土星の衛星タイタン

Posted by moonrainbow on 24.2017 衛星   0 comments   0 trackback
まるで地球、衛星タイタンの驚くべき写真

土星探査機カッシーニからの合成画像
土星探査機カッシーニからの合成画像は、衛星タイタンのもやの下に隠された地形を見せてくれる。(PHOTOGRAPH BY NASA)

高度10kmから見たタイタンの表面
高度10kmから見たタイタンの表面。ホイヘンスからの画像をつなぎ合わせて作成した画像。(PHOTOGRAPH BY ESA, NASA, JPL, UNIVERSITY OF ARIZONA)

探査機着陸の偉業から12年、海も山も川もある土星の衛星の素顔

 今から12年前の2005年1月半ば、地球ではない星に着陸すべく、小さな探査機がパラシュートを開いて分厚い大気の中をゆっくりと降下しました。探査機はやがて凍った地面に到達。小さな穴をあけ、跳ね返り、横に滑り、ぶるぶるとぐらついたのです。

 ほどなく探査機が静止した場所は土星の最大の衛星タイタンの「湿った」氾濫原でした。

 欧州宇宙機関(ESA)の小型探査機ホイヘンスは、もやに包まれたオレンジ色の衛星に着陸して詳細な画像を撮影した最初の無人探査機となりました。この探査機は、電池が切れ、母船であるNASAの土星探査機カッシーニとの通信が途絶えるまでのわずか1時間ほどの間に、猛烈な勢いでデータを収集し、送信しました。

 このデータは、地球に酷似した異世界を垣間見せてくれました。

 太陽から14億km以上離れているタイタンの気温は非常に低い。氷は石のように硬く、エタンやメタンのような炭化水素は、地球では普通は気体ですが、ここでは液体になって巨大な湖や海を形成しています。

 しかし、直径が5150kmもあり、山があり、雨が降り、風が吹き、海には波も立っているタイタンは、静寂に包まれたクレーターだらけの衛星よりは惑星に似ています。地表に炭化水素の海があるだけでなく、地下にも液体の水の海があり、地球外生命を探すのに最適な場所の1つになっています。

 米ジョンズ・ホプキンス大学の惑星科学者サラ・ホルスト氏は、「タイタンは二重の海がある世界のようなものなので、私たちがよく知るタイプの生命と、未知のタイプの生命が存在している可能性があります」と述べています。

酸素ができる前の地球?

 ホイヘンスは土星探査機カッシーニに運ばれて土星系にやってきて、土星軌道に入ってからタイタンに向かって放出されました。

 カッシーニには土星とその多くの衛星を探査する任務が与えられていたが、ホイヘンスの任務はタイタンの観測だけだった。ちなみにホイヘンスという名前は、1655年にタイタンを発見したオランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスにちなむ。タイタンは分厚い大気に覆われているため、星自体の表面はほとんど見えないのです。

 カッシーニから分離されたホイヘンスは20日後にタイタンに到着し、その大気中を2時間以上かけて降下し、氷点下170℃の極寒の平原に着陸してデータを収集しました。

 米アリゾナ大学のラルフ・ローレンツ氏は、「タイタンに関するそれまでの知識は間接的に調べられたことばかりでしたが、ホイヘンスはタイタンの環境を直接明らかにし、クローズアップで見せてくれたのです」と言っています。

 ホイヘンスは私たちに、タイタンに山々や急流の浸食によってできた峡谷、河床、窒素を主成分とする大気に風があることを教えてくれました。地表での測定の結果は、ホイヘンスが着陸した砂地が乾燥した砂漠ではなく、なんらかの液体によって湿っていることを示していたのです。

 ホイヘンスは大気の測定も行い、科学者たちは、タイタンの昔の大気の組成を再現し(おそらくアンモニアとメタンからできていた)、生命が進化して酸素が豊富になる前の地球と同じ、窒素を主成分とする大気の中で有機分子がどのように振る舞うかを調べられるようになったのです。

「窒素を主成分とする大気を持つことが分かっている天体は、地球のほかにはタイタンだけです」とホルスト氏。「タイタンの大気中では、酸素ができる前の初期の地球で見られた化学反応の多くが起こっていると考えられます」

タイタンから地球を知る

 ホイヘンスによるタイタンの探査は、人類が月以外の衛星に探査機を着陸させた最初の(そして今のところ最後の)ミッションでした。

 NASAは以前、将来の惑星探査ミッション候補の筆頭に「タイタン表層海探査(Titan Mare Explorer)」を挙げていました。このミッションは、タイタンの北部にある多くの海の1つであるリゲイア海に浮かぶ探査機を送り込むというものでした。液体の炭化水素からなるタイタンの表層海には、地球の生命とはまったく異なる化学物質からなる生命が生息している可能性があります。

「この探査により生命の多様性を検証できるはずでした。地球上の生命とは異なる液体を利用する生命を見つけることもできたかもしれません」とホルスト氏。

 人類はまもなく土星系に送り込んでいた探査機を失いました。カッシーニは今年中にミッションを終え、土星に突入することになっています。しかし、ホイヘンスやカッシーニなどの歴代の探査機が収集したデータは、その本体が失われた後も太陽系に関する新しい手がかりをもたらし、科学者が将来のミッションを計画するのに役立つでしょう。

 タイタンは、地球とはまったく異質であると同時に、どこか親しみも感じられる天体でした。季節ごとに降る雨は平野を黒く染め、有機分子が豊富で、冬には極地の周囲をまわる「極渦」のような風が吹いていました(仕上げはシアン化水素の雲)。

 ローレンツ氏は、「タイタンの魅力は、おなじみのものとエキゾチックなものが混在している点にあります」と言う。「超低温や氷や有機物や液体メタンが、地球でも見られるような雨や川や砂丘や海を作っているのです」

 簡単に言えば、タイタンは地球以外の土地を探検するという興奮を与えてくれるだけでなく、私たちの故郷である地球についても知識を与えてくれる点で、科学者にとって非常に魅力的な天体です。

 ホルスト氏は言う。「タイタンは活動的な天体で、地球上で見られる過程によく似たものが多く見られるので、惑星の成り立ちに関する基本的な理解を検証するのにうってつけなのです」

ナショナル ジオグラフィックより
2017年1月17日

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