フィンランドの研究者が恒久的な人間の居住地を作る提案
準惑星ケレスに人間の居住地を作る計画を提案 / Pixabay
月への人類帰還を目指すアルテミス計画や2030年代の火星有人飛行など、楽しみな計画がいくつか進んでいるが、もしかしたら将来的な宇宙の移住先は月でも火星でもなく、「ケレス」になるかもしれない。
ケレスは、火星と木星の間に広がる小惑星帯に位置する準惑星だ。フィンランド気象研究所の研究者は、このケレスを周回する恒久的な人間の居住地、スペースコロニーを作ろうと提案している。
準惑星ケレスに二枚貝のようなスペースコロニーを 『airXiv』(20年11月15日投稿)で閲覧できる論文によると、二枚貝のようなスペースコロニー(メガサテライト)の基本となるのは円盤状のフレーム部分だ。
このフレームの両面にシリンダー状の構造物を並べて、磁力を利用したベアリングで直接接触しない形で結合する。
人が住むことになるのはこのシリンダー構造の内部で、これが回転することで地球と同じ重力を発生させる。もし人口が増えれば、居住シリンダーをさらに増設すればいい。
フレームにはさらに、それぞれ45度の角度で2枚の巨大な鏡が結合される。これは太陽の光を集めて、シリンダー内部に人工的な昼と夜を作り出すためのものだ。

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なぜ月面や火星基地ではダメなのか?
そもそもなぜ火星よりももっと遠いケレスの軌道上にスペースコロニーを浮かべなければならないのだろうか?
その最大の理由は、月面や火星の地表では重力が小さすぎることだ。低重力環境に長期間滞在した場合、人体への悪影響が懸念される。これは特に成長期にある子供の骨や筋肉の発達に言えることだ。
この問題の解決策は、衛星や惑星の周回軌道にスペースコロニーを飛ばし、機体を回転させることで人工的な重力を作り出すことだ。
しかしここにもまた問題がある。いくつものコロニーを無秩序に宇宙に浮かべると、そのコロニー間の物資・人間の輸送に膨大なコストがかかるようになることだ。
また仮に移動をロケットで行ったとすると、いずれ持続不能になる。ロケットによって噴出された原子が、紫外線によってイオン化し、やがて太陽風に吹かれて太陽系から出て行ってしまうからだ。

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コロニーを巨大なメガサテライトに結合させる
ずっと宇宙で暮らすのならば、そうした原子の流出を最小限に抑え、できるだけ循環させなければならない。
そこで複数のコロニーをバラバラに浮かべるかわりに、巨大なメガサテライトに結合させるのだ。そして各居住シリンダー間の移動には、フレームに沿って走るリニアモーターカーのようなものを利用する。
これならば移動コストを削減することができるし、ロケットのように原子が太陽系外に流出してしまうこともない。
ケレスがメガサテライトを軌道させる天体として最適な理由 ケレスがメガサテライトを軌道させる天体として最適であるのは、そこに窒素があるからだ。窒素はコロニー内に大気を作るために絶対欠かせないものだ。
短期間なら酸素だけでも人は生きていられるが、長期的に肺への悪影響が出る可能性は否定できない。
さらに酸素だけの圧力が低い大気だと、火災の危険が増大する上に、昆虫や鳥といった生態系を維持するために不可欠な動物が空を飛ぶこともできなくなってしまう。
しかし窒素があれば、地球と同じような大気を作ることができる。
さらに大きさも重力も小さなケレスならば、宇宙エレベーターを建造するのにも都合がいい。
ケレスの地上から長さ1024キロほどの宇宙エレベーターを伸ばしておけば、ケレスの資源をメガサテライトに輸送する手間を大幅に軽くすることができる。もちろんメガサテライト自体、ケレスの資源を利用して建造するのだ。

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快適で自然災害もない持続可能な暮らしを実現
なお研究者がイメージしているのは、オランダと同じくらいの人口密度(500人/km2)で、地球と同じような自然環境があり、それでいて自然災害や危険な天候もない生活環境だ。
居住シリンダーを追加することで、最終的には地球よりも広い生活空間を確保できるようになる。
もしそんなメガサテライトが本当に完成したとしたら、あなたは地球と宇宙どちらの暮らしを選ぶだろうか2021年01月14日
カラパイアより