NASA望遠鏡が大量の水と水蒸気に覆われた地球サイズの系外惑星発見
イラストの手前がスーパー・アース、ケプラー138d。左がケプラー138c、後は、親星の前を通過するケプラー138bのシルエット。赤色矮星、ケプラー138は218光年の彼方にある(NASA, ESA, LEAH HUSTAK [STSCI])
私たちの世界から(少なくとも宇宙スケールでは)遠くないところで、地球サイズの惑星ペアが、赤色矮星ケプラー138を周回している。この惑星は底しれぬ深さの海を持つ真の水の世界だと考えられているが、ハリウッドでさえ、そこを人間が容易に航海できるとは想像できないだろう。
引退したNASAの著名な惑星発見望遠鏡ケプラーは、地球から218光年離れたケプラー138の周りに少なくとも3つの惑星を発見し、ケプラー138b、cおよびdは、現在知られている地球により近い系外惑星となった。
2022年、ある研究チームがNASAの別の宇宙望遠鏡Spitzer(スピッツァー)およびHubble(ハッブル)から得たデータを用いて、この星系、特にケプラー138cとdの詳細を調査した。分析結果は、これらの惑星の大部分が水からできていることを示していた。
「これまで私たちは、地球よりやや大きいこれらの惑星が、金属と岩石からなる地球をスケールアップしたような球体だと考えていたため、スーパーアースと呼んでいました」と論文の共著者であるモントリオール大学のビョルン・ベネケはいう。「しかし、今回の分析によって私たちは、2つの惑星ケプラー138cとdが、実際には地球と大きく異なり、全体積の大部分が水からできている可能性が高いことを発見しました。『水の世界』という天文学界が長年その存在を理論化してきた種類の惑星の存在を示すこれまでで最も強力な証拠です」
同研究は、2022年12月にNature Astronomy誌に掲載されている。
水の世界という表現は控えめかもしれない。これらの惑星にある大洋は、地球の平均的な海より500倍以上深いかもしれない。
水があれば良いというわけではない
しかし、現時点で得られているデータには不確実な点が数多くある。これらの惑星は親星の非常に近くを周回しており、そこはハビタブルゾーン(生命が存在しうる領域)の外であり、その著しい高温のためにおしゃれなプールというよりは蒸風呂のような状態になっているはずだ。
「ケプラー138dの大気温度は水の沸点を超えている可能性が高く、この惑星に水蒸気からなる深く濃い大気を形成していることが予想されます」と研究チームのリーダーであるキャロライン・ピオーレはいう。「水蒸気大気の下に、高圧の液体である水あるいは、高圧下に存在する別の相である超臨界流体が存在する可能性があります」
この世界はケビン・コスナーの映画『ウォーターワールド』で描かれる『パーフェクトストーム』と『マッドマックス』を合わせたような世界よりもさらに神秘的だ。
水をたたえた双子のスーパーアースが、星間旅行の目的地になることは当分ありそうにないが、研究チームはさらに、4番目の惑星となるケプラー138eも発見しており、こちらはハビタブルゾーンの中にある。
現在、この惑星については、周回に約38日かかること以外ほとんどわかっていない。また、これらの惑星の一部あるいは全部が、公転と自転の周期が一致する潮汐ロックの状態にある可能性も少なからずある。
これは、月が地球に対して常に同じ面を見せているのと同じように、これらの系外惑星が親星に同じ面を見せ続け、昼と夜の側が恒久的に決まっていることを意味している。その惑星の半分は常に過熱状態にあり、反対側は凍結した暗黒であるということであり、生命の可能性があるとすれば明から暗に変わる明暗境界線と呼ばれる部分に限定される。
しかし、最近の研究は、水分の多い潮汐ロックの世界が、温暖な境界を維持する理想的環境ではないことも示されている。
つまり、もしケプラー138eが居住可能であることを期待するなら、姉妹惑星らのような水に満ちた場所ではないことを願うしかない2023年1月11日
Forbes JAPANより