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古代の火星に水素が豊富な大気があった

Posted by moonrainbow on 04.2022 火星   0 comments   0 trackback
古代の火星に海が存在したのは水素が豊富な大気があったからかもしれない

海が存在していた頃の火星
【▲ 海が存在していた頃の火星を描いた想像図(Credit: ESO/M. Kornmesser/N. Risinger (skysurvey.org))】

SETI研究所のKaveh Pahlevanさんを筆頭とする研究チームは、古代の火星には水素に富む大気が存在していたとする研究成果を発表しました。研究チームによると、当時の火星の大気圧は現在よりもはるかに高く、温室効果によって温かな(場合によっては高温の)海が保持されていた可能性があるようです

■水素の豊富な大気による温室効果が火星の海を保持していた可能性

現在の火星は主に二酸化炭素でできた薄い大気を持つ(大気圧は地球の約1000分の6)、寒く乾燥した惑星です。しかし、古代の火星表面には海が形成されるほどの量の水が液体の状態で存在した時期があり、生命が誕生していた可能性もあると考えられています。

「矛盾しています」そう語るのは、今回の研究に参加したアリゾナ州立大学教授のSteve Deschさんです。Deschさんは、古代と比べて太陽が30パーセント明るくなっている現在でさえ火星の水は凍っているにもかかわらず、初期の火星表面に液体の水が存在していたことを多くの観測結果が示している点を指摘しています。もしも本当に海があったのであれば、表面に液体の水を保持できる環境が当時の火星で整っていたはずです。

そこで研究チームは今回、火星の大気の進化に関する新しいモデルを構築しました。このモデルでは、火星の表面が溶融してマグマオーシャンに覆われていた頃の高温と、最初の海洋および大気の形成が関連付けられています。新たなモデルを用いた分析の結果、溶岩から生じる主なガスは水素分子と水蒸気の混合物になる可能性が示されました。

研究チームのモデルが示した初期の火星大気では、水蒸気があたかも現在の地球大気中の水蒸気のように振る舞ったといい、下層大気では水蒸気が凝結して雲を形成し、上層大気は乾燥した状態になりました。いっぽう、水素はどの高度でも凝結することはなく、水蒸気が乏しい乾燥した上層大気では主成分となります。やがて水素は上層大気から宇宙空間へと逃げていき、火星の大気から失われていくことが示されました。

ポイントは、水蒸気とともに初期の火星の大気を構成していたとみられる水素の存在です。Pahlevanさんによると、高密度環境の水素分子は強力な温室効果ガスであることが知られています。モデルで示された初期の火星の大気圧は現在の1000倍以上もあり、温室効果をもたらす水素が大気から失われるまでの間、何百万年にも渡って温かい海が安定して存在していた可能性があるといいます。

地球外知的生命体探査を推進するSETI研究所は、生命という観点からも今回の結果に注目しています。20世紀半ばに実施された有名なユーリー-ミラーの実験では、水素の豊富な(還元的な)大気のもとでは水素に乏しい(酸化的な)大気と比べて生命の誕生に関与する物質が容易に生成されることが示されました。モデルが示した初期の火星は初期の地球と同じくらい生命の起源として有望な場所だった可能性があり、現在の火星探査機でも検出できる痕跡が残されているかもしれないと研究チームは期待しています。

なお、海と共存する気圧1~100バール(1000~10万ヘクトパスカル)の水素大気による温室効果によって、火星表面の平均温度は290~560ケルビン(摂氏約17~287度)になると研究チームは結論付けており、当時の海水はかなりの高温だった可能性もあるようです


■火星における水素の同位体の比率も自然に説明

セルフィー
【▲ NASAの火星探査車「キュリオシティ」が撮影したセルフィー。2021年3月30日公開(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

研究チームの成果は、火星の水に関する新たな解釈ももたらしました。

酸素とともに水分子を構成する水素の大半は「陽子1つ」の原子核を持ちますが、自然界にごくわずかに存在する重水素(水素の安定同位体)は「陽子1つと中性子1つ」でできた原子核を持っています。地球に飛来した火星隕石に含まれている水のD/H比(水素に対する重水素の比率)を調べると、その値は地球の海水のD/H比に似ています。火星隕石は主に火星内部のマントルに由来する火成岩でできていて、そこに含まれる水は火星の形成時に取り込まれたものであることから、火星と地球は同じD/H比で形成され、水の起源も同じであることが考えられるといいます。

ところが、アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」を使って30億年前に火星表面で形成された粘土のD/H比を調べたところ、地球の海と比べて約3倍であることがわかりました。つまり、火星が誕生してから粘土が形成されるまでの間に、火星表面の水では何らかの理由で重水素の比率が高くなっていったことになります。D/H比は重水素が増えることで高くなりますが、水素が減ることでも高くなります。

火星表面の水は上層大気で紫外線に分解されたり、火星内部に取り込まれたりして失われたと考えられています。また前述のように、研究チームが作成したモデルでは火星の上層大気から水素が失われていきました。水素と比べて重水素はわずかに重いので、大気から失われるペースも水素より遅くなります。初期の火星の大気が水素に富んでいたと仮定した場合、結果的に火星表面の水は内部に取り込まれた水と比べてD/H比が2~3倍高くなることを研究チームのモデルは示しているといい、キュリオシティによる分析結果とも矛盾しません。

Pahlevanさんは「水蒸気は凝結して初期の火星にとどまるいっぽうで、水素は凝結せずに失われるというこの重要な知見は、キュリオシティの測定値と直接結びつけることができます」「このモデルは従来の観測結果を自然に再現した最初のモデルであり、私たちが説明する進化のシナリオが最初期の火星で起きた出来事に対応しているという自信を与えてくれます」とコメントしています


Image Credit: ESO/M. Kornmesser/N. Risinger (skysurvey.org), NASA/JPL-Caltech/MSSS

2022-10-30
Soraeより


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