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ワームホールに落ちても最後のメッセージを送信できる?

Posted by moonrainbow on 13.2023 ワームホール   0 comments   0 trackback
ワームホールに落ちても最後のメッセージを送信する時間は少しだけ残されている可能性

ワームホールの内側から外へ
ワームホールを通過する宇宙船
 
もし宇宙のワームホールにうっかり落ちてしまったらもう2度と戻っては来られない。ワームホールは背後ですみやかに閉まってしまうことだろう

 それでもワームホールの内側から外へ、最後のメッセージを送信する時間が少し残されている可能性があるという。

 これが本当なら、この不可思議なトンネルの内部をカメラで撮影して観察するなんてことも、理論上は可能ということになる


不安定なワームホールの内側を知ることは可能なのか?
 
あくまで仮説上の構造でしかない「ワームホール」だが、本当に存在するのなら、宇宙のはるか遠方への近道や、まったく別の宇宙へのアクセスポイントとして利用できるかもしれない。

 だが一方で、ワームホールは極めて不安定で、物質が進入するやいなや、ただちに崩壊して閉じてしまうだろうとも考えられている。

 ならばワームホールの内側を知ることなど、人類には不可能なのでは?

 そうとは限らない。なぜなら、1つわからないことがあるからだ。それは「その崩壊がどれほど速いのか?」ということだ。

 『Physical Review D』(2022年11月29日付)に掲載された論文では、この問題に答えるべく、ワームホールを何かが通過したとき、それがどのように反応するのかシミュレーションされている


ワームホールの内側から外へ1
photo by Pixabay

ワームホールを通過した探査機がメッセージを送信することは可能
 
例えば、ある探査機をワームホールに進入させてみる。その瞬間にワームホールの崩壊が始まるので、探査機は諦めるよりない。

 では、ワームホールが完全に閉じる前に、内側から光のシグナルを送り返すことはできるだろうか?

 あくまでも仮説上のシミュレーションだが、その答えは「イエス」だ。

 じつは今回のシミュレーションでは、「ゴーストマター」と呼ばれる不可思議な物質が考慮されている。

 ゴーストマターは重力に対して、普通の物質とはまったく逆の反応をする。つまり、ゴーストマターでできたリンゴがあれば、木の枝から”上”に落ちる。

 ただし一般相対性理論的にはOKでも、現実にはほぼ間違いなく存在しないだろうとされている。

 今回のシミュレーションでは、それでもゴーストマターをワームホールに通してみた。すると予想通り、ワームホールは崩壊することなく、むしろ広がることがわかった。

 普通の物質ならこうはいかない。進入した途端、ワームホールの崩壊スイッチが入り、後にはブラックホールのようなものが残るだろうことが、シミュレーションで確認されている。

 だが何もできないほどの電光石火で閉じてしまうわけではない。高速で移動する探査機ならば、ワームホールが完全に閉じる前に、中から光速のシグナルを送り返すだけの時間はある。

 そんな危険なことを生身の人間に行わせるわけにはいかない。

 だが宇宙のどこかで本物のワームホールが発見されたとき、そこにカメラを搭載した探査機を放り込み、内側の様子を観察するなんてことも、少なくとも理論上はできるということになる


ワームホールの内側から外へ2
photo by Pixabay

いずれワームホールの内部を知ることができるのか?
 
ワームホールの内側を見られるなんてワクワクするような話だが、このアイデアに懐疑的な意見もある。

 ミュンヘン数理哲学センターの物理学者ザビーネ・ホッセンフェルダー氏は、シミュレーションについて「我々が知る限り、存在しないだろうものの存在を前提としています。数学的に可能だったとしても、その多くは現実と無関係なのです」と話す。

 それでも論文著者のベン・カイン氏(ホーリー・クロス大学)によれば、ゴーストマターなしでワームホールを安定させる方法を探るうえで有意義な研究なのだそうだ


2023年01月08日
カラパイアより

ワームホールは既に発見されている可能性

Posted by moonrainbow on 24.2022 ワームホール   0 comments   0 trackback
ワームホールはすでに発見されている可能性があると物理学者

