スペースシャトルの後の宇宙船
オリオン(Orion、またオライオンとも)は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) が2010年に運用が終了するスペースシャトルの代替として開発中の宇宙船である。NASAでの以前の呼称はCrew Exploration Vehicle(クルー・エクスプロレイション・ビークル、略称はCEV)であったが、2006年8月22日、NASAはオリオン座に因み、同宇宙船を「オリオン」と正式に命名した。この宇宙船は国際宇宙ステーション (ISS) への
人員の輸送手段として、また
次期有人月着陸計画(コンステレーション計画)への使用も期待されている。

写真:NASA提供

有人月面探査に向かうオリオンのイメージ
写真:NASA提供の想像図
宇宙船 :
宇宙船はアポロ計画で使われた機体に近いカプセル形状をしている。この円錐形の司令船は、アポロが底面直径3.8mで定員3人であったのに対して、オリオンは底面直径5m(当初の計画では5.5mだった)、寸法は1.5倍、容積は3倍で、6人のクルーが生活できる。定員はISSへの往復の場合が6名だが、月探査では4名を予定している。また、有人火星探査も睨んでいる。アポロが完全使い捨てであったのに対し、オリオンは
10回程度繰り返し使用する計画である。
宇宙飛行士が搭乗した最初のミッションとして、ISS(国際宇宙ステーション)への飛行が2014年までに予定されており、2020年までにオリオンを使った月への探査計画が予定されている。
NASAのConstellation Programは2006年6月、アレス(Ares)というロケットの打ち上げに関する発表を行った。オリオンを打ち上げるためロケットはAres Iと呼ばれ、さらに重量のある宇宙船/衛星を打ち上げるためのロケットとしてAres Vが計画されている。
重量は約25トン。アポロ宇宙船の2.5倍の居住空間を持つ。デザインは過去の宇宙船を踏襲したものだが、コンピュータ、電子技術、ライフサポート、推進力、耐熱性においては最新技術が導入されており、スペースシャトル「コロンビア」事故で問題となった大気圏再突入時の問題は、安全な円すい形デザインにすることで対策が取られているとNASAは説明している。

写真:NASA提供
後部に連結される円筒形の機械船は、やはりアポロ同様に月への往復に使用するロケットエンジンを備えている。燃料は液体酸素とメタンである(注:メタン推進系の採用は見直し中)。これは将来の有人火星探査において、火星大気中の二酸化炭素からメタンを現地生産するかもしれないためである。また、ロシアのソユーズ宇宙船と同様に、太陽電池パドルを設置することで、長期間の電力供給を可能にする予定である。
打上げロケット :
人員打ち上げ機 (Crew Launch Vehicle: CLV) としては、構想段階では「インライン・ミディアムリフター」と呼ばれていた専用のロケット、「アレスI」が用意される。開発コストを削減する為、スペースシャトルのシステムと、既存のロケット製造技術を流用する。アレスIの第1段には、スペースシャトルの固体ロケットブースター (SRB) を4セグメントから5セグメントに延長したタイプを使用し、第2段にはサターンロケットで使われた液体酸素と液体水素を使用するJ-2ロケットエンジンの改良型となるJ-2Xエンジン1基を使用する予定となっている。 スペースシャトル並みに地球低軌道へ約25トンの打ち上げ能力を持つ予定。
貨物(月着陸船)の打ち上げ機 (Cargo Launch Vehicle: CaLV) としては、「アレスV」が使われる。月探査時にはCaLVで月着陸船を地球の周回軌道上に打ち上げてから、クルーを乗せたCLVを打ち上げ、軌道上でドッキングすることになる。アレスVは、第1段のメインエンジンには、ボーイング社のデルタ4ロケットに使われている液体酸素と液体水素を使用するRS-68エンジン5基が採用された。打ち上げ能力を補うために5セグメント固体ロケットブースター2基も使われる。2段にはJ-2Xエンジン1基が使用される。 こちらはサターンV並みに、地球周回軌道に約125トンの打ち上げ能力を持つ予定。
スケジュール:
NASAは当初、2011年までに試作機を製作、早ければ2014年にも有人飛行を行うとしていた。しかし、2007年4月にそのスケジュールを見直し、試作機は2013年、有人飛行は2015年以降に延期となった。これに伴い、開発費も39億ドルから43億ドルと上昇している。
これにより、ISS完成に伴うシャトル退役予定の2010年から最低5年のブランクが生じる事となり、その間のアメリカ担当分のISS補給手段が問題となっている。
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なぜシャトルタイプは駄目なのか? 
写真:NASA提供
オリオンがアメリカで30年近く放棄されてきたアポロ・ソユーズ型の使い捨て型ロケットシステムに回帰する理由は:
1).シャトルに比べてロシアのソユーズの評価が相対的に高い。シャトルは1981年の初飛行以来二度人命を損なう事故を起こし、その信頼性は有人機としては失格と評価せざるを得ない。一方シャトルの運用が始まった1980年代以降、ソユーズは人命に関わる重大な事故を起こしておらず、シャトルより信頼性は高い。
2).帰還時にだけ使用する翼を打ち上げる非効率を回避できる。
オービターを繰り返し使用するには多額のメンテナンス費用が必要で、使い捨て(短期利用)の宇宙船を使用したシステムの方が経済的である。
3).耐熱タイルの問題。打ち上げ時脆い耐熱タイルを外部に曝露しているのは危険で、コロンビア事故の原因の一つと考えられている。オリオンのシステムであれば、耐熱部分をフェアリングで保護して打ち上げる事が出来る為、同様の事故は回避できる。
4).シャトルには緊急脱出装置を搭載できなかったが、カプセル型宇宙船では、緊急脱出用ロケット(通称「LES」)を設置する事が可能である。トラブル時にはカプセルのみを切り離して安全な場所へ避難できる。このシステムはアポロやソユーズでも設置され、ソユーズで一度使われて安全に避難できる事が実証されている。
5).次世代シャトルとして開発されていたベンチャースター計画の失敗。シャトルのコスト高を解決する方法として完全再利用型のSTSが計画されたが、技術的な難易度が極めて高く実現には至らなかった。
6).ISSの稼働により、シャトルの様な大量輸送・長期滞在の機能が不要になる為。
なお、日本のJAXAにおいてHOPE計画の中止に伴って有志により提案されたふじ計画との相似性を指摘し、21世紀初頭における宇宙からの回収システムの技術的な最適値はカプセル型であるとする意見もある。
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ーーー廃案になった「スペースプレーン」ーーー開発中および開発が中止されたスペースプレーン

再利用可能な2段式スペースプレーン
NASAのイメージ図
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スペースシャトルの後継の有人宇宙船は、使い捨て型ロケットを用いるカプセル型宇宙船のオリオンに決定してしまった。ソユーズの後継機として構想されているクリーペルは再使用型宇宙往還機ではあるものの、打ち上げ自体は使い捨て型ロケットを用いて行われる予定である。スペースプレーンの実用化の目処は、現在において全く立っていないというのが現状である。
写真と記事はWikipediaより