宇宙で検出された数百もの謎の電波現象「高速電波バースト」ののマップが公開される
ほんのミリ秒という一瞬の間に、太陽3日分のエネルギーが放出される謎の電波現象――それが「高速電波バースト(FRB)」だ。
どこで起きるのかまったく予測不能で、その多くはたった一度きりしか発生しない。そのために検出がきわめて難しく、2007年に初めて検出されてからその後の10年で約140回しか観察されてこなかった。
しかしカナダ、ドミニオン電波望遠鏡に建設されたCHIME望遠鏡によって、状況が大きく変わりつつある。その運用初年度にあたる2018~19年だけでも、535ものFRBの検出に成功しているのだ。
そのこれまでの成果となるFRBのマップが、第238回アメリカ天文学会で発表されたそうだ。
デジタル処理で空の半分をカバーするCHIME望遠鏡
CHIME望遠鏡の特徴は、4つの巨大なアンテナアレイを使い、地球が自転する間に空の半分の範囲をカバーできることだ。
光をとらえる通常のアンテナと違い、デジタル信号プロセッサーで電波をとらえる点も大きな特徴だ。その処理能力は秒間7テラビットに相当――世界のインターネットで送受信されるデータ容量の数パーセントに匹敵する膨大な量だ。
New CHIME radio telescope will help unravel today’s biggest cosmic mysteriesNew CHIME radio telescope will help unravel today’s biggest cosmic mysteries
FRBは珍しい現象ではない 検出された535のFRBのうち、ほとんどはたった一度きりしか発生しなかった。しかし18の発生源で検出された61回は繰り返し検出されたものだ。これら反復するタイプは単発のものよりもやや長く続く傾向があるらしく、発生源も異なっている可能性があるとのこと。
また今回得られたデータから計算すると、FRBは空全体で1日に800回は起きていると推測できるという。つまり検出することは難しいが、決して宇宙において珍しい現象ではないと考えられるのだ。
宇宙に分布するガスマップの作成FRBは未だ原因が特定されない不可思議な現象だが、天文学者はすでにその利用価値を見出している。
電波が宇宙を伝わるとき、その途中でおそらくはガスやプラズマを通過している。そしてその際に特性や軌道が変化する。そうした変化を分析することで、FRBがどのくらいの距離を移動し、どれだけのガスに遭遇したのか推測できるのだ。
これを利用すれば、宇宙の理解を深め、そこに分布しているガスのマップを作成することすら可能になるそうだ。
2021年06月16日
カラパイアより