ワームホール

ワームホールは既に発見されている可能性

 ワームホールとは、違う宇宙、あるいは一つの宇宙の別の事象を結ぶ時空の抜け道のことだ。それはすでに発見されているかもしれないという。

 ブルガリアの物理学者チームによれば、この仮説上の時空トンネルは、ありふれたブラックホールとほとんど見た目が変わらないのだそうだ。

 つまり、これまでに発見されたブラックホールとされるものの中に、ワームホールがあるかもしれないというのだ。

 両者を区別することは難しい。しかし幸運に恵まれれば、まったく不可能なわけではないという


時空のトンネルのような抜け道「ワームホール」
 
ワームホールとは、時空のある場所を別の場所へと結びつける時空のトンネルだ。現時点では仮説上の構造だが、そこを通り抜けてワープするなど、SFなどではお馴染みだろう。

 アインシュタインの一般相対性理論に基づくならば、時空は光すら脱出できない深い重力の穴だけでなく、絶対に登ることができない険しい山を形成することもあると考えられる。

 なんでも飲み込む穴(ブラックホール)とは違い、時空の峻嶺(ホワイトホール)は近づくものを拒み、粒子や放射線を吐き出す。

 1930年代、アインシュタインの同僚であったネイサン・ローゼンは、ブラックホールによって大きく湾曲した時空が、険しい時空の山とつながっていわば”橋"を形成する可能性を示した。

 この「アインシュタイン-ローゼン橋」と呼ばれる時空の構造が、ワームホールである


ワームホール1
photo by iStock

ワームホールはどんな姿をしているのか?

 ワームホールは、あくまで仮説上のもので、今のところ見つかってはいない。

 そこでブルガリア、ソフィア大学の研究チームは、「”肛門”のあるブラックホール」がどのように見えるか知るために、ワームホールの”喉”を「磁化した流体の輪」として表したモデルを考案した。

 それによると、その荒れ狂う大渦に飲み込まれそうになった粒子は、強力な電磁場を発生させるだろうことがわかったという。

 電磁場は予測可能なパターンで揺れ動き、加熱された物質から放たれる光をはっきりそうとわかる形で偏光させる。

 ちなみに、2019年や今年初めにはブラックホールの驚くべき姿(「M87*」と「いて座A*」)が公開されたが、じつはこれは偏光した電波によって撮影されたものだ。

 つまり、典型的なワームホールの熱々の”唇”は、ブラックホールを取り巻く混沌とした円盤から放たれる偏光と見分けがつかないだろうということだ。

 その理屈でいくと、M87*やいて座A*がワームホールであってもおかしくはないということになる。それどころか、どんなブラックホールでもその奥にはワームホールが隠されている可能性すらある


ワームホール2
photo by iStock

ワームホールを見分ける方法
 
宇宙の大穴がただのブラックホールなのか、それともワームホールなのか? それを見分けることは簡単ではないが、今回の研究チームによれば、まったく不可能なわけでもないという。

 もしもしっかりとした「重力レンズ」で間接的にワームホール候補の姿をとらえ、その画像をつなぎ合わせることができれば、ワームホールとブラックホールの微妙な違いを見つけられるかもしれない。

 ただし、そのためには、ワームホールと地球との間に、光を歪めて小さな違いを拡大してくれる都合のいい質量がなくてはならない。

 別の手段もある。もしもワームホールを絶妙な角度で観察することができれば、入口を横断して地球に向かってくる光のサインが強調され、”向こう側”への入口の存在をはっきり確認できるかもしれない。

 またワームホール・モデルをもっと洗練させれば、ワームホールならではの光の特徴が判明し、重力レンズや絶妙な角度に頼らずともそれを発見できるようになる可能性もあるという


