天の川銀河のブラックホール撮影 最も近くに存在、2例目 国立天文台など国際研究チーム
天の川銀河(左、想像図)の中心にあるブラックホールの画像(右)。「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」が初めて撮影した(EHTコラボレーション、
NASA、ESOなど提供)

このグラフィックのメインパネルには、ブラックホールの近くの巨大な星から吹き飛ばされた高温ガスを描いたチャンドラ(青)からのX線データが含まれています。 NASAのハッブル宇宙望遠鏡からの異なる波長の赤外線の2つの画像は、 星(オレンジ)と冷たいガス(紫)を示しています。これらの画像は、いて座A*の距離で7光年です。プルアウトは、新しいEHT画像を示しています。これは、幅がわずか約1.8 x 10 -5 光年(0.000018光年、つまり約10光分)です。(クレジット:X線:NASA / CXC / SAO; IR:NASA / HST / STScI。挿入図:ラジオ(EHTコラボレーション))

国際チームが撮影に成功したブラックホール「いて座Aスター」(EHT Collaboration提供)
【▲ 地上から「いて座A*」にズームイン(動画)】
国立天文台などが参加する国際研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は12日、世界各地の電波望遠鏡を連携させた観測で、地球が属する銀河系(天の川銀河)の中心部にあるブラックホールの撮影に成功したと発表した。EHTによるブラックホール撮影は、2019年に発表した別の銀河に続き2例目。
多くの銀河の中心に存在すると考えられている巨大なブラックホールの働きについて、解明が進むと期待される。
プロジェクトに参加した国立天文台の本間希樹教授が記者会見し、「一番近いブラックホールで、近いからこそいろいろなことが分かる」と話した。
地球から約2万7000光年離れた銀河系の中心部には、「いて座Aスター」と呼ばれる電波を発する天体が存在する。周囲の恒星の動きから、この天体は太陽系よりも狭い範囲に太陽の400万倍の質量を持つことが判明。巨大なブラックホールと考えられてきたが、今回の撮影で裏付けられた形だ。
ブラックホールの存在自体は、アインシュタインが約100年前に提唱した一般相対性理論で予言されていた。ただ、強烈な重力の影響で光すら抜け出すことができないため、長らく直接観測はできなかった。
EHTはアルマ望遠鏡など世界6カ所・八つの電波望遠鏡を連携させる方法で、仮想的な超巨大電波望遠鏡を構築。地球から月面に置いたゴルフボールを識別できるほどの解像度を実現した。
EHTは17年、約5500万光年離れた楕円(だえん)銀河M87の中心にある巨大ブラックホールと、いて座Aスターなどを観測した。
詳細なデータ解析を経て、19年4月、M87の巨大ブラックホールの撮影に成功したと発表。その後もいて座Aスターの解析を続けていた。
2022年5月12日
時事通信より