中の星々の群れの大きさは約200~300光年と見積もられていますが、これは「遠方の初期宇宙における星生成領域の大きさは3000光年以上」という従来の理論と矛盾する結果となりました

「観測できる限界まで小さいサイズの、星の群れが存在しています。重力レンズ効果がなければこれは見えず、銀河はHSTで見ても完全に滑らかで目立たないものだったでしょう」(米・ミシガン大学 Traci Johnsonさん)

HSTの後継機で2018年に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)では、銀河のもっと初期に誕生した年老いた赤い星や、銀河内の塵に隠れたものもとらえられる。「JWSTによって、この銀河に過去何が起こったのか、塵に邪魔されてHSTでは見えなかったものは何か、明らかになるでしょう」(Rigbyさん)

2017年7月13日
AstroArtsより

重力レンズ効果を受けた赤外線で極めて明るく輝く銀河を発見

Posted by moonrainbow on 14.2017 重力レンズ   0 comments   0 trackback
赤外線で太陽の100兆倍も明るく輝く銀河

重力レンズ効果を受け変形して見える銀河の赤外線画像
重力レンズ効果を受け変形して見える銀河の赤外線画像(提供:NASA, ESA, and J. Lowenthal (Smith College))

重力レンズ効果を受けて拡大された、赤外線で非常に明るく輝く銀河の姿がハッブル宇宙望遠鏡でとらえられました。赤外線での明るさは太陽の10兆倍から100兆倍にも達します

重力レンズ効果では、銀河や銀河団といった大質量の天体がレンズの役割を果たし、その背後にある遠方の天体の姿を拡大して見せてくれます。この効果を利用すると、遠い銀河を詳細に調べることが可能になります。

米・スミス・カレッジのJames Lowenthalさんたちの研究チームはハッブル宇宙望遠鏡などによる観測で、こうした重力レンズ効果を受けた赤外線で極めて明るく輝く銀河を発見しました

発見された銀河はいずれも、80億年前から115億年前の間という宇宙の歴史の中で激しい星生成が行われていた時代に存在しています。年間に1万個以上という暴走的なペースで星生成を行っており、それによって大量の塵も作られます。塵が銀河を取り囲んでしまうため可視光線では暗く見えなくなってしまうが、赤外線では太陽の10兆倍から100兆倍、天の川銀河の1万倍という猛烈な明るさで輝いています

Lowenthalさんたちによれば、赤外線で明るいこのような銀河は宇宙に数十個程度しかなく、「重力レンズ効果の大当たりを引き当てた」ようだ。「超高光度で大質量のスターバースト(爆発的星生成)銀河はとても珍しい存在です。重力レンズ効果のおかげで、100光年未満という(遠方の銀河に対して)非常に小さいスケールの特徴まで見ることができます。モンスターと呼ぶにふさわしいこれらの銀河が何からエネルギーを得ているのかを理解したいと思っています」(Lowenthalさん)

これらの銀河の星生成率は天の川銀河の5000倍から1万倍にもなるが、銀河が星生成に利用しているガスの量は天の川銀河に含まれている量と同程度と考えられています。並外れた星生成のエネルギー源は何なのでしょうか

一つの考え方として、これらの銀河が近傍宇宙に見られる「超高光度赤外線銀河(ultra-luminous infrared galaxies; ULIRGs)」の、より明るく遠いところにある「いとこ」に相当するような天体だという可能性です。ULIRGsは塵に包まれた大質量のスターバースト銀河で、その星生成は渦巻銀河同士の合体で激化するが、同様のプロセスが今回の観測対象にも当てはまるのではないかというわけです。しかし、大きい銀河同士の合体が起こるのはもっと後の時代であることがコンピュータシミュレーションで示され、この可能性は小さそうです

別のアイディアとして、星の材料となるガスが大量に遠方銀河に流れ込むという考え方があります。「初期宇宙は密度が高かったため、ガスが銀河に降り注いでいたのかもしれません。あるいは、未知の経路からガスが供給されていたのかもしれません。銀河がどのようにガスを得ていたのかは、理論物理学者が奮闘している問題なのです」(Lowenthalさん)

2017年6月8日
AstroArtsより

「QSO B0218+357」からの届く光の時間差

Posted by moonrainbow on 14.2016 重力レンズ   0 comments   0 trackback
重力レンズが見せたガンマ線フレアのリプレイ

QSO B0218_357から放たれた光子が地球に届くまでの概念図
QSO B0218+357から放たれた光子が地球に届くまでの概念図。光は途中の銀河B0218+357Gによる重力レンズ効果を受け、長い経路を通ったものは11日差で観測される(提供:NASA/ESA; AGN image credits: NASA E/PO - Sonoma State University, Aurore Simonnet))

70億年前にクエーサーから放射されたガンマ線が、重力レンズ効果を受けて2つの異なる経路を通ったことによって、11日差で2回観測されました。このクエーサーは観測史上最も遠い超高エネルギーガンマ線源だという事です