ワームホール3
photo by iStock

新しい宇宙の視点
 
こうしたワームホールの物理学は、一般相対性理論や波・粒子の理論などに新しい道を切り開くヒントになるかもしれないそうだ。

 ワームホール研究から得られる知見は、一般相対性理論の破れを明らかにしてくれる。そうして開けられた理論の”穴”を覗き見れば、宇宙をまったく新しい視点から観察できるようになるかもしれない。

 この研究は、『Physical Review D』(2022年11月10日付)に掲載された


2022年11月18日
カラパイアより

ワームホールは想定よりも安定している

Posted by moonrainbow on 04.2022 ワームホール   0 comments   0 trackback
時空のトンネル「ワームホール」は、従来の想定より安定しているかもしれな

ワームホール

ワームホールは想定よりも安定している

 従来の理論によれば、時空の近道と期待される「ワームホール」は、とても不安定ですぐに崩壊してしまうとされていた。

 ところが最新の論文よれば、少なくともそうした想定よりは安定している可能性があるようだ。

 ワームホールを記述するには「一般相対性理論」が用いられるが、その基準がわずかに変わるだけで、全体像ががらりと変わってしまうのだそうだ


一般相対性理論の座標は自由度が高い
 
アインシュタインが導き出した、時間・空間に関する「一般相対性理論」は、自動的な計算機のようなものだ。

 粒子の質量やら配列やらを入力してやれば、重力の下である座標から別の座標へとどう移動するのか、勝手に弾き出してくれる。

 この計算機の計算ルールは決まっている。ところが、座標に関してはかなり自由度が高く、数学的に色々な記述をすることができる。これを「計量(メトリック)」という。

 たとえば、あなたはどこかの目的地を目指しているとしよう。そこへの道順を表す方法は1つではない。

 通りの名前や交差点の数を利用してもいいだろう。緯度と経度で記すことだってできるし、何か目印になるような建物だって便利だ。

 最終的に目指す目的地にたどり着くなら何でもいい。

 それと同じように、物理学では同じ状況を記すために、さまざまな計量を使うことができる。その時々に応じて、便利なものを使い分ければいい


ワームホール1
photo by iStock

ワームホールにもいくつかの計量が考えられる
 
ブラックホールやワームホールを記述するにも、いくつか計量が考えられる。

 もっとも一般的なのは、「シュワルツシルト計量」だ。最初にブラックホールが発見されたときも、これが利用された。

 だが、シュワルツシルト計量には少々厄介な点がある。光がブラックホールから脱出できなくなる距離(事象の地平面)で誤動作を起こすのだ。

 計量が完全に壊れてしまい、時空における異なる地点を区別できなくなってしまう。

 だが「エディントン・フィンケルシュタイン座標」を使用すれば、事象の地平面に到達した粒子の振る舞いを記述できる。それによれば、粒子はそのまま通過してブラックホールに落ち、二度と現れない


ワームホール2
photo by Pixabay

ワームホールを作る一番シンプルな方法
 
ところで、時空のトンネルであるワームホールを作る一番シンプルな方法は、ブラックホールを利用することだ。

 ブラックホールは、一度入ればどんなものでも絶対に外に出られない。その一方、この宇宙には、どんなものでも絶対に中に入れない「ホワイトホール」が存在する可能性がある。

 この両極端な天体の「特異点」(密度が無限になる点)をつなぐ。すると、ブラックホールとホワイトホールの間に時空のトンネルが形成されると考えられるのだ。

 このアイデアは、アルベルト・アインシュタインとネイサン・ローゼンが最初に提唱した。ゆえにワームホールは、「アインシュタイン・ローゼン橋」とも呼ばれる


ワームホール3
photo by Pixabay

新たな計量によると、ワームホールの通過は可能
 
今のところワームホールは理論上の存在だが、もし本当にあったら、その中はどうなっているのだろうか?

