NASAの探査機が火星の大気から酸素を作る実験を完了。成人が3時間半呼吸する量の生成に成功
NASAの探査車が火星で酸素生成実験に成功 NASAの火星探査車「「パーサヴィアランス(パーセバランス)」には、火星の大気から酸素を生成する「MOXIE」という実験機器が取り付けられている。
2021年4月21日に起動実験に成功し、その後酸素生成実験が開始されたが、2023年9月7日に16回目となる最後の実験が行われた。
2年ほどの間に「MOXIE」によって作られた酸素の量は約122g。成人が3時間半呼吸ができるほどの量で、小さな1歩ではあるが、大きな前進でもある。
火星の大気に含まれる「二酸化炭素から酸素を合成する技術」は、いずれ人類が月や火星で長期的に暮らすためには欠かすことができないものだからだ。
火星の大気から酸素を作る実験は予想以上の成果 地球よりもずっと薄いが、火星には大気がある。そのほとんどは地球では厄介者扱いされている「二酸化炭素」だが、MOXIEはこれを利用して「酸素」を作り出す。
二酸化炭素を吸い込んだMOXIEは、これを加圧して800度に加熱する。
次に電解槽に流し、触媒で二酸化炭素を酸素イオン(帯電した酸素原子)と一酸化炭素に分解する。
最後の仕上げに、電気で酸素イオンを再結合すれば、私たちが呼吸することができる酸素の出来上がりだ。
Crazy Engineering: Making Oxygen on Mars with MOXIE パーセバランスが2021年に実験を開始して以来、MOXIEは122gの酸素を作り出してきた。そして8月7日に行われた16回目となる最後の実験では、9.8グラムの酸素が作られた。
今回の第一次実験では、MOXIEをフル稼働させると、純度98%以上の酸素を1時間で12g作れることが確認されている。これはNASAが期待していた性能の2倍にも匹敵するという。
NASAによると、人が1日に必要な酸素はおよそ0.84kgだ。つまりMOXIEは火星での2年余りで、人が3時間半生きられるだけの酸素を生産したことになる。
人間の宇宙飛行士による火星探査の本番では、MOXIEは1時間あたり2~3kgの酸素を作れるようでなければならない。だが、コンセプトの証明としては大成功だという。

パーセバランスに搭載された酸素合成装置「MOXIE」 / image credit:NASA/JPL-Caltech
長期ミッションに欠かせない現地資源の利用技術 科学調査用にパーセバランスに搭載された「SHERLOC」などの機器とは違い、MOXIEの役割は将来的に火星に人が住めるかどうか試すことにある。
NASAのパメラ・メルロイ副長官は、今回の実験成功の意義についてプレスリリースでこう説明する。
MOXIEの素晴らしい性能は、火星の大気から実際に酸素を抽出できることを証明しています。将来の宇宙飛行士たちが息をするための空気や、ロケット推進剤となってくる酸素です。
こうした火星や月にある資源利用を可能にする技術は、そこに人類が長期的に滞在し、力強い月経済を作り、火星で行われる最初の有人探査計画を支援するために不可欠なものです
また今回のMOXIEの成功は、宇宙資源の利用技術の開発に携わる関係者にとっては勇気が出るようなニュースで、業界を後押しするだろうとのこと。
MOXIEの開発チームによれば、次の目標は、作られた酸素を液体にして保存する本格的なシステムを開発することであるそうだ。
2023年09月15日
カラパイアより