アインシュタインの一般相対性理論によれば、大質量の天体の重力がレンズのような働きをすることで、そのレンズ源の向こうにある天体の像がゆがんだり明るく見えたりします。この重力レンズ効果によって、遠方にある非常に暗い天体も見ることができるようになるのです

さらに、レンズ中の異なる経路を通った光はある時間差で地球に届くので、その光の明るさが変われば、同じ変光が繰り返して見えることになります

観測史上最遠となる高エネルギーガンマ線源の発見も、地球とガンマ線源との間にある巨大銀河による重力レンズ効果のおかげで可能となったものです

さんかく座の方向に位置する「QSO B0218+357」は、活動的な銀河中心の超大質量ブラックホールから強い放射が見られる「ブレーザー」と呼ばれる種類の天体(クエーサーの一種)だ。このブレーザーで70億年以上前に巨大爆発が起こり、非常に高エネルギーのガンマ線フレアが発生しました

放射されたガンマ線は発生から10億年以上後に、ブレーザーと地球との間に位置する別の銀河「B0218+357G」を通過し、2014年7月14日に地球に届いてNASAのガンマ線天文衛星「フェルミ」で観測されました。ガンマ線アウトバースト検出の報告を受け、遠方宇宙で起こった爆発的現象を観測しようと世界中の多くの望遠鏡が即座にブレーザーへと向けられた。ラパルマ天文台のMAGIC望遠鏡もこの天体を観測しようとしたが、あいにくこの夜は満月でした

しかし、2012年にフェルミや電波望遠鏡で行われていた観測により、このブレーザーからの光のうち長い経路を通り重力レンズ効果を受けたものが11日後に地球に届くことがわかっていました。つまり、同じブレーザーからのガンマ線フレアを再観測できるチャンスがあることになるのです

果たして11日後、MAGIC望遠鏡をQSO B0218+357に向けたところ、予測通り非常に高エネルギーのガンマ線フレアが観測され、QSO B0218+357が観測史上最も遠い高エネルギーガンマ線源であることが確かめられたのです

2016年11月9日
Astro Artsより

重力レンズ天体「ホルスの目」

Posted by moonrainbow on 01.2016 重力レンズ   0 comments   0 trackback
古代エジプトの神の目に似た、珍しい重力レンズ天体

ホルスの目
ホルスの目。明るいオレンジの天体がレンズ源となった手前の銀河で、赤っぽいリングと青っぽいリングがそれぞれ背景にある重力レンズ効果を受けた銀河(提供:国立天文台) .

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSCが撮影したデータの中から、2つの遠方銀河が手前にある別の銀河によって同時に重力レンズ効果を受けているという、極めて珍しい重力レンズ天体が発見されました。見た目もユニークな天体で、古代エジプトの神聖なる神の目にちなみ「ホルスの目」と名付けられました

遠くの銀河から来る光が、その手前にある別の銀河によって大きく曲げられる現象は「重力レンズ効果」と呼ばれており、背景の銀河は形がゆがんだり増光して見えたりします。重力レンズ効果が起こるのは稀なことで、通常は手前の銀河によって背景にある銀河1つだけに効果が見られるものであり、複数の背景銀河がレンズ効果を受けることは極めて珍しいです

国立天文台の田中賢幸さんたちの研究グループが、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ「HSC(Hyper Suprime-Cam、ハイパー・シュプリーム・カム)」のデータを調べていたところ、この珍しい「複数の背景銀河が重力レンズ効果を受けているもの」と思われる天体が見つかりました

画像には複数の点に加え、完全なアインシュタインリングや円弧状の天体(いずれも重力レンズ効果に特徴的な像)が見られます。さらに中心には重力レンズを引き起こしている銀河もあって、これらがうまく並んで切れ長の「目」のような形をなしています。古代エジプトの神聖なる神の目に似ていることから、研究チームではこの天体を「ホルスの目」と名付けました

「ホルスの目」の画像を詳しく調べると、異なる色をした2つのリング状・円弧状の天体であることがわかりました。これは重力レンズ効果を受けた背景銀河が、1つではなく2つあることを強く示唆しています

過去の観測から、重力レンズ効果を引き起こしている手前の銀河までの距離は70億光年(赤方偏移z=0.795)であることが知られています。チリのマゼラン望遠鏡を用いて背景天体の距離を測定したところ、それぞれ90億光年(z=1.30)、105億光年(z=1.99)であることがわかりました。さらに興味深いことに、遠いほうの銀河ではわずかに異なる2つの赤方偏移が得られています。「もしかしたらこの銀河は、衝突合体の過程にある銀河のペアなのかもしれません」(国立天文台 Kenneth Wonさん)。

今後HSCの観測で、「ホルスの目」のような複数天体の重力レンズ天体がさらに10個ぐらい見つかることが期待されています。こうした天体は、銀河の基本物理や過去数十億年にわたりどのように宇宙が膨張してきたのを探る手掛かりとなる。夜空に浮かぶ「太古の目」は、宇宙の歴史を紐解くのに一役買っています

2016年7月28日
Astro Artsより
 

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