 一般相対性理論によるならば、強力すぎる重力によって、ワームホールは輪ゴムのように引き伸ばされ、千切れてしまう。そもそもホワイトホール自体が非常に不安定で、存在しない可能性すらある。

 だから、そこを通ろうものなら、ただでは済まない。だが、この分析はシュワルツシルト計量による計算結果だ。

 そこでフランス、リヨン高等師範学校のパスカル・コイラン氏は、エディントン・フィンケルシュタイン計量でワームホールの分析を試み、その結果を『International Journal of Modern Physics D』(21年10月22日付)で発表した。

 それによると、こちらの計量では誤動作などなく、粒子の動きを楽に把握できるという。

 粒子は事象の地平面を通過し、ワームホールに進入すると、そのまま反対側から脱出する。すべて有限の時間内に起きることだ


ワームホール4
photo by Pixabay

ただし安定はしていない

 だからと言って、我々人間がワームホールの中を通過できるということではない。

 一般相対性理論が扱うのは、重力の振る舞いで、自然界にあるほかの力は対象外だ。熱やエネルギーを扱う熱力学によるなら、ワームホールは依然として不安定ということになる。

 また現実にブラックホールとホワイトホールを結べたとしても、そのエネルギー密度のために、何もかもバラバラになってしまう。

 宇宙のトンネルを通って、遠くの銀河までひとっ飛び。ロマンのある夢だが、そう簡単には叶わないようだ


2021年11月26日
カラパイアより

ワームホールの入り口

Posted by moonrainbow on 17.2020 ワームホール   4 comments   0 trackback
超大質量ブラックホールの正体がワームホールの入り口である可能性(ロシア研究)

ワームホールの入り口
超大質量ブラックホールがワームホールの入り口なのか確認する方法 / Pixabay

 光速をもってしても広大すぎる宇宙だ。人間の時間軸の中で宇宙スケールの距離を移動しようと思えば、何かもっと別の方法が必要になる

 そこで考えられるのが、「ワームホール」を通過するという方法だ。これは時空の一点から別の一点へ直結しているとされるトンネルのような構造のことで、「アインシュタイン=ローゼン橋」とも呼ばれる。

 もし、ここを通行することができるのなら、宇宙のはるか彼方にまで一気にワープすることが可能になる。光速を超える移動を実現できるのだ


ワームホールを探す方法
 
ワームホールは一般相対性理論によってその存在が予測されているが、実物が観測されたことはなく、今のところ仮説上のものである。

 これに関して、「活動銀河核」がワームホールなのではないかという説が2006年に提唱されている。

 銀河の中には、中心にある1%程度のコンパクトな領域から大半のエネルギーを放出するものがある。これを「活動銀河」といい、その中心の領域が活動銀河核だ。

 活動銀河核がそれほどのエネルギーを放出している理由は、そこに「超大質量ブラックホール」があるからだとされている。

 一般的な理論モデルによれば、超大質量ブラックホールの周囲には、そこに落下しようと集まってきた物質によって「降着円盤」という円盤状の構造が作られる。この降着円盤とブラックホールとに働く潮汐力の相互作用によって、光速に近い速度でプラズマのジェットが放出される。

 今回、ロシア・プルコヴォ天文台のミハイル・ピオトロビッチ氏らが『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(8月24日付)で発表したのは、この超大質量ブラックホールがワームホールの入り口なのかどうか確かめる方法だ


ワームホールの入り口1

ワームホールから吐き出される超々高エネルギー
 
もし超大質量ブラックホールがワームホールの入り口なのだとすれば、そこは別の時空につながっており、双方から物質が落下してくるということになる。

 そのような物質がワームホール内部で衝突したとする。すると、それによって凄まじいエネルギーと放射線が放出される。

 両方の入り口から吐き出されるプラズマの温度はじつに10兆度にも達し、降着円盤から放たれる光と区別可能なスペクトルを持つガンマ線が発生する。

 ピオトロビッチ氏らによると、こうしたガンマ線は、活動銀河核の降着円盤では温度が低すぎて放出されないはずなのだという。

 さらにジェットには特定のパターンがあり、ガンマ線の大部分はそのジェットに沿って放出されていると考えられる。

 したがって、ワームホールから放出されるガンマ線特有のスペクトルを検出できれば、それがワームホールの存在を示す証拠になる。そしてNASAのフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡のような望遠鏡ならば、これを検出できるかもしれないとのことだ


ワームホールの入り口2

ワームホールでワープすることは可能か?

