ワームホール (wormhole) は時空構造の位相幾何学として考えうる構造の一つで、
時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道である。

湾曲した二次元宇宙におけるワームホールの相似
もし、
ワームホールが通過可能な構造であれば、そこを通ると光よりも速く時空を移動できることになる。ワームホールという名前は、リンゴの虫喰い穴に由来する。リンゴの表面のある一点から裏側に行くには円周の半分を移動する必要があるが、虫が中を掘り進むと短い距離の移動で済む、というものである。
ジョン・アーチボルト・ホイーラーが1957年に命名した。
ワームホールは、アインシュタイン-ローゼンブリッジとも呼ばれるが、
現在のところ、数学的な可能性の1つに過ぎない。シュヴァルツシルトの解で表されるブラックホール解は、周りの物質を何でも呑み込む領域を表すが、
数学的にはその状況を反転したホワイトホールも存在する。ブラックホールとホワイトホールを単純に結んでワームホールと考えてもよいが、この場合は通過不可能である。
電荷を加えたブラックホールでは、通過可能になり得るが、元の場所へは戻ってこられない。また、観測的には、ホワイトホールのような領域の存在を示唆する事実は全くない。
しかし、通過可能なワームホールを考えることは研究上の遊びでもあり、キップ・ソーン(Kip Thorne)らの1988年の論文を端緒に市民権を得ている。小説「コンタクト Contact」を執筆中だったカール・セーガン(Carl Sagan)が、地球外生命との接触が可能になるようなシナリオをなんとか科学的に作れないか、とソーンに話を持ちかけたのがきっかけだったという。ソーンらは「通過可能であるワームホール(traversible wormhole)」を物理的に定義し、アインシュタイン方程式の解としてそれが可能かどうかを調べた。そして
、「もし負のエネルギーをもつ物質が存在するならば、通過可能なワームホールはアインシュタイン方程式の解として存在しうる」と結論し、さらに、時空間のワープやタイムトラベルをも可能にすることを示した。ただし、ここでの研究は、現在の技術では制御が難しい高密度の負のエネルギーの存在を前提としており、また、
どうやってワームホールを通過するのか、あるいは出口がどこなのかは全くの未知の問題として棚上げされた上での研究である。後に、ソーンの考えたワームホール解は不安定解であることも、数値計算から報告されている。