枝を伸ばした世界樹のようだ。知られている範囲では宇宙最大となる超巨大回転構造が発見される
地球は回っている。ほかの惑星もそうだ。星々も銀河もまた回転している。銀河が集まってできた巨大な銀河団ですらゆっくりとではあるが回転している。だが回転はここで終わり、とこれまでは考えられてきた。
ところがドイツ、ポツダム天体物理天文台の研究グループによって、さらに巨大な回転構造が発見された。それは既知のものとしては、宇宙最大の回転構造であるそうだ。
まるで世界樹、もしくは超巨大なジャックと豆の木のようだ。
大宇宙の巨大ネットワーク「コズミック・ウェブ」 今から138億年前に起きたビッグバンによって宇宙が誕生すると、この世にある既知の物質のほとんどを構成するガスの大半は崩壊。巨大なシート構造が形成された。
シートはやがて散り散りになり、フィラメント状(糸状の構造)になる。それは細い糸のように見えるが、実際にはそれを構成する銀河ですら小さな塵にしか思えないほどの巨大さだ。
現在の宇宙は、それらが結びつくことで「コズミック・ウェブ」と呼ばれる大宇宙のネットワーク構造をつくり出している。
A God's Eye View of the Universe回転するフィラメント構造 『Nature Astronomy』(6月14日付)に掲載された研究では、アメリカ、日本、ドイツの銀河地図共同プロジェクト「スローン・デジタル・スカイサーベイ」によって集められたデータを使って、1万7000以上のフィラメントが調査された。
それらを構成する銀河の移動速度を分析したところ、各フィラメント(糸状の構造)の軸を中心にぐるぐると旋回しているらしいことが明らかになったそうだ。
もっとも速いものだと、時速36万キロで移動していたそうだ(なお、すべてのフィラメントが回転しているという意味ではない)
回転するフィラメント構造の予想図 / image credit:AIP/A. Khalatyan/J. Fohlmeister
なぜ回転しているのか? 研究グループのノーム・リベスキンド氏らよると、最大の謎は「なぜ回転しているのか?」ということだ。
ビッグバンでは宇宙にそのような原初の回転を与えないだろうと考えられる。そのため、フィラメントの回転はもっと後になって、その構造が形成される最中に発生したに違いないのだという。
可能性の1つとして、フィラメントの強力な重力場が挙げられている。それがガスや塵などを引きつけ崩壊させ、そのときに生じたせん断力が回転までつくり出したと推測できるのだ。
今のところ、確かなことはわからない。現在、研究グループはコンピューターシミュレーションを駆使して、回転の起源を探っているところであるそうだ。
2021年06月18日
カラパイアより