 もしワームホールが本当にあるのだとしたら、それを通過して宇宙の別の場所へワープすることは可能なのだろうか?

 1つの難関は、もっとも近い活動銀河核ですら我々が暮らす天の川から数百万光年離れているということだ。そのため、それが本当にワームホールだったとしても、光の速さでも数百万年もかかってしまう。生身の人間の時間軸では、とてもではないが実用的ではない。

 さらに、どうにかそこまでたどり着けたとしても、10兆度という想像を絶する強烈なプラズマの爆発が生じているその内部は、そもそも人間などが立ち入って無事で済むような場所ではない可能性もある。

 こうしたことを踏まえるなら、ひとまずは望遠鏡を通じてその壮大な宇宙のスペクタクルショーを楽しむのが賢い選択と言えるかもしれない


2020年10月11日
カラパイアより

ワームホールは理論上は通れる

Posted by moonrainbow on 11.2020 ワームホール   0 comments   0 trackback
人間が通過できるワームホールの可能性を5次元宇宙理論で説明(米研究)

ワームホール

2点の時空をむすび、光速を超える移動を可能にするワームホールは、今のところSFの中の存在でしかない。そして少なくともこれまでは、一般相対性理論によって、実際に人間が安全に通行できるワームホールの存在は否定されてきた。しかし、プリンストン大学の研究者による最近の研究によれば、宇宙を5次元の視点からとらえた量子物理学の領域であれば理論上は実現可能なのだそうだ

時空の2点をむすぶワームホール
 
ワームホールの理論は、一般相対性理論に呼応する形で20世紀前半に登場した。

 最初に提唱したのは、ドイツの物理学者カール・シュヴァルツシルトである。彼はアインシュタインの場の方程式の解としてこれを考察し、その「シュヴァルツシルト解」はブラックホールの存在を裏付ける最初の理論的基礎にもなっている。

 ここから導き出されるのが、時空の異なる点をむすぶブラックホールで、これを「アインシュタイン=ローゼン橋」という——すなわちワームホールのことだ。

 ワームホールという名称は、その理論をジョン・アーチボルト・ホイーラーが1957年に、空間の2点をむすぶ3次元のチューブの穴として説明したことにちなんでいる


ワームホール1

ワームホールの通行に必要な負のエネルギー
 
このワームホールは、内部を通行してある点から別の点へ移動するにはあまりにも不安定で、すぐに崩壊してしまうと考えられている。

 だが、フアン・マルダセナ氏とアレクセイ・ミリーキン氏による『Humanly Traversable Wormholes』(8月15日付。arXivで閲覧可能)という論文によると、ある特殊な条件が整えば、ワームホールは通行可能なのだという――それは「負のエネルギー」だ。

 負のエネルギーは古典物理学では認められていないが、量子物理学の領域内ならば存在しうる。その格好の例が、量子場が閉じた環に沿って広がるときに負のエネルギーを作り出す「カシミール効果」という現象だ。

 粒子が平坦空間の1点に進入し、最初の地点から再出現することで環内を移動できるという事実は、「真空のエネルギー」が変更され、負になりうることを示唆している。そして、この負のエネルギーの存在が安定したワームホールの存在を裏付けていると、両氏は主張する


ワームホール2

5次元宇宙理論から導かれる実用サイズのワームホール
 
こうしたワームホールは、素粒子物理学の標準モデルに組み込まれている物質を基礎として存在する。

 ただ唯一の問題は、あまりにも小さすぎて、ごく短い距離しかつなげないだろうことだ。人間にとって実用的なものであるためにはもっと大きくなければならないが、それを説明するには標準モデルの先の物理学が必要になる。

 論文によれば、それこそが「ランドール=サンドラム2モデル」や「5次元ワープ幾何学理論」として知られる、宇宙を5次元の視点からとらえた理論であるという。

 この理論はもともと素粒子物理学の「階層性問題」を解決するために考案されたものなのだが、一般に研究されているものよりもエネルギーが低く、重力を介してしか物質とむすびつかないために検出されない物理も記述することができる。

 同理論のアプローチは、既存の物理学に強く相互作用する質量のない場をたくさん追加するのにも似ており、そのために負のエネルギーを扱うこともできる


ワームホール3

ワームホールを通るとかえって遅くなる!?
 
こうして説明されるワームホールだが、それを利用するのもまた一苦労だ。

 たとえばマルダセナ氏とミリーキン氏によると、外側から見ると、ワームホールは電荷を帯びた中型ブラックホールに似ているという。

 そのために、宇宙船が通過するならその潮汐力によって破壊されないよう注意しなければならない。そこを通行しようとするなら、宇宙船には何か非常に大きなブースト因子が必要になるのだ。

 この問題をクリアできたとして、そもそもそれが近道なのかという疑問も残る。というのも、ハーバード大学のダニエル・ジェファリス氏が、安定したワームホールがあったとしても、その内部を通行するには、普通の宇宙を移動する以上に時間がかかるだろうと意見を述べているからだ


ワームホール4

移動する本人には一瞬。燃料も不要

一方、マルダセナ氏とミリーキン氏は、移動者の視点から見れば、ワームホールの通過はほぼ一瞬だと主張する。

 一般相対性理論と矛盾しないように考えるのならば、外から観察する者の目には、その時間はずっと長く感じられるだろう。

 しかし、光速に匹敵する速度で移動する本人は時間の歪み(たとえば時間の遅れ)を経験する。1万光年(天の川の10分の1)を移動したとしたら、それを観察する人間には1万年に感じられても、移動する本人は1秒にしか感じられないはずだ。

 もう1つのメリットは、ワームホールの通行に燃料の類はいらないことだ。そんなものに頼らずとも、ワームホールの重力が宇宙船を加減速してくれる。パイロットはただ機体の位置を正しくしておけば、あとはワームホールの潮汐力が運んでくれるのだ


ワームホール5

それでも厄介で危険なワームホー

いいことばかりではない。マルダセナ氏とミリーキン氏は、このワームホールの欠点も指摘する。

 まず最初に挙げられるのは、通行可能なワームホールを作り出すために、負の質量を利用せねばならないことだ。

 これは少なくとも理論上は可能だが、そのための時空の設定を事前に突き止めておく必要がある。しかも、この作業に必要となる質量とサイズはあまりにも大きすぎて、今私たちに予見できる科学技術の範疇を超えてしまっている。

 またワームホールが安全であるためには、この宇宙が冷たく平らでなければならないらしいが、5次元ワープ幾何学理論ではそう予測していない。

 そして何より、ワームホールに進入する物体の加速は、この宇宙にあまねく存在している宇宙背景放射ですら危険なものに変えてしまうほどのものだ


不可能でないなら、いつかは――
 
なお、今回の研究の目的は、「一般相対性と量子力学のかすかな相互作用」の結果としてワームホールが存在しうるということを示すことだったそうだ。

 この目的に成功していたのだとしても、今考えられる方法によって、ワームホールが実用的な代物になることは考えにくそうだ。

 それでも、SFには絶対不可欠なこの仕掛けが、きちんとした可能性の範囲内にあるということが分かっただけでも、ワクワクするのではないだろうか。絶対に不可能な代物ではないなら、いつか遠い未来に実現することだってあるだろう


2020年09月04日
カラパイアより
 

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